S級ヒーロー 七曜のパチュリー   作:とんこつラーメン

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なんかもう…精神的に辛すぎるんだぜ。

どこかで思い切り休んだ方が良いのかな…?








ヒーローを舐めるな!!

 目の前で多くのヒーロー達が戦っている光景を横目に、深海王との戦いで傷つき倒れたジェノスと無免ライダーは歯痒い思いをしていた。

 

「俺がもっと強ければ、迷わずに戦列へと加わるのに…!」

「本当に凄いんだな…他のヒーロー達は…。それに比べて俺は…」

 

 意気消沈しそうになっている彼らの元に、先程合流したアトミック侍やバング、アマイマスクを始めとした面々がやって来た。

 

「おいおい…随分と派手にやってるじゃねぇか」

「しかも、倒れたと言われていたヒーロー達も復活しておる。まず間違いなく、パチュリーちゃん達のお蔭じゃな」

 

 呑気に話しているS級二人の元に、四体の海人族が襲い掛かる!

 だが、流石に相手が悪すぎた。

 S級上位の彼らにとって、敵の雑兵など雑魚にすらならない。

 

「邪魔じゃ。のけ」

「ったく…彼我の実力差も分からねぇのかよ」

 

 二体は無数の斬撃で粉々に、二体は一瞬で原形を留めない程に砕け散った。

 余りの威力と速度に、倒された海人族たちは自分達が一体いつ、攻撃されたのかすらも分からなかった。

 

「ば…かな…!」

「この二人は…強すぎる…!」

 

 彼らは己の身を以って思い知った。

 人間達の中にも異次元の強さを誇る者は存在するのだと。

 

「お? ジェノス君…大丈夫か? 左腕が無くなっておるが…」

「情けない話だが…派手にやられた。パチュリーさんに忠告されていたにも拘らず、奴を雨降る外へと出してしまった結果、深海王を強化してしまう事になってしまった…」

「余り気に病む事は無い。君はよく頑張っておるよ」

 

 ジェノスを慰めるように、優しく微笑みながら肩を叩くバング。

 道場を開いていると言うだけあって、こんな時の心のケアの仕方は熟知しているようだ。

 

「シルバーファングの言う通りだ。ジェノス君」

「アマイマスク…?」

 

 まさか、ここで彼が慰めてくるとは。

 想像もしていなかったことにジェノスは思わず目を丸くする。

 

「確かに君は派手に倒されたかもしれない。だがそれは、君が必死に人々を守る為に戦ったという何よりの証拠じゃないか」

「だが、俺は……」

「…ジェノス君。それから無免ライダーも。君達もヒーローならば一つだけ覚えておきたまえ」

 

 二人に背を向けながら襲い掛かって来た海人族を殴り倒し、アマイマスクはハッキリとした声で言った。

 

「ヒーローにとって、体の傷は最高の勲章だ」

 

 拳に付着した血を払いながら、視線だけを二人に向ける。

 

「ま、僕の場合は違うがね」

「一言余計なんだよ…」

 

 アトミック侍の言う通り、余計なことさえ言わなければ最高だったかもしれない。

 顔は二枚目なのに、性格の方は二枚目になりきれないようだ。

 

「俺もそいつの言う通りだと思うぞ」

「サイタマ先生!」

「おぉ! サイタマ君!」

 

 バク中をしながら着地をし、戦闘時なのにいつも通りの余裕の笑みを浮かべるサイタマ。

 この戦闘も、彼にとっては児戯に等しいのかもしれない。

 

「えっと…お前、確か無免ライダー…だったよな?」

「あ…あぁ……」

「お前さ、今パチェと睨み合ってる野郎に勝てないと分かってたのに立ち向かったんだろ? それって本当に凄い事だと思うぞ?」

 

 サイタマが話している間に、バネヒゲと黄金ボール、オカマイタチも戦列に加わり始める。

 場は完全に乱戦状態になって来た。

 

「並の奴等は普通、そんな時は逃げちまうもんだ。だって勝てねぇんだもん。当たり前だよな」

「…………」

「けど、お前は逃げなかった。どれだけ傷ついても立ち上がる事を止めなかった。マジでカッコいいぜ、お前」

「サイタマ君……」

 

 その時、風が吹いてサイタマのマントが大きく靡く。

 

「もしかしたら、ガキの頃に俺が憧れてたのは、お前みたいなヒーローだったのかもしれねぇな」

 

 そう言い残して、サイタマは再び海人族の群れに向かって飛び掛かっていく。

 そんな彼の後姿を、無免ライダーは呆然とした顔で見つめていた。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 シェルター内で戦闘が始まってから20分以上が経過した。

 まだ20分かと思うだろうが、実際に戦っている身からすれば相当に長く感じる時間だ。

 

(皆さん…流石に疲れが見え始めてる…。アトミック侍さんやバングさんが来てくれたお蔭で決着は付きそうだけど、その前に倒れてしまったら意味が無いし…)

 

 ここで、こあは選択を迫られる。

 このまま地道なサポートに徹するか、それとも今の自分が放てる最高の呪文を放つか。

 

「…迷う理由は無い…よね」

「こあ…?」

 

 こあは考えた。

 もしも主人であるパチュリーが同じような立場だったら、どんな選択をするのかと。

 想像の中のパチュリーは、微塵も躊躇う事無く行動に移していた。

 

「この魔法に…私の魔力の全てを注ぎ込みます! 皆さん…受け取ってくださーい!!」

 

 突如として、こあの体が光り輝き…膨大な癒しの魔力がシェルター全体を包み込んだ!!

 

「メシアライザー!!」

 

 瞬間、戦っていた全てのヒーロー達の体力、怪我などが完全回復し、全員に活力が戻ってくる!

 

「これが…あの子の魔法か…! なんと優しい光…これが愛の力か!」

「消費した体力が回復していく…! これならば!!」

「この場にいる全員を回復させるたぁ…やるじゃねぇか」

「んん? 肩こりが治った? これはいいわい」

 

 特に、S級ヒーロー達の体力が完全回復したのは非常に大きい。

 ぷりぷりプリズナー、タンクトップマスター、シルバーファング、アトミック侍の四人が不敵な笑みを浮かべながら海人族たちへとにじり寄っていく。

 その圧倒的なプレッシャーに後ずさりをしてしまうが、彼らの前では全くの無意味だった。

 

「「「「ふんっ!!!!」」」」

「「「「ぶぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」」

 

 最強の四人の同時攻撃に、海人族たちは哀れな断末魔を出しながら砕け散った。

 唯でさえ一人でも『壊れている』と恐れられているS級が四人も揃い共闘している。

 この場にいる人々にとって、これ以上に心強い事は無い。

 

 その回復の最大の功労者であるこあはというと、魔力を使い果たしたことで疲弊してジェノスの右腕に抱きかかえられていた。

 

「だ…大丈夫か!?」

「へ…平気です…。ちょっと眩暈がしただけで…」

「俺に無茶をするなと言っておきながら、お前が無茶をしてどうするんだ…」

「えへへ…ごめんなさい…」

 

 明らかに弱っているこあに、ヒーロー達の隙間を抜けて海人族の一体が襲い掛かって来た!

 

「こあ! 俺の後ろに下がっていろ!」

「は…はい!」

 

 こあの放ったメシアライザーでジェノスも回復した(流石に千切れた腕は戻らなかった)ので、右手の焼却砲を放とうとした…その時だった。

 いきなり海人族に対して体当たりをかまして動きを封じた三つの影があった!

 

「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」

「あ…あの人達はッ!?」

「無免ライダーっ!? 他の二人は俺よりも先に倒されていた…」

 

 それは、回復をした無免ライダーと、少し前に深海王にぶっ飛ばされていた筈のC級のブンブンマンとオールバックマンだった。

 三人のC級ヒーローに押さえつけられ、海人族は思うように動けないでいた。

 

「ありがとよ、こあちゃん!!」

「君の魔法のお蔭で俺達も回復できたし、無くなりかけていた勇気も湧いてきた!」

「こんな俺を応援してくれる人達がいる…支えてくれる人達がいる! だから俺は、俺の出来る全力で皆を守る!!」

「おのれぇぇぇぇぇぇっ!! 王に手も足も出なかった雑魚の癖にぃぃっ!」

 

 必死にもがいて振り解こうとするが、決死の覚悟をした三人のヒーロー達はビクともしない。

 今の彼らを止められる者なんて、どこにもいないだろう。

 

「うるせぇっ!! 俺達人間を……」

「「「ヒーローを舐めるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」」」

 

 三人の叫びに応えるかのように、復活したもう一人のヒーローが大きく跳び上がった!

 

「頼んだぜ…A級!!」

「任せておけ!!」

 

 彼の蛇のような形をしていた手を大きく広げ、振り下ろしながら全力で引き裂く!!

 それはまさに、雷鳴の如き毒蛇の一撃!!

 

「蛇咬拳……雷鳴鉤爪!!!」

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 全身に紫電が走ったかのように海人族は黒焦げとなり、白目を剥いてゆっくりと倒れた。

 実際に稲妻が迸った訳ではなく、それに酷似した衝撃が走っただけなので動きを封じていた三人には何の影響もない。

 

「ふぅ…これでA級の面目ぐらいは守れたか」

「お前は…セミナーの時の…」

「A級39位の蛇咬拳のスネックだ。あっという間にあのお嬢さんに追い抜かれて最下位になっちまったがな」

 

 驚くジェノスにスーツを整えながら皮肉るスネックではあったが、その顔はとても晴れ晴れとしていた。

 

「こあ…と言ったか。よく頑張ったな。後は俺達に任せてゆっくり休んでいろ」

「お言葉に甘えさせて貰いますぅ~…」

「フッ……お前達、行くぞっ!!」

「「「おう!!」」」

 

 更なる増援が加わり、シェルター内の戦いは終わりへと近づく。

 因みに、同じように深海王に倒されたジェットナイスガイも復活はしたが、上半身と下半身をバラバラにされてしまったので、戦いたくても戦えない状態だったという。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 シェルター内の激闘を横目で見ながら、パチュリーは目の前で必死に攻撃をし続けている深海王を眺めていた。

 彼の太い腕から放たれる連打は全てテトラカーンの反射壁に防がれ、触れる事すら出来ないでいた。

 

「なんで…なんで当たらないのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!?」

「もう気は済んだ? いい加減に飽きて来たんだけど」

 

 欠伸をしながら息を切らせる深海王をジト目で見て、もうそろそろかな…と判断して魔力を解放する準備を始める。

 

「この…この私が…ここまで虚仮にされるだなんて…! 私は深海王…七つの海を統べる王…! 海こそは万物の源であり母の如き存在…! その海を支配している私こそが全ての生物の頂点に君臨する存在の筈なのに…!」

「ブツブツと五月蠅いわよ。発情期ですかコノヤロー。そもそも、その程度で天下を取れるんだったら、バングのおじいちゃんやアトミック侍とかどうなるのよ? こう言っちゃなんだけど…あの二人はアンタなんかよりも圧倒的に強いわよ? 特にバングおじいちゃんはマジで最強」

「うるさい…うるさい…!」

 

 王としてのプライドがズタボロにされ、遂に深海王の精神が破壊された。

 

「うるさい! うるさい! うるさい! うるさ―――――――いっ!!!!!」

「どんだけやっても通用しないって言ってるのに…学習しなさいよね…」

 

 狂ったかのように我武者羅に連打を繰り返す深海王に呆れながら、パチュリーは魔力の籠った両手を前に翳す。

 

「向こうもそろそろ決着が付きそうだし、私の方も終わりにしないとね」

「人間如きがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「もう私の声も聞こえてないみたいね。それじゃあ、とっておきの一撃で終わらせてあげるわ。この私の『秘奥義』でね…」

 

 彼女から放たれる雰囲気が一変し、それに反応して深海王の攻撃が止む。

 その体がゆっくりと浮遊して、大きく目を見開いた瞬間に両者の周囲がまるで宇宙空間のような場所へと変化する。

 

「こ…これはっ!?」

 

 通常では決して有り得ない現象に、深海王は正気を取り戻し、辺りを見渡す。

 雨は降っていないし、シェルターも消えた。

 ここがパチュリーが生み出した異空間なのだと理解するのに、そう時間は掛からなかった。

 

「万象を為し得たる根源たる力」

 

 彼女の周囲に『火』を司る赤い魔力球、『水』を司る青い魔力球が創造される。

 

「太古に刻まれし、その記憶」

 

 今度は『風』を司る緑の魔力球と、『土』を司る黄の魔力球が創造される。

 

「我が呼び声に応え…今ここに蘇れ!!!」

 

 四つの属性を持つ魔力球が巨大化し、そのまま深海王を押し潰そうと一カ所に集まり異なる属性による反発作用で全てを消滅させる光が放たれる!!

 

「エンシェント・カタストロフィ!!!!!」

 

 四方から押し潰されることで身動きもとれず、そのまま深海王は目から血の涙を流しながら断末魔を上げた。

 それは、王とは思えない程に無様で情けないものだった。

 

「いや…イヤァァァァァァァァァァァァッ!!! この私が…海の王であるこの私がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!! 矮小な人間如きに倒されるなんて認めないわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!! 絶対にぃぃぃぃぃぃっ!!! ぶぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

 光が一瞬で巨大になり、パチュリーすらも包み込む程になった。

 それが収束し、無くなった頃にはもう元の空間へと戻っていて、パチュリーは静かに呟いた。

 

「これが私の研究成果よ」

 

 雨はいつの間にか止んでいて、雲の隙間からは日の光が射していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




決着ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!

次回は決着後の色んな人達の反応とかをお送り出来ればと。

それが一応の深海王編のエンディングになりますね。

そのついでにまた、一足早いゲストが登場するかも…?
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