S級ヒーロー 七曜のパチュリー   作:とんこつラーメン

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本当の本当にお待たせしました。

今回から本格的に連載再開です。

再会して早々にボロス編のクライマックスなんですけど。









決着の時

 それは、サイタマがボロスに月まで吹き飛ばされ、脚力だけで地球に戻ってきた直後の事だった。

 

「な…なんだっ!? この巨大な振動はッ!?」

「上を見ろ! あの宇宙船が傾いてやがるぞ!」

 

 タンクトップマスターが驚き、金属バットが上空を指差すと、そこではA市を上空を覆い尽くしている超巨大な宇宙船が明らかに傾いていた。

 

「ま…まさか、パチュリーちゃんとサイタマくんが敵と戦っているのか…?」

「十分に有り得るな…。あいつ等なら、余波でこれぐらいの事を起こしても全く不思議じゃねェ」

 

 既に二人の実力を十分過ぎるほどに把握しているシルバーファングとアトミック侍が宇宙船を見上げながら呟く。

 あの巨大な物体が大きく傾くほどの闘いなんて全く想像が出来ない。

 間違いなく、人知を超越しているのは確かだった。

 

「あいつ等が戦っているのは良いけどよ…このデカブツ、落ちてきたりしねぇだろうな…?」

「その辺は心配いらんじゃろう。サイタマ君一人だけならばともかく、あのパチュリーちゃんも一緒にいるんじゃ。仮に落下しそうになっても、必ずなんとかしてくれる筈じゃ」

 

 万が一の時の事を危惧する金属バットを余所に、S級ヒーロー達の中で最も二人の事を信頼している一人であるシルバーファングは、いつもの余裕を全く崩さなかった。

 

「えぇ…その通りです。パチュリー様なら…きっと…!」

「俺もこあの意見に賛成だ。サイタマ先生とパチュリーさんが手を組めば、倒せない敵など絶対にいないし、不可能なことも無い」

「こあちゃん…ジェノスちゃん…」

 

 二人の弟子たちが自分達の師を信じて待っているのだ。

 仲間である自分達が信じなくてどうする。

 ぷりぷりプリズナーは気を引き締め直す為に自分の頬をパチンと叩き、宇宙船を睨み付ける。

 

「そうだ…俺は信じる。あの子達ならきっと、人々の未来を守ってくれると」

「あぁ…彼らはいつだって、絶対的な絶望を覆してきた。今回も必ず…!」

 

 二人との共闘経験があるぷりぷりプリズナーとタンクトップマスターもまた、パチュリーとサイタマを信じて腕組みをする。

 彼らの勝利の瞬間まで、梃子でもここを動かないと言う決意表明だった。

 

 そして、そんなヒーロー達と同様に上空を見上げるタツマキ。

 表情自体はいつもの通りだが、その心情は全く違っていた。

 

 生まれて初めて自分と渡り合った少女。

 今日初めて会ったばかりなのに、不思議とウマが合った。

 自分に地上の事を託し、敵のボスとの決戦に挑んだパチュリーに対し、タツマキは無意識の内にポツリと呟いていた。

 

「絶対に負けるんじゃないわよ…パチュリー…。必ず…帰って来なさい…!」

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 さも当たり前のように、己の脚力だけで地球帰還を果たすという偉業をあっさりと果たしたサイタマ。

 それを目の前で見たボロスは、己の中にある闘争心が火山のように噴火するのを確かに感じていた。

 

「あぁ…そうだ。それでいい…それでこそだ! サイタマ!!」

 

 腰を低くし、今まで以上に全身に力が漲る。

 それに伴いボロスから激しい紫電が迸った。

 

「たった今…確信したよ。俺は…この瞬間の為だけに今まで生きてきた!! だからこそ!!」

 

 瞬間、ボロスの身体が一筋の流星となってサイタマに襲い掛かる。

 常人では決して視認すら不可能な超神速。

 だが、この場にいるサイタマとパチュリーにはハッキリと見えていた。

 

「お前に!! この俺の全てをぶつけたくなった!!!」

「奇遇だな…俺もだよ」

「え? ちょ…まっ…!」

 

 何かを言う暇も無く、棒立ちしていたサイタマにボロスが突貫し、そのまま二人は宇宙船の甲板を飛び出して激しい空中戦を繰り広げ始めた。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」

 

 ボロスの裂帛の気合いと共に凄まじい連打が放たれる。

 一発一発が一撃必殺の威力を持つ拳。

 だが、それすらもサイタマは簡単にガードしてみせた。

 

 それを見上げながら、完全に置いて行かれたパチュリーはポカーンとなっていた。

 

「あーあ…完っ全に二人だけの世界に入ってるし。ボロスは当然として、あのサイタマも凄く久し振りに戦いに夢中になってる。あんなアイツを見るの…いつ振りだろ」

 

 基本的にサイタマはパチュリー以外に全力が出せる相手がいない。

 だが、そのパチュリーが戦う事は滅多に無いことだった…今までは。

 それ故に理解出来てしまう。今のサイタマの心情が。

 

「ま…いっか。男同士で仲良く殴り合ってるなら、その間に私は私で『自分にしか出来ない事』をしましょうか」

 

 その場に座り込んでから甲板に手を当て、目を瞑ってから精神と魔力を集中させ、静かに唱えた。

 

「トレース…オン」

 

 魔力回路をフル回転させ、この巨大な船体の全ての内部構造を読み取っていく。

 どこが丈夫で、どこが脆いのか。

 どんな風な仕組みで、どうすれば壊せるのかを。

 

「…成る程ね。伊達にこんだけデカい図体はしてないってことか。こりゃ、生半可な魔法じゃビクともしないでしょうね。はぁ…仕方がない」

 

 無事にボロスを撃破したとしても、A市の真上にこの巨大な宇宙船を放置しておくわけにはいかない。

 必ず、なんらかの形でどうにかしなくてはいけない。

 

 溜息交じりに『覚悟』を決めると、サイタマに殴り飛ばされて来たのか、ボロスが目の前に落下してきた。

 

「ぐっ…そうだ! そうでなくては面白くない!!」

「そーかよ」

 

 さっきまで受けに回っていたサイタマが、初めて攻めに転じる。

 自ら前へと踏み出し、体勢を崩したボロスに追撃を与えた。

 

「『連続普通のパンチ!』」

 

 『普通』と言ってはいるが、その威力はどう考えても『普通』ではない。

 一発一発の込められた破壊力は、強化後のボロスの肉体を崩壊させていく。

 

「オ…オォォォォォッ!! こ…これはぁぁぁっ!」

 

 一瞬で全身が粉々に砕け散るが、これまた一瞬で元の姿に再生する。

 だが、どれだけ肉体が再生しても与えられたダメージまでは治癒出来ないようで、その表情と顔面から滴り落ちる血で今のボロスがどれだけ追い詰められているかが伺えた。

 

「うぉっ。また再生しやがったし」

 

 サイタマには単なるビックリ要因でしかないようだが。

 

「随分とお楽しみのようじゃないのよ。この私を蚊帳の外にして」

「げ…パチェ…」

「ククク…別に貴様の事を無視していたわけではない…。その証拠に今から…」

 

 ボロスの肉体と周囲からこれまで以上にエネルギーが溢れ出る。

 それが全て彼の単眼に集まり、極限まで凝縮していく。

 

「この俺のもう一つの『奥義』を見せてやる!!」

「「もう一つって…」」

 

 肉体強化以外の奥義。

 この様子から鑑みて、明らかに攻撃系の技だった。

 

 まるで、己の中にある力の全てを開放するかのような光景は、サイタマとパチュリーの周囲だけでなく、宇宙船全体、果てはA市全域を激しく鳴動させた。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「ま…街全体が揺れているッ!?」

「おいおいおい…これマジで大丈夫なのかッ!?」

 

 今まで以上の激しい揺れに全員が驚きを隠せない。

 だが、S級上位の者達は流石と言うべきか、全く動揺している様子を見せない。

 

「この揺れは…間違いないわね」

「そうじゃな」

「この一撃で…決着がつくな」

 

 それは、異次元級の超能力者と、異次元級の武人だからこその発言。

 タツマキ、シルバーファング、アトミック侍の三人には分かるのだ。

 サイタマとパチュリーが戦っている相手は、こちらの常識なんて微塵も通用しないような化物であると。

 その化け物に最後の切り札を切らせるまでに追い詰め、戦いは遂に終局へと向かって加速しているのだと。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 ボロスに秘められたもう一つの『奥義』。

 そのパワーをサイタマとパチュリーは、その肌でビリビリと感じていた。

 

「なんだこりゃ…」

「なんて凄いエネルギー…帽子が飛んじゃうじゃない」

 

 サイタマは大して驚いた様子は無く、パチュリーに至っては普通に帽子の心配をしていた。

 

「今の俺の身体に残された全ての生命エネルギーを完全開放し…お前達もろともに地球を消し飛ばしてやる!!」

「「え」」

 

 地球を消し飛ばすとな。

 それは拙い。流石に拙い。

 地上にいる皆や街もそうだが、自分達の家も消し飛んでしまう。

 流石にそれは勘弁願いたい。

 

「…こうなったらサイタマ。アンタも『奥義』を使うしかないんじゃない?」

「奥義って、俺にはそんなの……あ」

 

 あった。たった一つだけ。

 と言っても、実際にはお世辞にも『奥義』とは言い難い技だが。

 

 サイタマが今のような『強さ』を手に入れた頃、彼は『とある漫画』にハマって、登場人物の一人がやっていた『感謝の正拳突き』がカッコよく見えたらしく、それを真似して一時期、正拳突きの練習をやっていた事がある。

 と言っても、当然のように長続きはせずに半月程度で止めてしまったのだが。

 だがしかし、その短期間の間にサイタマは見事に正拳突きの『型』だけは完璧にマスターしていた。

 『今』はまだ本格的に拳法や格闘技に興味が無いサイタマが唯一使える技…それが『正拳突き』だった。

 サイタマのパワーから放たれる正拳突きは、適当な構えから放たれるパンチとは比較にすらならない程の威力を誇り、それ故に彼はそれを勝手に自分の『奥義』にしていた。

 

「しゃーない…やるか」

「お願いね。私のサポートが無くても大丈夫でしょ」

「おう。任せとけ」

「ガンバレー」

 

 大きく息を吸って…肺の空気をゆっくりと全て出し切る。

 炭田に力を籠め、腰を低くしながら右拳を腰の位置まで持って来てから大きく引く。

 

「その構え…お前も奥義を出すか!! 良いだろう!! 俺の奥義とお前の奥義…どちらが上か…これが最後の勝負だ!!!」

「あぁ…これで終いにしようぜ。いい加減にな」

 

 刹那、比喩でなく時が止まる。

 静寂が支配し、一瞬だけではあるが全てが黒く染まった。

 

「くらえ!!! このボロス最大の奥義を!!!」

 

 

 

 

          崩   星   咆   哮   砲

 

 

 

 

「それじゃあ…いくぜ。これが…俺の『奥義』だ」

 

 

 

 

 

           天   地   覇   煌   拳

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、全てが閃光に包まれた。

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 




早く勘を取り戻せるように頑張ります。

次回は決着後の話です。




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