S級ヒーロー 七曜のパチュリー   作:とんこつラーメン

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今回から1~2話ぐらいの間、ボロスを主軸にした話になります。

まさか、前章のラスボスが主役になる日が来るとは…。








惑星の意志

 星の意志は実在する。

 ボロスの口から語られた言葉に、特別会議室の空気は一気に緊迫した。

 

「…随分とハッキリと断言するんだね。何か根拠でもあるの?」

 

 誰もが口を出せずにいた中、場の緊張を打ち破るかのように童帝がボロスに質問した。

 彼のお蔭で、全員が思い切り息を吐く。

 一瞬だけ、まるで呼吸すらも許さないような空気だったから。

 

「根拠…か。あるにはある。だが、これに関しては、長々と説明をするよりは、俺の『実体験』を話した方が手っ取り早いだろう」

「実体験…」

 

 ボロスは言っていた。

 過去に自分は幾度となく、常識では説明がつかないような事象を経験してきたと。

 ここにいるS級ヒーロー達も似たような出来事に遭遇はしてきたが、それはあくまで地球内での出来事に過ぎない。

 ボロスの場合は、外宇宙…外惑星での出来事。

 まず間違いなく、地球では決して体験出来ないような事を経験してきた筈だ。

 

「だが、話をする前に少し確認をしておきたい事がある。シッチとやら」

「な…何かね?」

「お前に幾つか尋ねたい」

「私に答えられることなら…」

「なに。別にそこまで込み入った事を聞くつもりは無い。さっき言った通り、ただの『確認』だ」

 

 真剣な表情になり、腕組みを解いてから机に肘を付き手を絡ませる体勢になったボロスは、ジッとシッチを見つめながら静かに質問をし始める。

 

「ここ数年の間に、地球では謎の害虫や害獣の大量発生などが無かったか?」

「あ…あった! しかもそれは、あのシババワ様が予言をして当てた事だ!」

「…矢張りか」

 

 シッチからの答えを聞き、ボロスの顔が更に険しくなる。

 地球出身で無いにも拘らず、真剣に地球の事を考えてくれている。

 その姿勢に、何人かのヒーロー達は彼に対する警戒心を薄くし、同時に信用の兆しが見え始めていた。

 

「謎の超大型の台風や嵐や大地震、洪水などが発生した事は?」

「それもある…! 実際にシババワ様が予言なさっていた…!」

「じゃあ…」

 

 矢継ぎ早にするボロスの質問に、冷や汗を掻きながらも的確に答えていくシッチ。

 これに何の意味があるのか分からない者達は、ずっとこのやり取りに疑問符を浮かべていた。

 

「一体、彼はシッチさんに何を聞いているんだ? パチュリーちゃん。聡明な君には何か分かるかい?」

「えぇ…なんとなくだけど、ボロスの質問の意図が分かったわ」

「凄いな…」

 

 隣にいるぷりぷりプリズナーの疑問に、パチュリーはボロスを見つめながら答えた。

 その視線はすぐに移動し、他のヒーロー達にも向けられる。

 

「けど、分かっているのは私だけじゃないわね」

「え?」

「他にも何人かいるわよ。例えば…」

 

 パチュリーが見たのは前の方に座っている三人…即ち、タツマキとシルバーファング、そしてアトミック侍の三人。

 

「あそこの三人は勘に近い形で理解してると思う。そして…」

 

 次に見たのは、先程ボロスに質問をした童帝と、声だけが聞こえるようにしてあるメタルナイトの席に置いてあるモニター。

 

「私が分かってるなら、童帝くんやメタルナイトも当然のように分かってるでしょうね。後は…」

 

 最後に見たのは閃光のフラッシュとゾンビマン。

 彼らは彼らでいつもの仏頂面でボロスの事を見ていた。

 

「多分だけど、フラッシュ君とゾンビマン辺りも分かってそう」

「結構、分かってるんだな…。俺もちゃんと理解しなくては!」

 

 気を引き締める為に自分の頬を叩くプリズナー。

 その『趣味』さえ除けば、本当に真面目な人物なので『惜しいなぁ…』とつくづく思うパチュリーだった。

 

「では、これを最後の質問にしよう」

「な…何かな…?」

「今まで言った多数の自然災害…それらは全て…『いきなり』発生しなかったか?」

「い…いきなりとは?」

「別の言い方をすれば『唐突』に。本来ならば、今俺が言った事は全て何らかの形で必ず『前兆』がある筈だ。例えば台風。普通ならば数日前から雲の流れが早くなったり、天気が悪くなったりする。だが、最近発生した台風はそんな前兆など全く無く、本当に『ある日突然』発生した。違うか?」

「そ…その通りだ…」

「他のも同じ。害獣や害虫の大量発生だって、本来ならば何らかの外的要因が必ずある筈だ。だが、それらもまたいきなり、まるで最初からソコに存在していたかのように(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)出現した。違うか?」

「き…君の言う通りだ…。シババワ様の予言のお蔭で最悪の自体こそ防げはしたが、未だに原因は不明のままだ…」

「更に言うと、その害虫や害獣は、今までに一度も発見されたことが無い『新種』だったりしないか?」

「ど…どうして、そこまで…!?」

「当たりか」

 

 最悪の予想が大当たりしてしまった。

 ボロスの心痛な表情が、それを物語っていた。

 

「今言った現象…それらは全て、過去に俺や俺の部下たちも実際に遭遇したことがある現象だ」

「そ…そうなのかっ!?」

「あぁ…」

 

 力を抜き、背凭れに体を預けながら、ボロスは遠い目をしながら静かに語る。

 

「俺だって、最初は全く信じてなどいなかった。『星の意志』なんて荒唐無稽なものが実在するなんて…な」

「その気持ちは間違っていない。我々だって最初はそうだった。それどころか、パチュリー君達の推理や、君の話を聞かなければ、未だに別方向に勘違いをしていた可能性すらある」

「それが普通なのだ。俺の部下たちも、全く信じてはいなかった。誰もが『何を言っているんだ』と笑い飛ばしていたが…」

 

 再び体を前方に傾け、手を組みながら机に寄り掛かる。

 

「そんな先入観に凝り固まっていた俺の部下たちですら、否が応でも信じざるを得ないような出来事に遭遇したんだ」

「なんと…!」

 

 大宇宙を股にかけ旅をしてきたボロス達『暗黒盗賊団ダークマター』。

 力こそが全てと信じて疑わない彼らでさえも屈服させてしまうほどの脅威。

 サイタマやパチュリーと互角に渡り合ったボロスに、ここまで言わせている時点で『星の意志』という存在がどれだけ強大なのかが窺い知れる。

 

「『星の意志』は、お前達の想像を遥かに超えるほどに無慈悲だ。奴らは一度でも見捨てた者に対して一切の容赦はしない。全てを『没収』される」

「ぼ…没収…? 破滅や破壊などではなく…?」

「ハッキリ言って、そっちの方がまだマシだ。よく言うだろう? 『創造は破壊。破壊は創造』と。どれだけ酷く破壊されても、それらは決して『』にはならない。例え、ほんの少しでも『何か』が残っていれば、そこから新たな『何か』を生み出す事が出来る。だが、『没収』されたら何も残らない。全てを文字通り奪われる。命も、未来も、運命も…存在ですら」

 

 全てを奪われる。

 確かにそれは、破壊されるよりも遥かに質が悪いことだった。

 

「俺達は嘗て…惑星そのものを『没収』された瞬間に遭遇したことがある。今から話すのは、その時の話だ」

 

 そうしてボロスは語り始める。

 仲間達との冒険の記憶を。

 『星の意志』の存在を確信した出来事を。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 それは、今よりも遥かに昔。

 

 俺達は宇宙船の補給をする為に良い惑星が無いかを探していた。

 

「ボロス様。もうそろそろ物資の補給をしなければ、流石に危ないかと思います」

「そうだな。銀河連邦の連中とやり合ったお蔭で、こっちも色々と消費し過ぎた」

 

 その時の俺達は大きな戦いの直後で、船内は怪我人や疲労者で溢れていた。

 元気だったのは、俺や最上位戦闘員であるゲリュガンシュプを初めとした面々、あとはオペレーターたちと言った非戦闘員の連中たちだけだった。

 

「主に何が足りないのか、今の内にピックアップしておけ。補給の際に少しでもスムーズに作業が行えるようにな。そうすれば、少しは楽に補給作業が出来るだろう」

「了解しました」

 

 宇宙空間を映すモニターを見つめながら、俺は銀河連邦の奴等との戦いを思い出していた。

 

(今回もまた…俺の心を満たす者は一人もいなかったな…)

 

 その頃の俺は、サイタマやパチュリーに関する『予言』を聞いた直後だったので、そこまで大きな落胆は無かった。

 これもまた、ある種の『未来へ希望を託す』ということなのかもな。

 

「ボロス様。矢張り、弾薬や薬品や食料などの消費が激しいようです。特に怪我人が大勢いる以上、薬品と食料の補給は急いだ方が良いでしょう」

「よし。ならば、今から急いで補給が出来そうな手頃な惑星を探し出せ」

「分かりました」

 

 ゲリュガンシュプや他の部下たちが補給可能な惑星を検索している最中、艦橋にメルザルガルドが入ってきた。

 

「ボロス様」

「メルザルガルドか。怪我人たちの様子はどうだった?」

「不幸中の幸いと言うべきなのか、比較的酷い怪我をしている者達はそんなにいなかったので、どうにかなりそうではあります。ですが…」

「薬品関係か?」

「はい。今回の戦いで流石に消費し過ぎました。このままでは…」

「薬。もうない。大変」

「何らかの形で補充をしなければ」

「良いと思うよ」

 

 複数の部下から同じことを言われ、俺は久し振りに組織の危機を感じていた。

 だが、俺は知っていた。

 こんな時こそ、危機的な状況の時こそ、冷静に判断して物事を進めていけばピンチは切り抜けられると。

 

「怪我人だけではない」

「グロリバース。どうした?」

 

 次に入って来たのは最上位戦闘員最後の一人のグロリバース。

 どうやら、奴も何か問題を言いに来たようだった。

 

「ボロス様。補給も結構ですが、船の修理の方もしなくてはいけません。可能であれば、争いとは無縁の星などでじっくりと腰を据えて、今後の事も考慮して本格的に修理と整備をしたいのですが…」

「それもあったか…」

 

 戦いの後に事後処理があるのは必然。

 それが大規模な戦いならば尚更。

 これはお前達でも理解してくれると思う。

 

「こ…これはっ!? ボロス様!」

「どうした?」

「発見しました! 食料や薬品の補給が可能で、更に戦場とは無縁の静かな惑星を!」

「ほぅ…そんな都合のいい惑星が存在するのか」

「はい。私もかなり驚きましたが…これです」

 

 ゲリュガンシュプがモニターに出したのは、緑溢れる自然に満ちた美しい惑星だった。

 我々が今いる場所からはかなり遠くはあったが、それはワープをすれば解決するのでさしたる問題ではない。

 重要なのは、その惑星がある場所だった。

 

「どうやら、かなり辺境の惑星のようですな。この情報によると、今まで大きな争いとは無縁で、惑星間の戦争にも一度も巻き込まれたことが無いようです。先住民も平和を愛する穏やかな性格の者が多く、一部の富裕層の連中は田舎暮らしを楽しむために別荘を建てている者もいるとか」

「それはまた…まるで誂えたかのように都合のいい惑星だな」

「全くですな。先住民は自然と共存共栄しており、だからと言って決して文明レベルが低いと言う訳でもないようです。ここならば食料も薬品も十分に補給でき、更には艦の修理も行えることでしょう」

 

 これ以上ない程の条件の合致。

 選択肢など、あってないようなものだった。

 

「完璧じゃねぇか!」

「そこ。行く。ワープ。する」

「それしかあるまいな」

「いいと思うよ」

 

 満場一致。

 すぐに惑星の座標を特定し、その周辺宙域へのワープ航行を敢行した。

 

 それが、俺達が『星の意志』に触れる切っ掛けになるとも知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回もボロス視点のお話。



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