S級ヒーロー 七曜のパチュリー   作:とんこつラーメン

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今回も引き続き、ボロス視点のお話。

もう少しだけ、彼の思い出話にお付き合いください。







ボロスの大冒険 ~星神と滅びゆく惑星~(前編)

 目的の惑星のある宙域までワープ航法を敢行し、俺達は一気に超長距離を移動した。

 と言っても、宇宙全体からしたら短距離になるが。

 

 ワープを終え、我々の視界には目的地である資源豊富な緑の惑星が映る…筈だった。

 

「ん…ん? おい…ゲリュガンシュプ。これはどういう事だ?」

「どこにも、目的地である惑星が見当たらないぞ」

「そんな馬鹿な…」

 

 俺達の宇宙船のモニターに映し出されたのは、データで見た惑星とは似ても似つかぬ程に荒廃したと思われる土色の惑星だった。

 どこにも木々の緑も、海の青も存在せず、惑星全体を覆い尽くしているのは砂漠の砂と乾いた大地のみ。

 

 他のクルーも、ゲリュガンシュプやメルザルガルド、グロリバースたち最上級戦闘員だけでなく、この俺ですら最初は戸惑いを隠せなかった。

 

「…ゲリュガンシュプ。念の為に座標の確認をしろ」

「しょ…承知しました!」

 

 急いで艦の観測機を使って、データにある目的地の惑星がある宙域の座標と、我々がいる宙域の座標を調べた。

 だが、艦のコンピューターは無情な事実だけを使える。

 

「…ボロス様。座標は間違ってはおりません。我々は例の惑星の目の前にいます」

「では、矢張り…」

「あれが…俺達の目指していた惑星…なのかよ…」

「信じられん…一体どうなっているんだ…?」

 

 困惑するクルーたちが一斉に俺の方を見る。

 奴等は待っていた。俺の指示を。

 

「…ゲリュガンシュプ。さっき調べた、あの惑星のデータの情報の最終更新日はいつだ?」

「えっと…少しお待ちを…出ました。約一年ぐらい前になりますね」

「「い…一年っ!?」」

 

 それを聞いた瞬間、あることが判明した。

 

「と言う事は、少なくとも一年前まではデータにある通りの緑と水が豊かな平和な惑星だったのだろう」

「でしょうね…。銀河ネットワークの情報の正確さは全宇宙随一ですから」

「ってことは…あの星は、たった一年であんな姿になっちまったってことなのかよッ!?」

「一体何が起きれば、そんな事になるんだ…」

 

 正直、その時の俺は迷っていた。

 このまま、全てを無かった事にして別の惑星を探すか。

 それとも、当初の予定通りに惑星に降下するか。

 

「いかが致しますか…? 一応、もう一回ぐらいはワープが出来るエネルギーの余裕はありますが…」

「でもよ…あんな惑星でまともな補給とか出来るのか?」

「時間的な余裕はあるが、だからと言って怪我人をこのままにはしておけんしな…」

 

 自分の迷いは部下たちの迷いにもなる。

 俺は決断するしかなかった。

 

「…あの惑星に降下する」

「よろしいので?」

「あぁ。構わん。確かに見た目的には荒廃しているように見えるが、それはあくまで宇宙から見た場合だ。実際にあの惑星に降り立たねば本当の事は何も分からん。もしかしたら、ちゃんと補給が出来るやもしれん。とはいえ、万が一と言う事もある。まずは適当な場所に着陸して様子を伺い、駄目そうならば惑星から離脱する」

「それが宜しいですな。百聞は一見に如かずとも言います。まずは確かめてみない事には何も始まりません」

「そう言う事だ。では…各員。艦の降下準備に入れ」

「「「「はい!!!」」」」」

 

 こうして、俺達は大きく変わり果てた惑星へと降りていくことになった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 宇宙から見た通り、降り立った惑星は見事に荒廃しており、少し前まで木々が生い茂っていたであろう場所には罅割れた荒野が広がり、辛うじて残っている食部も大半が枯れ果て、野生の生き物すらいるか怪しいぐらいだった。

 

「…酷ぇな…こいつは…」

「今までにも砂漠の惑星やら氷の惑星やらに行った事はあるが、そこは最初からそういう気候だった。でも、ここは違う…」

「あぁ…この惑星は何らかの理由で荒廃してしまったのだ。元の面影すら思い出せなくなる程に…」

 

 各々がポツポツと感想を零す。

 長い間、様々な惑星を渡り歩いてきた俺だったが、短期間でここまで変貌した惑星は始めて見た。

 その事実が、逆に俺の中にある好奇心を刺激した。

 

「ゲリュガンシュプ様。ボロス様。我々が今いる場所から約1キロほど離れた場所に集落らしきものがあるようです」

「なんだと?」

「正面モニターに出せるか?」

「出せます」

「なら頼む」

「了解です」

 

 オペレーターに指示し、集落の様子をモニターに出させた。

 すぐに映像は出て、それをジッと注視した。

 

「これはー…確かに集落…いや、村のようですな」

「多数の建造物もあれば住民も普通に闊歩している。だが…」

「心なしか、全体的に活気が無いな。まさか、他の村々も全部こんな感じ無ないだろうな?」

 

 住民たちは皆、力無き表情で体にはローブのような物を身に纏って砂煙を防ぐような恰好をし、体を丸めながら項垂れながら歩き、そうじゃ無い者は地面に座り込んでジッとして何もしない。

 店のような物は開いているが、民家らしき建物は全てが窓を閉め切っていて、完全に引き篭もっているようだった。

 

「どうやら、補給は出来そうだな…。品質の保証は出来ないが…」

「贅沢を言ってられる状況でもねぇだろ。この際、細かいことには目を瞑るしかねぇよ」

「そうだな。流石に銀河連邦も、我々がこんな荒廃した惑星にいるとは思わんだろうし。こうして降下して補給の当ても見つかった以上、安易に離れるのは得策じゃない」

「そうだな。まずは船を降ろそう。何処かに良い場所は無いか?」

 

 操舵士に降下場所について尋ねると、すぐに返事が返ってきた。

 

「あります。ここからそう遠くもありません。なにやら不自然なまでに開けている場所ですが…」

「もしかしたら、そこは嘗て、この惑星が栄えていた頃に他惑星から来た者達が宇宙船の離着陸に使っていた場所かもしれんな」

「ですね。では、今からそこに向かいます」

 

 艦を移動させ、ゆっくりと降下させ着地に成功した。

 すぐに周囲の様子をモニタリングし、そうしてようやく我々は一息つく事が出来た。

 

「ふぅ…これで少しは休めるな…」

 

 息を吐き出しながら体の力を抜く。

 それまで連戦続きだった我々からしたら、ようやく訪れた安息だった。

 

「小休止の後、まずは各種物資の補給班と艦の修理班に分かれろ。艦の修理の監督はグロリバースに任せる。頼めるか?」

「勿論ですとも。このグロリバースにお任せください」

 

 こんな時、班の纏め役となる部隊長のような役割を持つ者の存在は大きい。

 実際、今までにも最上級戦闘員の三人に何度も助けられてきた。

 

「ボロス様はどうなさるので?」

「俺は…」

 

 この惑星を見て、こうして降り立ってからずっと、俺の中には不思議な感覚があった。

 誰かが呼んでいるような。

 もしくは拒絶をしているかのような。

 そんな不可思議な感覚が。

 だから、それを確かめたかった。

 

「俺は、ゲリュガンシュプとメルザルガルドを連れて村の調査と情報収集をしてくる」

「ボ…ボロス様直々に…ですか?」

「そうだ。偶には童心に帰って未知の場所の散策をしてみたくなるものだ」

 

 とは言ったが、そんなのはあくまで建前で、実際にはこの惑星自体が気になって仕方が無かった。

 

「修理の終わっている小型移動艇はあるか?」

「はい。一台あります」

「では、それを借りるぞ。何かあれば、すぐに俺達の内の誰かに知らせろ」

「了解しました」

「なら、艦の留守を頼む。ゲリュガンシュプ。メルザルガルド。行くぞ」

「「はっ!」」

 

 俺は、僅かな期待と小さな不安を抱えながら、小型移動艇を使って着陸場所の近くにあるという村まで行くことにした。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

「これはまた…」

「実際に来てみると凄いな…悪い意味で…」

 

 村に入ると、モニター越しに見た以上に荒廃しているのがよく分かった。

 賑やかさなど欠片も無い。

 よく住人がいない町の事を『ゴーストタウン』と呼ぶことがあるが、この村の場合は住人がいるにも拘らず自然と頭の中に同じ単語が思い浮かんだ。

 

「こんな場所で本当に情報収集など出来るのでしょうか…?」

「さぁな。まずはこの村を歩いて様子を見てみよう」

 

 村の入り口付近で一緒に来た補給部隊と別れ、以前は立派な道があったであろう砂だらけの大通りを三人で歩いて行く。

 明らかに部外者である我々が堂々と闊歩しているというのに、村の者達は全く気にする様子も無い。

 無視をしている…とか、気が付いていない…とか、そんな事ではなく、住人の殆どが目の焦点が合っていなかった。

 本当に生きた屍のように村の中を力なくさ迷い歩く存在。

 それが今のこの村の住人だった。

 

「なぁ…ゲリュガンシュプ。本当にこの星は昔、栄えてたのか? とてもじゃないが信じられないぞ?」

「私だってそうだ。だが、銀河ネットワークの情報の正確さは、お前だって良く知っているだろう?」

「そりゃ…まぁ…」

 

 後ろで二人が言い合っているが、俺は気にせずに村の様子を観察していた。

 よく見ると、所々に嘗ての栄華の痕跡のような物が垣間見れるが、そのいずれもが長い年月を経て古臭くなったかのような趣があった。

 

「どこかに、真面に話が出来そうな奴はいないのか…」

 

 殆どダメ元で周囲を見渡していると、いきなり俺達に話しかけてくる声が聞こえた。

 

「おや? そこのお三方…もしや、余所から来なさった方かな?」

 

 それは、小さなシートの上に座っている小柄な老婆だった。

 他の者達と同じように全身を布で覆い隠しているが、その表情は他とは違って死んでいない。

 

「どうして、俺達がこの惑星の住人ではないと分かった?」

「分かりますとも。ワシらとは違ってお主らには生気がある。それに、お前さん達のような連中がこの惑星にいたらすぐに分かる。全身から『闘争』の匂いを漂わせている者達は特に」

「お前…」

 

 話し方もハッキリとしているし、観察眼もある。

 この老婆からなら、ちゃんとした話が出来るかもしれない。

 そう思った俺は、後ろに二人にそう告げてから老婆から情報収集をする事に決めた。

 

「おい老婆。お前は知っているのか? 嘗ては自然に溢れ、栄えていたこの惑星が今のような姿に変わった理由を」

「えぇ…えぇ…よーく知っていますとも。もしや、お前さんらはそれを調べに来なさったので?」

「いや、そうじゃない。俺達がこの惑星に来たのは、単に体を休めるのと同時に補給をする為だ。ただ、ここに来る際にこの惑星の事も軽く調べてな。だからこそ気になったんだ。どうして、こんな事になっているのか。要するに、これは単なる俺の好奇心だ」

「その好奇心が命取りになるとしても?」

「構わん。寧ろ、望むところだ。退屈に支配されつつある俺の人生に刺激を与えるのならばな」

 

 俺は正直に俺の心情を話した。

 昔から嘘をつくのは苦手だからな。

 

「…ならばお話ししましょう。この惑星がたった一年でこのような姿に変わってしまったのは…」

 

 老婆の口から出た言葉に、俺は大きく目を見開いた。

 

「『星神(ほしがみ)』がお怒りになられたせいじゃ」

 

 

 

 




まだ続くんじゃよ。



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