正確には怪人協会編なのかな?
街中で起きた機神G4との戦闘後。
ジェノスは自分の体を修復して貰う為に一度、クセーノの研究所へと戻って来ていた。
「クセーノ博士。ただ今戻りました」
「おぉ…ジェノス。よく戻ったな。また随分と派手に壊れたもんだ…」
「申し訳ありません。ですが、収穫もありました」
「収穫?」
クセーノが首を傾げていると、ジェノスがその手に持っていた鉄塊を床にドンと置いた。
「こ…これは…!?」
「つい先程、俺とこあが街中で戦った機神G4と名乗る謎のロボットのパーツの一部です。俺達二人掛かりでようやく互角に渡り合えたほどの凄まじいパワーと知能を併せ持っていました」
「なんと…!」
「これは、その残骸の一部なのですが、もしここから何か俺に使用出来るパーツが有れば、是非とも強化に使って欲しいのです。俺は…もっと強くなりたい」
目の前に置かれたパーツを見て、思わずクセーノは唾を飲む。
「こ…このパーツは…! 一体どこでこんな物を…」
疑問は残るが、今はそんな事を気にしている場合ではない。
すぐに頭を切り替え、仕事モードになる。
「よし…分かった! なんとかやってみよう! どうやら、まだまだお主は強化できる余地が残っていそうじゃ!」
「ありがとうございます」
これ程のパーツを見せられ、クセーノも柄にもなくやる気になった。
だが、それと同時に心配事もあった。
「だがジェノス…幾ら正義の為にサイボーグとなったとはいえ、余り無茶をするもんじゃないぞ。彼女も悲しむじゃろう」
「お言葉ですが、今の情勢では多少の無茶は仕方がないと思います」
因みに、クセーノが言った『彼女』とは、当然こあの事を指している。
「今の俺にはS級10位以内に入るという目標もありますし…」
「お主なら、そういうと思ったわい。あのサイタマ君に出された課題か…」
「はい」
「この間の葬式の時にも見たが、中々に人柄の良さそうな若者だった。例のパチュリーさんとだけじゃなく、彼とも少し話をしてみたいものだ」
あのジェノスがここまで尊敬する相手…クセーノも少なからず興味が湧いていた。
「話は変わるがジェノスよ…例のサイボーグ…お前の故郷を滅ぼした『暴走サイボーグ』に関する情報は何か手に入れたのか?」
「いえ…それが…まだ有益な情報は得られず仕舞いで…」
「そうか…。最近はヒーロー活動に専念しているようだが…」
本心を言えば、復讐なんて忘れて、このままヒーローとして生きてくれた方がいいのではないか…と思い始めている。
当のジェノスはすぐに否定するだろうが。
「奴だけは必ず見つけ出し…この手で確実に破壊する…! 俺と同じような悲劇を二度と生み出さない為に…自分自身の運命に真の決着をつける為にも、何より…大切な物を護る為にも!」
「ジェノス…お主…」
言葉の端々から、今のジェノスが以前までのジェノスとは全く違う事がハッキリと分かった。
余りの代わりように、クセーノは良い意味で驚いていた。
(ジェノスの瞳から…以前まであった『憎しみの炎』が完全に消え、希望の光が宿っている…! 信奉する師と尊敬する友…そして、愛する者を得たことがジェノスの心から闇を消し去ったのか…!)
サイタマ…パチュリー…こあ。
あの三人との出会いが、ジェノスの心を大きく成長させた。
(今のジェノスならば…もう大丈夫じゃな…)
本当は、色々と警告や注意を促そうと思ったが、それは余計なお世話だと知る。
知らず知らずのうちに、ジェノスは本当の意味での『ヒーロー』になっていた。
「それでは早速、お主の修復と強化を始めるとしよう。あまり彼女を待たせるものではないからな」
「はい。よろしくお願いします」
『彼女』と言われて何も否定しないどころか、素で言葉を返している辺り、ジェノスもまたこあの事を本気で異性として認識しているのかもしれない。
こうして、ジェノスはまた強くなる。
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一方その頃、サイタマはと言うと…?
「あ? おい。なんでお前ばっか強化アイテムを取ってるんだよ。ふざけんじゃねーよ」
「こーゆーのは基本的に早い者勝ちだから」
「いやいやいや。協力プレイだろ? 分かち合いの精神が大事だと思うぞ? なんて言ってたら、また強化アイテムを取りやがったな? 俺の奴まだ初期状態のまんまじゃねーか。これじゃボスが倒せねーよ」
「俺が一人で倒すから大丈夫」
「なんじゃそりゃ」
キングの部屋で一緒にゲームをして遊んでいた。
あれからサイタマは頻繁にキングに家に遊びに行くようになり、こうして一緒にゲームをしている。
今じゃ完全に二人はゲーム友達となっていた。
「そう言えば、今日はパチュリー氏が来てないみたいだけど、どうかしたの?」
「あぁー…パチェなら今日はヒーロー協会の本部に呼ばれてる。こあも一緒に」
「ふーん…何かあったのかな? もし何か事件が有ったら、俺の方にも一報ぐらいは入るんだけどなー」
「さーなー。ただ、『怪我人の治療をしに行く』とだけ言ってた」
「怪我人? また物騒だな…」
顔を青くしながらも、しれっとキングは自機を操作して無傷の状態でボス相手に無双プレイをし、サイタマの機体には碌に攻撃すらさせずにステージクリアをしていた。
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ヒーロー協会本部医療棟。
その一室のベットに、包帯だらけの三人のヒーローが寝ていた。
「全く…いきなり呼ばれたから何事かと思ったら、まさか彼らの治癒をお願いしたいとはね」
「申し訳ない…」
情けなく頭を下げているのは、協会内で数少ない、真剣に世界の平和を案じている幹部シッチ。
彼の体に怪我はないが、その代わりにかなりの心労があったのか、相当に落ち込んでいる様子だった。
「それにしても、貴方達がここまでやられるとはね…正直、意外だわ」
「言い訳はしない…」
悔しそうにしながらも、天井をジッと見つめるのはA級5位の重戦車フンドシ。
その隣にはA級6位のブルーファイアが少し短くなった右腕に包帯を巻き、窓際にはA級7位のテジナーマンが珍しく素顔を晒して静かに寝ていた。
「彼らとは私がA級だった頃からも親交があったけど、ここまで派手にやられるようなヒーローじゃなかったと思うんだけど? 一体何があったの? ちゃんと話してくれるんでしょうね?」
「あぁ…勿論だ。君がS級である以上、避けては通れない話だろうしな…」
因みに、さっきからこあは室内に流れる重苦しい空気に充てられ、下手に喋るべきじゃないと判断し、さっきから黙って治癒魔法にて治療に専念している。
そこからシッチの口から語られる話。
それは、普通ならば耳を疑うような内容だった。
「…なんですって? 裏社会でのさばっている連中をかき集めて協力を要請した?」
「…そうだ。別に私は、君達ヒーローが頼りないとか、侮ったりとかは決してしていない。寧ろ、何よりも頼りになるとさえ思っている」
「じゃあ…なんで?」
「単純に数の問題だ。C級390名。B級101名。A級39名。そしてS級18名…どう考えても人数不足だ。君達S級がどれだけ異次元の戦闘力を持っていたとしても…我々の真の相手は『星』そのもの…余りにも戦力が足りなさすぎる…!」
「まぁね…」
相手は、その気になれば一瞬で惑星すらも滅ぼせるほどの存在。
今は只、星神の気紛れで生かされているに過ぎない。
その気紛れの隙間を縫って、少しでも対抗策を練らなくてはいけない。
「…今回の話、私にしたのはある意味で大正解だったわね」
「え?」
「もしもアマイマスクやタツマキの耳にでも入ってごらんなさい。どうなるか分かったもんじゃないわよ?」
「そ…それは…」
ヒーロー至上主義なアマイマスクと、強者至上主義なタツマキがこの事を知ったら…間違いなく暴走する。
考えただけで胃が痛くなるような光景だ。
「で、その集まった連中の中の一人に、彼らが倒されたって事…なのよね?」
「そうなる…」
「名前や特徴は? 分かってるんでしょ?」
「…彼は自分の事を『ガロウ』と名乗っていた。年の頃は恐らく10代後半から20代前半くらい。怪人に憧れて修行をし、数多くの武術道場を潰してきたと自負していた」
「…なんですって?」
その名を聞いた途端、パチュリーの顔色が一変する。
彼女にしては珍しく、本気で驚いた顔に。
「ど…どうかしたのか?」
「その『ガロウ』って名前…」
「し…知っているのかッ!? 奴の事をッ!?」
「顔とかを知っている訳じゃないけど…名前なら聞いたことがあるわ」
「ど…どこでっ!?」
「バングおじいちゃんの口から…」
「シルバーファングからっ!?」
まさかの名前が出て病室内が騒然となる。
特にシッチは体を乗り出すように聞いていた。
「ガロウってのは、少し前まで彼の道場にいた弟子らしいわ」
「いた…? と言う事は今は…」
「破門したんですって。なんでも、ある日突然、他の弟子たちをボコボコにしてたから、おじいちゃんが逆に返り討ちにして道場から追い出したって」
「そうだったのか…!」
まさか、数多くの事件の裏でそんな事が起きていたとは。
それが今になって自分達の首を絞める事になるとは。
一体誰が想像できただろうか。
「あのシルバーファングの弟子ならば…あの若さであの強さなのも納得がいくが…」
「だからと言って、奴の言動が許されるわけじゃない。一刻も早くどうにかして捕えるべきだろう」
重戦車フンドシとブルーファイアが苦々しく呟く。
ガロウ相手に手も足も出なかった立場としては、非常に意見が言い難いのだろう。
「一度…時間を取っておじいちゃんとも話をするべきかしらね。彼にも聞く権利はあると思うから」
「そうだな…。彼から少しでもガロウの事が聞ければ、有効な手立てを思い浮かぶかもしれん」
一難去ってまた一難。
ヒーロー達に休息は許されないと言う事なのか。
「兎に角、今は皆の怪我の治療に専念しましょ。ほら、ジッとして」
「あ…あぁ…」
実はここにいる三人、パチュリーがA級の頃からよく彼女の魔法の世話になっていて、その頃から頭が上がらなくなっていた。
パチュリーがS級になってからは更に頭が上がらない。
(自分の元弟子が暴走して…おじいちゃんはこれから大変でしょうね…)
今までも色々と世話になったバングだからこそ、心配せずにはいられないパチュリーだった。