S級ヒーロー 七曜のパチュリー   作:とんこつラーメン

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意外な人達の意外な繋がり

 パチュリー達が葬儀会場にはいる為に受付まで行こうとした時、後ろから聞き慣れない声が聞こえてきた。

 

「ここがヒーロー協会所有の特別葬儀場か。いやはや…これは実に大きい」

「こ…この声は…まさかっ!?」

 

 声を聞いた途端、ジェノスが凄い反応をした。

 彼に釣られるようにして私達も一緒に振り向くと、そこにはまるでキノコのような髪型をした非常に特徴的な初老の男性が喪服を着て葬儀場を見上げていた。

 

「ク…クセーノ博士っ!? どうして、ここにっ!?」

「「「え?」」」

 

 クセーノと言う名前に聞き覚えがあるパチュリーやサイタマ、こあの三人は少しだけ驚いた顔を見せる。

 そんな三人の目の前で、ジェノスとクセーノは話をしていた。

 

「おぉ…ジェノスか。そうか…今のお前はヒーロー協会に所属していたんだったな。ならば、ここにいても不思議じゃないか」

「えぇまぁ…って、そうじゃなくて」

「ん? どうかしたのか?」

「協会とは全く関係が無いクセーノ博士がどうしてここに…?」

「あぁ…それはだな…おや?」

 

 博士の目がこっちに向く。

 どうやら、パチュリー達の存在に気が付いたようだ。

 

「ジェノスや。もしや、あそこにいる人たちが、普段からお前が世話になっていると言う方々か?」

「え? は…はい。そうです」

「そうかそうか。ならば、挨拶をしない訳にはいかないだろう。どれ…」

 

 こっちに来たことに若干の戸惑いを見せながらも、パチュリーは冷静に分析をする。

 少なくとも、パチュリーの目には彼は悪人には全く見えなかった。

 家族を大事にする好々爺と言う印象だった。

 

「初めまして。ワシがジェノスのサポートと親代わりをしているクセーノと申す者です。その顔から察するに…君がジェノスの師をしているというサイタマ君かな?」

「まぁ…一応。何にもしてねぇけど…」

 

 確かに、これまでにサイタマが師匠らしいことをした場面なんて一度も見た事が無い。

 それっぽい発言はしたことはあるが、本当にそれだけだ。

 

「その隣にいる女性が、例の魔法使いのパチュリーさんかな?」

「えぇ。アナタのことはジェノス君からも少し聞いてるわ。いつか機会があれば話がしてみたいって」

「うむ。魔法と言う完全に未知の分野には非常に興味がある。是非とも、その道のエキスパートである君とじっくりと話がしてみたいと思っていたが…流石に、この場でするのは…な」

「そうね。ここは、そんな事をする場所じゃないから」

 

 天才ではあるけど、ちゃんと自制が効くタイプ。

 たったこれだけでも、パチュリー的にはクセーノに対して好印象を持った。

 

「そして…そこのお嬢さんが、ジェノスが良く話してくれているこあさんかな?」

「は…はい! えっと…その…」

「うんうん。真面目で優しそうなお嬢さんじゃないか。ジェノスの事を、これからもよろしくお願いするよ」

「そ…そんな…こっちの方がお世話になりっぱなしと言いますか…」

 

 こあを見る目が完全に息子の彼女を見る父親になっていた。

 まだ正式には付き合ってはいないのだが、それも時間の問題かもしれない。

 

 あらかたパチュリー達に挨拶をし終えたタイミングで、後ろに控えていた面々もやって来た。

 

「おぉ…貴方が話に聞いていたクセーノ博士ですか。お噂はかねがね聞いております」

「失礼ですが…貴方は?」

「これは失敬。私はこう言う者です」

 

 この中である意味一番の社会人であるシッチが、懐から名刺を出してクセーノに手渡す。

 それを見てクセーノも僅かではあるが目を見開く。

 

「ヒーロー協会幹部のシッチ…」

「はい。ジェノス君にはこれまでに幾度となく助けられました」

「そうですか、そうですか。ジェノスがヒーローとして皆さんのお役に立っているのなら、これ以上に嬉しいことはありません」

 

 目の前でペコペコとし続ける二人。

 それを見ているパチュリー達は自然とジト目になっていた。

 

「なんか…まるで三者面談、もしくは参観日とかで見る先生と親御さんが繰り広げる挨拶合戦みたいになってるわね…」

「これはあれだな。二人揃って真面目だから、どのタイミングで終わったらいいのか分からなくなってるやつだな」

 

 サイタマが珍しく適切な事を言ってくれた。

 実際、さっきから完全に『こちらこそ』しか言わなくなった。

 

「仕方ないわね…そこの二人ー。そろそろ行かないと葬儀が始まっちゃうわよー」

「おっと。そうだった」

「これはいかんな」

 

 やっと、戻って来てくれた。

 このまま挨拶合戦が続いたら本気でどうしようかと思った。

 

「ところで、どうしてクセーノ博士がシババワの葬儀に?」

「そう言えば、まだお前には話したことが無かったな。実は…」

 

 クセーノが話し出そうとした瞬間、再び誰かがやって来て話に割り込んできた。

 

「それは、シババワが俺とクセーノにとっての恩師になるからだ」

「「「「ん?」」」」

 

 今度はどこかで聞き覚えのある声。

 パチュリー達はそんな感想しか出なかったが、この中で唯一シッチだけは反応が違った。

 端的に言うと、物凄く驚いていた。

 

「矢張り、お前もやって来たか」

「こうして会うのは何十年振りになるのかな。なぁ…クセーノ」

 

 やって来たのは、出っ歯とかなり生え際が後退した男性の老人。

 彼もまた真っ黒な喪服に身を包んでいた。

 

「本当に久しぶりだな…ボフォイ」

 

 ボフォイ。

 その名は、この場にいる全員が知っている。

 S級ヒーロー『メタルナイト』の操縦者と開発者、その本人。

 

「ボ…ボフォイ博士…! 普段は滅多に外に出てこない貴方が…どうしてここに…!?」

「どうして? 俺だって人間なんだ。外出をする事だってある。それに…」

 

 クセーノの隣に立ってから鋭い眼でシッチを見つめる。

 その迫力に、思わず後ずさりをしてしまった。

 

「大事な恩師の葬儀に出席をしない程、俺は恩知らずじゃないんだよ」

「お…恩師? では、まさか…!」

「そうだ。俺とクセーノは中学、高校と同級生でな。シババワはそんな俺達の高校の時の担任であると同時に、俺達が所属していた『科学部』の顧問もしてくれていた人なんだよ」

 

 ボフォイのまさかの告白に、全員の顔が固まる。

 まさか、あの謎の満ちたメタルナイトことボフォイに、そんな過去があったとは。

 しかも、ジェノスの恩人であるクセーノと友人だったなんて誰が想像するだろうか。

 

「た…確かに…シババワ様は若い頃にA市にある高校の教師をやっていたと言う経歴があるが…まさか、その時の教え子が二人揃って天才科学者となっているとは…」

「驚いたか? まぁ…そうだろうな。こんな機会でもなければ話す事なんて一生なかっただろうしな」

 

 誰もがみんな驚きまくっているが、その中でも最も驚いていたのはジェノスだった。

 自分の大恩人でもあるクセーノが、まさかあのメタルナイトの知人だったなんて予想すらしていない。

 

「シババワ先生は、ワシらにとって憧れの先生であったと同時に、沢山の恩がある方でもあったからな…」

「そうだな。占いが好きで、科学の事なんて全く分からない癖に、顧問がいなかった科学部の顧問に名乗り出てたからな。あの頃から常に自分の事よりも他人の事を優先させていたな…」

「そして遂には、世界的な予言者となって人々の為に予言をして散った…。実にあの人らしい最後だよ」

「ふん…残された方は溜まったもんじゃないがな。まだ恩返しも出来ていないと言うのに…先に逝きやがって…」

 

 そう呟くボフォイの目には、ほんの僅かではあるが光る何かが見えた。

 誰もがそれが何なのかはすぐに分かったが、ここは空気を読んで敢えて黙っていた。

 

「サイタマ…こあ…そしてパチュリー…。よもや、シババワの葬儀でお前達とこうして直に会うとはな。人生とは分からないもんだ」

「それはこっちの台詞よ。正直、こっちはどんなリアクションをすればいいのか普通に困ってるんだから」

 

 確かにメタルナイトには何度も助けられてきた。

 隕石騒動の時や深海族の襲撃の時、そして宇宙船を破壊した時の破片の処理。

 当人はすぐに否定してくるだろうが、それでも恩義はあった。

 

「って、もうそろそろマジで中に入らないといけないんじゃないの?」

「そうだった。では皆、今度こそ受付をしてから葬儀会場に入ろう」

 

 シッチの言葉に頷いてから、全員揃って受付へと向かって行く。

 その途中、ボフォイとクセーノの二人は、物凄く久し振りに肩を並べて歩いていた。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 葬儀が終わり、シババワの遺体が火葬場に運ばれ、火葬されているのを待っている間にパチュリーはシッチと話をしていた。

 

「パチュリーくん。例の捕えた宇宙人のボスはどうなっている?」

「ボロスなら、今は私の部屋で大人しく回復薬に浸かりながら静かにしてるわ」

「そうか…。意外だな」

「彼って部下の連中とは違って、良くも悪くも武人肌みたいね。敗者は勝者に従うものを信条にしてるみたいで、私やサイタマの言う事もちゃんと聞いてくれてるし」

「ならば、もう暴れるような事は無い…と思ってもいいのかな?」

「そうね。大丈夫じゃないかしら。戦いから離れたボロスって、かなり理性的だし。暇潰しにって置いてきた本を読みながら地球の言語を勉強するって言ってたわ」

「き…勤勉なんだな…」

「あれだけの規模の組織のボスやってるんだから、強いだけじゃダメなんでしょ」

 

 実際、ボロスの学習能力はかなり高い。

 僅か数日でサイタマよりも国語の能力が高くなった。

 

「回復が終わり次第、ボロスをヒーロー協会本部に連れて行くわ。色々と話を聞くためにね」

「あぁ…今の我々には本当に情報が不足し過ぎている。シババワ様の残した予言が本当に君と童帝君の予想通りなのだとしたら…」

「どんな風に対処するのが正解なのか全く分からないわよね…」

 

 どんなに強大であっても、相手が『怪人』ならば幾らでも対処のしようはある。

 だが、相手が『惑星』となれば話は変わる。

 自分達が立っている場所全てが牙を剥くなんて、この世の誰もが一度たりとも想像すらしないに違いない。

 

「前代未聞の出来事故に、過去にも例なんて一つも無い。だからこそ…」

「こっちの常識には捉われない存在…ボロスのような外宇宙からの来訪者の持つ情報が重要になってくるのよね」

「そうだ。もし有益な情報を持っていなくても、遠い宇宙を旅してきた彼からは貴重な意見が聞けるかもしれない。それだけでも、こっちとしては非常に有り難い」

「かもね。兎に角、今は待つしかないわ」

「その通りだな。ん?」

 

 ここで火葬場内にアナウンスが流れ、シババワの火葬が終了したと知らせが入る。

 

「終わったみたいね。じゃ、行きましょうか」

「うむ。皆で最後までシババワ様を弔ってやらねば」

 

 今は亡き大予言者に改めて誓う。

 アナタが命を賭けてまで遺してくれた予言は絶対に無駄にはしない。

 必ずや、自分達が人類の未来を守ってみせると。

 

 柄にもないと分かっていながらも、パチュリーは胸の中で密かにそう誓っていた。

 

 

 

 

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