S級ヒーロー 七曜のパチュリー   作:とんこつラーメン

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前回も言った通り、今回から隕石の話に入ります。

ってことは必然的に、あのサイタマを除けば間違いなく対人戦最強の超絶チートおじいちゃんが登場します。

私、個人的にはあの人ってマジで好きなんですよね。

あの歳であそこまでカッコいいのは普通に反則だと思います。

イケメンおじいちゃん最高です。






リアルメテオ襲来

 とある昼下がり。

 無人街にある廃アパートの一室ではのんびりとした時間が流れていた。

 

「ふむ……」

「ジェノスさん? さっきからパソコンでヒーロー協会のサイトを見て何をしているんですか?」

「ちょっとな。階級別の順位を見ていた」

「順位って…あれですか? 何級何位っていう…」

「そうだ。どうやら、それに少しだけ変動があったみたいだ」

「へぇ~」

 

 ジェノスの傍にお茶を置きながら何気なくパソコンのディスプレイを横から覗くこあ。

 彼女も一応はB級ヒーローではあるのだが、サイタマやパチュリー、ジェノスと同じように自分の順位などにはそこまで興味は無い。

 

「サイタマ先生。先生とパチュリーさんの順位が上がっています」

「え? マジで?」

「因みに何位ぐらい?」

 

 ジェノスが密かに取っている新聞『ヒーロー日報』を見ながらサイタマが尋ねる。

 パチュリーは、この間のお礼としてバネヒゲがくれた特製ショートケーキに舌鼓を打っている。

 どうやら相当に美味しいようで、口に入れた途端にいつもの仏頂面が満面の笑みに変わったほど。

 

「サイタマ先生はC級388位から342位に。パチュリーさんはA級39位から20位にまで上がっています」

「え? あれから別に大したことなんてやってないけど、一気にそこまで上がっちゃうもんなの?」

「一体どんな基準で順位の上げ下げとかしてんだろうな」

「基本的には貢献度や人気度などでしょうが…協会幹部の思惑も多少は含まれているでしょうね」

「どこの組織も、似たようなものなんですね…」

 

 ヒーロー協会とは言え、所詮は人間の寄せ集め。

 様々な思惑が交錯するのは必然とも言えた。

 

「そういや、ジェノスとこあはどうなんだ?」

「俺達はまだ何もしていませんからね。俺はまだS級17位のままだし、こあもB級101位のままです」

「私と同じB級って101人もいるんですね…」

 

 いつか機会を作って、B級ヒーローの人達に挨拶でもしてきた方が良いのかな?

 ジェノスに似て生真面目なこあは、ふとそんな事を考えるのだった。

 

「けど、一般人達の投票によって作られている『週間人気ヒーローランキング』では男の部で第6位になっています」

「なんでっ!?」

「つーか、そんなのもあるのね…」

 

 別にヒーローはアイドルとかじゃないのに、人気投票なんて代物が製作されているとは。

 サイトにあるということは、ヒーロー協会もこれを黙認しているという事になる。

 

「『19歳という若さで衝撃のS級デビューをした天才。今後に期待できる』『顔がカッコいい』『メディアへの露出を一切拒否するクールさが溜まらない』『サイボーグ王子』『鉄の無表情の中にそこはかとなく儚さを感じる』『イケメンヒーロー5指に入る』……と書かれてあります」

「お前…自分で言ってて恥ずかしくないのか?」

 

 淡々と自分への評価を棒読みするジェノスに、別の意味で驚くサイタマ。

 そんな彼とは対極的に、こあは頬を膨らませていた。

 

「む~…」

「どうしたのよ、こあ。もしかして嫉妬?」

「ち…違います~!」

 

 面白いオモチャを見つけたパチュリーは、早速からかい始める。

 この二人をくっつけたいとは思っていたが、まさかここまで進展していたとは。

 

「そういえば、パチュリーさんも人気ヒーローランキング女の部で3位になっていますよ」

「私もなのっ!?」

「はい。『超能力少女の次は魔法少女とは予想していなかった』『あのアンニュイな感じが可愛い』『あどけない顔と癒しの魔法が最高。リアル天使』『女性ヒーロー界に新たなアイドルが誕生した』『美少女魔法使いとかいい意味で反則。ありがとうございます』『自分にも是非とも魔法をかけて欲しい』などと書いてありますね」

「…羞恥心を通り越して普通に呆れるわ…」

 

 人気者になるような事って何かしたっけ?

 パチュリー本人には本気で分からないが、割と街中とかで色々とやっていたので人気が出そうな理由は普通にあったりする。

 

「そういや、セミナーの時に『ヒーローの中にはファンクラブがある者もいる』って言ってたけど…このまま行けば私やジェノス君のファンクラブとかも出来たりするのかしら…?」

「普通に有り得そうで怖いな、それ」

 

 サイタマから見てもパチュリーは充分に美少女の範疇にはあると思っているので、顔が知られれば人気が出るのは想像していた。

 だが、まさかここまでとは思わなかった。

 

「こあもヒーローとして活躍とかしたら人気が出るかもしれないわね」

「えぇ~? そうですかね~?」

「こあにファンが付く…か…」

「お? どうしたジェノス?」

「いえ…なんでもありません。なんだ、この感情は…」

((青春だな~…))

 

 今日も今日とて、若者たちの青春を見てニヤニヤするサイ×パチェでしたとさ。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「ん?」

 

 徐にパチュリーが窓を開けてから空を見る。

 そこにはこれといった物は何もない。

 強いて言えば、白い雲と旅客機が飛んでいたぐらいだ。

 

「パチェ…どした?」

「うん…ちょっとね…」

 

 少し様子がおかしいパチュリーだが、サイタマは知っている。

 彼女は時折、こんな風に何かを感じ取ることがある。

 そして、それがある時は大抵、何かが起きる前兆なのだ。

 

「…サイタマ先生。パチュリーさん。何故かは知りませんが、急にヒーロー協会に呼び出されたので、今からZ市支部の方に行ってきます」

「また突然ですね。なんの用事なんでしょうか?」

「リストラの勧告だったりしてな」

「それだったら、私も呼び出されそうな気がしますけど…」

「それもそっか。じゃあ、何なんだろうな?」

 

 いきなりの呼び出しなんて嫌な予感しかしないが、呼び出された以上は無視は出来ない。

 ジェノスが簡単に外出の準備をしようとすると、そこでパチュリーが待ったを掛けた。

 

「ちょっと待って」

「パチュリーさん?」

「なんだか猛烈に嫌な予感がする…私達も一緒に行くわ」

「『達』って、俺とこあもか?」

「当たり前よ。特にサイタマは絶対。無理矢理にでも行かせるんだから」

「マジかよ…」

 

 こんな事を言いだした時のパチュリーは意地でも意見を曲げない。

 下手に反論しても口喧嘩で勝った試しが無いので、ここは大人しく従うしかない。

 

「わ…私も御一緒していいんでしょうか?」

「私的には、こあも一緒じゃなきゃダメだと思ってるけどね」

「パチュリーさま…分かりました! 一緒に行きます!」

「…って事になるけど、良いわよね?」

「俺としては先生とパチュリーさんが一緒なら非常に頼もしいですが…」

「ハイ決定。もし向こうのスタッフに何か言われたら、その時は私がなんとかするから。それじゃ、急いで準備をして出かけるわよ」

 

 こうして、最初はジェノスだけの筈が最終的に全員で向かう事になったのだった。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 ヒーロー協会Z市支部。

 皮肉にも、四人がここを訪れたのは今回が初めてだった。

 前にパチュリーだけは、この支部から連絡を貰った事があるが。

 

「ここがヒーロー協会の支部か~…」

「初めて来たけど…凄く静かね」

「静かというよりは…殆ど人の気配がしません。これは一体…」

「あの…あそこに誰かいますよ?」

 

 長い階段を昇り、協会支部のロビーに入ったまでは良かったが、見事なまでに人っ子一人いない。

 せめて状況把握ぐらいはしたいと思っていると、こあが誰かを発見した。

 

「ほぅ…? もしや、君がジェノス君か?」

「お前は……」

 

 そこにいたのは髭を生やした初老の男性。

 パッと見は普通の老人のようにも見えるが、ジェノスとサイタマ、そしてパチュリーにはすぐに理解出来た。

 この人物の見た目では判断できない程の実力を。

 

「ワシは『バング』という者じゃ。よろしこ」

 

 巌のような風貌からは想像出来ないような好々爺。

 日常的な場で会っていれば、すぐに仲良くなれそうな雰囲気を持つ人物だ。

 

「ジェノス君。このお爺ちゃんって、まさか……」

「はい。S級ヒーロー3位『シルバーファング』…本物の実力者です」

(このじーさん…この前会った『タンクトップマスター』って奴とは次元が違うな…物凄く強いんじゃねぇのか?)

 

 嘗てのサイタマならば見た目で判断していたかもしれないが、パチュリーと様々な経験をしてからは、雰囲気や気配などである程度の技量を図れるようにはなった。

 と言っても、なんとなくなのだが。

 

「ところで、そこの者達は誰じゃ? 呼ばれたのは君だけの筈じゃが…」

「私はA級20位のパチュリー。で、こっちの子が私の弟子でB級のこあ。こいつがC級のサイタマよ」

「パチュリー…その名には聞き覚えがある。確か、ヒーロー協会初の魔法を使うヒーローだとか…」

「その通りよ。凄く嫌な予感がしたから、私達もジェノス君に同行することにしたの。拙かったかしら?」

「いや…問題はあるまい。どうせ見ているのはワシだけじゃしな…」

「じーさんだけ? それってどーゆーことだ? あんたも協会から呼び出されたんじゃないのかよ?」

 

 サイタマが全員がずっと疑問に感じていた事を代弁してくれた。

 すると、バングはガランとしたロビーを見ながら静かに呟いた。

 

「見ての通り、協会の連中は全員揃って避難して、この支部は文字通りの空っぽ状態じゃよ」

「空っぽって…」

「召集を受けたS級ヒーローも、ワシと君以外には…いや、もう一人だけすぐ傍まで来てはおったな」

「それは?」

「タンクトップマスターじゃよ。じゃが、あ奴はすぐに街に留まって『舎弟たちと一緒に避難誘導をする』と言っておった。逃げていった連中よりもずっと状況が見えておる」

「彼も来てるんだ……」

 

 パチュリー達が知っている数少ないS級ヒーロー。

 確かに、彼の性格ならばそのようなことを言いだしても不思議じゃない。

 

「そういえば、さっきからやたらと『避難』などと言っているが…それはどういう事なんだ? いや…それ以前に、どうして俺やアンタはここに呼ばれた?」

 

 ジェノスから尋ねられたバングは、大きな溜息を吐きながらポツポツと今回、彼らが呼び出された訳を説明してくれた。

 

「今回のようにワシらS級が呼び出される時は、その大半が厄介ごとの処理と相場が決まっておる。じゃが…流石のワシらも今回ばかりは手に負えんよ」

「S級3位のアナタにそこまで言わせる事態ってなんなの?」

「…奴らは災害レベル『竜』の…最悪の事態を押しつけてきおった」

「レベル竜の最悪の事態…? 何よ、それは……」

 

 バングは何も言わずに人差し指を上へと向けた。

 

「隕石じゃよ。それが落ちてくる」

「「「「隕石っ!?」」」」

 

 パチュリーやジェノス、こあは勿論だが、いつもはノーリアクションなサイタマでさえ今回は少なからず驚いたようだ。

 

「…今から約35分後にここZ市に落下してくると思われる巨大隕石を、近場にいるS級ヒーロー達でどうにかしてくれ…連中はそう言っていた。無論、落下すれば間違いなくZ市は完全に滅ぶ。それを聞いてタンクトップマスターは激高しておった。『隕石を止める暇があるのなら、一人でも多くの市民を避難させる方が先決だ』…とな。全く以ての正論じゃよ」

「確かにそうだけど…ならどうしてヒーロー協会は『隕石を止めろ』なんて言ったのかしら?」

「もしもヒーローが隕石の落下を食い止める事が出来たのなら、ヒーロー協会の地位が爆上がりし、同時に寄付金も増える。連中の真の狙いはそこにあるんじゃろうよ」

「呆れた…こんな時に地位とか寄付金とか関係ないでしょうよ」

「全くじゃ。だが…今回ばかりは流石に不可能じゃろうな」

 

 どれだけ強くても、バングはあくまで格闘家。

 高速で宇宙から落ちてくる隕石をどうにかする程の力は無い。

 だからだろうか。彼は最初から諦めているような感じがした。

 

「今回ばかりは、どうにもならんよ。大切な人と急いで何処かへと逃げるといい」

「大切な人…か」

「ジェノスさん?」

 

 そこでふと、ジェノスはこあの事を見た。

 大切と聞かされて、真っ先に彼女の事を思い浮かべたのは何故なのだろうか。

 彼はまだその感情の正体を知らない。

 

「…ちょっといいかしら?」

「なんじゃね?」

「その隕石の落下について、市民たちは知っているの?」

「30分前までには隕石の落下予測ポイントを絞ってから避難警報を発令すると言っておった。もうそろそろ報道し始める頃合いじゃろうよ」

「なんて呑気な……」

「間違いなく、街中で大パニックが起きるぞ。まぁ…そこら辺はタンクトップマスター達がどうにかしてくれるやもしれんが……」

 

 その時、外からヒーロー協会の緊急避難警報が聞こえてきた。

 やっと彼らも重い腰を上げたようだ。

 

「始まったか」

「おじいちゃんはどうするの?」

「ほほ…若い女の子に『おじいちゃん』と呼ばれるのも悪くはないのぉ…。ワシは代々受け継いできた道場から離れる訳にはいかんし…残るしかあるまいよ」

 

 人には逃げろと言っておきながら、自分は残るという。

 やっぱり彼もヒーローだという事か。

 なんて思っていると、いきなり何かの構えをした。

 

「流水岩砕拳…知ってる?」

「「「知らない」」」

「えっと…ごめんなさい」

「…じゃろうな」

 

 バングおじいちゃん。流石に寂しそうな顔になる。

 

「…私は逃げないわ」

「なんじゃと?」

「例えどんな事であっても、目の前の困難から逃げるのは性に合わないの。それに……」

 

 サイタマを見て、次に自分の手を、最後にジェノスとこあの顔を見る。

 

「…可能性はあるわ」

「本気か? 本気であの隕石を止める気か?」

「そうよ。私達四人が力を合わせれば、或いは……」

 

 話しながら、パチュリーは高速で頭を回転させて作戦を立てている。

 隕石の迎撃なんて初めての事態なので、必死に計算をしまくった。

 

「…俺もパチュリーさんの意見に賛成だ」

「ジェノス君…お主もか…」

「お前は俺に『大切な人と一緒に逃げろ』と言った。ある意味、それも一つの勇気ある選択の一つなのだろう。だが…俺は逃げない。いや、逃げたくない。そんな事をするぐらいなら……」

 

 隣にいる『大切な人(こあ)』の肩を抱き寄せ、ハッキリと言った。

 

「俺は『大切な人』と一緒に立ち向かう事を選ぶ」

「…私もジェノスさんと同じ気持ちです。それに、この人となら…どんな事にも立ち向かえる…そんな気がしますから」

「…若いな。サイタマとかいったか。お主もそうなのか?」

 

 さっきから余り積極的に会話に入ってこないサイタマ。

 だが、その顔は既にもういつもの間の抜けた顔ではなく、本気で何かを成そうとしている顔つきに変わっていた。

 

「パチェが『やる』って決めたんなら、俺だけがしない訳にはいかないだろ。それに……」

「わっ」

 

 急に隣にいたパチュリーの頭を撫でまわす。

 彼にしては珍しい行動だ。

 

「俺はパチェの事を信じてるからな。こいつが『出来る』って言うのなら絶対に出来る。今までだって、ずっとそうだった」

「…そうか。ならば、好きにするといい。ワシはもう何も言わん」

「私達の身を案じて忠告してくれた事には本当に感謝するわ。けど…その程度じゃ私達は止まらないの。ごめんなさいね」

 

 それだけを言い残し、四人の若者たちは去って行った。

 この街にいる全ての命の未来を守る為に。

 

「…惜しいな。本当に惜しい…。彼らのような者達こそが本当のヒーローと呼ばれるべき存在だというのに……」

 

 バングの寂しげな一言が、無人となったロビーに静かに響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まずはバングおじいちゃん。

原作でもそうでしたが、彼とは長い付き合いになります。

ということは、次の登場するのはあの…?




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