なぜ木曜日かって?
ワンパンマンの更新日に合わせてです。
宇宙戦艦の中枢部にある巨大な部屋。
そこにある玉座に腰かけながら、ボロスは外の様子を眺めていた。
「…グロリバースが敗れたか。まさか、奴の強力な溶解液を真っ向から攻略する者が現れるとはな」
彼の目の前には投影型のモニターが幾つもあり、そのうちの一つにビルの屋上にて休憩をしているガロウが映し出されていた。
「この男も実に面白い。まだ覚醒していないようだが、それでも成長して行けば全宇宙規模でも最強クラスの戦士になるだろう。そして…」
別のモニターには、地球に付いて調査した結果…即ち、ヒーロー協会に関する情報が映し出されていた。
「ヒーロー協会…このような組織が地球には存在しているのか。ヒーローとは地球の言葉で『英雄』という意味…。成る程、確かに彼らのやっている事は『英雄』と呼ばれるに相応しい」
A市の各地でボロスの部下たちの侵攻を押さえつつ、一人でも多くの市民たちを街の外へと脱出させようと多くのヒーロー達が奮戦している。
他の惑星でも似たような光景自体は何度も目撃してきたことはあるが、ここまで自分達を圧倒しているのは今まで無かった。
「文明レベルこそ低いが、平均的な戦闘レベルだけで言えば確実にこちらを上回っている。その証拠が…これか」
ボロスが映像をスライドさせると、ヒーロー協会の名簿が映し出される。
彼はそれを興味深そうに一つ一つ眺めていった。
「ヒーローにはそれぞれ『C級』『B級』『A級』『S級』の四階級が存在し、その中でも『S級』と呼ばれる者達の実力は異次元の領域に達している…か。つまり、このS級は我らで言うところの最上位戦闘員と同じか。そんな連中を18人も揃えているとは。矢張り、予言に従って地球まで来たのは間違いではなかったか」
気分よく映像を見ていると、そこにブリッジから通信が入ってきた。
通信の主は艦内に残された最後の最上位戦闘員であるゲリュガンシュプだった。
『ボ…ボロスさま、大変です! たった今、グロリバースが倒されました!』
「知っている。見ていた」
『まさか、あのグロリバースが原住民に倒されるとは…。地上の巨大建築物付近で戦っているメルザルガルドも苦戦しているようだし…』
「メルザルガルドが倒されるのも時間の問題だ」
『な…なんですとっ!? そんな馬鹿なッ!?』
無限の再生力を持つメルザルガルドが倒される。
長い間、ずっと仲間だったゲリュガンシュプには到底信じられない発言だった。
「奴が戦っているのは、この星でも最強の戦士たちだ。しかも、もう既に弱点を看破されている」
『で…ですが、それでもメルザルガルドがそう簡単にやられるとは…』
「向こうには優れた戦士だけではない。どうやら…最高の『軍師』もいるようだ。もしかしたら『攻略法』すらも見抜かれているやもしれんぞ」
『こ…攻略法…?』
これは、今はまだボロスしか知らない事実。
他の者達は本気でメルザルガルドが無限に再生する能力を持っていると疑っていないが、彼は知っている。彼だけが知っている。
(メルザルガルドには致命的とも言うべき弱点…『癖』が存在している。それは奴自身も気が付いていない事。仮に気が付いていても、自尊心が強いメルザルガルドはこちらの忠告なんぞ絶対に聞かないだろうがな)
ボロスはもう既に、自分達の敗北を悟っていた。
だが、彼は悲観などしていない。
真の目的は地球の侵略などではないのだから。
「…ゲリュガンシュプ」
『は…はい! なんでしょうか?』
「現在、艦内で暴れている侵入者を俺の元まで案内してやれ」
『えぇっ!?』
「折角、来てくれた『お客様』だ。丁重に持て成さねばな」
『ま…まさか、ボロス様…貴方は…』
「いいな。任せたぞ」
『はっ…了解致しました…』
通信が切れ、ボロスの視線はモニター越しに移っている紫の髪の少女…パチュリーに向けられる。
「では…俺も『もう一人の客』を呼ばねばな」
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A市東部。
そこでもヒーロー協会とヒーロー達が協力して市民の避難誘導を行っていた。
「おうおう…こりゃまたゾロゾロとやってきやがって…よっ!!」
「まさか、SF映画みたいなことが現実にも起こっちまうとはな!!」
「「ぶぎゃぁぁぁあぁぁぁぁぁぁっ!?」」
右から襲い掛かって来た一団が鋭い槍にて貫かれ、左から襲い掛かって来た一団が稲妻を纏った蹴りにて打ち砕かれる。
A級ヒーロー『スティンガー』と『イナズマックス』の前では、宇宙人の雑兵などは敵ではなかった。
「そういや聞いたか? 今回の作戦…立案したのってパチュリーちゃんらしいぜ」
「らしいな。本部に作戦提案できるって事は、間違いなくこの間の深海王との戦いが認められてS級に昇格したんだろうぜ」
「スゲェよなぁ…今のご時世に同じA級からS級昇格者が出るなんてよ…」
「パチュリーちゃんならいつかなるとは思ってたけどな」
「同感!!」
話しながらも攻撃の手は止めず、次々と敵を撃破していく。
油断をしたせいで深海王に倒された過去を持っている二人は、もう決して油断なんてしない。
彼ら二人は、パチュリーを始めとするヒーロー達から多くの事を教えられたのだ。
そんな彼らの後ろでは、C級ヒーロー達が協会の特殊車両に市民たちを誘導していた。
「タンクトップタイガー! そっちはどうなってるっ!?」
「こっちは今、俺が背負ってる婆ちゃんで最後だ! オールバックマン、そっちはっ!?」
「全員避難は完了した! あと少しだ!」
「よし! あと一息だ! 皆…頑張ろう!」
「おう! 協会本部付近じゃ今…マスターやパチュリーさんを始めとしたS級ヒーロー達が敵幹部と戦ってるって話だしな…! 少しでもマスター達が安心して戦えるようにしねぇとっ!」
現場のC級たちを指揮しているのは、1位の無免ライダー。
自慢の機動力と指揮能力で、予定以上にスムーズに避難が進んでいた。
「頑張ってるな…あいつ等」
「…だな。きっと、揃いも揃ってパチュリーちゃんに影響されちまったんだろうぜ」
「それは俺達も…だけどな」
頭の上で槍を振り回してから両手で構え、気を全身に纏わせながら震脚をする。
二人のA級ヒーロー達の目が強く、鋭くなった。
「こっからはちっとばっかしギアを上げていくぜ!!」
「地球人の意地…見せてやろうじゃねぇかっ!!」
「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」」
爆発的に体内の気が膨れ上がり、二人の全身を覆っていく。
スティンガーの身体からは眩いまでの光が放たれ、イナズマックスの全身にはその名の通りに紫電が迸っていた。
「大人しく俺達の餌になりやがれ! 地球人がッ!!」
「宇宙の辺境に住む田舎人風情が粋がるんじゃねぇっ!!」
怒涛の勢いで敵性宇宙人の大群が迫ってくる。
そんな危機を前にしても、二人のヒーロー達は決して退くことはしなかった。
「刹那は無限…その一瞬に我が全てを賭ける!!」
「迸れ雷光っ!! 連撃いくぜぇぇぇぇっ!!」
それは、光を纏った神速の一撃!!
それは、雷を纏った怒涛の連撃!!
「翔破裂光閃!!!」
「疾風雷閃舞!!!」
光と雷の連続攻撃によって、宇宙人たちは塵と化していく。
その槍は全てを貫き、その蹴りは全てを砕く。
まさか、自分達がここまで倒されると思っていなかった宇宙人たちは後退し始める者が出てきた。
「な…何だこいつらはッ!?」
「つ…強すぎる!! なんでこんな連中が辺境の惑星にいるんだよっ!?」
「に…逃げろっ!! 撤退…撤退ぃぃぃぃぃっ!!」
背中を見せて逃げていく敵宇宙人。
幾ら敵とはいえ、背中を狙うような真似はしないスティンガーとイナズマックスだった。
「これで、市民の避難と敵の掃討が完了だな」
「俺達はこのまま別の地区の応援に向かうが、無免ライダーたちはどうする?」
「こっちは、君達とは別方面の地区の応援に行くことにするよ」
「分かった。お互いに頑張ろうぜ!」
やるべき事を終えても彼等は動くことを止めない。
仲間達が戦っている限り、ヒーロー達が休む事は無いのだ。
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一方その頃。
A市の南東部にて、とあるB級ヒーローの一団が市民の避難誘導を行っていた。
「まさか…この私がこんな事に駆り出されるなんてね…」
そう呟いているのは、黒いドレスを纏っているスタイル抜群の美女。
彼女の名はB級1位『地獄のフブキ』。
『フブキ組』というB級ヒーロー達で構成された団体のリーダーをしており、彼女自身も高い実力を持っている。
「まず間違いなく、『あの人』も戦ってるんでしょうね…」
ここからでも見えるA市中央部に屹立しているヒーロー協会本部。
そこからひしひしと感じる強大な力同士のぶつかり。
まず間違いなく、S級ヒーロー達と敵の幹部が戦っているのだろう。
「フブキさま! こちらの避難は完了しました!」
「分かったわ」
部下の報告を聞きながら、彼女に近づこうとした宇宙人を見えない力『超能力』で浮かせた無数の石つぶてで蜂の巣にする。
「おい! B級やC級は避難誘導に専念しろって言われてるだろ!」
「知ってるわよ。けど、戦力が少ない以上は私も戦うしかないじゃない。大丈夫。避難誘導は私の部下たちがやってるから」
「そうか……」
反論されて溜息を吐いているのはスネック。
この地区にやって来たA級は彼だけだった。
A級全員をA市全体に派遣しようとすると、必然的にこんな場所も出てきてしまう。
スネックは見事にその貧乏くじを引いてしまったわけだ。
「この私の許可も無しにB級からA級になった奴もいるし…そのA級にも新しい『化け物』が追加されてる…。こんな場所で避難誘導ばかりをしている訳にはいかないのよ…!」
フブキが言っているのは、こあとパチュリーの事なのだが、彼女はまだパチュリーがA級からS級に昇格した事を知らない。
それを知った時、彼女はどんな反応をするのだろうか。
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・・・
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・
それは突然起こった。
パチュリーがメルザルガルドの弱点を見抜き、完全に場の流れがヒーロー達に傾いた…その時だった。
「なに…これ…」
いきなりパチュリーの体が宙に浮き始めたのだ。
普通ならば驚く所だが、パチュリーは自由に空を飛ぶことが出来るので、それを知っている面々はそこまで過剰な反応はしなかった。
「パ…パチュリーさま…?」
「一体どうしたんじゃ? 急に浮いたりして…」
「違うわ…これは私がやってるんじゃない…!」
「なんだと?」
こあとバングが不思議がっていると、パチュリーがそれを否定する。
アトミック侍が訝しむと同時に、メルザルガルドもまた一瞬だけ動きを止めて宇宙船を見上げた。
「この感じは…まさか…あの方が…!?」
今までずっと余裕ぶっていたメルザルガルドが本気で動揺している。
それだけで、パチュリーを浮かせている者が何者なのかが予想出来た。
「どうやら…パチュリー君を御指名…という訳か」
「そうみたいね。皆」
見えない力で連れ去られようとしているにも拘らず、パチュリーはいつもと変わらぬ笑みを浮かべて全員を見渡した。
「ここはお願いね。私はちょっと行ってくるわ」
「パチュリーさん…」
「ジェノス君、こあの事をお願いね。こあも、ちゃんと皆の事を援護するのよ」
「「はい!」」
徐々にパチュリーの姿が消えていく。
テレポートをする寸前になっているのだろう。
それを察したタツマキは、思わず声を荒げた。
「パチュリー! 宇宙人なんかにやられんじゃないわよ!」
「あら? もしかして私の事を心配してくれてるの?」
「ち…違うわよ! アンタみたいのでも、戦力としていないと困るだけよ! ア…アンタの事なんてちっとも心配なんてしてないんだから!」
「まるでお手本のようなツンデレ…。ま、今はそーゆーことにしておきましょ。んじゃね」
最後に軽く手を上げてから、パチュリーは姿を消した。
「あの小娘…終わったな」
「なんだと?」
「どれだけ強大な力を持っていようとも…『あの方』には絶対に勝てない。何故なら、宇宙最強の実力を持つお方なのだからな」
宇宙最強と言われても、不思議と驚かない。
あの艦には今向かったパチュリーだけではなく、サイタマも既に入り込んでいるから。
あの二人が一緒に戦えば、宇宙最強だろうがなんだろうが倒せそうな気しかしない。
戦いは…遂に佳境へと突入する。
次回、遂にボロスと出会う?