ようこそ第0護衛隊群へ   作:/Null

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ボコってなんだ?(2回目)


赤とオレンジ 36/?

しっかりとシャンプーとリンス(彼の香り)を髪に馴染ませた後、ザバァと流されるお湯で身体に残る泡と一緒に(結局前は自分で洗った)汚れを落としていく。

 

髪に香りが残っているのを確認したら、まだ湯船に浸かるミカさんと同じく、ヘアゴムで肩にかかる後ろ髪を纏めて高い位置へ。

 

「ほれ、もう一回湯船入るぞー」

 

「あっ。う、うん」

 

にへらと笑みを浮かべていた私は慌てて表情筋に力を入れ直し、彼の声に続くようにと立ち上がる。

 

 

だが湯船の方を向くと、そこでは新たな問題が。

 

 

「おい、ミカー?」

 

お湯はいつの間にか足されていて、完全リラックスモードのミカさん。

 

「ふふっ。ちょっと力が抜けてしまってね?けど、気にする必要はないよ?」

 

そのまま入れということなのだろうか、片目をつむるその仕草になんらかの思惑があるのは明白だが、全く動く気のないミカさんに彼は早々に諦めて、仕方なさそうにその上へと重なる。

 

私もどうすればいいのか迷ったが、結局湯船に招く彼の手を取り2人のへ。

 

またしてもサバァっと溢れ出るお湯。そして、ミカさんと私に挟まれてサンドイッチ状態の彼。さらに、後ろではモゾモゾとミカさんが彼の腰に手を回し、身体を密着させ始めた。

 

「おいやめろ、煩悩がやばい」

 

「...あんたにも煩悩って、まだあったのね」

 

「俺をなんだと思ってるんだ...。歳食っても男ってのは変わらないんだよ」

 

何をやっても反応が無さすぎて、彼の煩悩はもうなくなっているんじゃ?と思っていたが、どうやらまだ健在していたようである。

 

それに関しては正直安心した。だって、毎度これだけ私が緊張してるのに何も思われてなかったら、それはそれでなんか不公平だし。

 

 

「というかミカ。本気でホールドするんじゃねぇ。力抜けてるって話どこいった」

 

「湯船で溺れてしまうといけないからね。きみにしがみついているだけさ?」

 

「それだと俺も溺れるだろ...」

 

そんな彼にお構いなしのミカさんは相変わらずの平常運転。けどその実、あまり見ない彼の反応を楽しんでいるのかもしれない。

 

「な、なら。あんたも...私に掴まればいいじゃない?」

 

「溺れる人数増えるだけやん」

 

「そういう意味じゃなくて!」

 

「はいよ」

 

 

ふふん。最初からこうしてくれたら、私はそれでいいのだ。

 

ご満悦に上げる視線と同時に、私の重心は後ろへと傾く。

 

「これはなかなか...ふふっ。きみも強引だね?」

 

「俺がやってるわけじゃないからな?...おいエリカー?体重かかってるから。後ろの意識しちゃうから」

 

「“かけてる”のよ。それに、“前”を意識すればいいでしょ。それなら問題ないし」

 

「両方意識しちゃってるわぃ」

 

「ふん。ならいいわ」

 

 

 

先ほどよりも狭くなったこの空間。

 

軽口を叩き合う3人の口数は次第に減っていき、ゆっくりと時間だけが過ぎていく。

 

 

 

 

 

ただ確実なのは───天井へと昇る湯気は“三つ”だった、ということだ。

 

 

 

――――――――――――

―――――――――

 

 

思った以上に長風呂となってしまった私たちだったが、なんとかのぼせることなく、今はリビングでくつろぎタイムの最中。

 

他愛のないテレビ番組を横目に、スッと片耳を出すように乾いた髪を浮かせれば、目論見通りする彼のかおりに時折私の表情は緩んでしまう。

 

かたや隣に座るミカさんは、何を読んでいるのか本を片手に真剣な表情。

 

あのミカさんが、珍しい...と思ったが、本の表紙に“ゼク◯ィ”と書かれているのが見えて、相変わらずだなぁと逆に安心してしまった。

 

 

...まぁ、折角だから私もあとで見せてもらうけど。

 

 

ちなみに、今ここにいるのは私とミカさんだけ。

 

え?じゃあ、あいつはどこにいるのかって?

 

それは───

 

「ふぃー」

 

あっ、どうやらタイミングよく出てきたようだ。

 

「いやー。流石に長風呂過ぎてお肌ふにゃふにゃよ」

 

「当たり前じゃない。どれだけ入ってたと思ってるのよ」

 

「んー。まぁ単純にお前らの倍だわな」

 

「ならそうなるのも当然でしょ」

 

話の通りこの男、愛里寿にお願いされてそのまま一緒に入っていたのだ。

 

 

───『お兄様も一緒がいい』

───『いや、入りたいのは山々なんだけどな?家元になんて言われるか...』

───『...ダメ?』

───『』

 

 

なんてやり取りの末、最後はダメ出しの上目遣いである。流石にこれに勝てないのは仕方がない。

 

みほはというと、愛里寿と違い羞恥心も配慮もあったのか、最初はどうしようとあたふたとしていたが、別に気にしないわよと私が視線を送れば、覚悟を決めたのか脱衣所へと消えていった。

 

 

まぁ実際思うところが無い...訳ではないけど、あいつが押しに弱いのは今更だし、別にややこしい事にはならないという確信もある。

 

なんだかんだで、私はあいつのこと信頼してるし。

 

だからたまにはいいんじゃない?と、柄にもなくミカさんのように余裕の態度をとってみた。

 

 

 

「ほら、髪乾かしてやるから2人とも先に着替えようなー」

 

「「はーい」」

 

彼に続いて出てきた2人は、やはり何も無かったのだろう元気に返事を返している。

 

みほに関しては完全に義妹モードで吹っ切れている様子。切り替えの速さは流石と言ったところね。

 

「エリカさん。これ、持っててもらっていいかな?」

 

「ぅん?」

 

そう渡されるのは先程私も見たアヒル...のようなボコ。

 

「...なんか、色変わってない?」

 

「ふふっ。お風呂に浮かべている間、いろんな色に変わるんだ」

 

「いや、ボコのくせに無駄に技術使い過ぎでしょ」

 

 

私たちの時は赤色だったボコは、今見るとオレンジ色に。

 

お風呂にのぼせたボコが赤色になる...というギミックだと思っていたが、どうやら違ったようだ。

 

「けど、それなら折角だし他の色とかも見たいわね。...青色とか?」

 

「あはは...。よく分からないけど、エリカさんたちが入る時は赤色にしかならないと思うな」

 

「なんでよ」

 

「勘...かな?」

 

「勘...ね。まぁ、そうは思いたくないけど、私もそんな気がするわ」

 

 

 

赤色(恋愛)とオレンジ(親愛)色。似ているようで似ていない二つの色は、もしかしたらお風呂に浮かんでいたボコが、1番その雰囲気を感じ取っていたのかもしれない。

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