ずっと前にもワンパンマンの二次創作を書きはしたのですが、その時は途中で挫折をしてしまったので、ある意味ではリベンジになります。
心機一転するつもりで書いていきますので、どうかよろしくお願いします。
Z市の外れにあるゴーストタウン。
その一角にある部屋で、一組の男女が会話をしていた。
「なんだか凄い事になってるわね」
「そうだな」
二人が見ているテレビには、頭に被ったヘルメットを押さえながらも必死に現状の報告をしているレポーターの姿があった。
その背後では多数のビルが次々と薙ぎ倒され、画面全体が激しく揺れている。
『も…物凄い轟音と揺れが今も続いています! 突如としてA市を襲った大爆発は猶も規模を拡大させ続け、街全体がまるで……』
ここでテレビ画面が砂嵐になった。
どうやら、映像を映していたカメラが壊れてしまったらしい。
それを見た男は立ち上がりながら、真っ白なマントを翻して部屋を出ようとする。
「…行くの?」
「あぁ…ちょっと行ってくる。お前はどうする?」
「私はここにいるわ。お土産よろしく」
「分かった。それじゃあ……」
正 義 執 行
部屋を後にする男の背中を見送りながら、少女は壁に寄りかかりながら座った状態を崩さず、そのまま読んでいた本に視線を戻した。
「どうせ…今回もまた一撃で終わるに決まってるんだけどね……」
まるで、行った先で何が起きているのか。
どんな結果になるのかが分かっているかのような口振り。
だが、彼女は知っている。
一緒に住んでいる『彼』の秘めたデタラメな強さを。
どんなに強大な敵であったとしても、『彼』の前では等しく無力であることを。
だからこそ、心配なんて一切せずに、非常に呑気な事を考える。
「今日の夕ご飯…何にしようかしらねぇ……」
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一人の時間を過ごし始めてから15分弱。
少女の携帯に誰かから通話が掛かってきた。
なんとなく相手は分かり切っているので、彼女は画面を見て確認することなく電話に出る事に。
「はい。もしもし?」
『パチェ! またワンパンで終わっちまったぁぁぁぁぁぁっ!』
「だと思ったわよ。ご愁傷様」
『なんか偉そうなことをベラベラと話し出した時点で嫌な予感はしてたんだけど…』
電話の向こうの彼は出かける時の様子から一変し、まるで欲しいおもちゃを買って貰えなかった子供のように激しく落胆していた。
「で? まさか、ワザワザそんな事を言う為だけに電話を掛けてきた訳じゃないでしょう? どうしたの?」
『そ…そうだった! 実は、怪人に襲われそうになってる子供を助けたんだけど、両親とはぐれちまったみたいで全然泣き止んでくれねぇンだよ…どうすりゃいいと思う?』
「はぁ……」
どれだけ凄まじい力を持っていても、泣いている子供には勝てない。
変な所で人間臭さが抜け切れない同居人だった。
「仕方がないわね…今から私もそっちに行くわ」
『いいのか? つーか、来れるのか?』
「問題無いわよ。A市なら私も何回か行ったことあるし、さっきのニュースに詳しい場所が書いてあったから。それなら私の『ルーラ』で一発よ」
『おぉ~! 本当にパチェの魔法って便利だよな~…』
「それが魔法だしね。じゃ、すぐに行くから。ジッとしてるのよ」
『分かった』
通話を切りながらもう一回溜息。
もう完全に御馴染みのパターンになりつつある。
『彼』が怪人を倒し、『彼女』がその後始末をする。
面倒くさいと思いつつも、普段から世話になっている以上はやらない訳にはいかない。
「んん~…よし。それじゃ…行きますか」
読んでいた本を床に置き、首を左右に動かしてからコキコキと鳴らす。
ダボッとしたパジャマのような紫の服を揺らしながら『パチェ』と呼ばれた少女は玄関から外に出た。
外に広がっているのは、どこまでも廃墟廃墟廃墟。
明らかに人が住むような場所じゃないのに、なんでか電気や水道などはまだ使えているのだから不思議だ。
当人達は深く気にしてはいないようだが。
「えーっと……A市は…あっちね」
キョロキョロと視線を泳がせてから方向を定め、静かに目を瞑ってから精神を集中させる。
「…別に普通に飛んで行ってもいいんだけど…それはそれで疲れるから嫌なのよね。初めていく場所ならいざ知らず、何度も訪れた場所に行くにはこれが一番。やるわよ……『ルーラ』!!」
呪文を唱えると、突如として彼女の体が光りだし、一筋の流星となって遥か遠くにあるA市へと向かって飛び立っていった。
因みに、玄関などに鍵は掛けずに出かけてしまったのだが、ここには他に住んでいる人間なんて一人もいないので全く問題は無い。
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パチェがA市上空まで到着すると、彼女はその光景に目を細めた。
「これは…酷いわね」
A市の都市部は完全に壊滅状態となっていて、どこもかしこもZ市のゴーストタウン顔負けの廃墟のようになっていた。
「さて…と。あいつはどこにいるのかしらねー…っと。いた」
目的地に到着した時点で移動魔法『ルーラ』の効力は消えていて、パチェは空に浮いたまま周囲を探索する。
といっても、彼は色んな意味で目立つので見つけ出すのは容易だった。
向こうもこちらを見つけたのか、大きく手を振っていた。
「おーい! こっちだー!」
「相変わらず、凄い視力ね…」
もう何度ツッコんだか分からないが、それでも言わずにはいられない。
パチェは黄色いヒーロースーツに身を包んだ彼の下に降下していくことに。
「お待たせ。サイタマ」
「おう」
「…それで、さっき言ってた子供ってのは?」
「こいつだよ」
彼…サイタマの後ろにいた少女の背を押してから前に出す。
余程怖かったのか、少女はまだ泣きじゃくっている。
いきなり住んでいる町が崩壊すれば無理もないが。
「大丈夫?」
「うん……ひっく…ひっく…でも…パパとママが……」
サイタマが言っていた通り、この子はこの崩壊に巻き込まれて両親と離れ離れになってしまったらしい。
普段は自分の興味のあること以外には無頓着なパチェではあるが、だからと言って目の前で泣いている少女を見て何も思わない程に冷徹ではない。
「どうしたらいいと思う?」
「飛んでくる途中、向こうの方に即席の避難所みたいのがあるのを見たわ。もしかしたら、そこにいるかもしれない」
「マジかっ! 早く行ってみようぜ!」
少女にもそう言い聞かせてから、三人は並んで歩き始める事に。
周囲は瓦礫の山となっていて歩きにくいが、まだ何とかなる範囲だった。
「そういえば、まだ自己紹介をしてなかったわね。私はパチュリー。魔法使いよ」
「魔法使い? お姉ちゃん…魔法が使えるの?」
「一応ね。と言っても、漫画やアニメのようなやつは使えないけど…」
「いやいや…似たようなのを一杯使えるじゃねぇか」
「サイタマ。現実とフィクションは違うのよ」
「魔法に現実もフィクションも無いと思うけどな…」
と言っても、この世界には割と普通に超能力者や人知を超越したような身体能力を持つ者達が普通にいるし、人類を脅かす怪人だって跳梁跋扈している。
魔法だけが非現実的だと言われても説得力は無い。
「俺はサイタマ。趣味でヒーローをやってる者だ。お前は?」
「マナ…」
「マナか。いい名前だな」
最初は普通に歩いていたが、途中から疲れてきたので密かに浮遊魔法『レビテト』を唱えて宙に浮いた状態で移動した。
「今回の怪人はどんな奴だったの?」
「よく覚えてない。一発だったし」
「でしょうね。せめて、倒した相手の名前ぐらいは覚えておいてやんなさいよ。流石に不憫だわ」
「んな事を言われてもな……」
殴った相手の事なんていちいち覚えていないし、覚える必要性を感じない。
それがサイタマの価値観だった。
「なんか名乗ってたような気がするけど…なんて言ってたっけ…? 確か…ワクなんとかマンとかって……」
「なによ…そのワクなんとかマンって……」
「思い出した! ワクワクマンだ!」
「子供向けの教育番組に出てきそうな名前の怪人ね…。全く迫力が無いわ」
そうこうしている内に、遠くの方にキャンプ地のような場所が見えてきた。
どうやら、そこがパチュリーの言っていた即席の避難所のようだ。
「あ…あれ……」
「どうしたの?」
「パパとママだ!」
両親の姿を見つけたマナがいきなり走りだし、向こうもまた自分達の子供だと気が付いて走り出してきた。
「…一件落着…かしらね」
「そうだな。帰るか」
「うん。そうしましょ」
後ろを向いてから元来た道を戻って行く二人に、マナが大きな声で礼を言ってきた。
「パチュリーお姉ちゃん! サイタマお兄ちゃん! 本当にありがとう!」
返事をしない代わりに、少しだけ後ろを向いてから手を振った。
マナも同じように手を振り、彼女の両親は何度も頭を下げていた。
「サイタマ。手を貸して」
「よしきた」
パチュリーがサイタマの手を握り、来た時と同じように目を瞑って精神を集中させる。
今度は二人の体が一緒に光り出してから僅かに宙に浮いた。
何気に恋人繋ぎになっていたが、本人達は別に気にしていない様子。
「行くわよ……『ルーラ』!」
パチュリーとサイタマは並んで光となって、Z市へと帰っていくのだった。
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私がこの世界にやって来たのは、今から三年ぐらい前になる。
いや…やって来たという表現は正確じゃないな。
よく分からないが、恐らくは最近になって流行り出している『異世界転生』という奴だと思う。
前世での最後の記憶は、会社帰りに突如として歩道に乗り出してきたトラックにド派手に撥ねられたところか。
その時、誰かを庇って隣にいた人を咄嗟に突き飛ばしたような気がするが、今となっては曖昧だ。
体から何かが抜け出ていくような感覚と一緒に、物凄く寒くなる感覚がした。
意識が朦朧となっていき、視界には地面に流れ出た自分の血が。
このまま自分は死ぬのか。
体が全く動かなくなったことで観念してしまった私は、そのまま襲ってきた猛烈な眠気に従って目を閉じた。
だが、次に目を覚ましたのは死後の世界ではなくて、見知らぬ街だった。
まるで大地震でも起きたかのような廃墟の街。
どう考えても人がいる気配の無い場所。
その時はまだ頭が混乱していて、自分の身体に起きた変化に全く気が付いていなかった。
訳も分からずに街中をさ迷い歩いていると、ふと割れた窓ガラスに紫色の髪の美少女が映っているのが見えた。
ドアキャップに似た帽子を被り、紫と薄紫の縦じまの入ったゆったりとした服を着ていた。
自分の格好にまで気が回っていなかった己を恥じながらも、改めて自分の身体の事を確認して、声を出して驚いた。
ついさっきまで確かに成人男性だったのに、一瞬のうちにどこかで見た事のあるような少女になってしまっていた。
どこで見たんだっけ…と必死に思い出していると、ふと前世の記憶が過った。
この姿は『東方project』に登場する『パチュリー・ノーレッジ』じゃないのか?
姿や名前は知っているが、原作なんてやった事はないし、彼女に関しても知っている事は非常に少ない。
精々、紅魔館に住んでいて図書館に引き篭もっている、喘息持ちで体が弱い魔法使いってことぐらいだ。
私も読書は好きだから、そこに関しては共通している。
そこで初めて『転生』という二文字が頭を過った。
普通じゃ絶対に有り得ないし、余りにも非現実的すぎる。
だがしかし、それなら今の自分に起きた現象はどう説明する?
信じるしかなかった。自分がパチュリーにTS転生したという事を。
自分が転生したと判明したからと言っても、全く現状は変わっていない。
ここがどこなのかも分からず、これからどうすればいいのか。
何か持ってないのかと思って自分の服を調べてみると、ポケットの中に財布が入っていた。
中には、カードの類は無くなっていた代わりにちゃんと現金が残されていた。
こう言っちゃなんだが、給料日直後に死んで良かった。
日本円が使えるかは分からないけど、当面はこれでなんとかするしかない。
後は、人のいる場所に行けるかどうかだ。
少しだけ心に余裕が生まれた私は、ふとこんな事を考えた。
パチュリーになったのならば、もしや魔法が使えるのか?…と。
でも、原作でパチュリーが使っていた魔法なんて全く知らないし、知っている魔法と言えばドラクエやFFなどと言った有名ゲームの魔法ぐらい。
なので、もしもこれから先、生活に余裕が生まれるような事があれば、その時は魔法の練習や研究なんかをしてみるのもいいかもしれない。
だが…私は致命的なことを忘れていた。
パチュリーと言う少女は非常に肉体的な意味で病弱だったという事が。
途中で何度となく喘息を発症しながらも、なんとかして廃墟の無人街を出て人のいる場所まで辿り着いた。
本当に大変で大変で、疲労の余り先の事なんて考える余裕すらなかった。
そんな時だった…彼『サイタマ』と出会ったのは。
二人の過去については、またどこかで。
取り敢えず、オリ主パチュリーはスペルカードなどの代わりに皆さんもよく知っているゲームの魔法が使えると思っていてください。