S級ヒーロー 七曜のパチュリー   作:とんこつラーメン

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今回はちょっと王道的な展開にしようと思っています。

それと同時に、かなりフライングをして登場する面々が…?








集結する選ばれし英雄達

 雨降る中、避難所へと急ぐパチュリーとこあ。

 敵の首領である深海王が向かっていると分かった以上、一刻の猶予も無い。

 自分達よりも早くジェノスが辿り着き、避難民を守ってくれている事を願うだけだ。

 

「ん…?」

「どうしました、パチュリーさま?」

「雨音に紛れて何か聞こえてきたような気が……」

 

 時間が無いと分かってはいるけど、なんでかここは立ち止まって音源を捜した方が良いと思った。

 耳を澄ませながら周囲を見渡すと、少し離れた場所に一台のスマホが落ちているのを見つける。

 急いでそれを拾いに行くと、それは今も通話中であることが分かった。

 

「こんな場所にスマホが…これが音源?」

 

 受話器に耳を当ててみると、向こうからは必死に何かを叫んでいる声が聞こえてきた。

 口調からして、相当に切羽詰まっているようだった。

 

『お…おい! 聞こえているのか無免ライダー君!! 君の実力では余りにも無謀過ぎる!! 確かに君はC級で1位ではあるが、相手はA級やS級を易々と倒すような化物だっ!! 幾らなんでも分が悪すぎるっ!! 我々の方で急いで他のS級にも出撃を要請するから、今回は大人しく……』

「ちょっと待って。今…なんて言ったの? C級のヒーローがたった一人でどこに向かったの?」

『ん…? その声はまさか、A級2位のパチュリー君かッ!?』

「そうだけど…私の事を知っているって事は、あなたはヒーロー協会の人?」

『その通りだっ! どうして君が無免ライダー君の携帯に…?』

「道路に落ちているのを拾ったの。多分、このスマホの持ち主はこれが落ちたのに気が付かないぐらいに焦っていたのね」

 

 持ち主がいないスマホが地面に落ちていて、通話相手はヒーロー協会関係者。

 これだけで今がどんな状況かは大体、予想がついた。

 

「A級のスティンガー君とイナズマックス君。それからS級のぷりぷりプリズナーは私が魔法で治癒したわ。安心して」

『本当かッ!? 君に応援を要請して正解だった…!』

「それはどうも。今はタンクトップマスターが一緒に付いてくれてる。で、どんな状況になってるの? ちゃんと説明をして。急いでね」

『わ…分かったっ! 実は…』

 

 ここで知らされる新たな事態の流れ。

 深海王は既に避難所付近まで迫ってきていて、それを聞きつけたC級1位の『無免ライダー』がたった一人で走って行ってしまった。

 こちらがどんなに言っても全く聞く耳を持たず、結局は彼を止められなかった。

 

『頼むっ! 君も急いで避難所まで行ってくれ! このままでは市民たちだけではなくて無免ライダーも危ない!!』

「言われなくても行くわよ。最初から避難所に行くつもりだったし」

『そうだったのかっ!?』

「ついでに言うと、サイタマとジェノス君も別ルートで避難所に急いでるわ」

『彼らも避難所に行こうとしてるのか! これでなんとかなるか…!』

「最後まで油断は禁物よ。じゃ、もう行くから」

『あぁ…頼んだぞ!』

 

 通話を切り、スマホを懐に仕舞いながら道の向こうを見つめる。

 その目は先程以上に鋭くなっていた。

 

「こあ…状況が変わったわ。スピードアップよ」

「はい!」

 

 二人は飛行する速度を高め、避難所へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 同時刻。

 J市の一角にて二人のヒーローが大勢の海人族相手に無双を繰り広げていた。

 

「全く…またもやヒーロー協会から呼ばれて駆けつけてみれば、なんじゃこやつらは」

「海人族って言うらしいぜ。それ以外の事は何にも知らねぇけど」

 

 最強の男サイタマと、最強の格闘家バング。

 およそ考えうる最強のコンビによって、襲い来る海人族たちは次々と肉塊となっていく。

 

「このハゲは、我等が先兵を殺した奴かっ! おのれ…何という強さか!」

「老いぼれが…信じられん力だっ! 他の連中とは明らかに次元が違うぞっ!」

 

 サイタマの一撃必殺の拳で粉砕され、バングの流水岩砕拳の前では単なる暴力は全くの無力。

 逆に自分の力を極限まで増幅されて返され、これまた一撃で倒されていく。

 

 この二人、揃いも揃って一撃必殺の攻撃しかしていない。

 相手からしたら地獄絵図以外のなにものでもない。

 

「ほれ。もういっちょ…っと!」

「何もかもが遅すぎる。そんな馬鹿正直な攻撃でワシを倒せると思ったら大間違いじゃっ!!」

 

 サイタマのアッパーにて上空に吹き飛ばされながら木端微塵となり、バングの鋭き一撃によって体の中心部に巨大な穴が開く。

 この男達に人間の常識は通用しない。

 

「じーさん…滅茶苦茶強かったんだな」

「はは…サイタマ君程ではないわい。ほれ、そこじゃ!」

「ぐぎゃぁぁぁぁぁっ!?」

 

 話しながらもまた一匹始末した。

 これがS級上位の実力、技の極致。

 一対一の戦いでは無敵に近い強さを誇るだろう。

 

「ところでサイタマ君。なにやら急いでおるようじゃったが?」

「そうだった。実は避難所って場所に行かなくちゃいけないんだ。そこが狙われてる可能性が高いってパチェが言ってたんだよ」

「パチュリーちゃんがそんな事を…!」

 

 隕石事件や街中での怪人騒動によって、バングの中でパチュリーに対する信頼度はMAXに近くなっていた。

 その彼女が避難所の事を気にしているとなれば、ここでこうしている訳にはいかない。

 

「サイタマ君。ここはワシ一人でも大丈夫じゃ。君は急いで避難所へと向かえ」

「…分かった。じーさんなら平気だろうしな。ありがとよ」

 

 余計な問答をせず、すぐに拳を引っ込めてから道路を駆けて避難所方向へと急ぐ。

 その速度に海人族は追いつけないと判断し残されたバングだけでもなんとかすることに専念する。

 

「どうやら仲間は何処かに消えたようだな。これで貴様一人…」

「一人ならば怖くなどないわ! 一気に捻り潰して…」

 

 瞬間、海人族の一体が刃でも用いたかのように螺旋に切り刻まれた。

 余りに突然の事に海人族全員が驚愕して動きを止める。

 

「誰が、誰を捻り潰すじゃと?」

「この技は『旋風鉄斬拳』! ということは……」

 

 雨に濡れながら、道着を着た一人の老人が姿を現す。

 髪と顎髭が長くし、バングとは対照的な印象を受ける。

 

「やっぱりそうか…お兄ちゃん!!」

「バングよ…なんか面白そうなことをやってるじゃねぇか。ちっとばっかしワシも混ぜてくれんか?」

 

 『兄』と呼ばれた彼こそが、バングの実の兄であり彼と同じように世界最強クラスの格闘家『ボンブ』。

 その実力はバングと互角以上と言われていて、彼ら兄弟が力を合わせた時の力は

災害レベル『竜』クラスでも易々と倒せる程とか。

 もう強い弱いとか言う次元にはいない最強超人兄弟。それが彼らなのだ。

 

「どうして、お兄ちゃんがここにいるんじゃ?」

「なに。J市に住んどるウチの弟子たちの事が気になってな。ちっとばっかし様子を見に来たら、弟がなにやら楽しそうなことをやっとるじゃないか。丁度、暇しとった所じゃし…混ぜて貰おうと思ってな」

「ハハハ…お兄ちゃんらしいわい」

 

 まるで日常会話のような空気を出しながら兄弟が合流すると、まだ残っていたと思われる海人族に囲まれる。

 

「よくも我等が同胞を…許さんぞ人間!!」

「なーにが許さんじゃ。こっちが住んでいる場所に勝手に踏み込んできおってからに。勝手な事を言うもんじゃないわい」

「全くじゃな。どれ…バング。別にこいつらを一体ずつ倒すのは楽勝じゃが、それはそれで面倒だとは思わんか?」

「確かに。なら、どうするんじゃ?」

「久々に『アレ』をせんか?」

 

 アレと聞いて、途端にバングの顔が子供のような無邪気な笑顔に変わる。

 

「いいのぉ…乗った!」

「それでこそじゃ! いくぞっ!!」

「おう!!」

 

 同時に頷くと、兄弟は大きく跳躍をして逆に海人族たちを挟むような位置に移動する。

 何事かと思っていると、二人の体から立ち上る気が爆発的に膨れ上がる!

 

「バングっ! 気を合わせるんじゃっ!!」

「任せとけっ! お兄ちゃんっ!!」

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」

 

 立ち上る膨大な気と共に、地面に何やら陣のような物が展開された!

 陣からも放たれた気によって身動きを封じられ、口を開く事も出来ない!

 その隙を突いて、バングとボンブの二人が交差するようにして海人族を手刀で切り裂くッ!!

 

「「でりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!! ふんっ!!!」」

 

 切り裂くだけじゃ終わらない!

 二人はこれまた全く同時に飛び上がり、バングは右手に、ボンブは左手に全ての気を集約させる!!

 

「これで決めるぞっ!!」

「見せてやろうぜっ!!」

「「貫けッ!!!」」

 

 兄弟の手から放たれたのは黄金に光り輝く圧倒的かつ強大な気の塊!!

 それが螺旋を描きながら海人族たちを貫く!!

 

 

 

              武  神  双  天  波

 

 

「「「「「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」」」」」

 

 兄弟の合体秘奥義の直撃を受け、この場に集まった海人族たちは断末魔を上げながら、一瞬にて残らず消滅した。

 黄金の粒子を煌めかせながら、兄弟は着地をしてハイタッチ。

 

「まだまだ腕は錆びついてはおらんようじゃの。お兄ちゃん」

「そっちこそ。流石にやるじゃねぇか、バング」

 

 こうして、彼らがいる一帯からは全ての海人族が駆逐されたのだった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 J市の別の一角。

 そこでも、とあるS級ヒーローが弟子たちと一緒に海人族と交戦していた。

 

「斬っても斬ってもキリがない!」

「イケメン以外からの熱烈なアプローチはNGなのよっ!」

「言っとる場合かッ! でりゃぁっ!」

 

 それは、S級4位のアトミック侍と、その弟子である三剣士たち。

 負けている様子は全く無いが、全く衰える気配のない敵の波状攻撃に着実に疲労の色が見えていた。

 

「ったく…魚なら魚らしく、海の中にいろってんだ!」

 

 一太刀で海人族を両断し、それを何度も繰り返して僅か数秒で大量の海人族を倒していく。

 余りの攻撃速度に、防御をする暇も無く次々と同胞が打倒されていく様子を見て、流石の海人族も圧倒され始める。

 

「この人間達…ただ者ではない!」

「我等の鱗をこうも簡単に切り裂くとは…!」

「へっ…悪いな。こう見えても魚を捌くのは得意なんでな」

 

 自分達を魚と同列に扱ったアトミック侍に対し、血管を浮かび上がらせて怒りを露わにする。

 尤も、その程度で彼らを怯ませることは不可能だが。

 

「ん? なんだ? これからって時に…もしもし?」

 

 いきなり掛かってきた着信に対し、敵中の真っただ中であるにも拘らず堂々と出た。

 これもまた強者故の余裕なのかもしれない。

 

『アトミック侍! た…大変だっ!』

「いきなり、どうしたんだ? ふんっ!」

 

 話しながらも、ちゃっかりと襲ってきた海人族は斬る。

 この程度、彼にはハンデにすらならない。

 

『海人族の首領である『深海王』が避難所に向かっているという情報が入った!』

「なに?」

『今はS級のジェノスとA級のパチュリーを初めとした一団が避難所へと急いでくれているが、それでも間に合うかは微妙な所だ…』

「あの新人と嬢ちゃん達が……」

 

 自分が認めた相手が誰よりも早く危機的状況を察知して行動している。

 そうでなくては…と思っている一方で、急激に変化した状況に対してどうするか、すぐに彼なりに考えた。

 

『そちらも出来るだけ急いでくれ! 他の場所で戦っているタンクトップマスターやシルバーファングにも連絡をして、急いで向かうように言ってある!』

「状況は理解した。任せとけ」

『頼んだぞ!』

 

 着信が切れ、スマホを戻しながら、後ろで戦っている弟子たちに目配せをする。 

 師匠からのアイコンタクトを見た途端、三人はすぐに頷いた。

 

「ここは俺とカマでなんとかする。イアイとドリルはすぐに避難所に急げ! いいな!」

「「「はい!!」」」

「避難所にはパチュリー達が向かってるらしい。あいつ等を手伝ってやれ!」

「パチュリーさんが……分かりました!」

 

 互いに顔を見合わせてから、イアイアンとブシドリルは剣を収めてから避難所へと向かって全力疾走。

 勿論、それを追いかけようとする海人族たちではあったが、そこにアトミック侍とオカマイタチが立ち塞がる。

 

「悪いが、ここは今から通行止めだ」

「回り道も禁止よ。ここで倒されていって頂戴な」

「矮小な人間風情が…たった二人で何が出来るッ!!」

 

 その時、海人族の一体の頭が何かによって吹き飛ばされた。

 よく見ると、それは形状記憶合金性の弾だった。

 

「違うね…三人だ!」

「お前は……」

「黄金ボール! あなたも来てくれたのね!」

 

 不敵な笑みを浮かべながらスリングショットを構えつつ現れたのは、A級29位の黄金ボール。

 遠距離戦の一撃の攻撃力はA級の中でもトップクラスを誇る。

 

「俺だけじゃねぇぜ」

 

 黄金ボールが親指で後ろを指すと、そこから凄まじい速度で一筋の『突き』が飛来し、もう一体の海人族の脳天を貫いた。

 

「やっぱりテメェも来てたのか…バネヒゲ」

「我等の命の恩人であるパチュリーさんが出撃した以上、大人しくしている道理はありませんからね」

 

 これで再び四人になった。

 しかも今度は後方支援役もいる。

 戦況は寧ろ有利になったとさえ言えた。

 

「とっとと、この半魚人擬きを片付けてから俺達も避難所に急ぐぞっ!!」

「「「おう!!」」」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 そして、J市の北東部。

 そこでは海人族たちが圧倒的火力の前に蹂躙されていた。

 

「わ…我等の攻撃が一切通用しないだとっ!?」

「どれだけの固さだと言うのだっ!?」

「く…くるぞっ!!」

 

 幾つもの赤い線が放たれ、それに触れた海人族は一瞬にして細切れとなる。

 どれだけ防御をしても無意味。

 その防御を貫通して攻撃が当たるのだから。

 

『コレハ撃ツノデハナク、斬ルコトニ特化シテイルレーザーダ。無意味ナコトハ止メルンダナ。知能ノ低サヲ表シテイルヨウナモノダゾ』

「だ…黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

 激高した海人族の一体が無謀にも襲い掛かるが、彼もまた瞬時に指先から放たれた無数のレーザーによって無残な姿となる。

 

『フン…海カラ出現シタ未知ナル種族ダト聞イテ、ドノ程度カト思ッテ『メタルナイト』ノ新兵器ノテストヲ兼ネテ出撃サセテミレバ…拍子抜ケモイイトコロダナ。コレデハてすとニモナラナイシ、でーたヲ取ル価値モ無イ』

 

 圧倒的な防御力と火力の前では、海人族といえども完全に無力だった。

 今回の戦いが始まって初めて、海人族は恐怖の余り逃げるという選択をした。

 

「に…逃げろっ! こいつはヤバい! 他の奴等とは違い過ぎる!!」

『サセルト思ウノカ? …甘イナ』

 

 背中を見せて海へと避難しようとする海人族たちに対し、メタルナイトことボフォイは躊躇う事も無くミサイルを発射。

 叫び声を上げる事すらも許されずに、ド派手な大爆発と共にこの場にいた海人族は文字通り一掃された。

 

『…ココニイル理由ハモウ無イ。『奴ラ』サエイレバ、ドウトデモナルダロウ』

 

 それだけを言い残し、メタルナイトは帰還した。

 見る者全てを恐怖させる破壊の爪痕だけを残して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




シルバーファングにアトミック侍、そしてメタルナイトも参戦!

次回は遂に深海王と…?




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