ポケットモンスター虹 ‎~Bravely Blaze~   作:裏腹

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火焔の祭典

『レディース・エンド・ジェントルメン!』

 

 華々しく弾ける花火、それを追いかける歓声に続いて、放送席の男はマイク越しに言った。

 

『今日も今日とてお集まりいただきありがとう! 予報通りの快晴の休日だけど、皆さんはどのようにお過ごしかな!? ここ、ルシエシティも例にもれず青空が広がっている! スタジアムには熱々の日光が差し込み、ごきげんなバトル日和! おかげで客席も満員御礼、最高の一日になりそうだ!』

 

 男が語る相手は勿論、大衆という名の人、人、人、その一人一人。

 こなれた様子の実況と盛り上げにまんまと沸くルシエスタジアムには、二人のトレーナーが立っていた。

 向き合う猛者と大観衆、色とりどりの紙吹雪に、オープニングファンファーレ。これから何が起こるかなど、もはや云うには及ばない。

 

「異文化交流も兼ねたエキシビジョンマッチ、ねえ」

 

 その日のルシエには、いつもと違う風が吹いていた。

 

「にしたって、こんな大掛かりにやる必要もねぇだろうにな」

「ぼやいても仕方がありません。私としても、まったくの不本意でしたので」

「無駄口はよせ、集中が途切れる」

 

 立ち見スペースで横並びのコスモスとランタナに、遠回しに黙れと言うのは、カイドウ。

 

「んだよ、感じ悪いぜプロフェッサー。もうちょい楽しくやろうや」

「口を閉じろと言った」

 

「こりゃダメそうだ」ランタナはコスモスに横目を合わせ、肩を竦める。

 本来ならば俺だって、こんな喧騒に身など置いていない――なんて言いたげな、渋い顔をしていた。

 しかしそれが叶わないのは、この時、ここで、彼にしか出来ない事があるからに他ならない。

 

「この茶番の本質は実験だ。即ち今有る要素は全てが必要である、ということだ」

 

 建前に隠された本音を知るのは、客席の極めて限られた人々と、フィールド内の二人だけ。

 

『Re:オーラが持つ新たな形質を発見せよ』

 

 カイドウをはじめとした研究者たちに与えられた仕事(ミッション)は、これだ。

 まるで血管を通る血液のように、ラフエル内の地底を流動する波動エネルギー『Re:オーラ』は、様々な形を取って地上の現象として表出することが確認されている。

 ある時は『メガシンカ』という進化で、またある時は『Zワザ』という技として……その他にも時空転移、精神変調など、事例は数多い。

 彼らは此度もそんな無限の可能性に懸け、とある地方に伝わる、とある現象を再現しようとしている。ラフエルの発展のため、そして同時に――。

 

「どこの誰だか知らねえが、トンチキな野郎もいたもんだぜ……」

「自ら企画し、会場をセッティング、そして各員へオファーし、告知宣伝を行い、おまけに研究費を援助……しまいには経費を全額負担。只者でないことは確かなようね」

「当然のことだ。猛プッシュする以上、これくらいはしてもらわねばな」

 

 第三者の熱烈なアプローチがあった。ただ、それだけのこと。

 

「カイドウだ。全員配置についたぞ、機材の問題もない。観客は満員、出場者のコンディションも良好――オールクリア。あとはプログラムに沿ってバトルが進むのを待つだけだ」

『ああ、ありがとう。何が起こるか、今から胸が高鳴って仕方がないぜ』

「今日までで俺達がやれることはやった。あとは特等席(そこ)で見るなり寝るなり好きにしろ」

『はは、寝るなんて、まさか! 最後まで楽しませてもらうよ』

 

 インカムにて、その“熱烈な第三者”との最後の打ち合わせを終え、カイドウは眼鏡を整え直した。手元のノートPCから向き直るは、声援投げ込まれるフィールドの中。

 

「鬼が出るか、蛇が出るか――」

 

 シンジョウvsカエン。会場のスクリーン表示は、彼らの激闘を切に望んでいた。

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