S級ヒーロー 七曜のパチュリー   作:とんこつラーメン

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連続でネガティブな発言をしてしまい、本当に申し訳ありませんでした。

皆さんからの励まし&心配に本当に癒されました。

これからはこんな事が二度と無いように気を付けていきたいと思います。








昇格。そして・・・

 海人族たちとの戦いが終わり、街も人もすっかり日常を取り戻していた。

 幸いなことにJ市自体はそこまで被害が少なかったようで、あっという間に復興して今まで通りに戻っていた。

 それはヒーロー達も例外ではなく、彼らもまたそれぞれの日常へと戻っている。

 パチュリーやサイタマ達もそれは同じで……。

 

「…なんだこりゃ?」

「街路樹に何かが引っかかってるわね。パラシュート?」

「それに大きな箱がくっついてますけど…」

 

 今日も今日とて四人揃って買い出しに出かけた帰り、なにやら見た事の無い物を発見した。

 パチュリー達は当然のように怪しんだが、ジェノスはすぐにそれがなんなのかが分かって、その箱をパラシュートから引き剥がそうとした。

 

「恐らくこれは郵便ですね。ここには配達が出来ないので、こうして空からパラシュート付きで投下してるんですよ」

「郵便局が? マジかよ…」

「今時の郵便局って、そんな特殊部隊の補給物資みたいな事もするのね…」

「ワイルドですね~」

 

 一体何が入っているのかを確認しようと送ってきた相手を確認すると、ジェノスはすぐに箱を空けた。

 

「これは…特定の誰かからの郵便じゃないですね。ヒーロー協会からです」

「あそこから? 何が入ってるの?」

「手紙…みたいだな。しかも大量の」

「これだけ入ってると、手紙と言えどもかなりの重さになりそうですね」

 

 中に入っている手紙を一通だけ手に取ってみると、そこには『C級サイタマさんへ』と書かれてあった。

 

「普通の手紙じゃない…これは一般人からのファンレターみたいですね」

「マジで? おぉ…俺宛のもあるじゃん! こっちにはパチェ宛のもあるぞ!」

「嘘でしょ? …ホントだ。これは…こあ宛のもあるじゃない」

「わ…私にファンレターっ!? なんだか照れちゃいますね…」

 

 S級であるジェノスはいざ知らず、まさか自分達にもファンレターが届けられるとは思わなかった三人。

 パチュリーは別にそこまで嬉しいとは思わなかったが、こあとサイタマは初めての事に興奮しているのか、珍しくソワソワしていた。

 

「早く部屋に戻って開けてみようぜ!」

「そうですね。では、これは俺が持ちます」

「ジェノスさんの荷物は私が持ちますね」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 部屋に帰ってからファンレターが入っている箱をひっくり返してみると、そこには想像以上に大量の手紙が入っていた。

 割合的にはジェノスのが大半を占めていると思われたが、実際にはサイタマやパチュリー、こあの分も結構沢山入っていた。

 

 まずはジェノスが封筒を開いて手紙を読んでみると、そこには女性ファンからと思われる文章で、丸みを帯びた文字で書かれていた。

 

「ジェノス…どんな事が書いてあった?」

「いつも通り…って感じですね。『応援してます』とか『ファンクラブに入ってます』とか」

「ふーん…」

 

 パチュリーとこあも一緒に自分達宛ての封筒を開けて中身を読んでみる。

 その反応は全くの真逆で、パチュリーは無反応、こあは顔を真っ赤にしていた。

 

「『デビューした時から注目してました! 応援してます!』『あなたこそが新世代のヒーローアイドルです! ずっと応援し続けます!』…ここまで熱烈だと、逆に引くわね……」

「『B級ヒーロー界の癒しの天使! その笑顔にいつも救われます!』『これからも頑張ってください! 僕らのアイドルこあちゃん!』…はうぅ~…恥ずかしいですよぉ~…」

 

 パチュリーは割と前々から表だって活動をしていたので、応援具合もそこまで激しくは無いが、こあは海人族との戦いで一気に世間に名前と顔が知れ渡ったので、ファンとなった一般人が多くいるようだ。

 

「サイタマにも来てるんでしょ? そっちはどうだったのよ?」

「あー…うん。意外と普通の応援メッセージだったのに驚いてる」

「どれどれ?」

 

 横からサイタマが読んでいる手紙を覗き見ると、そこにはこんな事が書かれていた。

 

『その圧倒的なパワーに惚れたぜ! これからもめげずに頑張ってくれよな!』

『あんたならきっとすぐにS級にもなれるさ!』

『キリッとしてれば意外とカッコいいぜ! あんた!』

 

 少し前まで知名度ゼロだったとは思えないような内容の文章の数々。

 これも隕石を壊したり、他のヒーロー達と協力して海人族退治を頑張ったお蔭か。

 

「…よかったじゃない。ちゃんとサイタマを見てくれる人がいて」

「あぁ…そうだな」

「ん? 嬉しくないの?」

「いや…幾ら感情が薄れてるからって、こんな風に応援されて嬉しくない訳じゃないんだけどよ…」

「じゃあ、何よ?」

 

 なんだか影を帯びた顔で手に持った本を皆に見せた。

 

「どうして、俺のファンレターにだけ数学の参考書や漢字のドリルや英単語帳が同封されてたんだ?」

「…どうしてでしょうね」

「さっぱり分からないわね」

「なんででしょうねぇ~」

「三人揃って余所見をしながら言うのをやめてくれないかなっ!? 普通に傷つくからよッ!?」

 

 一体どうしてサイタマにだけ勉強に関する本が送られてきたのか。

 それはファン達とパチュリー達だけが知っている。

 

「あれ? なんか一通だけ違うのが混ざってるんだけど…」

「私もだわ。どこからかしら?」

「こっちにもありました」

「これは…ヒーロー協会からですね。俺にはありませんでした」

「って事は、私とサイタマとこあの三人にだけって事か。なんなのかしら?」

「開けてみれば分かるだろ」

「それもそうですね」

 

 三人が一緒に自分達宛の封筒を開けてみると、そこには一枚の書類が入っていた。

 

「えっと…『C級ランカー1位…サイタマ』?」

「こっちには『B級ランカー1位こあ』って書いてあります…」

「と言う事は、まさか……」

 

 ジェノスが恐る恐るパチュリーの方を向くと、彼女は呆気なく言い放った。

 

「『A級1位パチュリー』って書いてあるわね…」

 

 まさかの三人揃っての1位。

 流石のジェノスもこれには驚きを隠せないでいた。

 

「まさか…先の海人族との戦いが評価されて…?」

「かも知れないわね。下の方に『近日中に自分が住んでいる市の支部へと向かうように』って書いてある。多分、そこで色々と説明をするんじゃないの?」

「だったら今から行こうぜ。明日とかにしたら忘れちまいそうだ」

「後々に行くのも面倒くさそうですしね~」

「なら、俺はここで留守番をしています。遠慮なく行って来てください」

「悪いわね。ありがと」

 

 こうして、ついさっき帰ってきたばかりではあるが、パチュリー、こあ、サイタマの三人は揃ってヒーロー協会Z市支部へと向かう事になったのだった。

 と言っても、隕石事件の際に一度訪れているので、二回目となる今回はルーラでひとっ飛びなのだが。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 ヒーロー協会Z市支部。

 

 向かってからすぐに三人は職員から面接室まで案内されて、まずはサイタマが面接を受けていた。

 そして、その様子を協会の役員たちが眺めていた。

 

「彼が例のサイタマ君か」

「筆記試験がギリギリだったが故にC級スタートとなってしまったが…」

「その身体能力は間違いなくS級クラス。これに関しては数多くの市民とヒーロー達が言っているので、まず間違いないでしょう」

「あのアマイマスクでさえも認めているのだからな」

 

 彼らが見ている下で、サイタマは淡々とした口調で面接を受け続ける。

 そこからは何の感情も読み取れない。

 

「どうやら、彼はB級への昇格を希望するようだ」

「妥当な判断だな」

「あぁ。一昔前までならば飛び級させても良かったのだが…」

「あの頃とは規則が違いますからな。彼には申し訳ないが、下から順番に駆け上がって貰うしかない」

「なぁに、彼ほどの実力ならばあっという間にA級に到達、そこからS級まで行くでしょう。それに……」

「今のB級には『奴等』がいる」

「あの徒党を組んでいる集団ですな」

「そうだ。サイタマ君のような圧倒的な実力者がB級に上がってくれれば、奴らに対する良い抑止力になるかもしれん」

「ですな。どうも最近は調子に乗っている傾向がありますから」

 

 面接を終えてサイタマが部屋を後にする。

 最後まで全く表情が変わる事は無かった。

 

「さて…次はB級1位となった、こあと言う少女か。彼女はどうするのやら…」

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 面接室に入ったこあは、緊張した面持ちで椅子に座って目の前に並ぶ面接官たちのお話を聞いていた。

 

「こあ君…だったね」

「は…はい!」

「まずはB級1位おめでとう。早速だが本題に入らせて貰ってもいいかな?」

 

 本題。

 それを聞いて思わず心臓がドキッとした。

 一体これから何を話すのだろうか。

 

「君も既に知っているとは思うが、各ランキングで1位となったヒーローには上の級へと昇格する権利が与えられる」

「あ…あの…一ついいですか?」

「何かな?」

 

 ずっと疑問に思っていた事。

 いい機会なので勇気を振り絞って聞いてみる事にした。

 

「どうして私なんかが1位になれたんでしょうか? 自分で言うのもアレですけど…私、今までに一体も怪人を倒した事なんてありませんよ?」

「それは知っている。だが、ランキングの順位は何も怪人を倒した数で決まっている訳じゃないんだよ」

「そう…なんですか?」

「世間の評価と貢献度。少なくともS級以外のヒーロー達はこれに個人の実力を加味したものでランク付けされる」

「はぁ…」

 

 ジェノスに教えて貰った事ではあるが、こうして改めて説明されると増々分からない。

 自分はそこまで皆に評価されるような事はしたのだろうかと。

 

「君はZ市の人々からも評判が良い上に、他のヒーロー達からも高く評価されている。しかも君は、あのパチュリー君の弟子でもある」

 

 弟子と言っても、それはあくまで表向きの姿である。

 実際には全く違うのだが、ここで話すとややこしくなりそうなので黙っていた。

 

「こあ君はこれまでに魔法を使って数多くのヒーロー達をサポートしてきた。特に、この前の海人族との決戦の際には君の回復魔法があったから勝敗を決定づけたと言っても過言じゃない」

「それ程でも……」

「謙遜しなくてもいいよ。そんな君だからこそ、我々はB級1位に相応しいと判断した。ここで君に尋ねたい」

 

 本題が来る。

 心臓の鼓動がさっきよりも激しくなった。

 

「君はA級へと上がるか? それともB級のままでいるか? どちらを選んでも全く問題は無い。君の意思を尊重しよう」

 

 上に行くか。留まるか。

 あまり上昇志向が無いこあにはさほど興味が無い事ではあるが、もしもサイタマやパチュリーがここにいれば、すぐに上に行くと答えていただろう。

 それに、ここでA級に行けば想い人であるジェノスへとまた一歩近づける。

 彼女に迷う理由は無かった。

 

「…なります。A級に昇格します」

「成る程。君も昇格希望か」

「私も? ってことはまさか…」

「さっき面接をしたサイタマ君もB級への昇格を希望していたよ」

「そうですか…」

 

 やっぱりか。

 弟子であるジェノスが一番上であるS級にいる以上、それに少しでも早く追いつくために昇格を希望するのは当然の事とも言えた。

 

「それでは、今から簡単な質疑応答と、この精神分析のマークシートに記入をして貰うわ」

「分かりました」

 

 こうして、こあは正式にA級ヒーローとなった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「…失礼するわね」

 

 最後に面接をするのはパチュリー。

 だが、彼女の場合は今までとは明らかに雰囲気が違った。

 

「サイタマとこあに聞いたわ。これ、昇格に関する面接をしてるんでしょ?」

「その通りだ。まずは掛けてくれたまえ」

 

 ずっと立ったままなのは普通にキツいので、遠慮なく椅子に座る事に。

 思い切り背凭れに体を預け、足を組んでから肘を付く。

 どう考えても面接をする体勢ではない。

 それはパチュリー自身もよく分かっている。

 だが、今回ばかりはこれでいいと思ったのだ。

 

「あのアマイマスクを押しのけてのA級1位……彼の意志を無視してそんな事をするとは思えない。って事は、私を1位にするように言ったのはアマイマスクね?」

「…こちらの事はなんでも御見通し…ということか」

「予想をしただけよ」

 

 パチュリーの前では下手に嘘はつけない。

 そんな事をしても無意味だし、すぐにバレるからだ。

 魔法使いは伊達ではないという事は、彼らもよく理解していた。

 

「…この際だから君には話しておこう。君ほどの人物がどうしてS級スタートではなくA級からスタートになったのか。その理由を」

「面白そうだから、聞かせて貰おうじゃない」

 

 不敵な笑みを浮かべたパチュリーを見て、面接官たちはまるで心臓を鷲掴みにでもされたかのような感覚に陥った。

 

 面接はまだまだ終わらない。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回はパチュリーの面接の続きから。

その後は無免ライダーとの友情物語です。





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