S級ヒーロー 七曜のパチュリー   作:とんこつラーメン

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実は、休載中も話だけは考えていまして。

少なくとも、怪人協会編やガロウ編の先の、ネオヒーローズ編の序盤辺りまで簡単ではありますがプロットが出来ていたりします。

まぁ、後は私のモチベーションと体力次第ですね。

余り期待せずに気長に待っていてください。







今度は私の出番

 それは、サイタマとボロスの最強の一撃が激突した直後の出来事。

 

「な…なんだっ!? 今の凄まじい炸裂音はッ!?」

「圧倒的に強大な二つの力が…ぶつかり合った音…なのか…!?」

 

 遥か上空にある宇宙船での戦いだと言うにも拘らず、その衝撃波は地上だけに留まらず、A市全体にまで及んだ。

 

「空気が…大気が震えておる…!」

「これがサイタマの本気ってことか…!」

 

 先程まで冷静だったシルバーファングとアトミック侍も、今回ばかりは流石に眉を潜めた。

 非常に遠くで起きている闘いだと言うにも拘らず、ここまで緊張感が伝わってくる。

 全身の肌がピり付くような感覚。

 強者同士の死闘でしか発生しない現象。

 当事者でない彼らにも、それが伝わっていた。

 

「お…おい…! ちょっと待てよ…! あの船…なんか壊れていってねぇか…?」

 

 冷や汗を垂らしながら金属バットが指を指す。

 彼の指摘通り、宇宙船の至る所から火花が散り、火災が発生している。

 誰の目から見ても、明らかに崩壊寸前になっていた。

 

「これは…先生やパチュリーさんと、敵のボスとの戦いの余波で発生したものなのか…!?」

「な…なんかさっき、一瞬だけ凄い衝撃と一緒に空が割れたような気がしましたけど…」

 

 ジェノスの予想は的中しており、こあの言った事もまた正しかった。

 この場では確認できない事だが、ヒーロー協会本部では確かに観測していた。

 先程の衝撃にて、地球の空が『割れた』ことを。

 

「勝ったのは良いけど…これどうするのよ?」

「「「「え?」」」」

「いやだって…このままだと、あのデカブツ…確実に街に落下するわよ?」

「「「「あ」」」」

 

 タツマキの御尤もな言葉に全員が唖然となる。

 宇宙人を倒す事ばかり集中していたばかりに、あの宇宙船をどうにかすることを完全に忘れていたのだ。

 

「ど…どどどどどどどどどーしましょー!?」

 

 真っ先に目をグルグルさせて混乱したのはこあ。

 彼女の反応はある意味では当然だった。

 

 地上がそんな事になっているのならば、当然のように宇宙船の中はもっと大混乱になっている訳で…。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁっ!! 船底の動力球が完全に壊れたぁぁぁぁぁ!?」

「じょ…冗談だろ…? ここからどーするんだよ…!?」

「ボロスさまぁぁぁぁっ!! 幾らなんでも本気出し過ぎですからぁぁぁっ!!」

「ちくわ大明神」

「一刻も早く、ここから出るぞ!! 脱出艇はどこだっ!?」

「こ…ここから落ちたら死ぬ…よな…やっぱり…」

「明太子大統領」

「やばいよ! やばいよ~!」

「おいこら! 誰だ俺の尻尾を踏んでる奴はッ!?」

「おうち帰りたいよ~!! ママ~!!」

「たらこ大総統」

「いいから走れ!! じゃないとマジで死んじまうぞ!!」

「おいこらそこ! なにつっかえてんだよッ!?」

「なまこ大王」

「なんかさっきから変な事を口走ってる奴がいるんだけどッ!?」

「刺身校長」

「「「「お前かぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」」」

「かまぼこ大魔王」

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 閃光が止み、徐々に視界が正常に戻っていく。

 パチュリーは咄嗟に目を塞いだが、それでも完全にガード出来たわけではなかった。

 

「んん…? 一体どうなったの…?」

 

 パチュリーの視界に一番最初に入ったのは、ボロボロになったマントを靡かせながら立ち尽くしているサイタマの姿だった。

 服や体は随分と汚れてしまったが、本人は普通に無傷。

 

「…終わったの?」

「…みたいだな」

 

 パチュリーの言葉に後ろを向いたまま答えるサイタマ。

 彼の視線の先には、上半身だけの姿で横たわる、見るも無残な姿となったボロスだった。

 

「俺は…負けたのか…」

「驚いた…そんな状態になっても、まだ意識があるのね…」

 

 見た目から察するに、完全に死亡したと思っていたのでパチュリーは勿論、サイタマも目を見開いていた。

 

「やっぱ…お前強いな」

「そうね。あの一撃を喰らって原形を留めているばかりか、絶え絶えな状態とはいえ喋れるだなんて…普通に信じられないわ…」

 

 これまで、サイタマの『正拳突き』を喰らった相手で生きていた物は一人もいない。

 普通に殴るよりも遥かに威力が高い一撃は、一発でも喰らったが最後、木端微塵なんて言葉では済まされず、文字通り細胞一片すらも残らずに完全消滅する。

 だからこそ驚きを隠せない。

 瀕死の重傷とはいえ、それでもボロスはサイタマの最強の一撃を耐えてみせた。

 それを見て改めてパチュリーは確信する。

 このボロスは、サイタマ以外では相手が務まらなかったと。

 

「予言の通り…とても良い…戦いだった…」

「…かもな」

 

 勝者と敗者の短い会話。

 二人にしか分からない空気を前にして、パチュリーは何も言えずにいた。

 

「……………………」

 

 死が目の前に迫って来ていると言うのに、ボロスの心はとても晴れやかだった。

 それは、自分の全てを出し切って戦ったが故なのか。

 例え、その先に『死』と言う名の敗北が待っていたとしても、後悔の念などは全く無かった。

 

「フッ……嘘だな」

「嘘?」

「あぁ…嘘だ。俺には分かる…サイタマ。お前にはまだ余裕があった。余力があった」

「…………」

 

 否定しない。

 この場でも無言が何を意味するのか、それが分からないサイタマではなかった。

 

「そして…それはお前もそうだ…パチュリー…」

「私も?」

「そうだ…。どれだけ強大な魔法を連発しても…お前は『必殺の一撃』を一度も放とうとはしなかった…」

「それは……」

 

 勝ったのに、何故か物凄く悪い気分になった。

 試合には勝ったのに、勝負には負けた…そんな感覚。

 

「お前も…隠しているのだろう…? 『最強の奥義』を…」

 

 見抜かれていた。

 今まで、この事を看破したのはサイタマしかいない。

 彼以外にバレたのは初めてだった。

 

「まるで…歯が立たなかった…。『戦い』にすら…なっていなかった…」

「「…………」」

 

 ボロスの独言が続く。

 パチュリーとサイタマは、それを黙って聞いていた。

 

「矢張り…予言なんてアテにはならなかったな…」

 

 ボロスが吐血をする。

 もう彼の命も時間の問題なのだろう。

 

「サイタマ…パチュリー…お前達は…強すぎた…」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「言いたい事はそれで終わり?」

「なに…?」

 

 ボロスの言葉を聞いた後、パチュリーは倒れている彼の元に歩いて行った。

 

「悪いけど、このまま死なせないから」

「どういう…意味だ…」

「そのままの意味よ。アナタが生きてきた世界は弱肉強食で、勝ったのは私達。なら、敗者らしく私達の言う事を聞いて貰うわよ」

「俺に…生き恥を晒せと…言うのか…」

「そうよ。無断で地球までやって来た挙句、いきなり先制攻撃なんてしてきたんだから、これぐらいは当然でしょ?」

「フッ…そう…かもな…」

 

 今のボロスには何も出来ない。

 仮にここで『殺せ』と言っても、パチュリーはそれを無視してボロスを治癒しようとするだろう。

 

「パチェ。そいつを助けるのか?」

「うん」

「なんで?」

「今の私達には圧倒的に『情報』が不足しているからよ」

「情報…」

 

 そう言うと、パチュリーはボロスに手を翳してから回復魔法を唱えた。

 

「ベホマ」

「お…おおぉぉ…」

 

 ボロスの肉体が眩しく光り輝き、その傷が癒えていく。

 それに伴い、彼の意識も徐々にハッキリとしてきた。

 だが、流石に消し飛んだ部分は元には戻らず、そのままになっていた。

 

「攻撃や補助だけでなく、最上級回復呪文すらも習得しているとは…お前はどこまで万能なんだ」

「さぁね」

 

 魔法では万能かもしれないが、身体能力的な意味ではむしろ不自由している。

 普通に運動不足なパチュリーの自業自得なのだが。

 

「それよりも、まずは…サイタマ! こっちに来て!」

「ほーい」

 

 いつもの調子に戻ったサイタマがパチュリー達に元に走ってきた。

 今の彼にはもう、さっきまでの闘気は無い。

 

「今すぐに、ボロスを連れて地上に戻って」

「お前は?」

「この宇宙船をなんとかする」

「マジで?」

「マジで。つーか、アンタ等が調子に乗って大暴れしまくった挙句、最後の一撃同士のぶつかり合いで完全に宇宙船がぶっ壊れようとしてんのよ! ほら! そこかしこから爆発して、火花とか散りまくってるじゃない!」

「え~? 俺のせいかよ~?」

「アンタとボロスのせいよ! 早くしないと、このデカブツが街に落ちちゃうじゃない!! そうなったら、今までの苦労が全部パーよ! パー!」

「わ…分かったよ…」

 

 怒ったパチュリーには下手に逆らわない方が良い。

 今までの生活でサイタマが学んだ数少ないことの一つだった。

 

「よっこいしょっと。痛くないか?」

「平気だ。それよりもパチュリーよ」

「なに?」

「崩壊寸前となったこの宇宙船を、どうやって止める気だ?」

「別に止めるつもりは無いわ。普通に無理でしょうし。だったらせめて、少しでも細かくぶっ壊すのよ。アンタがさっき言った『最強の奥義』でね。その後は地上の皆に任せるわ」

「最後は他人任せかよ…」

 

 凄いような呆れるような。

 要は、例の隕石騒ぎの時と同じだった。

 あの時と違うのは、今回はパチュリーが壊す側だと言うことだった。

 

「分かったら、さっさと行く。もう余り時間が無いわ」

「…気を付けろよ…パチェ」

「誰に言ってるのよ」

「…そうだな。じゃ、また後でな」

「ん…」

 

 それだけを言い残し、サイタマはボロスを抱えて壊れゆく宇宙船から飛び降りていった。

 

「行ったわね。本当はとっとと済ませたいけど、その前にまずはやらないといけない事があるわね。はぁ…」

 

 一人残ったパチュリーは、静かに精神を集中させ、地上にいる全てのヒーロー達に念話を送った。

 

(地上の皆…聞こえる?)

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 それは、突然の事だった。

 

「な…なんだ?」

「頭の中にパチュリーちゃんの声が聞こえた…?」

 

 パチュリーの念話に真っ先に反応したのはS級ヒーロー達。

 全員が揃って宇宙船を見上げた。

 

 その直後、物凄い勢いでサイタマが落下してきた。

 

「おぉぉぉぉ~…着地成功」

「サイタマ先生!」

「サイタマさん!」

 

 戻ってきた彼に、全員が集まっていく。

 同時に、サイタマが腕に抱えている相手に気が付いた。

 

「サイタマくん! 無事じゃったか…!」

「ん? その腕に抱えている野郎は誰だ?」

「こいつはボロス。今回のボスだよ」

「「「「こいつがッ!?」」」」

 

 こうして抱えていると言うことは、勝負自体はサイタマが勝利したということ。

 それは良いとして、どうしてボロスを抱えているのかが分からなかった。

 

「サイタマ先生。どうして敵のボスを連れて来たのですか?」

「パチェが『連れて行け』って言ったんだ。情報を聞くためなんだと」

「つまり…捕虜と言うことですか…」

 

 敵の大将を捕虜にするとは。

 この事でジェノスの中でサイタマへの評価が更に天元突破することになった。

 

「あ…あの! パチュリーさまは一緒じゃないんですかッ!?」

「そうよ! ちょっと! パチュリーはどうしたのよ!」

 

 こあとタツマキが真っ先にパチュリーが一緒じゃない事に気が付き食って掛かる。

 サイタマがそれに応えるよりも前に、再びパチュリーの念話が全員の脳内に聞こえてきた。

 

(私なら、まだ宇宙船の上にいるわ)

「な…なんじゃとっ!?」

 

 もう崩壊待ったなしの船の上にまだ一人残っている。

 シルバーファングはこれまでで一番驚いていた。

 

(別に置いて行かれたとか、そういう訳じゃないから。私は私の意志でここに残ったの)

「何よソレ…どういう意味よ!」

(そのまんまの意味よ、タツマキ。サイタマはやるべき事を成してくれた。だから、今度は私の番)

 

 今から何をしようとしているのか。

 S級ヒーロー達は、なんとなくではあるが察してしまった。

 

(この壊れかけの宇宙船を転移魔法で成層圏ギリギリまで移動させた後に、私の持つ『最大最強の攻撃魔法』を使って文字通りの木端微塵にする)

 

 パチュリーの最強魔法。

 それを聞いた途端、彼女の実力を知る一部のS級たちは本気で戦慄した。

 矢張り、深海王の時に見せた力は、単なる片鱗にしか過ぎなかったのだと。

 

 そして、彼らは今から垣間見る。

 魔法使いパチュリーの『本気』を。

 

 

 

 

 




ある意味、ここから先がボロス編で一番書きたかった部分です。

次回、パチュリーの『本気』が炸裂します。




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