別にテコ入れとかじゃなく、最初から出す構想はあったのですが、どうしようかずっと考えていたんです。
でも、やっぱりパチェと言えば彼女も出した方が面白いよなという結論に至り、出す事に決めました。
いいタイミングでもありますしね。
ジェノスと初めて出逢ってから数日後。
サイタマとパチュリーはいつも変わらぬ日常を過ごしていた。
だがしかし、本来ならば二人しかいない筈の部屋の中に、今はもう一人別の人影が存在していた。
「サイタマさん! お洗濯を全て干し終えましたー!」
「おぉー。サンキューな、こあ」
嬉しそうにサイタマに話しかけるのは、赤く長い髪を持つ一人の少女。
だが、その頭と背中からは蝙蝠のような羽が生えていて、それが彼女が人間ではない事を伺わせた。
「どう? こあは役立ってるかしら?」
「すんげー役に立ってる。まさか、呼び出した悪魔と契約なんて事が出来るなんてな。まるでゲームみてぇだ」
「この間読んだ本に悪魔の召喚方法が書かれてあったから、試しに低級の奴を呼び出してみたけど…思った以上に大きな収穫だったみたいね」
「だな。寝る場所も隣にあるパチェの部屋にすればいいし…これで留守番とかも頼めるようになるな」
「そうね。あ…こあ。それが終わったら私のお茶をお願い。そこの棚に昨日買ったお茶葉があったと思うから」
「分かりました。パチュリーさま」
パチュリーが召喚したという悪魔の少女。
特定の名前は無く『小悪魔』と呼ばれていたらしいが、それでは呼びにくいと言う事でサイタマが適当に『こあ』と名前を付けて、それで呼ぶことで定着した。
契約自体はパチュリーと結んでいるので、彼女の事を主人と認識しているが、それとは別にサイタマの事も同じぐらいの存在と認識している。
「こあ、俺の分も頼めるか?」
「はい。任せてください」
こあが棚から茶葉の入った筒を取り出そうとした…その時。
ピンポーン。
いきなり玄関のチャイムが鳴った。
「あら。お客さんかしら?」
「いや…こんな場所に普通、客なんて来るか? 新聞配達とかもしてないような場所だぞ?」
「私が出ましょうか?」
「お願い。んで、もしも質の悪い宗教勧誘とかだった場合は、サイタマが一発ぶっ飛ばしちゃって」
「えぇ~…流石に一般人に暴力を振るうのは……」
「何を今更」
こあがトコトコと玄関まで行きドアを開けると、そこにはいつぞやの彼が立っていた。
「先生! パチュリーさん! 来まし……誰だ?」
「あ…ああ……パチュリーさまぁぁぁぁっ!? なんか凄いイケメンさんが来てるんですけどぉぉぉぉっ!?」
何ともド派手なリアクション。
イケメンと言うフレーズを聞き、もしやと思いサイタマと一緒に玄関に顔を覗かせると、二人はそれぞれに違う反応をした。
「げ…お前かよ…」
「あら。数日振りね、ジェノス君」
「はい! お久し振りです、先生! パチュリーさん! ところで、この前までいなかったこいつは一体…?」
「それについては中で話すわ。さ、入って」
「ちょ…パチェッ!?」
「別にいいじゃないの。こんな辺鄙な場所までわざわざ来てくれたのよ? 玄関先で追い返すだなんて可哀想じゃない」
「ぐっ…! 上げるだけだからな!」
「はい! ありがとうございます先生!」
「頼むからさ…その『先生』っての止めてくれる?」
「では師匠!」
「それはもっと止めて」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「お茶です」
「ありがとう」
ジェノスを中に入れてから、こあが彼にお茶を出した。
対面するようにサイタマとパチュリーが座っているが、その表情は全く違う。
「まさか、魔法使いだけじゃなくて、悪魔なんて存在まで実在しているとは…」
「悪魔と言っても、実力は低いわよ。災害レベル狼にも劣るんじゃないかしら?」
「あはは…私、悪魔の中でも落ちこぼれでしたから…」
「別に落ちこぼれでもいいじゃねぇか。こあは家事全般を頑張って手伝ってくれてる。今はそれだけで十分だろ?」
「そうね。サイタマ…偶にはいい事を言うじゃない」
「偶には余計だ」
まずはこあに関する説明から。
もう既に自分の身体で魔法を実体験しているジェノスは、想像以上にすんなりと彼女の事を受け入れた。
「つーか、そのお茶飲んだらとっとと帰れよ? 別に俺は弟子とか募集なんてしてねーんだから」
「私は良いと思うけど。面白そうだし」
パチュリー、またもや完全に他人事。
自分の事じゃないと割と適当である。
「そう言えばジェノス君。その体…完全に治ってるのね」
「はい。この体の大部分は機械で構成されているので、パーツさえ交換して修復すればすぐに」
「へぇ~…サイボーグって凄いんですねぇ~」
「変わってんだなぁ…お前」
「それ程でも」
「褒めてねーよ」
(意外といいコンビな気がするけどね…)
こうして並ぶと、まるで凸凹な兄弟に見えなくもない。
普段から無気力気質なサイタマには、これぐらいの生真面目な相手ぐらいが丁度いいかもしれない。
頬杖を突きながら、男子二人のやり取りを微笑ましく見つけているパチュリーだった。
「そうだ。実はクセーノ博士が是非とも一度、パチュリーさんとお話がしたいと言っていました」
「私と?」
「はい。あの時、俺を送り届けてくれたマジックアイテムに非常に感動したようで、一人の科学者として心行くまでパチュリーさんと話をしてみたいと」
「それは光栄ね。私も一度、科学者って人種と話がしてみたいとは思ってたし…機会があればいつでもいいわよ」
「ありがとうございます。博士もきっと喜びます」
類は友を呼ぶのか。
分野が違えども、同じ『探究者』としての血がお互いを引き寄せてしまうようだ。
「ところでサイタマ先生。先生はどのようなパーツを使っているんですか?」
「いや…別に使ってねぇよ?」
「え? それじゃあ、その頭部の肌色の装甲は一体…」
「これは素肌だ」
「なんですって? それではまるで先生が若くして禿げているということに…いや、もしかしたら剃っているという可能性も…」
「うっせーなもう! 禿げてんだよコレは! 悪うござんしたね! 何なんだよお前はッ!?」
「俺ですか? 聞いてくれるんですか?」
「え? いや…別に……」
そこからジェノスの過去に関する話が長々と綴られていくのだが、長話が苦手なサイタマはイライラが募っていくことに。
因みに、パチュリーはずっとお腹を抱えながら床に寝転びながら爆笑して、こあはそんな彼女を見てオロオロとしていた。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「…と言う訳なんです」
「成る程ね」
「……………(怒)」
話し始めてから十分弱。
ようやく終わったが、サイタマは頭に血管が浮き出ている。
パチュリーは途中からちゃんと話を聞いていた。
「つまり、ジェノス君の故郷を滅ぼした挙句、家族を殺した仇であるサイボーグを倒す為に、自分自身もクセーノ博士って人にサイボーグにして貰ったと。そういう事よね?」
「その通りです」
「ですってよ。長話が嫌いなのは分かるけど、お茶でも飲んで落ち着いたら?」
「お…おぅ……」
パチュリーに宥められながら茶を飲み干す。
それで、ほんの少しだけ冷静になった。
「ジェノス君。サイタマは長話が嫌いだから、今度からは話したい内容を簡潔に纏める事をお勧めするわ」
「そうだったんですかッ!? それに気付かずに長々と…申し訳ありませんでした!」
「いや…もういいから…」
もしもこの場にパチュリーがいなかったら『バカヤロー! 20文字以内に簡潔に纏めて出直してきやがれ!!』と言われていたに違いない。
「にしても…復讐ねぇ……」
「…パチュリーさん。ご心配して頂けるのは嬉しいですが、俺は……」
「あ…いや。別に心配をしてるとかじゃないわ。君のその復讐心も否定はしない。けど…復讐=憎しみって考えは変えた方がいいと思う」
「憎しみで戦ってはいけないと…? そう仰るんですか?」
「まぁね。怒りで戦うのは良い。怒りは人を強くするから。けど、その感情が黒くなって憎悪に染まったら、人は途端に弱くなる。憎しみに囚れた人間の末路は往々にして悲劇しかないわ」
「では、どうしろと…」
「…とある女性がこんな言葉を残しているわ。『復讐とは、自分自身の運命に決着をつける為にある』…と」
「自分の運命に…決着を……」
「そ。君の大切な物を奪った相手との決着。それはジェノス君が過去を受け入れ、乗り越えて未来へと進むために絶対に必要な事…そう思えば少しは肩が軽くなるんじゃない?」
「過去を乗り越えて…未来へと進む…」
鋼鉄となった自分の拳を握りしめ、ふと考える。
(未来へと進む…か。そういえば、俺は今までずっと『狂サイボーグ』を倒して仇を討つ事だけを考えてきたが…その先の事は全く考えた事が無い。死んだ家族の分も未来を生きる為に戦えと…パチュリーさんはそう仰りたいのか…!)
目から鱗とはまさにこのこと。
そんな考えがあるなんて微塵も思わなかった。
「そこまで深く受け取らなくてもいいわよ? 今のはあくまで私なりのアドバイスってだけだから」
「いえ……俺は貴女の言葉に感動しました。ありがとうございます」
「…そうストレートにお礼を言われるのは流石に照れるわね」
「パチュリー様が乙女の顔になってる…」
「何か言った? こあ」
「べ…別に何もッ!?」
TS転生者でも、今は立派な乙女なのだ。
迂闊な発言は寿命を縮めることになる。
「というわけでジェノス君。君なりに短く纏めた考えをサイタマ先生に言ってみよう」
「はい! サイタマ先生!」
「ん? なんだ? 途中から話聞いてなかった」
いつもの間の抜けた表情でこあからお茶のお替りを受け取るサイタマ。
今の彼の耳は完全にトンネル状態になっていた。
「俺が家族の分も未来を生きる為に…先生のように強くなる方法を教えてください」
「…………」
家族がどうとか未来がどうとかはよく理解していないサイタマだったが、『強くなる方法』と聞いて急に真剣な顔になった。
パチュリーは彼がどうして今のような強大さを身に付けたかの『真の理由』の大体の見当が付いてはいるが、なんだか面白そうな展開になりそうなので、ワクワクしながら敢えて黙っていた。
「ジェノス…お前、歳はいくつだったっけ?」
「は…はい! 今年で19歳になります!」
「19か…若いな。それならば、すぐにでも俺を超えるかもしれないな」
「ほ…本当ですかッ!?」
ジェノスのことを『若いなー』と思いつつも、同時にサイタマを超えるだなんて絶対に無理だと思い手を振っていた。
「俺は今年で25歳になるんだが…俺が自分を鍛え始めたのは今から三年前…つまり22歳の頃になる」
「さ…三年ッ!? 僅か三年で、あれ程までの強さを身に付けたのですかッ!?」
「そうだ。別に教えること自体は一向に構わない。だが…お前に付いてこられるか? 自分で言うのもなんだが…かなり過酷だぞ?」
「はい! 意地でも付いていきます! 先生!!」
勿論だが、パチュリーはサイタマの『トレーニング』の事も知っている。
アレを知った時にジェノスがどんな反応をするのか、今から地味に楽しみになっていた。
「パ…パチュリーさま。サイタマさんって、そんなにもお強いんですか?」
「強いなんて次元じゃないわよ。最強。それ以外の表現方法が思いつかないわ」
「さ…最強…ですか…」
サイタマが説明を始めようとした…その瞬間、俄にジェノスが立ち上がって窓の方を見つめた。
「どうしたの?」
「ジェノスさん?」
「複数の熱源がこちらに向かって高速接近…?」
「なんだこいつ…?」
いきなりの事に戸惑う面々だが、すぐにその理由が判明する。
「「あ」」
「え?」
突如として、部屋の天井が崩れ、何者かが侵入してきた。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
少しだけ時間は遡る。
山奥にある巨大な建物の中で、同じ顔を持つ男達がモニターを見ながら話し合っていた。
「どうやら、モスキート娘が倒されたようです」
「フッ…所詮は血を吸わなければ十分な力が発揮出来ない羽虫に過ぎない。試作品はどこまで行っても試作品止まりと言う事だ」
「いえ…それが、どうやらモスキート娘は大量の血を吸った状態で撃破されているようです。しかも一撃で」
「なに? 一撃で…だと?」
「はい。念の為に飛ばしておいた小型追跡カメラが、その時の様子を撮影しています。ご覧ください」
モニターに映し出されたのは、全裸のサイタマがモスキート娘を倒す瞬間の光景。
相変わらずの一撃必殺っぷりだった。
「…なんで裸?」
「それは分かりません。ですが…」
「あぁ。これは非常にいいサンプルになりそうだ。多少強引にでも彼の体を調べてみたいな」
「では…?」
「『使者』を送って彼を丁重に招待しろ。この『進化の家』に…な」
「了解しました」
一人が去ってから、別の一人が追加で報告を始めた。
「それと、もう一つだけご報告することが」
「なんだ?」
「モスキート娘が敗北してから少し経って、Z市外れにある無人街にて謎の高エネルギー反応が観測されました」
「謎の高エネルギー反応だと? 正体は分からないのか?」
「はい。これまでに地球上で発見されたエネルギーの全てと比べてみましたが…該当は疎か、類似する存在すらありませんでした。完全に未知のエネルギーになります」
「ふむ…もしや、強化された状態のモスキート娘を一撃で倒した、あの男と何か関係があるのか…?」
「どうしますか?」
「それも調査する。彼に聞けば何か分かるかもしれんしな」
「承知しました」
モニターを見つめながら、男は微笑を浮かべる。
その目に浮かぶのは狂気の色だけ。
(突如として観測された未知なるエネルギー…。そして、モスキート娘を倒した男…。この二つを分析、解析すれば…私の研究はまた一歩、高みへと近づく…ククク……!)
そして、フラグが立った。
というわけで、使い魔の小悪魔の登場です。
サイタマにジェノス。パチュリーに小悪魔って感じで。
これからは基本的にこの四人で進んでいきます。
これ以上はもう東方キャラは出しません。断言します。