S級ヒーロー 七曜のパチュリー   作:とんこつラーメン

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そのまんまです。彼が登場します。

それとは別に意外な人物が一足早くに出てくるかも…?








その男の名はアマイマスク

 師弟の初めての手合せが終了し、一行は町にあるうどん屋へと向かう。

 移動している間に外はすっかり暗くなり、完全にこれが夕飯となってしまった。

 

「さーてと、何にしようかな~っと」

「サイタマ」

「どうした?」

 

 窓際の席に四人一緒に座ってからメニュー表を開くと、いきなりパチュリーがサイタマの事を睨み付けた。

 

「分かってるとは思うけど、賞金欲しさに『大食いチャレンジ』とかしないでよ?」

「し…しねーって…」

 

 冷や汗を掻きながら目を逸らすサイタマ。

 何をそんなに怒っているんだと思いつつ、ふとジェノスは壁に貼ってある一枚の紙を見つけた。

 

【大食いチャレンジ実施中! バケツ一杯分のうどんを30分以内に完食した方には賞金10万円! ただし、失敗したら3000円のお支払い!】

 

(…アレの事を言っているのか)

 

 確かに、今の財政状況を考えれば賞金10万円は非常に欲しい。

 だが、もし失敗した時のリスクも中々に大きい。

 うどん一杯に3000円はちと高すぎる。

 

「幾ら、身体能力が最強無敵だと言っても、胃袋の大きさは最強じゃないんだから。無理をしても後悔するのは自分よ」

「しないつってんだろ!?」

「なんて言って、前は結局チャレンジして失敗してるじゃない」

「今回は絶対にしねーよ!」

「その言葉…信じるからね」

「おう!」

 

 どうやら、前にも同じようなやり取りの末に失敗をしてしまっているようだ。

 だからこそパチュリーも厳しいのかもしれない。

 

「そもそもね、大食いチャレンジってのを挑戦するのは……」

 

 唐突にパチュリーが、カウンター席で食事をしているデb…服がはち切れんばかりにパツパツとなっている巨漢の男を指差した。

 

「あの人みたいな人間にこそ相応しいのよ」

「なんじゃありゃ…色んな意味でスゲーな…」

「傍には大盛り用の器が沢山積み重なってますねぇ~…」

 

 想像もつかない程のとてつもない大食漢。

 パチュリー達だけでなく、店中の人間達が彼の食事に注目している。

 だが、ジェノスだけは別の意味で彼を見て驚いていた。

 

「あの男は…!」

 

 メニューを決める事も忘れてしまう程のインパクト。

 程無くして注文した品を全て完食したのか、男がゆっくりと立ち上がってからレジへと向かう。

 

「お会計…12000円になります」

「はい」

 

 明らかにうどん屋で払う金額ではないのに、男は躊躇いも無く財布から金を取り出して支払った。

 見た目に反して、相当な金持ちのようだ。

 

「美味しかったよ。御馳走様」

「ありがとうございましたー」

 

 ズシンズシンと地響きを鳴らしながら、男は店から出て行った。

 見ているだけでお腹一杯になりそうな食事に、全員が箸を止めていた。

 

「どうして、あの男がこんな場所に…」

「ジェノスさん? 今の人の事を知ってるんですか?」

「知っている…というか、かなりの有名人だ」

「そうなのか?」

「はい。これを見てください」

 

 自分のスマホで素早く検索をし、画面が全員に見えるようにテーブルの中央に置いた。

 そこには、先程の巨漢の男の顔写真があった。

 

「S級10位『豚神』。それが、あの男の名前です」

「あいつ…ヒーローだったのかよ…」

「しかもS級…確かに、体格だけで言えば立派に『S級』だったけど…」

「ジェノスさんと同じS級…凄い人だったんですね…」

 

 今の社会において間違いなく大物とも言えるような人物が、どこにでもありそうなうどん屋にて食事をしていた。

 普通ならば決して考えられないようなことだ。

 

「なんか呆気にとられちゃったけど…私達も早く注文しましょ」

「そうだな。見てたら逆にもっと腹減っちまった」

 

 あんな光景を目の当たりにしたら、普通は食欲が失せてしまいそうなものだが、この二人はやっぱり普通じゃない。

 

「マジで何にしようかな…パチェは何を頼む?」

「私は王道の『きつねうどん』にするわ。お揚げは正義よ」

「それじゃあ、私はこの『月見うどん』にします。ジェノスさんはどうします?」

「俺は…これにしよう。『かき揚げうどん』。先生は何を注文しますか?」

「見事に全員バラバラだな…じゃ、俺は『天ぷらうどん』にするわ。店員さーん!」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 食事を済ませて帰路に就こうと店の外に出た豚神は、そこで意外な人物と遭遇することに。

 

「君は……」

「豚神。どうして、お前がここにいる?」

 

 イケメン仮面アマイマスク。

 本来ならば彼もまた、このような場所には訪れない人物だ。

 そんな彼らがこうして出会ってしまった。

 ヒーロー業界に詳しい人間が見たら卒倒しそうな光景だ。

 

「僕は単なる夕食だよ。君こそ、どうしてこんな場所に?」

「つい最近、ヒーローになった新人の中に気になる者達がいてね。彼らがこの店にいると聞いてきたんだ」

「あぁ…あの四人組の事か」

「知っているのか?」

「うん。僕と入れ替わるように店に入ってきた。常日頃からヒーロー協会のHPには目を通すように心掛けているし、あの四人はどう見ても一般人の雰囲気じゃなかった」

「フッ……腐ってもS級ということか」

 

 アマイマスクは自分以外のヒーローを基本的に見下している。

 己こそが最も強く、美しいヒーローであると自負し、誰よりもそれを信じているからだ。

 実際、目の前にいるS級ヒーローである豚神の事も見下している。

 

(そういえば、こいつが怪人と戦っている姿を一度も見た事が無いな。S級に在籍している時点でそれ相応の実力はあるのだろうが……)

 

 個性豊かなS級の中でも、何気に豚神の素性は謎に包まれている部分が多い。

 何があっても決して油断をしないように、アマイマスクは用心を怠らない。

 

「あの四人なら、まだ店の中にいると思うよ」

「そうか。情報提供、一応の感謝はしておこう。では」

 

 店に向かって行くアマイマスクを見送りながら、豚神はとあることが気になっていた。

 

(あの禿げた頭の男と、紫の髪の女の子からは恐ろしく強大な『何か』を感じた。あれは一体……)

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 全員分の注文が届き、四人は夕飯のうどんに舌鼓を打っていた。

 

「ん~♡ お揚げ美味し~♡」

「うーん…家でも天ぷらが食いたくなるな…」

「やっぱり、卵は最後に残すに限りますよね~」

「かき揚げとうどんの組み合わせ…中々に侮れんな」

 

 お揚げを食べながら満面の笑みを浮かべるパチュリーに、真面目に感嘆するジェノス。

 サイタマとこあは何とも庶民的な感想を言っていた。

 

 そんな時、店に一人の客が入ってきた。

 

「いらっしゃいませー……え?」

「あぁ…そのままでいいよ。今日の僕は客じゃないんだ」

 

 店中が騒然となる中、四人は全く気にせずに食事を続ける。

 その様子からすぐに目的の人物の居場所が分かった彼は、真っ直ぐにそこまで向かって行った。

 

「食事中に失礼するよ」

「「「「ん?」」」」

 

 話しかけられて、ようやく四人は誰かが来たことに気が付いた。

 と言っても、他の客とは違って過剰な反応はしていないが。

 

「僕はA級1位のヒーロー『イケメン仮面アマイマスク』という者だ。そこの金髪の彼がジェノス君で、紫髪の女の子がパチュリー君だね?」

「そうだが…俺とパチュリーさんに何の用だ? まさか、サイタマ先生から聞いた『新人潰し』とやらではないだろうな…?」

「おっと。そう警戒しないでくれ。そんな無粋な事をするつもりは毛頭ないよ。僕はただ、君達と話がしたいだけさ」

「話…ねぇ…」

「そう。話を……ん?」

 

 そこでアマイマスクの視界に、こあの顔が映り込む。

 正確には、こあの頭や背中から生えた蝙蝠の羽だが。

 

(あの羽はまさか…怪人かっ!? 情報によると彼女もまた新人のB級ヒーローらしいが…もしもそうならば…!)

 

 僅かに殺気を出しそうになり、拳を握りしめる。

 そんな事には気が付かず、こあは小首を傾げているが。

 

(…いや、冷静になれアマイマスク。こんなあどけない顔の怪人がいる訳がない。というか、よくよく考えたら彼女以上に怪人染みた変な体をした連中がヒーロー達にも山ほどいるじゃないか。特にS級の連中は…一部の連中は変態と言っても過言じゃない。特に10位とか、11位とか、15位とか、16位とか)

 

 考えただけで頭痛がしてくる。

 それ程までにS級は唯我独尊な連中が多いのだ。

 彼も人の事は言えないのだが。

 

(あいつ等に比べれば、彼女なんて可愛らしい部類じゃないか。というか、割と本気で可愛いな。十分に美少女と言っても差し支えない。こっちのパチュリーとかいう少女もまた可愛らしいな。こんな美しい少女達がまだ世間に埋もれていたとは…まるで研磨されていないダイヤの原石だ。この僕の手でプロデュースをすれば、あるいは……)

 

 つい数秒前までは疑っていたのに、いつの間にかパチュリー&こあの美少女ヒーローコンビのプロデュース計画を頭の中で考え始めた。

 この男もS級ヒーローたちの事は言えない。

 

「おい貴様。どうして、さっきからパチュリーさんとこあの事を凝視している。彼女達に手を出す事は許さんぞ」

「すまない。こんな場所に眩く光り輝く原石があるとは想像していなくてね。つい見とれてしまった」

 

 何言ってんだコイツ。

 四人の心が一つになった瞬間だった。

 

「それよりも、君達二人と話がしたい。店の外でいいかな?」

「…パチュリーさん。どうしますか?」

「聞くだけ聞いてあげましょ。そうしないと、どうにもならなさそうだし。けど、手早く済ませてよね。うどんが冷めちゃうから」

「善処しよう」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 星々が瞬く夜空の下で、ジェノスとパチュリーが並び、それに相対するようにアマイマスクが立っている。

 

「まずは聞かせてくれ。君達はどうしてヒーローになりたいと思ったんだ?」

「サイタマ先生の弟子になる為だ」

「そのサイタマに『ついでにお前も試験を受ければ』って言われたから」

「…ジェノス君の方はともかく、パチュリー君の方はどこかで聞いたことがあるような理由だな…」

 

 一応、アマイマスクはサイタマの情報を知っている。

 だが、まだ彼にとっては『C級の新人』ぐらいの認識しかない。

 

「まぁ…理由は正直どうでもいい。最初なんて誰もが似たようなものだ」

「では何故聞いた?」

「聞いてみたかっただけさ。他意はないよ」

 

 笑みを浮かべながら二人を落ち着かせると、ポケットからスマホを取り出してから何かの操作をし始めた。

 

「それよりも、これを見て欲しい」

「「ん?」」

 

 アマイマスクがスマホの画面を見せてくると、そこには大きく抉れた山が映っていた。

 どこかで見た事があるような気がする風景だ。

 

「協会の連中から話を聞いた。少し前まで、この場所には怪しい連中がアジトを構えていたが、ある日突然に何者かによって周囲の山々ごと破壊されたと。そして、これをやったのが君達二人なのだという事もね」

「あぁ~…思い出した。ここってあれじゃない。えっと…マックスがいた、あの……」

「『進化の家』があった場所ですね」

「そうそう! それ! 確かに、あれは私の魔法とジェノス君の焼却砲でド派手に吹っ飛ばしたわよね。ちょっとやり過ぎたかもと思ったけど」

 

 割と色んな事があったのに、もう忘れかけているパチュリー。

 しかも、完全にジーナスの名前を間違えて覚えている。

 

「どうして、建物ごと消し飛ばすような真似をしたんだ?」

「「その方が手っ取り早いと思ったから」」

 

 無駄な戦いは出来るだけ避けたいと思うのは当然の事。

 彼女達の場合の『無駄な戦い』とは、話し合いで解決云々なんて平和主義な事ではなく、純粋な戦闘回数の事を指している。

 

「結局、跡地から地下へと続く扉が見つかって意味無かったけどね」

「そうでしたね。そこでもまたサイタマ先生が活躍して…」

 

 なんだか話が逸れそうな気がしたので、急いで方向修正。

 

「つまり、君達は『悪』相手には容赦をしないという事でいいのかな?」

「『悪』じゃないわ。『敵』に対して容赦しないのよ」

「その通りだ。それ以前に、誰が相手であっても、敵対している時点で手加減をするなんて選択肢は俺には無い。苦手だしな」

「……そうか」

 

 一番聞きたい事を聞けて、アマイマスクは心の中でほくそ笑んだ。

 この二人ならば、他のヒーロー達のような甘い考えは持たないだろうと。

 

「話はそれだけか? ならばもう…」

「いや、もう一つだけある。パチュリーくん。君は魔法使いだと聞いたのだが…それは本当か?」

「本当よ。まぁ…疑う気持ちも理解出来るけど」

「僕は基本的に、自分の目で見た物しか信じないんだ。だから、この場で見せて欲しい。君のその『魔法』とやらを」

「見せてって言われてもね……」

 

 実体験した事しか信じないような男を納得させるには、どんな魔法を使ったらいいか。

 攻撃系の魔法は論外だし、回復系も今の状態では効果が薄い。

 戦闘時でもないのに補助系を掛ける訳にもいかないし…。

 

(あ。いい事を思い付いた)

 

 ここでパチュリーは思い出した。

 補助魔法と一言に言っても、その種類は多岐に渡っている事を。

 中には、非戦闘時でも問題のない魔法もあった事を。

 

「いいわ。私の魔法を見せてあげる」

「本当か?」

「えぇ。そこでジッとしていて頂戴」

「分かった」

 

 そう言うと、立っているアマイマスクに向かって指を指して一言。

 

「レビテト。足元を見てみなさいな」

「足元…? なっ!?」

 

 言われるがままに足元を見てみると、自分の身体が地面から浮いていた。

 ほんの十数センチではあるが、それでも空中浮遊をしている事は確かだった。

 

「これでいいかしら?」

「あ…あぁ…十分だよ…」

 

 冷や汗を掻きながら、アマイマスクは何度も頷く。

 同じような事は念動力でも出来るが、自分の身体が特殊な力などで覆われた感じは全くしなかった。

 魔法を掛けられたアマイマスク自身も見るまでは浮いている事に全く気が付かない程の熟練度。

 

(成る程…! これは確かに『魔法』だ…!)

 

 認めよう。否、認めざるを得ない。

 自分自身の体で体験をしてしまったのだから。

 

(ジェノス君とパチュリー君…この二人ならば、他のS級よりはいい働きをするかもしれないな…)

 

 協会の幹部たちがパチュリーをS級に推す気持ちが理解出来た。

 こんなのを見てしまったら、魔法の深淵を覗きたくもなる。

 どれ程までの事が可能なのか。

 最大攻撃はどれ程の威力なのか。

 考え出したら、それこそキリが無い。

 

「そろそろ降ろして貰ってもいいかい?」

「分かったわ。はい」

 

 パチュリーが指をパチンと弾くと、アマイマスクの両足は地面に降り立った。

 まさか、こんな形で空中浮遊なんて体験をするなんて想像もしていなかった。

 

「もうそろそろ戻ってもいい? 早く食事を再開したいのだけど」

「そ…そうだな。今日の非礼はいずれ必ず詫びると約束しよう。ではまた…」

 

 背筋を真っ直ぐにしてから、いつもと変わらぬ足取りで帰っていくアマイマスクであったが、その顔は笑っていた。

 

(ようやくヒーロー協会にもまともな人材がやって来たか…! こうでなくてはな…! パチュリー君に関しては僕の方から進言しておこう。そうすれば、彼女のS級昇格は確実となる。こんな時の為に、俺はA級1位の座に就き続けてるんだ…!)

 

 その後、店に戻ってからジェノスとパチュリーは女性客から質問責めにあったり、サイタマとこあが食べ終わっていたりしたのだが…それはまた別のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まさかの一番最初に出てきたS級が豚神。

アマイマスクは今はまだ原作のような性格ですが、いずれは…?




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