まずはパチュリーとタツマキの特殊攻撃コンビから。
並んでいるだけで絵になりそうな二人ですよね。
全てが漆黒で包まれている宇宙空間。
幾多の銀河系が見渡せる位置に、とある超巨大な宇宙船がワープアウトしてきた。
「ワープ完了。見えました。あれがそうです」
参謀と思われる奇怪な姿をした者が自分達の中央にいる男に向かって報告をする。
男は表情一つ変えずに正面モニターに映る銀河系の一つを、その大きな一つ目で見つめた。
「太陽系…あそこに存在するのだな」
「はい。こちらでございます」
部下に指示をして画面を切り替える。
太陽系の外観の代わりに、青く美しい惑星の映像が映し出された。
「太陽系第三惑星『地球』…そう呼ばれているようです」
「地球…美しい惑星だ」
漆黒の宇宙に浮かぶ青い星の姿。
それはまるで最高級の宝石のように光り輝いていた。
「あの地球にいるのだな…『予言』の者が」
「恐らくは。太陽系に属する他の惑星は『水星』『金星』『火星』『木星』『土星』『天王星』『海王星』『冥王星』と呼称されているようで、その他多くの衛星や準惑星などで構成されているようなのです」
「地球だけ呼称が違うな」
「恐らくは、太陽系で唯一、地球にだけ生命体が存在しているせいかと」
「成る程な……」
モニターに映る地球に手を伸ばし、手を握りしめる。
因みに、彼らはまだ来たばかりなので、冥王星が準惑星に降格されたことは知らない。
「どういたしますか?」
「速やかにエネルギーの再チャージをした後にワープ。一気に地球圏まで突破する。宇宙の辺境であるせいか、この宙域には我ら以外の勢力は一切存在していない。簡単に接近できるだろう」
「その後は?」
「いつも通り、主要都市を発見し、そこへと降下し主砲を発射。その後に最上位戦闘員であるメルザルガルドとグロリバースを向かわせて制圧。グロリバースには一個大隊を付き従わせる。もし『予言の者』がいるならば、必ずなんらかのリアクションをする筈だ」
「…承知しました」
頭を垂れた参謀を見た後、男は玉座に腰かけて目を瞑ってから思い耽る。
(まだ遥か彼方にいるにも関わらず、圧倒的かつ強大な力をひしひしと感じる事が出来る。どんな者なのか今から楽しみで仕方がないが…これはどういう事だ? この俺に匹敵するか、それ以上の力を『二つ』も感じるだと? まさか……)
ここで初めて、男はうっすらと笑みを浮かべた。
「『予言の者』は一人とは限らない…ということか…。これは面白い…!」
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一方その頃。
ヒーロー協会本部上空。
そこには無数の空飛ぶ怪人たちの群れが出現し、本部に対して攻撃を繰りだしていた。
「くはははははははは! 見た目以上に頑丈な建築物のようだな!」
四対の翼を持ち、まるで伝承に出てくる天狗のような姿をした筋骨隆々の怪人。
どうやらリーダー格のようで、他の怪人たちに指示を出していた。
「どれ…もうそろそろ攻め込むとするか! なぁ…ホーク! イーグル! ファルコン! カイト!」
「「「「おう!!」」」」
四人の腹心の部下と思われる者達は意気揚々に返事をする。
大きく翼を広げ、自分達の存在をアピールするかのように声高らかに宣言した。
「ヒーローとやらがいなくなれば、この地上は我々の物となる! ずっと大空から傍観していたが…地底王も深海王も死に絶えた! 奴らが滅びた今こそが最上の好機! このまま一気に地上を征服してくれる! さぁ…今こそ、この『天空王』に続け!!」
…だが、仲間達からの返事は返ってこなかった。
その代わり、彼らの変わり果てた体が落下していくのが見えた。
「お…親父…逃げろ…!」
「カ…カイトっ!? 一体どうしたッ!? 誰にやられたッ!?」
「上だ…!」
「なに……?」
言われるがままに見上げると、そこには……。
「なんだ…これは……!?」
途方も無く巨大な戦艦がA市上空に浮いていた。
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瞬間移動とテレポにて本部玄関前へと出てきたパチュリーとタツマキ。
彼女達はすぐにA市上空を覆い尽しそうな程に巨大な物体の存在に気が付いた。
「何よ…あれ。さっきのプレッシャーの正体って、まさかアレじゃないでしょうね?」
「正確には、あの中にいる奴から発せられたプレッシャーでしょうね。この位置からもハッキリと分かるレベルって…どんな化け物がいるのよ…」
怪訝な顔をしているタツマキとは別に、パチュリーは珍しく冷や汗を掻いたようで袖で頬を拭っていた。
「あの形状…船…? いや…あの感じはまさか…!?」
観察と考察を繰り返していく内に嫌な予感が爆発的に膨れ上がっていく。
その時だった。船体下部がいきなり光り始めた。
「やっぱり…間違いない!! タツマキ!!!」
「分かってるわよ!!」
二人は咄嗟に背中合わせになりながら、それぞれに手を上空に浮いている船へと向けた。
手からは種類の違う強大な力が放たれようとしている!
「デジョン!!」
「ふんっ!!」
上空から降り注ぐもの。
それは無数の砲弾だった。
街中に落ちれば崩壊は必至!!
だが、そんなことは彼女達が決して許さない。
一個だけで大型トラック程の大きさを誇る砲弾。
通常ならば避ける事も防ぐことも不可能な程の一撃だが、この二人にはそんな常識は通用しない。
砲弾の半分は、まるで時間が止まったかのように空中でピタリと停止し、もう半分は次元の歪みのような物に全て吸い込まれて消えた。
「いきなりで悪いけど」
「この砲弾」
「「全部お返しするわ!!」」
超絶的な念動力にて動きを止めた砲弾は全て逆を向き、そのまま撃ってきた船へと向かって戻って行き、船の真上に次元の歪みが発生し、そこから先程消えた筈の砲弾がそのまま真っ直ぐに降り注いだ。
自分達が撃った先制攻撃が全て防がれた挙句、上と下からの挟み撃ちのような形で返されてしまった。
「なんとか街の崩壊だけは防げたわね」
「へぇ…アンタ、思ってるよりもやるじゃない。パチュリーって言ったっけ? 少なくとも、他の連中よりはずっとマシだわ」
「お褒め頂き光栄だわ。それよりも……」
撃ってきた砲弾を撃ち返してやったのに、全く堪えた様子が無い。
この距離では傷がついたかどうかさえも分からなかった。
「想像通り…あれは普通の空飛ぶ船じゃなかったみたいね」
「分かるの?」
「なんとなくだけど。あの巨大な船体に、雨のように降り注いだ砲弾。どっちも今の人類の技術じゃ絶対に製造不可能な代物よ」
「ってことは、あれは……」
「えぇ…間違いなく…」
苦々しい顔をしながら、パチュリーは最も想像したくなかった事を言った。
「宇宙戦艦よ」
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「うわぁあぁぁぁああぁぁああああぁぁぁあああぁぁぁっ!!??」
頭を掻きむしりながらシッチが絶叫を上げて、目の前に表示された報告を目にしていた。
想像もつかない程の超巨大戦艦が突如として襲来、しかもいきなり砲撃を仕掛けてきた。
「こ…これが予言なのかっ!? いや…パチュリー君の予想じゃ違うらしいし…いや! そんな事は今はどうでもいい!! 一体誰が、いきなりあんな物がやって来るなんて想像出来るッ!? 観測班は何をやってたんだっ!?」
最悪の事態はパチュリーとタツマキによって未然に阻止されたが、それでもまだ安心は出来ない。
戦艦からの声明などは一切発せられていないし、そもそも敵の正体すらも全く分からないのだ。
「つーか、あんだけの攻撃を普通に防ぐとか…どんだけだよ、あのコンビはよ…」
「タツマキちゃんもそうだけど、あのパチュリーちゃんも相当に凄いヒーローなんだな……」
まさか、あの最強の超能力者とされるタツマキと互角に渡り合える存在がいたとは思わなかった金属バットとクロビカリは純粋に驚きを隠せなかった。
「おいシッチ! パチュリーちゃん達が砲撃を防いでくれたはいいが、それでも発射の際の衝撃ぐらいは感じてもおかしくは無いのに、どうしてここは何ともなかったんじゃっ!?」
「この本部の建設は全てメタルナイトに依頼をしていて、通常のシェルターよりも遥かに強固に出来ている! ここにいる限りは大丈夫かもしれないが…それでは何の解決にもならない!」
「成る程な。つまりここは怪人すらも全く寄せ付けない要塞だったって訳か。道理で窓一つないわけだ」
バングの質問にシッチが未だに動揺を隠せない状態のまま答え、それを聞いた金属バットが呆れながら椅子から立ち上がる。
その手にはもう既に自分の得物であり、彼のヒーローネームでもある『金属バット』がしっかりと握られていた。
「と…とにかく、僕達もあの二人と同じように外に出て敵を確認しようよ。まずは見てみない事には対策のしようが無い」
童帝の提案に全員が頷く。
それを聞き、ジェノスは急いで隣にいる筈のサイタマに声を掛けようとしたが…。
「先生!! 俺達も急いで外に出て……」
「ジェノスさん…サイタマさんならもう既に……」
「なに?」
こあが壁の方を指差すと、強固な筈の壁に人一人ぐらい通れるような穴が出来ていた。
「サイタマの奴なら壁をぶっ壊して外に飛び出して行ったぜ。ったく…本当にB級にしとくには勿体無い奴だ」
サイタマが出ていく瞬間を目撃していたであろうアトミック侍が眉間に血管を浮き出させながら笑みを浮かべる。
どうやら、サイタマの即断実行の心が彼のやる気に火を付けたようだ。
「俺は急いで先に行った二人の所に向かう! ついて来る奴はいるか!?」
「ワシも一緒に行こう。いい加減、あの子だけに負担を掛けている自分自身に嫌気が差していたところじゃ」
「俺も行くぞ! パチュリーちゃんには男子達だけじゃなく、俺自身も助けて貰った借りがあるからな!」
「ならば、俺も行かない訳にはいかないな」
「ついでだから、俺も一緒に行くぜ」
「決まりだな」
バング、ぷりぷりプリズナー、タンクトップマスター、金属バットも同行を表明した。
戦力としては申し分のない面々だ。
「お前達はどうする?」
「僕達は屋上に行ってみるよ。あそこなら、あの戦艦を良く観測出来る筈だし、万が一にも奴らが本部に強襲を仕掛けてくるとしたら、屋上からの可能性が高い」
「分かった。気を付けろよ」
「それはお互い様だよ」
こうして、ヒーロー達は二手に分かれる事になった…が、まだ行動が決まって無いメンバーもいた。
「あ…あの…アトミック侍さん! 私も連れて行ってください!」
「こあの嬢ちゃん…」
「私なんかがお役にたてるかどうかは分かりませんけど…それでも、今の私はパチュリー様の弟子であり…ヒーローですから!!」
最初に見た時は自分に自信のない弱々しい少女のイメージしかなかったが、なんという強い目をするようになったのか。
自分の弟子たちと同じ目…己の進むべき道を見つけた戦士の目だ。
海人族たちとの戦いで、彼女もまた成長した…という事なのだろう。
「こあが行くのならば、俺も一緒に行くのが道理だろう」
「ジェノスさん……」
こあに並ぶように立ち上がるジェノスだったが、これは単なる言い訳。
本当は誰がなんと言おうとも、最初から行く気満々だった。
「こあがパチュリーさんの弟子であるように、俺はサイタマ先生の弟子だからな。自分の師が戦場に向かったというのに、俺だけがここにいる訳にはいかないだろう」
「…良いぜ。付いてきな!」
弟子カップルは揃って力強く頷く。
それを見て、多くの弟子を持つ二人のヒーローは心の中でほくそ笑んだ。
(ウチの奴等ほどじゃないが…良い弟子を持ったじゃねぇか。なぁ…サイタマ…パチュリー…)
(なんと真っ直ぐで眩しい瞳じゃ…。弟子に成り立ての頃の『あいつ』を思い出すわい…)
剣士は自分の弟子たちを思い浮かべ、格闘家は嘗ての弟子を思い出す。
史上初となる、遠い空の果てからの来訪者との戦いはまだ始まったばかりである。
パチュリーとタツマキの活躍でA市崩壊だけは免れました。
だけど、戦いはまだまだこれから。
それと、物語を盛り上げる為に展開を変えようと思いました。
当初は原作通りにボロスと戦うのはサイタマだけにするつもりでしたが、途中から気が変わっちゃいました。
もっとド派手に、もっと激しくいきたいですよね。やっぱり。