S級ヒーロー 七曜のパチュリー   作:とんこつラーメン

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決戦の時…来たる。








私達は一人じゃない

 避難所へと到着したのはサイタマだけではなかった。

 なんと、ここに来るまでの間にパチュリーとこあが回復させてきたヒーロー達に加え、イアイアンとブシドリルも一緒だったのだ。

 

「イアイアン君にブシドリルさん…あの二人も…」

「パチュリーさん! 俺達だけじゃなくて、アトミック師匠も来ています!」

「すぐに我らと同じように避難所へとやって来るだろう!」

 

 ここで更にS級ヒーローの参戦が確定。

 恐らくは同じようにバングもやって来るだろう。

 つまり、最強格の味方が二人も増えるという事になる。

 こんなにも心強い事は無い。

 

「あの槍使い達と筋肉ダルマ…どうしてここにいるのよッ!? アイツ等は私がこの手で確かに…」

「倒した筈だ…って? そうね。確かに彼らは一度はお前に倒されたわ」

「それじゃあ、どうしてッ!?」

「そんなの決まってるじゃないの。私とこあが回復させたからよ」

「回…復…!」

 

 ここでようやく深海王は理解をする。

 自分の目の前に立ちはだかっている少女は、アタッカーでありヒーラーでもあると。

 戦力配置をする際、最重要と言っても過言じゃないポジションだ。

 

「ま…まだよ…! まだこっちの戦力はたっぷりと残されているわ! その気になれば海から幾らでも…!」

 

 深海王は生まれて初めて本気で焦った。

 まさか、自分達が人類にここまで追い込まれるとは全く想定していなかったから。

 目の前には自分の攻撃が一切通用しない少女がいて、避難所内には完全復活を遂げたヒーローと、他の仲間達もいる。

 少しでも気を逸らせば、次の瞬間にはやられる。

 本能的にそれを察しているので、彼は動くに動けない。

 何をどうしても、この少女には絶対に通用しない。

 そんな気がしてならなかったから。

 

「おい…そこの半魚人共の親玉。まさかとは思うが、お前が言った戦力ってのは…」

「もしや、こやつらの事を言っているのではあるまいな?」

 

 雨霧の中を圧倒的なプレッシャーを放ちながらやって来る二つの影。

 パチュリーは彼らの事をよーく知っている。

 彼らの傍には、大量の海人族の死骸が。

 無数の斬撃によって斬り刻まれたり、まるで強烈な打撲でも受けたかのように体中に穴が開いていた。

 

「ふふ…随分とお早いご到着ね。アトミック侍。そして…バングおじいちゃん」

「まぁな。けど、来ているのは俺達だけじゃねぇぞ? なぁ?」

「そうじゃな。まさか、あ奴が駆けつけてきておるとは思わなんだ」

 

 そう言って二人が後ろを振り向くと、霧の中からズタボロになった海人族が飛ばされてきた。

 

「し…深海王さま……お…お助けを…!」

「五月蠅いぞ。この僕の眼の前で喋るんじゃない。生臭くなるだろうが」

「ぶべらぁっ!?」

 

 辛うじて息があった海人族の頭を誰かが無慈悲にも踏み潰した。

 その顔を見た時、流石のパチュリーも驚きを隠せなかった。

 

「やぁ…パチュリー君。君が戦っていると聞いて、急いで駆け付けたよ」

「アマイマスク…まさか、アナタまで来てるなんて…」

 

 雨に濡れた髪を掻き上げるようにしながら、アトミック侍とバングの間に並ぶ。

 まさに『水も滴るいい男』だった。

 

「最初は傍観していようと思っていたんだが…君達が戦いに赴いたと聞いた以上、僕も行かなくてはと思ってね。急いで収録を終わらせて、やって来たんだ」

「アナタって人は…本当に……」

 

 ただのカッコつけじゃない。

 彼には彼なりの矜持があるのかもしれない。

 

「ちょっとっ!? 私達の事を忘れて貰っちゃ困るんですけどッ!?」

「A級ヒーローはお前さんだけじゃないんだぜ?」

「そうですとも」

「フッ…そうだったね」

 

 剣に付着した血を払いながら歩いてきたオカマイタチ。

 掌でジャラジャラと形状記憶合金製の弾を鳴らす黄金ボール。

 いつもと変わらぬ口調で剣を構えているバネヒゲ。

 

 S級二人にA級4人と言う非常に強力な増援が来てくれた!!

 

「お? スティンガーとイナズマックスがやられたって聞いてたけど…元気そうじゃねぇか」

「きっと、あの時のようにパチュリーさんが治癒してくれたのでしょう」

 

 シェルターの中では、先にやって来たヒーロー達が既に戦いを始めている。

 それを見て黄金ボールとバネヒゲは笑みを浮かべた。

 

「…奴が海人族の長である『深海王』とやらか」

「みたいだな。まぁ…今回ばかりは相手が悪すぎるな」

「パチュリーちゃんじゃしなぁ…」

 

 二人は既にパチュリーの実力を知っている。

 だからこそ、逆に深海王の方に同情をしていた。

 

「なんと醜悪な…。パチュリー君、悪いがそいつは…」

「分かってる。こいつは私がちゃーんと責任を持って『駆除』するから」

「『駆除』…ですって…!?」

 

 退治…ではなく駆除。

 まるで海人族を害獣か何かとしか思っていない発言に、深海王の怒りは頂点に。

 

「舐めるんじゃないわよっ!! このクソガキがぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 怒号と共にパチュリーへと本気のパワーで殴り掛かるが、それすらもテトラカーンの前では全くの無力。

 簡単に弾かれてしまった。

 

「んなっ!?」

「挙句の果てには身の程すらも弁えないとは…愚かとしか言いようがないな」

「あいつは嬢ちゃんに任せて、俺達は避難所の方に行くか」

「それが良さそうじゃな」

 

 自分達が加勢をする必要性は皆無。

 そう判断した面々は、すぐに激闘が繰り広げられているシェルター内へと向かって行った。

 残されたのはパチュリーと深海王の二人だけ。

 

「ねぇ…ついさっきまで圧倒的優勢だったのに、一瞬で圧倒的劣勢に陥って…どんな気持ち? 教えてよ?」

「こ…小娘がぁぁぁぁ…!!」

 

 相手を挑発しながらパチュリーは魔力をチャージしていく。

 超特大の一撃をお見舞いしてやるために。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 一方その頃。

 シェルター内では避難民を守りながら、さっきまで人間に擬態をしていた海人族と激闘を繰り広げていた。

 

「オラオラァッ!! 今の俺達には勝利の女神が付いてんだ!! そう簡単に倒せると思うんじゃねぇぞっ!!」

「さっきまでの俺達と思うなよっ!! 完全復活した俺達は一味も二味も違うぜ!!」

「「喰らいやがれっ!!!」」

 

 鋭い爪を伸ばしながら襲い来る二匹の海人族に対し、スティンガーとイナズマックスが飛び掛かりながら渾身の必殺技を放つッ!!

 

「ギガンティック・ドリルスティンガァァァァァァァァァッ!!!」

「稲妻飛び後ろ回し蹴りぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」

 

 スティンガーの愛槍『タケノコ』が海人族の胴体に巨大な風穴を開け、イナズマックスの全力の蹴りが相手を感電させながらぶっ飛ばすっ!

 

「やるな二人とも! 流石はこの俺がずっと気になっていた男子達だ! 俺も負けてはいられないなっ!! とうっ!!」

 

 さっきと同じように無力な人々を人質にしようと手を伸ばしかけた海人族たちだが、その相手が男だったのが運の尽き。

 それはぷりぷりプリズナーを却って怒らせる結果にしかならない。

 

「必殺っ! エンジェル☆ラァァァァァァァァァァッシュッ!!!!!」

「「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!?」」

 

 強烈なパンチのラッシュによって、海人族を二体同時に打ち砕いた!

 最下位などと言ってはいるが、それでもS級という存在がどれだけ規格外なのかを思い知らされる。

 

「むっ!? そこに倒れているのは…さっき人質にされていた男子か!?」

 

 攻撃の後に地面に倒れて気絶をしているアンチ君を発見したプリズナー。

 彼が倒れている男子を見て何もしない筈も無く…。

 

「気を失っている…なんて可哀想に。よっぽど怖かったんだろう。すぐに俺が蘇らせてあげるからな! この『愛の人工呼吸』でっ!!」

 

 アンチ君の顔を掴んでから全力で息を吸う。

 運の悪い事に、彼はそのタイミングで起きてしまった。

 だが、プリズナーはその事に全く気が付かない。

 

「え? ちょ…なにっ!?」

「エンジェェェェェル……キッスッ♡ んちゅぅぅぅぅぅぅぅぅっ♡♡♡」

「ニイニウヒwイェcrホwrンウェrクィウオウェイウオエッ!!??」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 

 

 しばらくお待ちください

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 チーン…。

 

「これでよし! 俺の愛の力で、きっとすぐに目を覚ますだろう!」

 

 一体何の確信があってそんな事を言うのか。

 白目を剥いてもう一回気を失ったアンチ君を端の方に移動させてから、プリズナーは戦いに戻って行った。

 それを見ていた人々がボソッと呟く。

 

「自業自得とはいえ……」

「流石に哀れだな…南無」

 

 その場にいた男性たちは全員揃って口の周りを涎でベタベタにさせて気絶しているアンチ君に哀悼の意を表して両手を合わせて拝む事に。

 

「ぷりぷりプリズナーってさ…台詞はカッコいいんだけど…」

「それ以外の要素で全部ダメにしてるよな…」

 

 誰もが心の中で思い続けてきたことをあっさりと口にしてしまった。

 この騒ぎの中では誰も聞いてはいないが。

 

「敵を倒すだけでなく人命救助まで…相変わらずやるな!」

 

 そして、それを純粋に評価するタンクトップマスター。

 彼は彼でピュアすぎるような気がする。

 

「ここでは地面は砕けないが…貴様等にはそんな事をする必要も無い!!」

 

 両腕をクロスさせ、全速力での体当たり!!

 地上にいるが故に動きが鈍くなっていた海人族では避けられない!

 

「タンクトップ・タックルッ!!!!」

 

 単純であるが故の強烈な一撃に、何も出来ないまま吹き飛ばされながら粉々にされる。

 どれだけの威力だったかを物語る光景だ。

 

 他のヒーロー達が戦っているのを見て、ジェノスは歯痒い思いをしていた。

 自分がもっと強ければ、皆の加勢が出来るのに…と。

 そんな彼の焦燥を感じたのか、こあが決意に満ちた顔で立ち上がる。

 

「大丈夫です…ジェノスさん」

「こあ…?」

「ジェノスさんの分は…私が頑張りますから!!」

 

 目を瞑り、両掌に魔力を収束させていく。

 目標は、ここにいるヒーロー全員。

 自分には戦う事は出来ないけれど、皆を支える事は出来るっ!

 

「マハタルカジャ! マハラクカジャ!」

 

 こあが呪文を唱えると、ヒーロー全員の体が橙色と緑の光に包まれる。

 

「これは…」

「私が魔法で皆さんの攻撃力と防御力を底上げしました! これで少しは戦いやすくなるはずです!」

「よくやった! 助かるよ!」

「見事な援護だ。流石だな、こあ殿」

「私には、これぐらいしか出来ませんから」

 

 彼女の傍まで来たイアイアンとブシドリルから褒められ、少しだけ顔を赤くする。

 そんな彼らは近くまで迫ってきていた海人族をそれぞれに己が剣で斬り裂いた!

 

「彼女達には近づかせん!!」

「我等を突破したければ…死を覚悟する事だなっ!!」

 

 二人から放たれるプレッシャーに気圧される海人族。

 伊達に『三剣士』などと呼ばれてはいない。

 

「すまない……」

「アンタはよく戦ったよ。今は休んでてくれ」

「イアイの言う通りだ。こんな時ぐらい、彼女の傍にいてやれ」

 

 二人の剣士に諭され、ジェノスは大人しくすることに。

 右腕を失った状態の今の自分では足手纏いにしかならない。

 そんなことは本人が一番よく分かっていた。

 

「そいつらの言う通りだぞ、ジェノス」

「サイタマ先生!」

 

 動けなくなっていた海人族たちを軽く殴って消し飛ばしたサイタマ。

 これが普通の戦いならば驚いていたかもしれないが、こんな状況では驚く暇すらないのでノーリアクションだ。

 

「あんまし、こあの事を悲しませんなよ。パチェに怒られるぞ?」

「はい…申し訳…ありません…」

「悪いと思ってんなら、今度からは気を付けろよ? そんじゃいっちょ…」

 

 首の骨を鳴らしつつ、テクテクと前に出る。

 後ろを向いているから見えないが、今のサイタマは本気の顔になっていた。

 

「偶には師匠らしく、傷ついた弟子のお守でもするか」 

 

 

 

 

 

 

 




次回…決着。…すればいいなぁ…。

しなかったらごめんなさい。

書きたい事が多すぎて上手く纏まりません…。



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