今日なんてお昼頃に雪が降ってきたんですけど。
本気でめちゃくちゃ寒かったです。
因みに、今回は殆どオリジナルの話になります。
遂にやって来たヒーロー認定試験。
パチュリー達はZ市にある第6特設会場に訪れていた。
「なんか、思ったよりも筆記試験って簡単だったわね。拍子抜けしちゃった」
「そうですね。正直、もう少し難易度が高いと想像していましたが、これならば問題は無いでしょう。こあはどうだった?」
「私もなんとかなったと思います。解答用紙は全部埋めましたし」
「そうか。それならば問題は無いだろう」
「サイタマはどんな感じだった?」
「別に普通だったと思うぞ? 少なくとも、そこまで難しいとは思わなかった」
「流石は先生です!」
話の内容からもう察しているとは思うが、もう既に筆記試験は終了して、受験者たちは次の実技試験までの間、休憩室にて体を休めていた。
「問題は実技の方よね~。ジェノス君やサイタマは、こっちも楽勝だろうけど、私の場合は魔法無しじゃ難しいかもしれないわね」
「その辺は向こうも考慮するんじゃないんでしょうか? パチュリーさんの場合、魔法こそが真骨頂とも言えますし」
「それもそっか。素の体力で全てを決めていたら、ヒーローなんて全員が脳みそ筋肉野郎の集まりになっちゃうものね」
…と言ってはいるが、実際に試験を受けに来ている者達…特に男性陣の殆どは筋骨隆々な連中ばかり。
どう見てもパワーで押し切る気満々な事が分かる。
『もうすぐ実技試験の方を開始いたします。受験者の方々は指定の更衣室にて着替えた後に、男性は第1体育館。女性は第2体育館に集合してください。繰り返します。もうすぐ……』
水分補給として飲んでいた烏龍茶の入っていた空の紙コップを持ちながらパチンと指を弾き、火炎系呪文の『ハリト』を唱えてからコップを消し炭にして捨てる手間を省いたパチュリー。
彼女からしたら何気ない事なのだが、周りからしたらそうではない。
「それじゃ、私達も行きましょうか。案内板によると、女子更衣室はこっちになるから…実技試験が終わるまでは少しだけお別れね」
「そうだな。パチェ、こあ。二人とも頑張れよ」
「サイタマとジェノス君もね」
「はい。ご武運を祈ります。では」
男性陣と女性陣に分かれてから、それぞれ更衣室へと向かう。
それを見ていた他の受験者たちは冷や汗を掻いていた。
「い…今…あの紫の髪の子…手から火を出してたよな…」
「あぁ…もしかして、あの子も超能力者なのか?」
パチュリー。知らず知らずのうちにライバル達に向けてプレッシャーを与えていたの巻。
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ジャージに着替えたパチュリーとこあの二人は、揃って会場内にある第2体育館に入ってから試験が始まるのを待っていた。
因みに、パチュリーは紫のジャージで、こあは赤いジャージを着ている。
「パチュリー様って…ジャージを着ていても…その…目立ちますよね…胸が」
「こあがそれを言うの? そっちだって十分に出てるじゃないの」
この二人、買い物とか以外では殆ど外出とかしないにも拘らず、なんでか揃ってスタイルだけは抜群である。
特にバストが凄い。詳しいサイズなどは敢えて述べないが、ジャージを着ていても普通に上下に揺れる程度…と言えば勘のいい読者諸君は察してくれると思う。
因みに、サイズはパチュリーの方が上である。
「しっかし…筆記試験の時も思ったけど、意外と女性の受験者も多いのね。普通に驚いたわ」
「そうですね。てっきり男性ばかりが受けに来ていると思ってました」
端の方で待機をしつつ周りを見渡すと、同じようにジャージを着て準備運動などをしている女性たちが大勢いた。
中には明らかに十代と思われるような少女も交じっている。
「…私達も軽く体を解しておきましょうか」
「分かりました」
本当は、試験前に可能な限りの体力消費は避けたかったのだが、だからと言って準備不足で怪我とかしたら洒落にならない。
幾ら運動嫌いとはいえ、それぐらいの事は理解している。
まずは屈伸から始めようと自分の肘に手を添えた…その時、体育館に黒服を着た女性…恐らくはヒーロー協会の関係者と思わしき人物が端末片手に入ってきた。
「受験者の皆さん、こちらに集まってください」
全員が彼女の元に集まり出したので、二人もそれについていくことに。
その際にパッと見渡してみたが、男性陣に負けず劣らずの個性的な面々が集まっていた。
「これから様々な種目にて皆さんの身体能力を評価していきます。種目自体は男性側がやっているのと同じですが、少しだけ緩和されています。例えば、距離が短くなったり、重さが軽くなっていたりとか」
そこら辺は仕方がない。
男性と女性では身体的な意味で色々と違うから。
「それと、これは男女共通なのですが、受験者の中には超能力などと言った『特殊能力』を持った方々も少なからずいます」
もろにパチュリー達の事だ。
思わずドキっと心臓が反応した。
「そんな方々は、まず最初に素の状態での計測をして、その後に能力を使用した状態での計測をしていきます。最終的には、その二つを合わせて判定していくこととなります」
成る程。
現在のヒーロー協会所属のプロヒーローにも超能力者を始めとした特殊な能力を持った者達は多数存在している。
それらの存在もちゃんと考慮をしているということか。
(それなら、遠慮なく魔法を使えるわね。少し心配して損したわ)
もしかしたら、事前にこっちから話しておかなければいけないのかと想像して、面倒くさくなりかけていた。
だが、最初からそう言うルールが設けられているならば話は別だ。
躊躇う事無く自慢の魔法を披露してやろうではないか。
「それでは、これより実技試験を開始します。受験番号順が早い人から始めていきます。では、まずは……」
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「次は反復横跳び30秒です」
次々と種目が終わり、受験者たちは持参したタオルで汗を拭いていた。
それはパチュリーも同じで、床に座り込みながらジャージの袖で汗を拭っている。
「パチュリーさま、大丈夫ですか? 一種目終わる度にご自分に『ベホマ』を唱えてますけど…」
「そうでもしないと、やってられないのよ。魔法を使った状態ならともかく、素の状態じゃ物凄く疲れるんだから」
さっきからずっと能力として魔法を駆使しているが、どうやらそれは協会側も分かっているらしく、特に何かを言ってきたりはしない。
どうやら、ジェノスが彼女達二人の応募をする際に魔法が使える事も明記しておいたようで、最初こそは『魔法って何?』的な顔をされたのだが、二人が目の前で実際に魔法を見せたら一気に黙って頷いた。
「次のグループ、来て下さい」
「私達ね。行きますか…っと」
こあに手を貸して貰いながら立ち上がり、床に三本の線が書かれた場所まで歩いて行く。
回復しているお蔭で足取りは軽いが、それとは別に気は重い。
「パチュリーさんとこあさんのお二人は、今回もまずは何もしてない状態で始めて、その後に魔法を使ってからチャレンジしてください」
「「はーい」」
「では…開始!」
そこから30秒の間、二人は他の受験者たちと一緒に必死に頑張った。
そりゃもう本当に頑張った。めっちゃ頑張った。すんごい頑張った。
結果…こうなった。
「終了でーす。ストップしてください」
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…死ぬ…本当に死ぬ…」
「つ…疲れたぁ~…」
こあの方はそこまでではないが、パチュリーは完全に瀕死だ。
床に寝そべってから体力の限界アピールをしている。
「パ…パチュリーさん? 大丈夫ですか?」
「だ…大丈夫……ベホマ…」
なんとか腕を上げて呪文を唱えると、パチュリーの体が淡い光に包まれ、失った体力が全回復し、半身を起こした。
「魔法で回復…したんですか?」
「そうよ。これでなんとかやってる感じ」
「な…成る程。では、次はお二人だけで魔法を使っての試験になります。準備は良いですか?」
「ちょっと待って頂戴」
ゆっくりと立ち上がり、指をクルクルとさせながら複数の呪文を連続で唱えた。
「スクカジャ。ヘイスト。それから…ピオリム」
素早さを上げる系の呪文を総動員である。
これで一気に彼女のスピードが爆上がりした。
「こあも唱えときなさい」
「わ…分かりました!」
言われるがまま、こあもパチュリーと同じように素早さを上げる系の魔法を全て唱えるが、その効果は雲泥の差となっている。
「終わりました」
「はい。それでは、二回目行きますね。よーい…スタート!」
「「はっ!」」
今度はさっきまでとは違い、目にも止まらない速さで何度も左右に飛び跳ねる。
余りのスピードに残像が出来てしまうほどに。
「は…速いっ!?」
「あれが魔法の力って事っ!?」
「凄すぎ…!」
他の受験者たちは目を丸くして二人の反復横跳びを見ている。
一回目とは全く違う動きをすれば、驚くのも当然だが。
「しゅ…終了です!」
あっという間に30秒が過ぎ、二人はゆっくりと速度を下げながら静止した。
魔法を使っていたとはいえ、激しく動いたことには違いが無いので、二人は物凄く疲労していた。
「「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」」
「お…お疲れ様です。これは想像以上でしたね……」
魔法と聞かされて、最初は派手な物を想像していたが、実際にはかなり実践的で質実なものを使ってみせた。
この時点でかなりの高評価を受けているだろう。
「こ…こあ…こっちに…来なさい…」
「は…はいぃぃ~…」
よろめきながら、こあはパチュリーに近づき、傍に座り込む。
それを確認した彼女は、全く迷う事無く最上級回復魔法の一つを唱えた。
「ケ…ケアルガ……」
さっきとはまた違う光が二人の全身を包み込み、一気に体力を全回復に近い状態にしていく。
「ふぅ…これでなんとか。けど、念の為に…ディアラマ」
またもや緑色の光がパチュリーの体を覆う。
それでようやく全回復したようで、スッと立ち上がった。
「はぁ…なんか別の意味で疲れるわね。この分だと、向こうの方が早く終わるかも」
まさか、ここまで面倒だったとは思いもよらなかったので、思わず大きな溜息を吐いてしまうパチュリーなのだった。
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それからも次々と種目別の試験は行われ続けた。
「次は1000メートル走です」
「ピオリム。スクカジャ。ヘイスト。トドメにポンチ」
今度もまた速度上昇系呪文を駆使して突破。
当然のように疲労困憊になり、回復呪文のお世話になったが。
「お次は重量上げをします」
当然だが、貧弱女性の代表とも言うべきパチュリーが重い鉄の塊なんて持ち上げられる筈も無い。
そこでパチュリーは意外な魔法を意外な使い方をして、見事にこれを乗り越えた。
「レビテト」
「バ…バーベルが宙に浮いてるっ!?」
「嘘ぉッ!?」
なんと、自身を空中浮遊させる『レビテト』の魔法をバーベルの方にかけ、軽く力を込めてから持ち上げる。
本来ならばほんの少しだけ浮遊をする魔法なのだが、パチュリー程の魔法使いともなれば、殆ど無重力状態にすることが可能だ。
なので、非力な彼女の腕力でも簡単に持ち上げる事が出来るのだ。
「こ…今度は垂直跳びになります」
「私、普通に空を飛べるんだけど」
「実は私も……」
「えぇ~…」
普段から当たり前のように空を飛んでいるパチュリーとこあの二人にとって、垂直跳びなんてやるだけ無駄。
それでも一応は飛ばない状態でもチャレンジはしてみた。
こあは普通に記録を出したが、パチュリーはピョンピョンと小さくジャンプをするだけで全く届かない。
代わりと言っては何だが、その必死にジャンプする光景が普通に可愛くて他の受験者たちをホッコリとさせていた。
勿論、その後に空を飛んでから『記録∞』という前代未聞な結果を揃って残したのだが。
「最後は、反射神経を図る為に『もぐら叩き』をして貰います」
「了解よ」
今度はどんな魔法を使うのか。
誰もがそう期待をしていると、なんとパチュリーは素の状態で見事にパーフェクトを取ってしまった。
「えぇっ!? どうしてっ!?」
「こんなの簡単よ。人間相手ならいざ知らず、意志のない機械相手なら、そこには必ずパターンが存在している。ちょっと計算をして動きを先読みすれば、こんなの子供でも出来るわ」
最後の最後で、頭脳労働派パチュリーの本領が真の意味で発揮された。
因みに、こあは半分ぐらいできた。
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「これで全ての試験は終了です。お疲れ様でした」
やっとか。
首の骨をポキポキと鳴らしながら、万感の思いを込めた溜息を吐く。
「一時間後ぐらいに結果が発表されますので、それまでは休憩をしながら待っていてください。では、解散」
試験が終わり、各々に雑談をしながら体育館を後にする。
パチュリーとこあも、彼女達に続く形で廊下に出る事に。
「やるべき事は全部やった。後は大人しく結果を待ってましょ」
「はい。ジェノスさん達はもう終わりましたかね?」
「多分ね。無駄に張り切ったサイタマが新記録を出しまくってたりして」
「普通に有り得そうですね……」
片手で巨大なバーベルを持ち上げたり、垂直跳びで天井に頭を突き刺したサイタマを思い描いて、思わず笑みを浮かべる。
すると、その噂の二人が彼女達を廊下で待っていてくれたようで、こちらに向かって手を振っていた。
「おーい! パチェー! こあー!」
「どうやら、女子の方はこっちよりも長引いていたようですね。パチュリーさんが魔法を駆使して新記録を出しまくっていたに違いありません」
考える事は皆同じ。
この四人は本当に似た者同士なのかもしれない。
次回、結果発表。
といっても、もう決まってるも同然なんですけどね。