他の作品がひと段落ついたので、ここから年末にかけては、ゆっくりと自分のペースで各作品の更新を頑張っていこうと思います。
突如として天空から聞こえてきたパチュリーの念話。
それにより、今から彼女が自身の最強魔法を駆使して崩壊寸前の宇宙船を破壊しようとしている事を知ったヒーロー達。
(それで、皆に色々と頼みたい事があるの。時間が無いから手短に話すから、良く聞いてね)
本人には見えていないかもしれないが、それでも話を聞いている全員が無言で頷いた。
(まず、私が宇宙船を破壊した後に、その破片をこの場に集った全ヒーローの力を総動員させて破壊して欲しいの)
破片の破壊。
それを聞いてシルバーファングが真っ先に思い出したのは、少し前に会った隕石騒ぎ。
あの時はサイタマが破壊を担当し、パチュリーとこあの二人が後始末を担当した。
今回はパチュリーが破壊を担当しようと言うのか。
(この街にはヒーロー協会の誇るヒーロー達が集結している。やってやれない事は無い筈よ)
それは、パチュリーからの全幅の信頼の証。
ヒーロー達の実力を信じているからこそ、このような事を頼めるのだ。
「あぁ…任せとけ。どんなデカい破片だろうと、この剣で微塵切りにしてやるよ」
「そうじゃな。隕石の時は何も出来んかったが、今回は別じゃ。全身全霊でやってやろう」
アトミック侍とシルバーファングの全身に気合が入る。
今すぐにでも跳躍して攻撃を開始しそうな勢いだ。
「ミサイルの迎撃の次は破片壊し? 随分と、この私をこき使ってくれるじゃないの」
(あら? S級2位様のお仕事としてはご不満かしら?)
「冗談。やってやろうじゃないのよ。だから、アンタは遠慮なくぶっ壊しなさい。落ちてきた破片は全て、この私が原子核まで粉々にしてやるから」
(頼もしい言葉ね。ありがとう…タツマキ)
「フン…」
S級上位のヒーロー達がやる気全開になっているのを見て、他のヒーロー達も気合を入れ直す。
「相変わらず、パチュリー君のやることはスケールが違うな! だが、それがいい!」
「地上の事は俺達に任せてくれ、パチュリーちゃん!! 君には深海族騒動の時に大勢の男子達の救って貰った恩があるからな! その時の借りを今、全力で返そうじゃないか!!」
タンクトップマスターとぷりぷりプリズナーも拳を合わせて全身に力を込める。
その時、僅かではあるがプリズナーの周囲に力場が発生したが、誰もその事に気が付かなかった。
「降り注ぐ瓦礫の排除…それならば、俺の焼却砲も役に立つか。今こそ、パチュリーさんのお役に立たなくては!」
「これ…俺もやらないといけない感じか?」
「いえ。サイタマ先生は敵のボスとの死闘でお疲れでしょうし、ここは俺達に任せて休んでいてください!」
「そ…その通りです! 私も頑張りますから!」
遂にパチュリーの役に立てる機会が来たかと、ジェノスとこあの二人もまた拳を握りしめる。
一方のサイタマは、ついさっきまでの激闘からのこっちなので、皆とは完全に雰囲気が違い気怠そうにしていた。
(ジェノス君とこあもお願いね。あとサイタマ)
「なんだ?」
(ちゃんとボロスの事を抱えててるのよ! 瓦礫で潰されるような事は無いだろうけど、念の為にね)
「へーい」
まるで母親に買い出しを頼まれた子供のような返事だが、こんなやり取りは日常茶飯事なので誰もツッコまなかった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
パチュリーの念話はS級ヒーロー達以外にも届いていて、他の場所で戦っていた者達もまた同じように上空に耳を傾けていた。
「パチュリーさんが宇宙船を破壊しようとしているとは…」
「ほんと、可愛い顔して大胆な事をするわよね、あの子」
「だからこそアトミック師匠にも認められているのやもしれんな」
A級上位ヒーローである三剣士も、パチュリーが今からしようとしている事を知り冷や汗を掻きつつも苦笑いを浮かべていた。
(皆に頼みたい事の二つ目は、今から宇宙船から脱出してくるであろう連中を決して殺さずに保護と言う名目で確保しておいてほしいの)
「確保だと? それはどういう事だ?」
ついさっきまで戦っていた相手を保護とはどういう事なのか。
全員の意見を代弁するかのように、デスガトリングが問いかけた。
(近日中にヒーロー協会からも通達があると思うけど、近い内に全世界規模の危機が訪れる可能性が非常に高いの。けど、今の私達はそれに対する対抗策は愚か、情報すら殆ど持っていない。だから…)
「地球外生命体である彼らから情報を収集しようと言う事か。広大な宇宙を旅してきた彼ならば、我々が持ち得ていない情報を持っている可能性が高いから…だろう?」
(その通りよ、
「そ…それほどでも…ない…」
パチュリーから褒められて、頬を赤くしながら斜め下を向くワンショッター。
実は彼もパチュリーのファンクラブの会員だったりする。
(誰がどんな情報を持っているから分からないから、一人としても殺しちゃダメだからね。特にアマイマスク!)
「僕を御指名か…」
(だって、貴方が一番危うそうなんですもの)
「…否定はしない」
実はアマイマスクは、通信越しではあるが会議の内容を聞いていたりする。
本当は出席をしたかったが、どうしても外せない仕事が入ってしまったので、仕方なく通信と言う形で話だけでも聞いていたのだ。
「…承知した。僕だって情報収集することの重要さを理解していない訳じゃない。前に出て殴るだけならば誰だって出来る、だが、僕達ヒーローに求められているのはそうじゃない。いつだって最善の行動をし、人々の希望であり続ける事だ」
(分かっているならいいわ。お願いね。つー訳だから…とっとと脱出せんかい!! 中にいる宇宙人共!! じゃないと、私の魔法で木端微塵にするわよっ!!)
「「「「「ごめんなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいっ!!!」」」」
本当は我慢ならないことではあるが、今回はパチュリーの言い分が正しい。
ここで貴重な情報源を失う事は、こちらとしても損害が大きいのだから。
アマイマスクが自分自身と戦っている最中、宇宙船から大量の宇宙人が載っているとされる脱出艇や、宇宙人達たちが生身で飛び出してきた。
「お前…大丈夫か? なんか我慢してる風に見えるが…」
「心配は無用だよ、スティンガー。僕はそんなにヤワじゃない」
「そ…そうか? それならいいんだが…」
スティンガーには強がって見せたが、本当はかなり我慢していた。
だからこそアマイマスクは決めた。
後で必ず、どこかで怪人を見つけて倒し、このストレスを発散してやろうと。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
ヒーロー協会本部ビル屋上。
少しでも近くで宇宙船の様子を伺おうとした、童帝を初めとした面々もパチュリーからの話を聞いていた。
「あの超巨大な船を、一体どうやって破壊する気なんだ? 核を使っても壊せるかどうか分からないのに…」
「あのアトミック侍さんやシルバーファングさん達が認めてるんだし、なんとかなるんじゃないか? アナタもそう思わないか? キングさん」
「………………」
あくまで現実的な計算をして、パチュリーが今から何をするのか全く見当がつかない童帝と、会って間も無いにも拘らず、他のヒーロー達を信じて同じように信じようとする超合金クロビカリ。
そんな二人とは対照的に、ずっと沈黙を守っているキング。
「ま…どちらにしても、凄い物が見られそうなのは確実かな…」
後学の為に少しでも『魔法』を見ておこうと決めた童帝の後ろに突如として、鋼鉄の巨体が飛来した。
『オ前ノ言ウ通リダ、童帝』
「メ…メタルナイトッ!? ボフォイ博士っ!? どうしてここにっ!? 会議には出席しなかったのにっ!?」
それは、これまでにも幾度となくパチュリー達を支援してきたメタルナイトことボフォイ博士の操る鋼鉄製のメカだった。
このタイミングのまさかの来訪者に、全員が目を丸くして驚いた。
『急ギノ用事ガアッタノデ会議ニハ出席出来ナカッタダケだ。ソノ旨ハ、チャントしっちニ伝エテアル』
「だからって、いきなり来ます? 普通…」
『何ヲ言ウ。地球ノ危機ニ駆ケツケナイひーろーガドコニイル?』
「えぇー…」
ボフォイの事を誰よりも知っているが故の疑問。
少なくとも童帝が知っている彼は、そんな正義感では決して動かない人間だった。
(あのパチュリーの最強魔法なんて、今観測せずしていつ観測するのだ。こんな機会、決して見逃すわけにはいかん)
本当は単に面倒だっだと言う理由で会議を欠席したのだが、まさかの事態に急いで準備をしてメタルナイトを飛ばしてきた。
まさか、あの隕石落下事件の時ですら拝めなかった魔法が見れるかもしれないと思うと、居ても経ってもいられなかった。
『…ト言ウ訳ダ。ソウ俺ヲ警戒スルノハ止メテ貰オウカ…駆動騎士』
「…………」
さっきからずっとメタルナイトを注視している一人のヒーロー。
漆黒のボディを持つ単眼の戦士『駆動騎士』。
「…いいだろう。今だけは許してやる。だが…今だけだ」
『ソレデイイ。オ前モ手伝エ』
「貴様に言われるまでも無い。俺は最初から、そのつもりだ」
そう言うと、駆動騎士は何処からか出した長方形をした鋼鉄の塊をドンと自分の隣に置いた。
「あれが…駆動騎士さんの武器…?」
「そう言えば、今まで一度も彼が戦っている姿は見た事が無いな…」
S級ヒーロー達の中で最も謎に包まれた存在。
その謎の一部が、図らずも白日の下に晒されようとしていた。
こうして、全てのヒーローが空に向けて集中し臨戦態勢に移行しても…。
「………………」
キングはその場から微動だにしなかった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
パチュリーの声は、なんとビルの屋上にて死闘を演じ、休憩をしていたガロウの耳にも図らずも聞こえていた。
「なんだぁ…? 頭の中に直接響くような声が聞こえてきたような気が…薄気味悪ぃ…」
今までずっと武道の生きてきたガロウにとって、念話というのは未知の体験だった。
だが、不思議と嫌な感じはしない。
「そういや、あの宙に浮くデカブツをぶっ壊すとか言ってやがったな。どこのどいつかは知らねぇが…お手並み拝見といこうじゃねぇか。それを見る事で、更なる高みへと至れるかもしれねぇしな」
どこまでも貪欲に『強さ』を求めるガロウ。
パチュリーの魔法すらも己の糧にしようとしていた。
「さーて…何をどうするのやら…って…!」
次の瞬間、ガロウは目の前で起きた事が信じられず、思わず大きく目を見開いた。
しかも、彼には珍しく本気の冷や汗を掻き、口もあんぐりと開けて。
「なんだ…こりゃ…!? 魔法…陣…だと…!?」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「伝えたい事は全て伝えた。それじゃ…急いでやりますか」
こうしている間も崩壊し続けている宇宙船の甲板に手を添え、精神を集中させる。
脳内で想像するは、前にテレビで見た成層圏の光景。
「……ルーラ!」
瞬間、パチュリーの姿は巨大な宇宙船と共に消えた。
次に現れたのは、先程よりも遥か上空に位置する成層圏ギリギリの場所。
ここから少しでも上に行けば、そこはもう人間が生きる世界から逸脱する。
この場所でも相当に危険だが、パチュリーは自分の周囲に強固な魔法壁を展開して自分の身体を保護していた。
「『コレ』を使うのって、今回で二度目よね。一度目はサイタマと本気の模擬戦をした時。まさか、もう一度コレを使う羽目になるとは…はぁ…」
溜息を吐きつつ、パチュリーは魔力を極限まで増大させ、全神経を集中させてコントロールしていく。
すると、青白く光り輝く大小の魔法陣が幾つも展開する。
最も大きな魔法陣ともなると、A市全体を軽く覆い尽くすほどのサイズだった。
「これなら…いける」
全ての光が束となり、パチュリーの元へと集まり、周囲全体が紫電に包まれる。
それはまるで雷で構成された空間。
パチュリーの髪が逆立ち、その瞳が虹色に輝き始めた。
そして…詠唱が始まる。
恐怖と絶望を味わってみよ
我は深淵と共に有り
我は絶望の淵に有り
我は霊霧を統べる者
汝は虚空へ果てるべし
天光満つる処に我は在り
黄泉の門開く処に汝在り
出でよ
神 ノ 雷
「これで…終わりよ!!!!!」