S級ヒーロー 七曜のパチュリー   作:とんこつラーメン

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『最強』の理由

 パチュリーとサイタマがキングの部屋にてゲームをする事になった…その頃。

 ジェノスとこあの弟子コンビは巨大ロボット『G4』と激闘を繰り広げていた。

 

「はぁぁぁぁ…ふん!!」

 

 G4が大きく拳を振りかぶり、ジェノスに向かって鋼鉄のパンチを繰り出すが、そんな大ぶりな攻撃が彼に通じる訳もなく…。

 

「遅い!!」

 

 大きく跳躍しながら余裕の回避。

 それによってG4の拳がアスファルトの地面に突き刺さる。

 その瞬間、こあがすかさず魔法を発動した!

 

「スロウ!」

「わ…我の動きが…!?」

 

 G4の動きが目で分かるレベルで遅くなり、全体的に大きく隙が生まれた。

 こあが作ってくれたチャンスを生かす為、ジェノスはG4の首元にしがみつく!

 

「!? き…貴様…何を…グォ…!?」

「こあ! 今だ!!」

「はい!!」

 

 普段ならば後方支援役のこあが敵に接近するのは危険極まりないが、動きが非常に遅くなっている今ならば問題は無い。

 すぐにこあは、G4の脚部の関節部に自分の手を添えた。

 

「焼却!!!」

「マヒャド!!!」

 

 次の瞬間、G4の全身の隙間から灼熱の炎と無数の氷が飛び出す!

 相反する属性の同時攻撃を受け、G4は大ダメージを受け爆発を起こす!

 その巻き添えを嫌わないように、即座にジェノスはこあの体をお姫様抱っこで抱え上げ緊急離脱をする!

 

「やりましたね! ジェノスさん!」

「あぁ! やったな!」

 

 一瞬だけ喜びを共有し、すぐに真剣な顔に戻る。

 二人の視線の先には、全身から崩壊寸前の証である紫電を迸らせ、今にも活動停止しようとしているG4の姿が。

 

「超高温と超低温という、真逆の属性による反発作用によって、貴様の全身は完璧に破壊された。もう動く事すら出来ないだろう」

「大きな体が災いになりましたね…」

 

 何度かゆらゆらとしていたが、遂にG4が地に伏した。

 これで終わりか…誰もがそう思った…その時。

 

「な…なんだ…!?」

「中から…何か…小さいのが出てきた…?」

 

 それは全身が黒く、小さなロボット。

 先程までとは明らかに迫力に欠けたが、ジェノスとこあは警戒心を解かなかった。

 

「先程のロボットの操縦者…? いや…本体…か?」

「みたい…ですね…」

 

 何が起きても、すぐに対処出来るようにエネルギーをチャージし、魔力も収束させておく。

 その予感が見事に的中し、なんとG4の本体の頭部と肩部が展開し、そこから無数の砲口が出現する。

 

「ま…まずい!! お前達!! 今すぐにこの場から逃げろ!! こあ!!」

「分かってます! ビームとかの類なら…マハラカーン!!」

 

 こあがすぐに障壁を張ったと同時に、G4本体から大量のビームが発射された!

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 テレビの中で、カッコいいロボットが宇宙空間を飛びながら、襲い来る無数の敵機を次々と撃破していく。

 

「おぉ…おいおいおいおいおいおいおいおいキング…お前。めっちゃくちゃゲーム上手じゃあねーかよ…」

「本当ね…。何をどうやってるのか全く分からないわ…」

 

 後ろから見るサイタマとパチュリーが、キングのテクに本気で驚く。

 彼の指先は、まるで未来でも見ているかのように一瞬の迷いも無く動いていく。

 

「ま…まぁ…これでも一応、アクション系なら昔から幾つかの大会に参加して優勝してるけどさ…」

「え? 大会で優勝? マジで?」

「冗談だろ…。現実でも強いのに、ゲームでも一等賞とか反則じゃねーか」

「そ…それ程でも…」

 

 適当に答えながらも、キングは心の中では辟易していた。

 少しでも気を紛らわせるためにジュースを飲みながらプレイしているが、全く効果は無い。

 

(っていうか、いつまでいるんだよ、この二人…。早く帰ってくれないかな…)

 

 ただでさえ他人がいるってだけで気まずいのに、片方は見目麗しい美少女。

 キングじゃなくても緊張してしまう。

 

「…で、なんでさっきは逃げたんだ?」

「そうよね。それが聞きたかったのよ。今はジェノス君とこあが代わりに戦ってるけど」

「ぼふっ!?」

 

 余りにも唐突にブッ込んできたので、思わず本気で吹いた。

 

「お前さ…めちゃくちゃ強いS級ヒーローなんだろ? どうして、あのロボット怪人から逃げるような真似をしたんだ?」

「それに、この間の会議やボロス達が襲撃してきた時もそう。会議の時は何の意見も発さずに黙っていたし、襲撃の時に至っては動こうとすらしていなかったって聞いてるわ。アナタ程の実力者が、どうして戦おうとしなかったの? もしかして、後々の事を予測して、敢えて動かなかったとか?」

「あ…ぅ…」

 

 怒涛の攻めにキングは何も言えなくなる。

 本人達には微塵も悪気が無いのが質が悪い。

 

「俺達は、それが聞きたくてここまで来ちゃったんだけどさ」

「そうしたら、なんか急にゲームをする流れになっちゃったし…怪人との戦いに興味が無いタイプだったりするのかしら?」

 

 まだまだ二人の攻めは終わらない。

 いい加減に開放してくれと必死に願うが、その願いは届きそうにない。

 

「まさかとは思うけど、強くなり過ぎて戦うのが嫌になったとか…そんな感じか?」

「サイタマと同じ理由ね。その可能性も無いとは言い切れないわね。で、実際の所どうなの? アナタは何を考えてるの? というか、そもそも…」

 

 パチュリーがジュースを一口飲んで、口を滑らかにしてから核心に迫る。

 

「キングって何者?」

「な…何者って…?」

 

 質問の意味が分からない。

 自分はどこまで行っても自分だ。

 

「実は、ヒーロー協会内で少しあなたの事を調べたの。すると、出てくるのはいずれも『不明』の二文字だけ。交戦記録に戦闘映像、そのどちらもが全く存在していない。なのに、何故か怪人を倒したと言う『結果』だけは残されている。これは一体どういう事? 自分が戦闘をした『過程』のみを頑なに見せようとしないのは、貴方自身の戦闘スタイルに秘密があるのかしら?」

「…………」

 

 鋭い。

 鋭すぎて、思わず全てを白状してしまいそうな気になる。

 だけど、同時に『怖い』と言う感情もあり、それがキングの勇気を鈍らせる。

 

「え? マジで? キングが戦ってる所を見た奴って誰もいねぇの?」

「そうみたい。一応、念の為に知り合いのヒーロー達にも話を聞いてみたんだけど、そのいずれもが『知らない』『見たことが無い』の一点張り。これはどう考えてもおかしくない?」

「だな。俺みたいにワンパンで終わらせてるとしても、その瞬間ぐらいは誰かに見られてそうだしな」

「そうなのよね~。ここまで謎だらけのヒーローも珍しいわ。秘密主義のメタルナイトの方が、まだ情報開示してるわよ?」

 

 そんな事を言われても。

 どれだけ怪しまれても、自分には何もない。

 そう言えればどれだけいいか。

 

「黙秘権行使…ね。ま、無理矢理に聞き出そうとは思わないけどね。別に尋問じゃないんだし。あくまで興味本位の話だもんね」

「そうだな。このまま居座るのも悪いし、もうそろそろ帰って…」

 

 やっとか…。

 と思ったのも束の間、運命はまだまだキングを弄ぶらしい。

 

『緊急避難警報発令! 緊急避難警報発令!』

「「「え?」」」

 

 いきなりの警報に、思わず三人揃って窓の外を向く。

 

『M市上空に突如として巨大怪鳥が出現! 市民の皆さんは建物から絶対に出ないようにしてください! 災害レベルは『鬼』! 災害レベルは『鬼』です!』

「「またぁ~?」」

 

 まさかの本日三回目。

 最近になって怪人の出没が頻発しているとはいえ、一日に三回は流石に怪訝な顔になる。

 

「つーか、なんか最近になって警報やたらと多くなってないか? どーなってんだ?」

「協会の方でも原因を究明中らしいわ。もしかしたら、例の『星神』が関わってるのかもね」

「はぁ~…チマチマしやがって…。こーゆーのが一番嫌いなんだよな~」

「同感ね。本丸を一気に狙えればどれだけ楽か…」

 

 ただでさえ心身共に疲弊しているのに、目の前で物騒な話をしないでほしい。

 キングは心からそう思った。

 

「俺とパチェはそろそろ行くけど、お前はどうするんだキング?」

「アナタは出撃しないの?」

「…ま、行く行かないは個人の自由だけどさ。そーだ。また後で来てもいいか? ゲーム借りたいからさ」

(ゲームなら幾らでも借り行っていいからさ! とっとと出て行ってくれよ!)

 

 …と口に出せれば誰も苦労しない。

 キングは大量の冷や汗を流しながら、必死に画面だけを見続けた。

 少しでも目の前の現実から逃避する為に。

 

 だが、そうは問屋が降ろさない。

 

「あ」

「「え?」」

 

 なんと、警報で言ってた巨大怪鳥がこっちに向かって飛んできていたのだ。

 というか、もう窓の前に顔があった。

 

 当然、そんな奴が急に止まれるはずもなく…。

 

「おっと」

「お見事」

 

 見事に部屋に突撃してきたが、サイタマがそれを片手で受け止めた。

 パチュリーは傍で小さくパチパチパチと拍手をしてた。

 

「おいおいマジかよ。これは流石に驚いたぜ」

「まさか、災害の方からキングに向かって来るとはね」

「キングには怪人や怪獣を引き寄せる匂いとか有ったりしてな」

「食虫植物みたいに? うーん…どうなんだろ…」

 

 二人が真剣に話している中、キングは恐怖の余り思わず立ち上がり、恐ろしすぎる目の前の光景を凝視していた。

 

(そ…そうなんだ…! 俺は何故か昔から運が悪すぎるんだ! だが最近は、それに輪を掛けて異常なレベルで運が悪い! 嘘をついたバチが当たったとでも言うんだろうか…)

 

 怪鳥の突撃で部屋は滅茶苦茶になったが、今はそんな事を気にしてはいられない。

 問題は、この巨大怪鳥をどうするかなのだから。

 

「こんな場合はどう対処するのかしら? 是非とも見てみたいわね」

「そーだな。こんな風に自分の部屋にまで押し寄せられたら、流石にもう戦うしかないんじゃねーか?」

「お手並み拝見…かしらね?」

(勘弁してくれよ…マジで…!)

 

 思わず神にでも祈りそうになったが、今はその神こそが自分達にとっての最大の敵なので、流石にそれは自重した。

 けど実際、神でもなんでもいいから、この絶望的な状況をどうにかしてくれと願わずにはいられないキングなのだった。

 

(今日は…厄日だ…)

 

 

 

 

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