バタバタと風を切る音がアスファルト上の砂埃を巻き上げる。機体がガクンと揺れた後、無事着陸したヘリポートから外を見ると、見知ったジープがこちらへ向かってきている。
「今日は遅かったじゃないか、兄さん」
「すまんすまん。みほと愛里寿送った後だったからな」
タイヤが止まり切るのを待たずして、我先にと降りてきたのはもちろん我らが隊長。そして運転席には小梅の姿があった。
「しかし、みほも泊まるとは聞いていたが...やはり私も行くべきだったか」
「昨日は外せない用事があったんだろ?」
「兄さんとみほがいるのに、それに勝る予定でも無かった」
「いや、うちなんていつでも泊まれるんだから。次お前が泊まれる時にみほも呼べばいいだろ。みほなら喜んで来てくれるって」
「それもそうだが...」
昨日泊まりに来れなかったことがよほど悔しかったのだろう隊長は、どうにか出来なかったのかと悩ましそうな姿勢を崩さない。
...まぁだからといって、小梅もいる前で彼の腰に手を回して抱きつくのはやめてもらいたいが。
あんたもナチュラルに隊長の頭撫でてんじゃないわよ。時と場所を弁えなさい。見てるこっちが恥ずかしくなっちゃうでしょうが。
あと小梅。なんで私に微笑ましそうな視線を向けてんのよ。今私は関係ないでしょうが。
「む。兄さん、これは?」
「んー?あぁ。朝ミカがなー...───って痛ぇ!」
それは彼の首元に付けられたミカさんの印。目敏く見つけた隊長がとった行動は、彼の反応を見れば分かるだろう。
そう、直ぐ隣にもう一つ。情熱的な
「ふっ。ミカだけにいい思いをさせるわけにはいかないからな」
「いい思いというか、俺が痛い思いしてるだけなんだが...」
「なら、こうすればいい───」
嘆息を漏らす彼の口を、間髪置かずに隊長は当たり前のように自身の口で塞ぐ。
「ふふっ。これなら甘いだろう?」
「甘くはないだろ...。いや、この場合は甘いのか?」
糸引く口元を手で拭い、頬を緩ませて愛おしく微笑む隊長の姿は、私にとっては見慣れた光景でも、初めて見る小梅には刺激が強かったようで、顔を赤くしながらも口を押さえて、されど目線は外さない。
そんな友人の反応を見て、やはりこの子も乙女なのだなと思ってしまった。
ただ...私にもチラチラと同じ視線を向けるのは、いい加減やめなさいよね...。
――――――――――――
―――――――――
「隊長ー。ノンナ嬢来てますよー」
「おぉー。一昨日振りだなノンナ」
場所は変わって、ここは空母ケストレルの執務室。午前中の授業も終わり、さぁこれから訓練開始だとケストレルへと到着したのだが、その場には平日だというのにノンナさんの姿があった。
「というか、授業大丈夫なんか?」
「ふふっ。心配はご無用です。授業は後日補修という形で受け直す予定ですので問題ありません。それに、私も皆さんと同じく公務ということになっていますから」
もちろんラーズグリーズ隊に所属している私も公務ということになっているのだが、なるほど。どうやら無駄な心配だったようだ。
「それよりも同志...。首元のそれは?」
「んー?あぁ、朝にミカとまほがなー...───って痛ぇ!」
それは彼の首元に付けられたミカさんと隊長の印。目敏く見つけたノンナさんがとった行動は、彼の反応を見れば分かるだろう。
そう、直ぐ隣にもう一つ。情熱的な
まぁ唯一朝と違うのは、彼の首元の
「ミカさんとまほさんだけにいい思いをさせるわけにはいきませんから」
「だから俺が痛い思いしてるだけなんだが...。朝と同じなんだが...」
「なら、こういうのはどうですか?」
そう言うと自身の制服のボタンを一つ外し、ノンナさんは首元を曝け出す。
そして彼の顔を強引に寄せて───
「「「「おおー...」」」」
その行動に、周りからは歓声が上がった。
「ふふっ。カチューシャに見られないようにしなくてはいけませんね」
「いや、別にガキンチョも知ってんだし隠す必要なくね?」
「いえ。こういう大人の雰囲気はカチューシャにはまだ刺激が強すぎますから。それに、見つからないようにとするスリルも、なかなか楽しいものですよ?」
「そういうもんかねぇ...」
「そういうものです」
自身の付けた
けど、結局は何だかんだで嬉しそうに見せびらかすことになるんだろうなぁ。
――――――――――――
―――――――――
帰り道。予定通り訓練も早く切り上げたおかげでまだ日も高い。朝の寒さも弱まる日差しの中、ふと思い出したかのように振り返った私は、彼の首元を指差した。
「それ、結局どんな形で残ったの?」
「んー?あいつら容赦無かったからな...。こんな感じに...
───って痛ぇ!」
2人っきりの帰り道。
「ふふっ。どう?」
「...お前のが1番痛かった」
「そりゃそうよ。だって───
最後に1番消えないやつを残してやろうかなって思ってたんだから」
昼。ノンナさんのことがあった時。ラーズグリーズ隊の皆さんには
それはちょっぴり恥ずかしかったけど、結果としては私が1番の
「ふふっ。どんなもんよ」
彼についた4つの
それに対して私は、照る太陽にも負けないぐらいの眩しい笑顔を返してやったのだった。