S級ヒーロー 七曜のパチュリー   作:とんこつラーメン

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今回から深海王編に突入です。

今まで登場したヒーローのオールスター的な感じに出来ればいいなーと模索中です。








深海より出でる者達

 それは…光すらも届かない深き海の底からやってくる。

 

「薄汚いサルどもに地上を奪われてから幾星霜…」

「時は来た。遂に我等がこの地上を…否」

「全世界を征服する時がやって来たのだ」

「遥か昔に味わった屈辱を今こそ…」

「奴らに味わわせてくれよう」

 

 冷たい海の世界に闇が広がり、そこでは何も見えない。

 妖しく光る幾つもの眼光があるだけだ。

 

「我等が『王』よ。今こそ…」

「えぇ…分かっているわ」

 

 まるで聞く者全てを畏怖させるような重苦しい声が場に響き、全員を黙らせる。

 

「地底王は敗れ、天空王は動く気配が無い。行くなら今しかない」

「では……?」

「えぇ。まずは地上に巣食う人類を一掃し、その後に天空王たちに決戦を挑む。この世界の真の支配者を決める為に」

「おぉ…!」

「遂にこの時が…!」

 

 『王』の一言に、全員の心が燃え上がり、闘争心に震える。

 

「さぁ…行くわよ。まずは後々に私達の物となる予定の地上を少しでもサッパリとさせないとね」

「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」」」」」

 

 これは『生存競争』。

 地上の運命を懸けた戦いが今…始まる。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「なんだあいつはっ!?」

「早く逃げろっ!! ほら、こっちだ!」

「ヒーローはッ!? ヒーローはいないのかッ!?」

 

 海岸沿いにある街。

 その道路を悠々と歩く巨大な影がそこにはあった。

 首の付け根辺りからタコのような触手を生やし、四つの目を持ち鋭い牙を生やした異形の怪人。

 これまでに発見された怪人たちとは明らかに何かが違っていた。

 

 逃げ惑う人々。蹂躙される街。

 希望は無いのか。もう終わりなのか。

 誰もがそう思い絶望視していた。

 

「愚かな人間どもよ! このまま皆殺しにされたくなければ大人しく聞くがいい! 我等は深海よりの使者『海人族』!! この地上を明け渡せ!! その後に、貴様ら全員を我等の餌として飼い慣らしてやろうっ!!」

 

 人間を餌と言う謎の存在に怯える人々。

 だが…彼らは知っている。

 自分達には『ヒーロー』がいる事を。

 助けを求める人々を決して見捨てないと。

 

「サイタマッ!!」

「わーってる」

 

 走って逃げる人々の間をすり抜けながら、一組の男女が駆け抜ける。

 目指すのはただ一つ。自らを『海人族』と名乗る謎の怪人。

 

「…よく見たら一匹じゃない。後ろにも何匹かいる!」

「そんじゃ、そっちの方は任せた。俺はこっちのタコ野郎を片付けるわ」

「りょーかいよ!」

 

 人込みから飛び上がり、海人族たちと目線を同じにする。

 サイタマは拳を構え、パチュリーは高速詠唱を開始した。

 

「な…なんだ貴様等はっ!?」

「「うっさい」」

 

 一撃必殺の拳と属性相性抜群の魔法が炸裂し、海より出現した怪人たちを文字通り一掃する!!

 それは、見る者全てを驚愕させる凄まじき一撃!!

 

「普通のパンチ」

「サンダガ(全体)っ!!」

「「「「「ぐっはおわぁぁぁあぁぁぁぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」」」」」

 

 サイタマの拳で先頭の海人族が粉砕され、パチュリーの放った雷撃の群れにて背後に控えていた連中を黒焦げにした。

 先程まで人々を脅かしていた怪人たちは、こうして二人によって倒されたのだった。

 

「ふぅ…これでよしっと」

「毎度のように一発だったけどよ…こいつらは何なんだ?」

「さぁ…? ごちゃごちゃと言ってたような気がするけど……」

 

 地面に着地して話をしていると、市民たちが二人の存在に気が付いて声を上げ始めた。

 

「あ…あいつ等知ってるぞっ! 少し前にZ市に落ちそうになった隕石を砕いたっていうヒーロー達だっ!」

「マジでッ!? でも、あの黄色い服を着ている奴はC級なんだろ? そんなに強いのに何でS級じゃないんだ?」

「噂じゃ、ヒーロー試験の時に筆記試験がボロボロだったからC級になっちまったらしい。でも、最近じゃ物凄い勢いでランクを上げててB級になるのも時間の問題だってさ」

「どんだけ肉体面で強くても、文武両道じゃないとダメって事か…世知辛いなぁ…」

「あっちの女の子って、今じゃA級2位になってる子じゃないかッ!?」

「A級2位っ!? 滅茶苦茶凄いじゃないかっ!」

「リアル魔法少女…話だけは聞いたことがあるけど、本人を見たのは初めてだ…」

「三次元でも魔法少女は美少女だったんだな…感激…」

 

 自分達の話をしている事に気が付いたパチュリー達は、事情を聴くために傍にいた一般市民の女性に話しかけた。

 因みに、この二人は自分達にどんな噂が流れても全く気にしないので、こんなのは微風に吹かれているようなものなのだ。

 

「少しいいかしら?」

「は…はい! なんでしょうかっ!?」

「さっきの奴って何だったの? なんか反射的に倒しちゃったけど…」

「典型的な悪役の台詞っぽいのを言ってた気がするんだけど…」

 

 最初は緊張していた女性だったが、気さくに話しかけてくれる二人に安心して、普通に話をしてくれた。

 

「私達にもよく分からないんです。いきなり海の方から出てきて…」

「そういや、自分達の事を『海人族』って言ってたぞ」

「「海人族?」」

「けど、そんなの今まで聞いたことないしな……」

 

 互いに顔を見合わせてからどうするか考える。

 特にパチュリーは久し振りに嫌な予感を感じていた。

 

「…どうする?」

「一応、念の為にヒーロー協会の方にも報告をしておいた方が良いでしょうね」

「だな」

 

 サイタマが蹴散らした怪人の肉片を見つめながら、パチュリーが静かに呟く。

 

「恐らく、こいつらは先兵…。強さも雑魚だったし、災害レベルは『狼』ってところかしらね」

「先兵って事は…これから大群が押し寄せるかもしれないってことか?」

「高い確率でね。『海人族』なんてのを名乗ってるって事は、一族総出でやって来るんでしょう」

「マジか…」

「もしかしたら…これはヒーロー協会と海人族との全面対決になるかもしれない……」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 ヒーロー協会J市支部。

 ここは今、突如として出現した災害レベル『虎』の怪人複数の対処に追われていた。

 

「間違いないのかッ!?」

「はい! 出現した怪人たちは『海人族』を名乗っています! 昨日、A級2位のパチュリーさんとC級5位のサイタマさん達から報告のあったのと同じ名前ですっ!」

「パチュリー君の推測通り…彼女達が倒したのはあくまで『先兵』に過ぎなかった…という事なのか…!」

 

 嫌な予感程よく当たる。

 特に危機的状況に陥っている時の嫌な予感は特に。

 

「現在はA級11位のスティンガーが奮戦し、一体ずつ確実に倒してはいますが…数に圧されて苦戦しているようです」

「他のヒーロー達はどうしているッ!?」

「彼らも別の場所に出現した海人族と交戦していて、応援に行くには難しい状況です!」

 

 全面大型モニターには、J市全域の地図とヒーロー達の居場所、海人族の居場所が表示されている。

 オペレーターの言う通り、敵は色んな場所から出現してヒーロー達と戦っていた。

 

「こちらの戦力を分散させて確固撃破をする気なのか…!」

「どうしますか? このままでは……」

「分かっている。本部に応援を要請する。A級上位とS級の出撃要請をな。向こうが各個撃破をするつもりならば、こちらも強力なヒーローで迎え撃つしかあるまい…!」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 次の日。

 雲行きが怪しい上に食料品もまだ余裕があるので、今日はサイタマとパチュリーは自宅にてのんびりとした時間を過ごしていた。

 

「サイタマ先生の順位が2位に上がっていますね」

「え。マジで?」

 

 ゴム手袋を付けて皿洗いをしていたジェノスが、さっき調べた事を報告する。

 見た目的には、かなりシュールな光景だ。

 

「あともう少しで、こあと同じB級に昇格できますよ」

「ってことは、もう週一ノルマの活動は無くなるのか」

「そうなりますね」

「良かったじゃない。これでもう毎週慌てて外に出る必要も無くなるわね」

「おう。やっと追われる日常から解放されるぜ…」

「みんな揃って、順調に順位が上がってますね。サイタマさんなら、私なんかもあっという間に追い越していくかも」

 

 今にも雨が降りそうな天気だったから、冷えた体を少しでも温める為にこあがサイタマとパチュリーに紅茶を淹れて近くに置いた。

 こあが来る前までは絶対に飲まなかった紅茶ではあるが、最近では地味に紅茶の美味しさに目覚めて実は好きな飲み物の一つになっていたりする。

 

「こあもきっとA級にすぐに上がれるだろう。もっと自信を持て」

「ジェノスさん…ありがとうございます」

 

 今日も今日とて『ジェノ×こあ』のカップリングは健在。

 余り砂糖を入れていない紅茶が甘く感じるのは気のせいじゃない。

 

「そういや、あのランク制度ってどんな風になってるんだっけ?」

「結構シンプルですよ。C級で1位になれば、そのままB級ランカーに昇格が出来て、同じようにB級でも1位になればA級に…といった感じです」

「でも、1位のまま残り続けることも可能なのよね?」

「はい。実際に今のC級1位のヒーローは半年以上もの間、ずっとB級に上がらずC級1位のままで居続けています」

 

 説明をしながら、ジェノスは掌に搭載されている灼熱砲を超々低出力で照射して器用に皿を乾かしていて、こあがそれを目をキラキラさせながら見ていた。

 

「ですが、酷いのは現B級1位のヒーローです。こあも気を付けろよ? 奴は……ん?」

「あら…私も?」

 

 こあに注意を促そうとした途端、ジェノスの携帯に着信が来た。

 それと同時にパチュリーの携帯にも同じタイミングで電話が掛かってきた。

 

「「もしもし?」」

 

 二人同時にと言うのは流石におかしいと思ったのか、本来ならば別の部屋にて着信に応じるところを、今回は敢えてこの場で出る事に。

 

「J市だと? 少し遠いな…」

「え? J市ですって? なんともまぁ…」

 

 どうやら、話の内容自体は同じらしく、二人は似たような反応を返していく。

 

「近場に腕の立つヒーロー達はいないのか? そうか…了解した。間に合うかどうかは分からないが、すぐに向かおう」

「スティンガーくんって…槍使いの彼よね? ヤバイの? そう…いいわ。街とヒーロー仲間のピンチですものね。行かない理由は無いわ。ついでだし、こあとサイタマも連れて行っていいかしら? うん…うん。こあも魔法が使えるからいざという時に頼れるし、避難誘導も任せられるわ。サイタマは…言うまでもないでしょ? うん…決まりね。それじゃ」

 

 二人は通話を切り、ほぼ同時にサイタマとこあに視線を向けた。

 

「…先日、先生とパチュリーさんが倒したという怪人たちは『海人族』と名乗っていたんですよね?」

「実際に聞いたわけじゃねぇけど、襲われてた連中がそう言ってた」

「そいつらの仲間らしい連中がJ市に出現し、暴れているとの事です」

「やっぱり、私とジェノス君に掛かってきた電話は同じ内容だったみたいね」

「と言う事は、パチュリーさんにも…?」

「えぇ」

 

 残り少なくなった紅茶を飲み干してからゆっくりと立ち上がり、何度か腰を捻った。

 

「A級11位のスティンガーってヒーローが頑張って孤軍奮闘してるけど、苦戦をしているって聞いたわ」

「パチェはそいつの事を知ってるのか?」

「少しだけね。同じA級だからってのもあるけど、前に一度だけ街中でばったり出会ってから、一緒に怪人退治をしたことがあるのよ」

「パチュリー様も同じランクの人達と交流してるんですね。私も頑張ってB級の人達と仲良くならなくちゃ…!」

 

 パチュリーの意外過ぎる交友関係を知り、別方面で気合を入れるこあ。

 頑張り方が斜めになっている事も彼女の魅力かもしれない。

 

「ジェノス君も彼らの応援に来てくれって言われたんでしょ?」

「はい。見捨てるわけにも行きませんから、今すぐにでも向かうつもりですが…」

「なら一緒に行きましょ。サイタマ、こあ。さっきの私の電話を聞いてたんなら分かってるでしょうけど、二人も一緒に行くわよ」

「しゃーねーわな。行くか」

「は…はい! 自分に何が出来るかは分かりませんけど…頑張りますっ!」

 

 こうして、パチュリーの提案により全員で行くことが決定した。

 こあはこれが初めての実戦となるので緊張しているのか、震える拳を握りしめて何度も自分を鼓舞するかのように頷いている。

 

 そしてサイタマは一人、窓の外を見て呟いた。

 

「…もうすぐ雨が降りそうだ。こりゃダッシュで行くしかねぇな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




久し振りにキリのいい所で終われた…!

なんか普通に嬉しいです。

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