これで知り合ったS級ヒーローは4人になりましたね。
けど、S級が勢揃いするボロス編の前までに知り合う予定のS級はもっといたりします。
隕石落下が目前までに迫ってきている超緊急事態。
ここに、二人のS級に魔法使いなA級とB級、そして最強無敵なC級が揃い、力を合わせてこれを破壊しようと動き出した!
『マズハ我々カラダナ。遠慮ハセン…全テヲ撃チ尽クシテヤル!』
「こちらも最大出力で行く!! この一撃に…俺の全てを賭ける!!」
メタルナイトの全ハッチがオープンし、同時にジェノスは自身のコアを腕部強化パーツに直接接続をして出力を限界まで引き上げる!
サイボーグの体が軋みを上げて紫電を散らすが、そんな事に構っている余裕も暇も無い!
『ターゲット…オートロックオン! ミサイル全弾発射!!』
「最大焼却砲!!! これでぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
無数の巨大なミサイルが紅蓮に燃え盛る焼却砲に追従するように飛んで行き、その二つが同時に命中する!!
凄まじい爆音を轟かせるが、だからといって二人の攻撃は終わらない。
彼らの任務は撃破ではなく、本命に繋ぐための足止めなのだから。
「こあ! 私達も魔力の集中を始めるわよ! サイタマが飛び出すと同時に私達も行くから、そのつもりでね!」
「はい! パチュリーさまっ!!」
「はぁぁぁぁぁぁ……!」
パチュリーとこあの二人が両手を前に出して精神集中を開始し、それと同時にサイタマは腰を低くして右腕と両足に全パワーを集めていく。
その間もジェノスとメタルナイトの超火力攻撃は一切止む事は無い。
『コレダケノ攻撃ヲ浴ビセテモ、マダ原形ヲ留メテイルトハ…ナントイウ耐久力ダッ!』
「だが、サイタマ先生とパチュリーさんならば必ずやってくれる!! 俺はそれを信じるッ!! だから全力で戦えるッ!! うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
ジェノスの叫びに応えるように、ここから更に焼却砲の出力が爆増するっ!
機械である筈の彼の体が、まるでその意志に呼応するかのようにっ!
先制攻撃をしてくれている二人を見ながら、ふとパチュリーは考えてしまう。
サイタマならば確実に隕石を破壊できるだろう。
だが、一番の問題はそこから。
素早く魔法を唱えて隕石の破片の迎撃行動を行わなければいけない。
魔法の威力には絶対の自信があるが、それを素早く行えるかどうかはまた話が別になってくる。
作戦を立案しておいてアレだが、実はこの中でもパチュリーこそが最も不安を抱えていた。
そんな彼女の心象を察するかのように、誰かが彼女の肩を優しくポンと叩いた。
「肩に力が入り過ぎとるの。そんなんじゃ成功する作戦も成功せんぞ?」
「お…おじいちゃんっ!? どうしてここにっ!? というか、追ってきたのッ!?」
まさかのバング再登場。
あの距離を息も切らさずに追って来ている時点で、彼も相当な超人だ。
「今回、確かにワシには何も出来ん。だがせめて、お主らの勇姿を傍で見届けるぐらいの事はしたくての」
「あなたって人は…!」
「それよりも、今のお前さんにはちと心の乱れのような物が見える」
「こんな状況で心が乱れない方がおかしいでしょ…!」
「そうじゃな。じゃが、お嬢ちゃんはまだ失敗を考えるには若すぎる。こんな土壇場の時こそ適当でいいんじゃ。適当でな。どっちにしても結果は変わらんし、今のお主は一人じゃない。仲間がいる。何かあっても、必ず仲間達がフォローをしてくれる」
そう言われて視線を周囲に向けてみる。
ジェノスは限界を超えてまで焼却砲を撃ち続け、あのメタルナイトでさえも機体全体から変な音が鳴るほどに自慢の発明品を酷使している。
こあも慣れない魔法を唱えるために必死に準備をし、サイタマは最大の一撃の為に力を溜めている。
皆がそれぞれにやるべき事を成しているのに、自分だけが不安になってどうする!
「…そうよね。私が間違ってたわ。失敗した時の事を考えてしまうなんてらしくない。仲間を信じ、魔法を信じ、なにより自分自身を信じなくちゃねっ!!」
パチュリーの目が急に鋭くなり、彼女の精神が一気に研ぎ澄まされていく。
まるで静かな森の中にある湖のように、一切の邪念が消え去った。
(…お嬢ちゃんの心から乱れが消えた。なんちゅー集中力じゃ。この絶体絶命の状況で心を切り替えられるとは。しかも、まさかの偏屈なメタルナイトが彼女達の事を手伝っておるとは。本当に信じられん…)
同じS級でも、バングとメタルナイトは殆どと言っていいほどに交流が無い。
だから、彼の人となりなどは全く知らないが、それでも相当に癖のある人物であるとは聞いていた。
『……弾切レダ』
「サイタマ…先生……後は…頼みます…!」
「おう……任せとけ。準備は出来た」
コアの光が小さくなり、ジェノスの全身から煙が出る。
完全なオーバーヒートだが、彼の顔は何処か爽やかだった。
(こ…この男…なんという生命エネルギーだっ!! 全身から計測が出来ない程の超絶的で膨大な生命エネルギーを発しているっ!! この男は…本当に人間なのかっ!?)
メタルナイトを通じてサイタマを見たボフォイは己が目を疑った。
さっきまでごく普通の人間であった筈の男から、人知を遥かに超越する程のパワーを観測しているのだから。
完全に人間という種族の限界を何千段階も凌駕していた。
「パチェ…こあ…準備はいいか?」
「いつでもいいわよ……相棒っ!」
「私も大丈夫ですっ!」
「そうか…なら、いくぞっ!!!」
ジェノスたちが必死に隕石の落下を食い止めてくれたが、それでもその勢いは完全には殺せず、もう落下は目の前まで来ていた。
市民たちの誰もが絶望している中、一筋の希望を背負って、サイタマが両足の力を込めて凄まじい勢いで跳躍するっ!!
踏み出した時の余波だけでビルの屋上全体が罅割れてしまった程に。
「こあっ!!」
「はいっ!!」
サイタマに合わせて、パチュリー達も全速力で空を飛ぶ。
Z市全体が見渡せる程の高度にまで達すると、そこで最後の集中を行った!
「大気が…震えておる…!」
『アノ魔法使イノ『魔力』トヤラニ反応シテイルノカ…!?』
まるで世界全体が軋みを上げているかのような感覚。
迷いが消えたパチュリーの魔力の高まりは留まる事を知らない。
そんな中、遂にサイタマが隕石の目前にまで迫ったっ!
普通に考えれば無謀極まりない行為。
だが、攻撃をするのはあのサイタマ。
全ての存在を完全超越した唯一無二の人間っ!!
「必殺マジシリーズ……」
右腕を引き、持てる全ての力を込める。
その拳は『全て』を破壊する究極の一撃ッ!!
マ
ジ
殴
り
大気との摩擦で豪熱を発する隕石にサイタマの拳が突き刺さり、その勢いのまま彼の体は隕石の内部へ。
それでも威力は止まることなく突き進み、あろうことか貫通をしてみせたっ!
その瞬間、その場にいる全員が息をのんだ。
ちっぽけな人間の一撃が超巨大な隕石に命中し、貫通をしてみせたのだから。
余りにも現実離れをした光景。
数瞬の静寂の後、隕石は下部から徐々に罅割れ始め、それが上に向かって全体に広がっていく。
罅の隙間からは青白い光が漏れ、それが内部に込められているエネルギーであることが分かる。
サイタマの全身が隕石から完全に離れた直後…それは眩い閃光を放ちながら文字通り、木端微塵に砕け散った!!
「な…なんとっ!? 本当に拳一つで砕きおったっ!?」
『シ…信ジラレン…! 奴ノヤッタ事ハ完全ニ人間技デハナイ!!』
バングとボフォイが驚きの余り大きく目を見開く。
特に生粋の科学者であるボフォイには、サイタマがたった一撃で自分達では掠り傷一つすら与えられなかった隕石を砕いたことに衝撃を受けていた。
(あれ程の力を有していながら、どうして奴ほどの男がC級になんて地位に甘んじているっ!? どう考えても絶対におかし過ぎるっ! 協会の連中に一度、問い質す必要がありそうだな…!)
サイタマによって隕石は砕かれた。
だが、その破壊の余波…つまり破片がこのままではZ市全体に降り注いでしまう。
ここからがパチュリー達の出番。
素早く、手早く、溜め込んだ魔力を全解放する!!
「正義の意志よっ!!」
「今ここにっ!!」
「「勇気の雷撃を解き放てっ!!!」」
ギ ガ デ イ ン!!!!!
二人の魔力が一つに融合し、超巨大な雷の球がZ市上空に創造される!!
そこから無数の雷撃が放たれ、奇跡的な確率で全ての破片に命中、次々と破壊していくっ!!
それはまるで空全体を覆い尽くす雷の網。
地上にいる人々には一切被害を出すことなく、ピンポイントで破片だけが砕かれるっ!
まるで神話に出てくるような神々しい光景を前に、人々は恐れることなく呆然と立ち尽くし、自分達と街を守ってくれている雷を見続けていた。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」」
辛うじてなんとか隕石の破片を全て砕いてみせたパチュリーとこあ。
だが、緊張やら体力不足やらが原因で、割と普通に限界が来ていた。
「お…終わった…けど……普通に疲れた…」
「で…ですね…はぁ…はぁ…」
デイン系の上級呪文である『ギガデイン』。
万全の状態かつ切羽詰まった状況でなければ、これを唱えてここまで疲弊する事は無い。
この疲労は単純にプレッシャーに寄る物が大きい。
こあの場合は、彼女の魔力総量の限界ぎりぎりまで使い果たす大技なので今ではもう飛ぶ事すら難しい程に疲労困憊になっている。
「つー訳でサイタマー…キャッチお願ーい…」
「はう~…もう無理ですぅ~…」
「わーったよ…しょうがねぇなぁー!」
「こあ――――――――――っ!!」
呆れながらも、落下しつつ空中を蹴るような動作をして器用に軌道を変えてからパチュリーをお姫様抱っこでキャッチ成功。
ジェノスもまた、急いで自分のコアを胸部に填め直してから一瞬の躊躇も無くビルの屋上からジャンプしてから残りのエネルギーを全て使ったブースターでこあの近くまで行ってから、彼女の体をそっと抱き寄せた。勿論、お姫様抱っこで。
「このまま着地するぞー。しっかり捕まっとけよー」
「はいはい。分かってるわよー」
「こあ、お前もしっかり俺にしがみついてろ!」
「はい♡ 言われなくてもギュッてします!」
徐々に迫ってくる地面。
サイタマ&ジェノスの師弟コンビは、腕の中にいる女性陣に負担が掛からないように気を付けて、着地の瞬間に膝を曲げて衝撃を緩和、無事に降り立つことに成功した。
「ふぅ…終わった今だから言うけど、正直…生きた心地がしなかったわ…」
「私もですよぉ~…。本当に怖かったですぅ~…」
「けど、ちゃんと作戦通りにいったじゃねぇか」
「先生の言う通りです。街も人も全て無事で、俺達にも被害は無かった。考えうる限りで最高の結果だと思います」
「…そうね。まさか、ここまで上手くいくとは思わなかったわ」
男性陣二人が女性陣二人を降ろしてから、四人は円になるようにして互いに向き合った。
「それじゃまぁ…」
「一件…」
「落着ですね!」
「あぁ!」
パチン!
四人の男女は全員の健闘を祝福するかのようにハイタッチをした。
これで全てが終わった…と思った瞬間、市街地の方から歓声のような声と同時に大勢の人々がこっちに押し寄せてきていた。
しかも、その先頭はタンクトップマスターを初めとしたヒーローたちだ。
「おい! あそこにいたぞっ!!」
「俺達で迎えに行こうっ!!」
「皆を…街を救ってくれた英雄達の凱旋だ―――っ!!」
「お―――――いっ!!」
「「「「え?」」」」
最初は何事かと思っていたが、彼らが捜しているのが自分達だと知ると途端に呆けた顔になる。
「あの集団の先頭にいるのって…タンクトップマスターじゃねぇか?」
「両隣にいるのはバネヒゲさんと黄金ボールさんよね…もう退院したんだ」
「なんか普通に怖いんですけどぉぉぉぉッ!?」
「別の意味で凄い迫力だな…」
ここで逃げ出すのもアレだと思っていたら、あっという間に市民たちに囲まれて身動きが出来なくなってしまった。
「サイタマ君! パチュリー君! 本当によくやった! 君達4人は俺達ヒーローの誇りだっ!!」
「誇り…ね。なんでかしらね…今日は何故か嫌な感じがしないわ」
「一仕事終えたばかりだからじゃねぇのか?」
「まさか、あの巨大な隕石を拳で破壊するとは思いませんでしたよ。いやはや、本当に驚かされました」
「無数の破片をぶっ壊した雷撃もな! ありゃなんだ? スゲー威力だったけどよ…」
まずはタンクトップマスターとバネヒゲ、黄金ボールの三人から労いと感嘆の言葉を受ける。
素直に褒められて、珍しくパチュリーが照れていた。
「パ…パチュリーさん! 本当に凄かったっす! 感動したッす!」
「アナタは…確かタンクトップタイガー? マスターと一緒に来てたのね」
「うっすっ! これでもヒーローの端くれですから! 自分に出来る事を全力でやってました!」
「私達と同じね。やるじゃない」
「え? えへへ……」
いつものような皮肉ではなく、心からの言葉を微笑を浮かべながら述べたせいなのか、タイガーの顔が一気に赤くなって蕩ける。
彼女のような美少女に褒められれば、世の男共の大半が同じような反応になるだろうが。
「この人って…S級の大型新人って言われてるジェノスじゃねぇかッ!?」
「マジかよ…この人も一緒だったのかっ!」
「命の恩人だ…Z市の救世主だっ!!」
「こっちの子もヒーロー協会のサイトで見た事があるぞ!」
「B級の新人の子だ! スゲー美少女だったからチェックしてたんだよなー」
「ヒーローも捨てたもんじゃないんだな…。タンクトッパー達然り、この四人然り…」
「え…えっと……」
「凄い人集りだな……」
こんな風に人々に囲まれる事なんて全く経験が無いので、普通に戸惑ってしまうジェノス&こあ。
自然とお互いに抱き合うような体勢になっているので、傍から見ていると完全にカップルだ。
「疲れたから、そろそろ帰りたいんだけど…」
「この人達が落ち着くまでは、我慢するしかなさそうね…」
ほんの少し前まで知名度が余り無かったサイタマであったが、この一件でZ市内では超が付くほどの有名人となり、パチュリー、ジェノス、こあの三人も今まで以上に有名となり、一気にその名が知れ渡る事となった。
それがまた、新たな出会いを引き寄せる事になる。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
ビルの屋上から市民達に囲まれて喜びの声を受けている四人を眺めているS級ヒーローの二人。
メタルナイトは当然だが表情が全く読めないが、バングはその光景を微笑ましく見つめていた。
「あれだけの事が起きたというのに、死傷者0どころか街にすら殆ど被害を出さずに済んだ。紛れもない奇跡じゃな。お主もそう思わんか? メタルナイト」
『…ソウダナ』
口調からは全く感情が読み取れないが、内心でボフォイは満足と驚きの二つの感情に包まれていた。
(あれが『魔法』とやらの威力か…。あれ程の莫大なエネルギーを一体どこから出しているというのだ…。今後の新兵器作成に有用なデータを取得出来たのはいいが、魔法そのものについてはまだまだ不明な事が多すぎる。俺の予想では、あれだけの威力を叩き出しても、あれはまだあの娘の真の力の一端にしか過ぎないと推測できる。噂では、他に回復や身体強化なども可能だと聞いている。それが本当ならば、余りにも万能すぎる。そんな人材をA級にしている事はおかし過ぎる。さっきのサイタマとか言う男といい、どうやら今のヒーロー協会にはこれまでとは違う思惑が渦巻いているようだな…)
魔法に対する警戒と興味を抱きつつ、ボフォイはメタルナイトを帰還させる為にブースターを起動させる。
「もう帰るのか?」
『ヤルベキ事ハモウ終エタノデナ』
「…そうか」
別れの言葉も無く、メタルナイトは空の向こうへと飛んで行った。
残されたのはバングだけとなった。
「ワシも…彼らに少し興味が湧いてきたのぉ…。特にサイタマ君とジェノス君は中々に良い筋をしておる。道場に招待すれば来てくれるか?」
二人のS級にそれぞれ別の意味で興味を持たれた四人であったが、本人達はまだその事を知らずに市民たちに囲まれてわちゃわちゃしていた。
バングはそれを、まるで孫が遊んでいる姿を見つめる祖父のような優しい顔でずっと眺めていた。
こうして、無事に隕石は壊されましたとさ。
次回は、街の英雄となったパチュリーやサイタマ達の日常回になる…かも?