S級ヒーロー 七曜のパチュリー   作:とんこつラーメン

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合否自体は…もう分かり切ってますよね。

問題は、誰がどの級になっているかどうかですね。

私の中じゃ既に決まっているんですけど。








結果発表

 女子達の試験が終了し体育館から出ると、そこにはもう着替え終えたサイタマとジェノスがこっちに向かって手を振っていた。

 どうやら、男子の方が早くに終わっていたようだ。

 

「そっちは今終わったのか?」

「えぇ。私とこあが魔法を使えたから、その分だけ長引いてしまったのよ」

「どういう事ですか?」

「つまり、最初は魔法を使わない状態で測定をして、その後に魔法を使って測定をする…というのを全種目で行っていた結果、そちらよりも遅くなってしまったんです」

「「成る程…」」

 

 聞いているだけでも面倒くさそうなことを全部の種目でやっていれば、そりゃ遅くなっても仕方がない。

 もしも男子側にも超能力者の類の人間がいたら、その時は彼女達と同じぐらいの終了時間になっていたかもしれない。

 

「そっちはもう終わってるんでしょ? 結果は出た?」

「いえ、まだです。恐らく、女子の方が終わるのを待ってから判定し始めるのではないかと」

「そっか。それじゃ、着替える時間ぐらいはありそうね。行ってくるわ」

「おう。俺達は、さっきいた休憩所で待ってるわ」

「りょーかいよ。こあ、行くわよ」

「はーい」

 

 二人並んで女子更衣室まで向かう彼女達の背中を見て、ジェノスは隣にいるサイタマに気になっている事を尋ねてみた。

 

「サイタマ先生。パチュリーさんとこあは大丈夫でしょうか? 無論、心配なんて無用だとは思っていますが……」

「…合否の判定基準がどうなってるかは知らねぇけどさ、パチェとこあなら楽勝だろ。特にパチェは」

「その根拠を聞かせて貰えますか?」

「根拠って言われてもな…」

 

 長話と同じぐらいに、小難しい話が苦手なサイタマには難しい質問だ。

 だが、今回だけは不思議と断言できる理由があった。

 

「…パチェは本当に凄い奴だからだよ。過去に何回か、俺はパチェと『本気の模擬戦』ってのをやった事がある」

「本気の模擬戦…!」

「お互いに遠慮は無し。持てる全てを使って戦うんだ」

「け…結果は…どうなったんですか…?」

「引き分け。俺の攻撃はパチェには一切通用しなかったし、パチェの魔法もまた俺には通用しなかった。だから引き分け。手抜き無しの本気中の本気だったんだけどな。幾らやっても決着が付かないから、パチェはもうやりたがらないけど」

 

 あの超絶的な能力を持つサイタマが本気を出しても攻めきれなかった。

 パチュリーという魔法使いが、それだけ別次元の存在だという事が良く分かる。

 

「ただ…一言だけ言えることがあるとすれば…」

「すれば?」

「…本気になったパチェを止められるのは、恐らく俺だけだって事だ」

 

 普段は曖昧な事しか言わないサイタマが、ここまでハッキリと言う。

 この言葉に嘘は無い。不思議とジェノスはそう確信した。

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「お待たせー」

 

 着替え終わったパチュリー達は待ち合わせの場所へと向かう。

 そこにはサイタマ達の他にも、複数人の受験者たちが同じように休憩をしつつ結果発表を待っているようだ。

 

「お。来たか。ほれ、パチェ」

「サンキュ」

「こあも飲むと良い。喉が渇いているだろう?」

「はい。ありがとうございます、ジェノスさん」

 

 サイタマから投げ渡された缶ジュースをキャッチし、ジェノスからはちゃんと手渡し。

 その時、ちょっとだけこあの顔が赤くなったのだが、肝心のジェノスは気が付いていなかった。

 

「確か、合格するかしないかは点数で決められるのよね?」

「はい。70点以上が合格となりプロヒーローとして認められます。しかも、点数によって最初の『級』も決められるようです」

「そうなのか?」

「70から80点が『C級』で、80から90点が『B級』。そして、90から99点が『A級』となるようです」

「じゃあ、満点の場合はどうなるんですか?」

「それに関しては記載されていなかった…が、恐らくは100点で『S級』となるんだと思う」

「S級……」

 

 S級ヒーロー。

 それは、全てのヒーローたちの頂点に君臨する最強の戦士たちの総称。

 C級からA級までは人気や実力、その他諸々の総合的な評価で決められるが、S級に関しては例外で、単純な戦闘能力だけで決定されている。

 その実力はいずれも規格外であり、ヒーローを目指そうとする者達の殆どがS級を目指そうとは思わない。

 S級ヒーローとは尊敬し敬う存在ではあっても、越えるべき目標にするには余りにも強大過ぎるのだ。

 

「どれぐらいで結果って出るのかしら?」

「パチュリーさん達が着替えている間に係の人間が来て、約一時間ほどで結果が出ると教えてくれました」

「一時間…何とも微妙な時間ね」

「そうだな。家に帰るには短すぎるし、かといって…」

「何もせずに過ごすには長すぎますよね~」

 

 なんて中途半端な時間。

 こんな時、暇の潰し方が上手な人間は得をする。

 

「受験者の中には、この時間を利用して食事に行った者もいるようです」

「それいいわね。試験会場の近くにファミレスとかあったわよね? 暇潰しと腹ごしらえを兼ねて行きましょうよ」

「だな。丁度、運動して腹も減ってたし」

「先生とパチュリーさんが行くというのなら俺もご一緒します」

「勿論、私も行きますよ~。けど、ジェノスさんってお食事できるんですか?」

「問題は無い。クセーノ博士が『人間だった頃を忘れないように』という配慮をしてくれて、経口摂取でのエネルギー補給が出来るようになっているし、ちゃんと味覚も残されている」

「ほわぁ~…本当に凄い人なんですねぇ~…」

 

 そうして、四人は一緒に暇潰しをするために食事をしに行くことに。

 本人達からすれば何気ない事ではあるのだが、周りからすればそうでもないようだ。

 

「ちくしょう…! あんな美少女を二人も侍らせやがって…!」

「リア充野郎が…!」

 

 ジェノスというイケメンと、パチュリーとこあという美少女二人の組み合わせは相当に目立つようで、完全に男性陣の嫉妬の的となっている。

 因みに、サイタマは眼中にすら入っていなかった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「食った食ったー」

「ファミレスで食事なんて久し振りだったわね」

「最近のレストランは、あそこまでリーズナブルになっているのか…知らなかった」

「誰かが作ってくれた料理を食べるのも、偶にはいいですね~」

 

 四人が会場に戻ってきたのは、それから約50分後。

 まだ結果発表には僅かに早いが、既に結果を知らされている者達も少なからずいるようだ。

 

「てっきり、学校のテストみたいに廊下に張り出されるか、もしくは全員一斉に発表とかされるものだと思ってたけど…」

「どうやら、一人一人に書類って形で結果を知らせるみたいだな」

「もうちょっとデジタルな方法に出来なかったのか?」

「結果を他人に見られないようにする為…とかなんですかね?」

 

 出る前にいた休憩所まで戻ってからベンチに座り、残り時間を潰そう…としたところに、係員と思われる黒服の男が四つの封筒を持ってやって来た。

 

「あ…ここにいたんですね。えっと…サイタマさんにジェノスさん。それから、パチュリーさんとこあさん…ですよね?」

「そうだけど…もしかして結果が出たの?」

「はい。こちらになります。どうぞ、お受け取りください」

 

 四人それぞれに封筒を手渡ししていく。

 受け取りながら、ふとジェノスは少し離れた場所で同じように合否の通知が入っていると思われる封筒を受け取っている他の受験者の姿を見た。

 

(向こうの奴に手渡す時は片手で適当にしているが、俺達の場合は何故か両手で慎重に渡しているように見える。明らかに態度が違い過ぎるな。まさか…?)

 

 まるでVIPに対応しているかのような態度。

 その違いにはパチュリーも気が付いているようで、封筒をまだ開けてもいないのに結果が分かっているかのように笑みを浮かべていた。

 

「それじゃ、一緒に開けてみようぜ。せーの!」

 

 ビリッ。

 封筒の封を開けてから、中に入っている書類を確認してみる。

 

「あら」

「わぁ~…」

「ふむ…」

「………」

 

 四人が三者三様の反応。

 それだけでは結果は分からない。

 

「まずは、こあから発表しなさいな」

「あ…はい! えっと…81点で合格。それから『B級ヒーロー』に認定するって書いてあります」

「やったじゃない! はい、次はジェノス君ね」

「分かりました」

 

 本人は何気ない事のように話そうとするが、その内容は他の受験者たちを騒然とさせる事だった。

 

「俺は100点満点で、『S級ヒーロー』に認定すると書いてあります」

「「「「「えっ!?」」」」」

 

 満点合格な上に一気にS級。

 前代未聞にも限度がある結果に、他の受験者たちは真っ白になる。

 

「まさかの満点。ジェノス君なら当たり前か。にしてもS級ね~。凄いじゃない」

「ありがとうございます。俺は特に階級とかに拘りは無いのですが…」

「今度は私ね。えっと……」

 

 パパっと書類を流し読みしてから、ふぅ…と息を吐く。

 

「95点で『A級ヒーロー』に認定するですって。私も合格よ」

「やりましたね、パチュリー様!」

「おめでとうございます! しかし…パチュリーさんなら余裕でS級にもなれそうでしたが…」

「多分、素の身体能力が低い事がマイナスになってるんじゃないかしら? それでも十分過ぎる結果だけどね」

「それならば納得するしかないですね…。けど、パチュリーさんならば、すぐにでもS級に昇格できると思います」

「ありがと。私も、そこまで階級に拘りは無いんだけど…目指せるなら目指してみたいわよね」

 

 拘りは無い、なんて言いつつも嬉しさを隠しきれないのか、可愛らしい笑みを浮かべるパチュリー。

 そのニッコリ笑顔は、周囲の男性受験者を一発で魅了した。

 

「俺…あの子のファンになる…」

「俺も…めっちゃ可愛い…」

「あの二人のファンクラブをつくろう。絶対に作ろう」

 

 早くも熱狂的なファンを獲得したパチュリー&こあ。

 いつの世も、美少女は最強なのかもしれない。

 

「んで、サイタマは? 私達が合格したんだし、アンタも合格はしてるんでしょうけど……」

「うん…してるよ? 71点のC級だけどね……」

「「「え?」」」

 

 てっきり、サイタマもジェノスと同じようにS級合格だと思っていたのに、まさかのギリギリ合格のC級。

 これは流石に予想出来なかったのか、パチュリーも変な声を出してしまった。

 

「…責任者に抗議してきます」

「お願いだから止めて! 俺が恥ずかしいから!」

 

 これ以上の恥の上塗りは勘弁なのか、一瞬で怒りMAXになったジェノスを必死に止める。

 C級とはいえ、合格しただけでも大したことなのだという事を知った方がいい。

 

「別にいいじゃない。合格って事には違いが無いんだし。それに、最初は底辺からスタートするなんて実にサイタマらしいし」

「そうか?」

「そうよ。どうせ、すーぐにバカスコ怪人倒しまくってS級まで上り詰めるに決まってるんだから」

「サイタマ先生なら十分に有り得ますね! それに、そっちの方がインパクトがある!」

「ですね! サイタマさん! 合格おめでとうございます!」

「お…おう…ありがとな」

 

 こあの真っ直ぐな祝福にはサイタマも何にも言えず、素直に受け止めるしかなかった。

 

「結果として、私たち全員で全ての階級を制覇しちゃったわね。なにこれ?」

「その言い方だと、別の意味に聞こえるぞ?」

 

 これで終わりか。

 そう思っていると、いきなり館内アナウンスが流れてきた。

 

『今回の試験の合格者4名の方々は、16時から合格者セミナーが行われますので第3ホールまでお越しください。繰り返します。今回の試験の…』

 

 この『合格者』とは、パチュリー達の事を指しているのだろう。

 どうやら、まだまだ帰れそうにはない。

 

「セミナー…ね。まるで市役所みたいだわ」

「どうでもいいじゃねぇか。それより、とっとと行って済ませちまおうぜ。合格さえしちまえば、こっちのもんなんだからさ」

「それもそうですね。行きましょう」

「第3ホールってどこでしたっけ…?」

 

 ヒーロー認定試験。合格者。

 

 ジェノス(S級)。

 パチュリー(A級)。

 こあ(B級)。

 サイタマ(C級)。

 

 以上四名を新たにプロヒーローとして認める事とする。

 

 ヒーロー協会。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回は、皆大好きスネックさんの登場&パチュリーがA級な理由が明らかに。

やっとタグが仕事をしました。



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