だって女の子だもん(意味不明)
ジェノスの身の上を聞いて、それから改めてサイタマに強さの秘密を聞き出そうとした瞬間、いきなり天井が崩れて何者かが侵入してきた。
「ケーッケッケッケッ! よく聞け人間ども! 俺様の名は……」
「うるさい。天井弁償しろ、コノヤロー」
…が、キレたサイタマのパンチによって首から上を吹き飛ばされ、壁に激突してから破裂した。
「なに…今の?」
「なんか、カマキリっぽく見えましたけど……」
「この反応…どうやら外にもまだいるようですね」
「みたいね。にしても、よくこあは驚かなかったわね。私達は怪人なんて見慣れてるから平気だけど」
「私がいた魔界にも似たような人達は山ほどいましたからね~。あれぐらいじゃ全く驚かないですよー」
「…意外と肝が据わってんだな…こあは」
サイタマが地味にこあの鋼のメンタルに驚いている間に、ジェノスとパチュリーが玄関を開けて外の様子を確認した。
するとそこには、明らかに怪人と思われる者達がアパートの前に立っていた。
「ジェノス君…あれって……」
「はい。カエルとナメクジを模した怪人ですね」
「よね…。なんか話してるみたいだけど」
耳を澄ませてから会話を聞き取ってみると、なにやら気になる事を話していた。
「なんか…自信満々に先陣を切ったカマキュリーが殺されたみたい。オデのテレパシーが全く届かない」
「え? アイツって、俺等の中でも割と強い方じゃなかったっけ?」
はい。どう考えても、さっきの奴の仲間ですね。ありがとうございます。
「先生。パチュリーさん。ここは俺に任せて、中にいるこあの事を…」
ジェノスが前に出て戦おうとしたら、いつの間にかサイタマが外に出ていて話していた怪人二人を瞬殺して地面にめり込ませていた。
まだ名前すら判明してないのに…。
「あ。なんでもないです」
「人んちの天井を…よくも…」
「ま。気持ちは分かるけどね。後で天井を修理しとかないと…」
「その時は俺も手伝います」
「ありがと。こんな時に男手があるのは助かるわね。ん?」
ふとパチュリーが横を見ると、天井が壊された時に入った罅が、そのまま伸びて横の部屋にまで続いているのが見えた。
それを見て、なんだか嫌な予感がしたパチュリーは、急いでこあを呼んで隣の部屋まで行くことに。
「これって…もしかして……こあ!」
「は…はいっ!? なんですかパチュリーさまっ!?」
「私と一緒に隣の部屋まで来て!」
「わ…分かりましたっ!」
「俺もお供します! サイタマ先生は……」
一人でも絶対に大丈夫ではあるだろうが、それでも一応は声を掛けようとする弟子の鑑。
だが、ジェノスが彼の方を見た時、サイタマは何でか首から下が地面に埋まっていた。
「せ…先生ッ!? 大丈夫ですかッ!?」
「別に何ともないぞー。つーか、なんかツクシにでもなった気分だな…」
本当に平気そうだったので、取り敢えずはパチュリー達に付いていくことにした。
「あっ!? やっぱり……」
「どうしましたっ!?」
ジェノスが急いで隣の部屋まで駆けつけると、そこには怒りで体を震わせているパチュリーと、それを見て怖がっているこあがいた。
部屋の床には巨大な魔法陣が描かれてあり、壁に面している机の周囲には大量の本が積み重なり、色んな道具や材料が入っていると思われる棚が複数あった。
「一体どうしたんだ?」
「それがその…さっきの天井崩落でこっちにまで余波が来てたみたいで…壁とかに罅が入ってるんですよ…」
「なんだって?」
こあが指差す方を見てみると、確かに罅やら崩れた跡などが散見された。
確実にさっきのが原因だろう。
「ところで、この部屋は一体…?」
「ここは、私のプライベートルーム兼仕事場なの。基本的にここで私は寝泊りをして、魔法の研究やらマジックアイテムの製作やらをやっているの。なのに…」
「成る程…ここはパチュリーさんにとって大事な場所なんですね。それをよくも…!」
ジェノスにとって、パチュリーもまた大切な恩人の一人。
その恩人の仕事場を破壊されたと聞かされては黙ってはいられない。
「あいつ等が何なのかは知らないけど…今は兎に角、全員ぶちのめすわよ…!」
「俺もお手伝いします!」
「こあはジッとしてなさい。危ないから」
「わ…分かりました!」
外に出てから他の怪人たちを倒そうと玄関に向かうと、そこからまたもや別の怪人が出現した。
「ガハハハハッ! 俺は『クワガタイタン』! この圧倒的パワーと強靭なハサミの前では、貴様など無力に等しい……あれ?」
頭の上にハサミを生やしたクワガタ型の怪人が偉そうに口上を述べていたが、その隙にパチュリーがカクワガタイタンの胴体にそっと手を添えた。
「炎帝の怒りを受けよ。吹き荒べ業火!」
「貴様…何をッ!?」
「フレアトルネード!!」
瞬間、パチュリーの掌から炎の竜巻が発生し、クワガタイタンの巨大な体を包み込みながら外まで吹き飛ばした!
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? バズーカ砲の直撃にも耐えうる俺の体が燃えるなどとぉぉぉぉぉっ!? ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
凄まじい火力をその身で受け、地面に落ちる前に完全に燃え尽きて灰となった。
まだ地面に埋まったままのサイタマはそれを見ていたが、この程度の魔法はもう何度も見ているので、そこまで驚くことは無かった。
「あちっ! あちちっ!? なんか火の粉がこっちにまで飛んできたんだけどッ!?」
なんて言っているが、実際には火傷なんてしてはいないので平気。
でも、熱いのだけはどうにもならない。
「す…凄い…! 何も無い所から炎の竜巻が発生した…! これがパチュリーさんの魔法なのか…!」
ジェノスの主武装もまた炎系になっているので、少しだけシンパシーを覚えた。
だが、パチュリーの魔法はこれだけではない。
「高エネルギー反応確認。貴様モサイボーグナノカ?」
「なに…?」
アパートの別の部屋の壁を破壊しながら、全身機械のロボットが出現。
カタコトな喋り方をしながらジェノスに向かって近づいてきた。
「ダガ…我々ノターゲットハ貴様デハナイ」
(今…確かに『貴様もサイボーグなのか?』と言った。まさか…?)
噂をすれば影がまさか本当に起きるとは考えにくいが、それでも可能性はゼロではない。
「邪魔ダ」
巨大なサイボーグは右手を振り上げてからジェノスに殴り掛かる!
しかし、その一撃は難なくガードされてしまった。
「この程度の攻撃では俺は倒せない。それよりも貴様に聞きたい事がある」
「聞キタイコトダト?」
「そうだ。お前は……」
ジェノスが敵サイボーグに話を聞こうとした時、いきなり大きな笑い声が聞こえてきた。
何事かと振り向くと、地面に埋まったままのサイタマに向かって二足歩行をする巨大なライオンの怪人が接近してきていた。
「がははははははははっ! 手も足も出ないとはまさにこの事! よくやったぞ! グランドドラゴン!」
今度は、サイタマの近くにズボっとモグラ型の怪人が地面から上半身だけを出した。
お腹には何故か『土竜』と書かれてあった。
無駄に自己主張が激しい怪人である。
「変に暴れられても面倒なだけだしな」
「せ…先生っ!」
思うように動けない上に、近くには二匹の怪人がいる。
傍から見たら完全にピンチであるが故に、思わずジェノスがサイタマの下まで向かおうとすると、それを制止するようにパチュリーが彼の肩を掴んだ。
「あいつなら大丈夫よ。それよりも、ジェノス君はこいつをブッ倒して頂戴」
「パチュリーさん…」
「それに、サイタマの弟子になりたいんなら、これぐらいは倒せないとね。違う?」
「いいえ……違いません!」
振り向きざまに掌に装備している必殺の『焼却砲』を放ち、直撃させた。
だが、大したダメージには至っていないようで、間髪を容れずに敵サイボーグが両手でジェノスの事を掴もうとしてきた。
「ちっ! パチュリーさん! こいつは俺が倒します! 貴女は先生をお願いします!」
「はいはーい。お願いされましたー」
咄嗟に攻撃を避けつつ、サイタマの事をパチュリーに任せた。
まだ出会って時間は経ってはいないが、それだけ彼が彼女の事を信頼している証拠だった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
サイタマの下までやって来たパチュリーではあったが、全く心配している様子は無かった。
彼女は知っている。この程度でどうこう出来るほど、サイタマという人間は弱くは無いと。
「なんか眠そうね。大丈夫?」
「いやー…土の中って思ったよりも絶妙な温度で、なんか眠たくなっちまうんだよなー。動物たちが冬眠したがる気持ちが分かるような気がするわ」
「遂に動物たちの気持ちまで理解出来るようになっちゃったのね」
緊張感皆無な会話に、ライオン怪人は血管を浮き出しながら怒りに震えていた。
彼からしたら、自分達の事を馬鹿にしているようなものだから。
「貴様等…なんだその態度は! 今の自分達が置かれている状況を理解しているのかッ!?」
「「してるしてる。わー大変だー」」
「絶対にしてないだろ!」
超適当な受け答え。
これは怪人じゃなくても普通にキレる案件だ。
「どうやら、まずは貴様等の立場をよーく理解させる必要があるようだな。まずは小娘!」
「私?」
「そうだ! お前の両手足を引き千切ってやる! 無駄な抵抗が出来ないようになっ!」
「…ですってよ。どうしましょ」
「パチェなら楽勝だろ? とまぁ…冗談はここまでにして…と」
何事も無いようにサイタマがズボっと地面から出てくる。
予想外の事にライオン怪人はめっちゃ驚いていた。
「お前ら…謝るなら今のうちだぞ」
「なんだと?」
「パチェはな…本気で怒らせるとマジで怖いんだぞ」
「ちょっと。人を怒りっぽいみたいに言わないでよ」
「似たようなもんだろ? あー…なんか変な所に土が入っちまってるしー…。これ、ちゃんと洗濯をする前に全部取らないとダメだよな…」
「そりゃね。じゃないと洗濯機が壊れちゃうもの」
「はぁ…面倒くせぇなぁ…」
真剣な空気から一変し、急に庶民的な話に移る。
怪人たちのプライドはボドボドだった。
「いいだろう…ならば、その小娘の死をもって、この獣王の真の力を見せてやろう!! 受けるがいい!! 獅子斬!!」
「テトラカーン」
獣王の鋭い爪がパチュリーに迫る!…が、その一撃は彼女の前に出現した見えない障壁によって跳ね返された。
「な…何ッ!? この俺の攻撃を弾いただとっ!?」
「これぐらいはね」
「では…これではどうだ!! 獅子斬流勢群!!!」
「ま…待て! 今はまだ殺すな!!」
一発では意味が無いと判断したのか、今度は無数の爪の斬撃を放ってきた!
少しでも受けてしまったら、そこから一気に細切れにされてしまう!
…が、またもやカキーンカキーンという音と共に全てが弾き返される。
焦ったグランドドラゴンの叫びも全くの無意味だった。
「残念でした」
「ば…馬鹿な…! この獣王の攻撃が、ことごとく通用しないとは…!」
「本来ならば、このあらゆる物理攻撃を跳ね返す魔法『テトラカーン』は一発受ければ、その時点で効果が切れてしまう。けど、私の場合は魔力がある限りずっと効果が持続するのよ。つまり、どれだけ強力であっても、今の私には物理攻撃が一切通用しないって事。理解出来た?」
「お…おのれ…! こんな小娘如きに…!」
「今から、アンタはその『小娘如き』に倒されるのよ」
パチュリーの周囲に風が巻き起こる。
それは疾風となり、やがては嵐となって獣王を包み込む。
「ここまで私達の家を荒らして、楽に死ねるとは思わない事ね」
「か…体が…動かんっ!? 風が俺を拘束するっ!?」
「吹き荒れろ! 狂乱の嵐!!」
パチュリーが右手を前に突き出した瞬間、超巨大な真空の刃が周囲を抉りながら獣王を粉微塵にする!!
「シュタイフェ・ブリーゼ!!」
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
獣王の巨大な体はバラバラとなって細かな肉片になって周囲に飛び散り、辺り一面を血で染めた。
普通ならば顔を背けそうな光景だが、この無人街では普通の光景なのでサイタマもパチュリーも無表情のままだ。
「ハイ終わり」
「おぉー」
呑気にサイタマがパチパチと拍手をする中、現状の最強戦力が成す術も無いままに惨殺されたことでグランドドラゴンは思わず地面に潜って逃げ出そうとする。
賢明な判断ではあるが、今回ばかりは相手が悪すぎた。
(き…聞いてない! あんなの全然聞いてないぞ! なんなんだ、あのハゲと小娘はッ!? 幾らなんでも強すぎる!!)
完全に戦意を失い、今は逃げる事しか考えられない。
けど、彼は知らない。
地面に潜ってまで自分の事を追い駆けている存在がいる事を。
(ここは一度退散して、態勢を整えてから……)
「見ーつけた☆」
「嘘でしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」
目の前に怪しい笑みを浮かべたサイタマが出現し、遂には逃げる事すらも出来なくなった。
生身の人間が地面に潜って追跡してくるだなんて誰も想像出来ないので、彼の驚きは至極当然の事だ。
「そんじゃ、さいなら」
「あわびゅっ!?」
そして、一切の容赦がない『普通のパンチ』によって、グランドドラゴンは地中から吹き飛びながら倒され、それと同時にサイタマも地面の中から出てきた。
「おかえり」
「ただいま。はぁ…これは洗うのが大変そうだな…。こあに迷惑を掛けちまう…」
「あの子なら大丈夫よ。家事を楽しんでる節すらあるし」
「それでも、なんか申し訳ないんだよなぁ……ん?」
どうやら向こうの戦いも終わったようで、壁に叩きつけられ戦闘不能となったゴリラ顔のサイボーグに焼却砲を向けながら尋問をしているジェノスがいた。
「このまま質問に答えるか。それとも大人しく消滅するか。好きな方を選べ」
「フッ…消滅スルノハ貴様ノ方ダ。愚カ者メ。我ノ実力ハ『進化ノ家』デハなんばー3。ソノ程度デハ、今モ来テイル獣王ニハ決シテ勝テハシナイ。貴様コソ大人シク破壊サレルガイイ!」
そこにサイタマとパチュリー。それから、もう安心だと判断したこあが出てきてジェノスと合流した。
「それって…もしかして、この目玉の持ち主の事だったりする?」
「パチュリーさん…流石です。サイタマ先生もご無事で何よりです。…どうやら、お前の言うナンバー2とやらもパチュリーさんとサイタマ先生の敵ではなかったようだな。どうする?」
「……………………」
ゴリラサイボーグは無表情になってから、急に流暢に喋り出した。
どうやら、完全に観念したらしい。
「あの…本当にすいません。降参して全部話すんで勘弁してください」
「このゴリラさん…なんか普通に喋り出したんですけど」
「だな。さっきまでずっとカタコトだったじゃねぇか」
「ごめんなさい。格好つけたい年頃なんです」
「意味分かんないわよ」
なんか、書きたいところまでは書けた感じ。
私にしては本気で珍しい。