S級ヒーロー 七曜のパチュリー   作:とんこつラーメン

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ここから本格的に戦いが始まります。

ヒーローVS宇宙人の決戦の行方は如何に…?








戦士よ、立ち上がれ!

 シッチに対して指示を出した直後、突如としてゆっくりと空から降りてきた謎の存在。

 言動から察するに、相手があの船から降りてきたことは明白だった。

 

(…サイタマと行き違いになったのは、ある意味で僥倖だったかもしれないわね)

 

 もしも、目の前の奴がサイタマの侵入を目撃していれば、その瞬間に第二射が来ていたかもしれない。

 パチュリーとタツマキならばそれも防ぐことは余裕で可能だが、その間は必然的に身動きが出来なくなる。

 お世辞にも彼女達は近接戦が得意とは言い難い。

 距離を置いての戦いこそが二人の真骨頂なのだから。

 

「これが地球人か?」

「そうみたいだな」

「小さいな。早く殺そう」

「いいと思うよ」

「邪魔だから、早く、殺そう」

 

 またもや自分だけで会話が完結している。

 だが、その中で言われた一言を彼女達は決して聞き逃さなかった。

 

「「小さい言うな!!」」

 

 タツマキは昔から自分が子供扱いされる事を最も嫌っていたし、パチュリーもまた自分の背が低い事を地味に気にしていて、毎日必ず牛乳を飲むようにしているのだが、その栄養は何故か全て胸の方に行ってしまった。解せぬ。

 

 その時だった。

 異形の宇宙人の後ろから誰かが駆けてくるような足音が聞こえてきた。

 

「「「「「ん?」」」」」

「「あれは…!」」

 

 宇宙人が着地をしたと同時に跳躍をし、その抜刀術にて一刀の元に首元を斬り裂いた。

 ここまで鋭い太刀筋を持つヒーローなんて、それこそ数えるほどしかいない。

 ついでに言えば、体に鎧を着ての居合斬りを得意とするヒーローなんて一人しか知らなかった。

 

「ご無事ですか!? パチュリーさん!!」

「イアイアンくん!?」

 

 敵を切り裂いたのは、アトミック侍の弟子である『三剣士』の筆頭であるイアイアン。

 パチュリーの顔を見て無事を確認した途端、剣気に満ちた顔に余裕が戻る。

 

「どうして君がここに…?」

「俺は、アトミック師匠と一緒にA市に来ていて、S級集会が終わるまで本部の近くにある宿で待機をしていたんです」

「そう…君もこあと一緒だったってわけね」

「彼女も来ているんですか? というか、パチュリーさんがここにいるという事は、まさか……」

「その『まさか』…よ。今日からイアイアン君はまたA級2位に復帰ってこと」

「やっぱり…おめでとうございます!」

 

 自分達だけでなく、師匠であるアトミック侍を始めとする数多くのS級たちが予期していた事が遂に現実となった。

 惚れた弱みというか、まるで自分の事のように喜んでいた。

 

「こんな状況でなければ、もっと純粋に祝えたんですけどね…」

「こればっかしは仕方がないわよ」

「そうですね。それよりも、あの宙に浮いている巨大な物体は一体…?」

「宇宙戦艦ですってよ」

 

 さっきからずっと蚊帳の外になっていたタツマキが痺れを切らして話に介入してきた。

 S級2位という大物の存在に、流石のイアイアンも驚いていた。

 

「せ…戦慄のタツマキッ!? どうしてパチュリーさんと一緒に…?」

「さっきからずっといたわよ! アンタが私に気が付いてなかっただけでしょうが! というか、こっちに来る時に分からなかったのッ!?」

「いや…後ろからはアイツに隠れてパチュリーさんの姿しか見えてなくて…」

「ムキー!! なんなのよもー!!」

 

 こんな状況なのに癇癪を起こすタツマキ。

 これもまた強者の余裕というやつなのだろうか。

 

「まぁまぁ…。それよりも、イアイアン君が来てくれることは本当に有り難いわ。今は少しでも多くの戦力が必要な時だから」

「みたいですね。俺で良ければ幾らでも力をお貸しして……なっ!?」

「ふーん……?」

 

 イアイアンの剣によって倒されたかと思った宇宙人であったが、あろうことか何事も無かったかのように立ち上がり、しかも斬られた部分が再生されていた。

 

「なんか違うのが出て来たな。随分と好戦的だ」

「しかも、中々に警戒心も高い」

「よし。こいつも殺そう」

「いいと思うよ」

「粉々にして、殺そう」

 

 これまでにも再生能力のある怪人がいなかったわけじゃない。

 例えば、あの深海王も高い再生能力を持っていた。

 だが、彼の場合は『水を吸収する』という条件が必須であり、他の怪人たちも同様に『条件付き』というリスク付きでの再生能力だったが、こいつは明らかに今までの連中とは体の再生力が桁違いだった。

 完全な無条件で完璧な再生を行っていた。

 

「そんな馬鹿な…!? 今のは間違いなく会心の一撃だった! それを受けてもピンピンしているとは…こいつは不死身なのか…!?」

「この世に『不死身』なんて概念はどこにも無いわ。生ある者は必ず死ぬ。これは自然の摂理よ」

 

 イアイアンに説明をしながら、パチュリーは自慢の頭脳をフル回転させ始める。

 敵の特徴を、再生の秘密を探る為に。

 

 その時だった。

 相手がいきなり体を大きく捻りつつ、その左腕を巨大な槌のような形状へと変化させた。

 構えからすぐに敵が何をしようとしているのか、誰を狙っているのかを悟り、パチュリーは超高速詠唱を行った!!

 

「……!!」

「「「「「死ね」」」」」

 

 それはまさに刹那の一撃。

 巨大な槌がイアイアン目掛けて打ち出され、彼は反射的に避けようと体を横にずらそうとするが…その強力な攻撃は見えない壁によって跳ね返された。

 

「「「「「なんだとっ!?」」」」」

「これは…パチュリーさん得意の物理攻撃完全反射魔法『テトラカーン』…!」

「ちょっちヒヤッとしたけど、なんとか間に合ったみたいね…」

 

 正直、あとコンマ一秒でも遅かったら、イアイアンの左腕は跡形も無く消し飛んでいたかもしれない。

 自分が付いていて、そんな事になったりしたらアトミック侍に対して余りにも申し訳がない。

 

「防ぐんじゃなくて跳ね返す…ね。……結構やるじゃない」

 

 本当に小さい声ではあったが、あのタツマキが他者を認める発言をした。

 もしも他の二人に聞こえていたら、顔を真っ赤にしてプンスカしていたことだろう。

 

「イアイアン君…無事?」

「は…はい。手伝いに来たつもりが、逆に助けられてしまいましたね…」

「別に気にしなくてもいいわよ。困った時はお互い様…でしょ?」

 

 この精神…強大な力を持っていても決して奢ることなく、助け合う事を忘れない。

 だからこそ納得できてしまう。この少女が師匠と同じ場所に立てたことが。

 

「なんだ今のは…攻撃が跳ね返されたぞ」

「あの地球人の雌がやったのか」

「一筋縄ではいかない…本気で殺そう」

「いいと思うよ」

「慢心、ダメ、絶対」

 

 向こうもまたコチラに対する警戒レベルを上げたようで、どうやらここからが本番のようだ。

 それを表すかのように、敵に大きな動きがあった。

 

「なんだ…あれは…!?」

「分裂しようとしている…?」

「まるでプラナリアね」

 

 体が液状になってパン生地のようにグニャグニャし始めたかと思ったら、ブチブチという音と共に引き千切れ始め、僅か数秒で敵は五体の人型へと分裂した。

 

「この三匹は俺が始末しておくから、他は任せたぞ」

「了解」

「あのデカい建物が壊れてない。だから壊しに行く」

「いいと思うよ」

「俺、船、見てる」

 

 今…なんて言った? デカい建物を壊す?

 あそこには今、市民たちの保護と他のヒーロー達の援護をする為の車両を準備しているヒーロー協会の職員たちがいる!

 下手に攻撃なんてされて準備が妨害される事だけは絶対にあってはならない!

 

「タツマキ! あなたは上の船の様子を見てて! もしもまた砲撃して来たら、お得意の超能力で防いで!」

「アンタはどうするのよ?」

「イアイアン君と一緒に、奴らが協会本部に近づくのを防ぐ! いいわね!」

「はい! 任せてください!!」

 

 こっちは三人で、向こうは五人。

 だが、タツマキは万が一に備えて動く事は出来ない。

 つまり、実質的に今のこちらの戦力は二人だけという事になる。

 

「イアイアン君。これから君にかけられるだけの補助魔法を全部かけるから、私の攻撃魔法に巻き込まれないようにね!」

「了解で……!?」

 

 瞬間。五体纏めて圧倒的な斬撃によって吹き飛んだ。

 こんな芸当が出来る人間を二人はよく知っていた。

 

「随分と待たせちまったな…お前ら」

「師匠!」

「アトミック侍!」

「…遅いのよ」

 

 ニヒルな笑みを浮かべながら、現代最強の剣士が参戦した!

 今の状況で、こんなにも心強い援軍はいない!

 

「ここに来る途中でシッチから通信で話を聞いた。市民たちを避難させる為に他のヒーロー達を総動員させたらしいな?」

「そうでもしなきゃ全力で戦えないと思ったから。最悪、市民を人質にしてくる可能性もあるから」

「そうだな。…で、今斬ったのは何だ?」

「あの船からの刺客。最初の一撃は私とタツマキの二人で防いだけど、そしたら次は直接、送り込んできたって訳」

「成る程な」

 

 そうして現状報告をしていると、バラバラになった状態にも拘らず敵がアトミック侍に向かって纏めて襲い掛かってきた!

 

「気を付けてください師匠!! この怪人には剣での攻撃は効果が薄いみたいです!!」

「んなことは、さっき斬った時から既に承知してんだよ。けどな…そんなのは関係ねぇ!!!」

 

 強襲を掛けてきた相手にアトミック侍は逆に向かっていき、そのままの勢いで神速の剣を繰り出す!!

 それは、全てを粉々にする閃光の如き一撃!!

 

「邪魔なんだよっ!!!」

 

 敵の拳は僅かも触れることなく、文字通り頭から爪先まで粉微塵と化した。

 余りにも速すぎる攻撃速度に、パチュリーも冷や汗を掻きながら大きく目を見開いた。

 

「あれが本気を出したアトミック侍の攻撃…全く目で追えなかったんですけど…」

「師匠の剣は世界一ですから」

「みたいね…あはは……」

 

 これがS級上位の実力なのか。

 バングやタツマキとはまた別の意味での最強であると心で理解した。

 

「ったく…人が話している途中で邪魔すんじゃねぇよ。そういや…先に出たサイタマはどうした? 姿が見えねぇが……」

「あいつなら…あそこよ」

 

 パチュリーが宇宙船を指差すと、アトミック侍は『あぁ…』と呟いて納得した。

 

「…行ったのか。一人で」

「うん」

「フッ……なら、俺たちは俺たちでこっちを守らねぇとな」

 

 剣を握り直すと、粉々にした敵が再び一体に融合して復活したが、今度はどうも様子が違った。

 さっきまでは頭部が五つあったが、今は頭部が一つになった代わりに目が五対十個に増えている。

 

「アハハハハハハハハハハハハッ!!! まさか、こんな辺境の惑星にこの俺と互角に渡り合える生命体がこんなにも多くいたとはな!!! いいだろう…その力で我々の侵攻に抵抗してみせるがいい!!!」

「惑星だと? って事は、やっぱりテメェらは宇宙から来たのか? で、あの空に浮かんでるデカブツにはテメェのお仲間が大量に乗ってるって事か」

 

 普通ならば、ここで少なからず動揺するのだろうが、彼らにはそれは無い。

 敵の拠点である空飛ぶ船には今、最強のヒーローが向かったのだから。

 

「パチュリーちゃん。アトミック侍。ワシらも手伝うぜ」

「テメェらが、さっきのでっかい大砲をぶっ放しやがったのか…ゴラァ…!」

「ヴフフフフ…だとしたら、どうだというんだ…?」

 

 バングに金属バットも加わり、数で圧倒され始めているのにまだ余裕を隠さない。

 そんな敵の背後に、二つの巨大な影が回り込んだ。

 

「パチュリー君とタツマキが防いでくれたとはいえ……」

「大勢のか弱い男子達を怯えさせたことは絶対に許せない!!」

 

 タンクトップ・マシンガンッ!!!

 エンジェル☆アンブレイカブル・ラッシュッ!!!

 

 タンクトップ・マスターとぷりぷりプリズナーの二人から放たれる圧倒的ラッシュ!!

 攻撃の最中、プリズナーは海人族との決戦の時を思い返していた。

 

(あの時…パチュリーちゃんの戦いを見て俺は知った。攻撃する時に込めるべきなのは『殺意』ではなく『信念』だということを!! だから俺は込める…この拳に俺の…俺だけの信念を!!!)

 

 それは『砕く拳』ではなく『貫く拳』。

 属性が変わった事で、その威力は何倍にも増幅された!!

 

「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」」

 

 パワー自慢のS級二人の同時攻撃を前にし、敵宇宙人の身体はその拳だけでいくつもの大きな穴を空けていた。

 無手でこれだけの攻撃力を出せるとは、矢張りS級は伊達ではない。

 

「なかなか…のパワーだな。だが、これしきで俺達を倒すことなど…」

 

 あれだけの攻撃を受けてもまだ再生し続ける肉体に、イアイアンは驚愕するしかなかった。

 自分の攻撃ならばいざ知らず、S級ヒーロー二人掛かりでも仕留めきれないなんて。

 

「ぷりぷりプリズナーさん!! タンクトップマスターさん!! そいつの再生能力は余りにも異常すぎます!!」

 

 必死にイアイアンが注意を促す中、パチュリーは睨み付けるようにして目の前で再生を続ける敵の肉体の観察をし続ける。

 そこで気が付く。明らかな違和感に。

 

(これはどういうこと…? アイツの体…何かがおかしい…?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




続々とヒーローが参戦し続けます。

今回もまた深海王編の時のように、別の場面でA級たちとかにも活躍して貰う予定になっています。

そして、またもや『彼』がフライングで登場するかも…?



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