S級ヒーロー 七曜のパチュリー   作:とんこつラーメン

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今回からちょっとした幕間に突入します。
そこまで時間は掛けないつもりなので、すぐにキング編に行くと思います。








ボロス ヒーロー協会に行く

 シババワの葬儀から数日後。

 パチュリーは目の前で自分の身体の具合の確認をしているボロスと、自分の部屋で向き合っていた。

 

「どうやら、体は完全回復したようね」

「お蔭様でな。サイタマが最後に放った一撃は、この俺の再生能力を以てしてもそう簡単には治癒出来ない程の傷を与えたが…お前の魔法薬に全身を浸す事で再生能力を活性化することが出来た」

「そう…それは良かったわ」

 

 あの時、宇宙船の甲板の上でボロスに回復魔法をかけたが、それでも欠損した部位の再生は出来なかった。

 それ程までにサイタマの『奥義』の威力が凄まじかった証拠なのだが。

 

「こういう時…地球では『ありがとう』と言うのだろうな」

「別に気にしなくてもいいわよ。こっちも下心があって回復させたわけだし」

「ふむ…そう言えば、あの時もそんな事を言っていたな。『情報』がどうとか」

「そうよ。実は今、この地球には密かに未曾有の危機が迫ってきている可能性が非常に高いの。私達でも可能な限りの推理とかはしてみてるんだけど、余りにも情報が不足ているから確証が出来ない。これは今まで以上に決して失敗が出来ない事だから」

「故に、この俺から色々と話が聞きたいと…そういう訳だな?」

「その通り。宇宙を旅してきたアナタなら、私達が知らない情報を沢山持っているかもしれないからね」

 

 これは一種の賭けに近かった。

 幾らボロスと言えども、こちらの欲する情報を持っているとは限らない。

 仮にそうだったとしても、宇宙人視点での意見は、それだけでかなり貴重なのだが。

 

「てなわけで、今からアナタには私やサイタマ達と一緒にヒーロー協会の本部に来てもらうわ」

「あの時、俺達の宇宙船が飛来した場所にあった巨大な建物か。いいだろう。休んでいる間に地球の言語は完璧にマスターしたし、今の俺が戦う理由はもうない。宇宙の真理に従い、喜んで勝者であるお前達に協力してやろう」

「助かるわ。隣の部屋でサイタマ達も出かける準備をしてるから。でも…」

「どうした?」

「そのままじゃ流石に目立ちすぎるわね…」

 

 今のボロスの姿は全身真っ青な裸に近い格好だった。

 パチュリー達は実際に戦った時に沢山見ているから気にしていないが、他の者達…特に一般市民たちはそうではない。

 彼が唯一装着していた鎧は、出会って早々にサイタマとパチュリーの手によって粉々にされている。

 

「本部にはルーラで行くつもりだけど、それでも万が一ってこともあるかもだし…。一応、サイタマのお古の服なら、ここに持って来てるけど…」

「それならば心配は無用だ。服を貸せ」

「え?」

 

 小首を傾げながらもボロスに服を渡す。

 すると、いきなり彼の殻が変色し始め、肌色に変わっていく。

 しかも、それに伴い一つ目だったボロスの目が二つになっていった。

 髪の色も桃色から茶色がかった黒髪になった。

 肉体を変化させながら、ボロスは器用に服を着ていく。

 気が付けば、ボロスの姿は完全にどこに出してもおかしくない、ごく普通の青年に変化していた。

 

「これでどうだ?」

「驚いた…どうしたのよ?」

「前に言っただろう? 俺の生まれ故郷である惑星は非常に苛酷な場所であったと」

「えぇ。だから、非常に高い治癒能力を得たって言ってたわね」

「だが、得たのは治癒能力だけではない。過酷な環境に自分の身体を『適応』させる能力も同時に得ていた。これは、その応用で自分の身体を地球人のように擬態させている」

「もうなんでもアリね…」

 

 今更ながら、自分達はよくボロスに勝てたもんだと感心してしまう。

 もし何かが少しでも違っていたら、勝敗は分からなかったかもしれない。

 今でもパチュリーは本気でそう思っている。

 

「これならば外に出ても問題は無いだろう?」

「そ…そうね。少なくとも、その姿のアナタが宇宙人だなんて誰も信じないでしょうね」

 

 それどころか、地球人に擬態をした今のボロスは普通に異性にモテるんじゃなかろうか。

 そう思ってしまうほどに、今のボロスは相当なイケメンへと変化していた。

 

「それじゃあ、そろそろ行きましょうか。サイタマ達も待ってるし」

「分かった」

 

 こうして、ボロスは少し前まで自分達と敵対していたヒーロー達の総本山へと向かう事になったのだった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 ヒーロー協会内部 廊下

 

 パチュリーにサイタマ、ジェノスにこあ、それからボロスといった面々が一緒に歩いて以前入った事のある特別会議室へと向かっていた。

 

「にしてもボロス。すっかり変わっちまったなー。もう完全に地球人じゃねぇか」

「本やテレビなどで地球人について勉強をしたお蔭だ。時間は十分にあったからな」

「すげーなー…。俺じゃ絶対に無理だわ…」

 

 死闘を演じたからなのか、すっかり普通の友人のようになったサイタマとボロス。

 もしかしたら、ボロスが本当の欲しかったものは自分を満足させる『好敵手』ではなく、自分の事を理解してくれる『友人』だったのかもしれない。

 

「どうした? さっきから俺の事を見て…」

「いや…なんでもない」

「…そうか」

 

 ボロスの後ろを歩きながら、ジェノスは心の中で戦慄していた。

 まさか、あの尊敬する師匠であるサイタマとほぼ同格の次元に立つ者が宇宙の向こうから現れるとは想像もしなかったからだ。

 

(こうして完全復活した状態で傍にいると良く分かる…! このボロスと言う男から感じる圧倒的なまでのプレッシャーを…! 戦闘の際は、サイタマ先生の拳を何度受けても立ち上がり続け、パチュリーさんの最上位魔法を受けてもビクともしなかったと聞く…。この二人を相手にそこまで戦える存在が目の前にいる…。この男もまた…俺が超えるべき壁の一つなのか…!)

 

 ジェノスの中にサイタマ、パチュリーと並んで最強と呼べる存在が誕生してしまった。

 その名はボロス。

 宇宙の果てからやって来た異星の戦士。

 

「ジェノスさん? どうかしたんですか? なんだか怖い顔になってますけど…」

「そ…そうか? 済まなかった…」

 

 こあに指摘されて気が付く。

 眉間に皺が寄って顔が強張っていた事を。

 

 そんな事を考えていたら、目的地である特別会議室へと到着した。

 

「着いたわ。ここよ」

 

 全員が並び立つと、すぐに扉が開いた。

 会議室の中には、以前と同じようにシッチとS級ヒーロー達(今回もブラストとメタルナイトは不在。でも、メタルナイトはリモートで内容だけは聞いている)が揃って席に座っていた。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 ジェノスとパチュリーはS級と言う事で、他の皆と同じようにS級と並ぶように座り、サイタマとこあはその隣に、そして肝心のボロスはシッチと対面するように座っていた。

 

「まずは諸君。よく来てくれた。あー…それで、君がその…」

「お前達に敗北した、元暗黒盗賊団ダークマターの頭目をやっていたボロスだ。今はお前達に合わせる為に地球人の姿に擬態しているがな」

「わ…私はヒーロー協会の幹部をしているシッチという者だ」

 

 依然と同様…いや、それ以上に今のシッチは緊張していた。

 幾ら敵意が無いとはいえ、相手は正真正銘の宇宙人であり、あのサイタマやパチュリーと互角に渡り合うほどの猛者。

 これで緊張をしない方がおかしい。

 

「随分と大人しいのね。パチュリーの話じゃ、あの時はかなり大暴れをしていたって言うけど?」

「そうだな。あの時は柄にもなく興奮していたんだろう。本当に初めてだったからな。俺の攻撃を受けても死ななかった相手は」

 

 タツマキから言われて、あの時の事を思い出す。

 それはサイタマと同じ悩み。

 どんなに強そうな相手と戦っても、実際には一撃必殺で終わる。

 故にボロスの心は虚無になっていった。

 その虚無に熱を与えてくれたのがサイタマとパチュリーだった。

 

「ま、それが普通だわな。常在戦場なんて言い張るのは、自分の戦意のコントロールすら真面に出来ねぇ奴だけだ」

「そうじゃな。真の強者は、力の出し所と言うのを弁えておる。生まれた星は違えど、行きつく場所は同じと言う事じゃな」

 

 剣と拳。

 その二つで頂点に君臨するアトミック侍とシルバーファングことバング。

 彼らだからこそ理解出来る領域にボロスも立っていた。

 

「あー…そろそろいいかね? ボロス君…今回、君を此処に呼んだのは他でもない。実は…」

「大方の話は、ここに来るまでの間にパチュリーから聞いている。『予言』があったらしいな」

 

 まさかの発言に思わずシッチはパチュリーの方を見る。

 すると、彼女は微笑を浮かべながらサムズアップをした。

 

「そ…そうなんだ。君達が襲来する数日前…この地球で最も高名な予言者である『シババワ』様が原因不明の死因でお亡くなりになられた」

「…殺されたのか?」

「いや…それは分からない。だが、パチュリー君達の推理では、シババワ様は何か超常的な力で殺されたのではないかと言う話だ」

「有り得る話だ。予言者ならば、自分の運命を真っ先に占っていざと言う時に備える筈。それでも防げなかったとなれば、予言でも『見えなかった力』で殺害されたと考えるのが妥当だ」

「おぉ…!」

 

 予言者と言う存在に対する考え方が全く違うボロスからの意見に、シッチだけでなく、他のメンバーも目を丸くして驚いた。

 自己防衛の為の自分の事を占うという発想自体、全く考えもしなかったから。

 

「…そのシババワ様が、死の間際に最後の力を振り絞って残した予言がある。それこそが、今の我々を悩ませているのだ」

「どんな予言だ?」

「このメモを見て欲しい」

 

 以前と同じように、シッチは投影型ディスプレイに例のメモ用紙を映した。

 

「地球が…ヤバい?」

「そうだ。これは前にもここにいる彼らに話したことなのだが、シババワ様はこれまでに幾多の予言を行い、其の全てを完璧に的中させてみせた。しかも、その予言の全てが一歩間違えば人類の存亡に関わるほどの危険がある予言ばかり。だが、それでもシババワ様は一度でも『ヤバい』なんて言葉は使わなかった。それなのに今回は…」

「堂々と使った。しかも『地球が』という言葉と一緒に」

「そうだ。これについて以前、我々は『地球に危機が迫っている』のではなく、『地球の意志が我々に牙を剥こうとしているからヤバいのではないか』という予想に至った。そこで、君の意見や情報を聞きたいと思ったのだ」

「そうか…」

 

 ボロスには、彼らが必死になる理由が理解出来た。

 自分達の住む星が危険に晒され、もしかしたら星そのものが敵に回る可能性があると分かれば、誰だって必死に対抗策を考えるものだ。

 

「君はこれまでに幾多の惑星や広大な宇宙を旅してきたと聞く。きっと、我々の知らない情報も沢山持っているのだろう。その上で君に尋ねたい」

 

 ゴクリ…と唾を飲み、意を決してシッチはボロスに尋ねた。

 

「『星の意志』は…実在すると思うかね?」

「…………」

 

 腕組みをして目を瞑るボロス。

 何かを思案しているかのような、何かを思い出しているかのような。

 そんな顔に見えた。

 

「…お前の言う通り、俺は今までに色んな惑星に降り立ち、様々な経験をしてきた。その中には、宇宙の常識ですら決して測れない程の奇妙奇天烈な現象も多々あった。それらの経験を踏まえて、俺の意見を言わせて貰えば…」

 

 静かに目を開け、ボロスはハッキリと宣言した。

 

「『星の意志』は……実在する」

 

 

 




ボロスが味方になった世界線…なんかそれを書いてるって思うだけで楽しくなってきました。
今後もボロスには出番を沢山あげたいですね。







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