S級ヒーロー 七曜のパチュリー   作:とんこつラーメン

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やっと『彼女』が本格登場。

でも、原作よりは影が薄くなるかも…?







千客万来にも限度がある

 Z市の端にあるゴーストタウン。

 その一角にあるサイタマとパチュリーの住んでいるマンション。

 最近は色んな事件が立て続けに起きて忙しかった面々も、久し振りの平穏な日常を送っていた。

 

「少し前に調べたのですが、サイタマ先生の順位がB級7位に上がっていました」

「え? マジで? 視界に入った怪人をぶっ飛ばしてただけなのに、そんなにも順位って上がるもんなんだな」

 

 キッチンにてゴム手袋をはめながら皿洗いをしているジェノスが、少し恒例となった順位発表をしていた。

 彼の隣では、寄り添うようにしながらこあが一緒に洗い物をしている。

 サイタマは何故かヒーローコスチュームを着たままキングに借りたゲームをしていて、パチュリーはいつものように壁に寄りかかりながら本を読んでいた。

 

「ジェノスさんは何位になったんですか?」

「俺はS級14位に上がっていた。こあもA級20位に上がっていたぞ」

「え? 最下位からそんなにも一気に? 特に何かをした覚えは無いんですけどねぇ~…」

「よく俺と一緒に怪人退治をしていたからじゃないか? 実際、こあのサポートがあったお蔭で助かった場面は多かった」

「そ…そうですか…えへへ…」

 

 今日も今日とて仲睦まじい弟子カップル。

 もし漫画ならば、二人の間にはピンク色の空気が漂っている事だろう。

 

「んじゃ、パチェの順位はどうなんだ?」

「パチュリーさんはS級13位になっていました。流石です。もう追い越されてしまいました」

「え? 13位? 嘘でしょ? もう閃光のフラッシュくんやタンクトップマスターや金属バットくん、ぷりぷりプリズナーよりも順位が上になったの?」

 

 幾らなんでも一気に追い越し過ぎでは?

 パチュリー的には、まだまだ最下位でもいいのにと思っていたので、今回の順位変動は純粋に驚いた。

 

「各種魔法による貢献度だけでなく、今やパチュリーさんはあの童帝にも匹敵する程の頭脳役としてヒーロー協会に君臨してますからね。その重要度を加味した結果、一気に順位が上がったのでしょう」

「ふーん…別に私は、そこまでの事をしてるつもりはないんだけどなぁ~」

「恐らく、これからもパチュリーさんの順位は上がり続けるでしょうね。このまま行けば、いずれはあのブラストをも越え、S級1位になるのも夢じゃないかもしれません」

「まっさかー。それは言い過ぎよ~」

 

 なんて言いつつも、褒められて嫌じゃないのか、頬を赤く染めながら照れてるパチュリー。

 照れ隠しに読んでいる魔導書で顔を隠しているが、その顔は可愛らしく微笑んでいた。

 

「もうそろそろ、サイタマ先生のファンクラブなども出来るかもしれませんね」

「いやいやいや。流石にそれは有り得ないから。S級のジェノスでもまだ無いのにさ」

「いえ。俺のファンクラブならもう既にあります」

「…マジかよ」

「ついでに言うと、パチュリーさんとこあのファンクラブもあります」

「うん。それはなんとなく予想してた」

「特にパチュリーさんのファンクラブは、会員数が1000人を超えてるらしいです」

「それは普通に引くわね…」

 

 全く本人が公認していないのにファンクラブが出来ていた事も驚きだが、それ以上にファンクラブの会員数が四ケタ越えしている事にドン引きした。

 

「ネット上にはパチュリーさんのファンクラブの公式サイトもあるそうですよ」

「非公式なのに公式のサイトとはこれいかに」

 

 ちょっとした言葉遊びみたいになってきた。

 考えるだけ無駄だと理解してはいるが、それでも自分をそんなにも支持している人間達がいる事は少しだけ嬉しかったり。

 

「む?」

「ジェノスさん?」

 

 何かを感知したのか、急にジェノスが虚空を見つける。

 

(高速で接近する生命反応がある…? これは明らかに一般人のソレや車などでもない。怪人か…もしくはヒーローの誰かか…?)

 

 ヒーローなどだった場合は普通に話せばいい。

 怪人だった場合は倒せばいい。

 最近のジェノスは、昔に比べて柔軟な判断が出来るようになっていた。

 

(サイタマ先生はお忙しそうだし、パチュリーさんも調べものでしているから邪魔は出来ない。こあには洗い物を進めておいてほしいし…)

 

 結論。

 自分が行けば万事解決。

 

「こあ。悪いが、少しだけここを頼む」

「え? はぁ…分かりました」

 

 ジェノスの行動に疑問を感じながらも、静かに頷くこあ。

 そんな彼女を安心させる為に、優しく頭を撫でながら微笑むジェノス。

 やってる事はもう完全にバカップルだ。

 

「何かしら…急にブラックコーヒーが飲みたくなったわ」

「奇遇だな。俺もだ」

 

 何やら共感しているサイタマとパチュリーだが、自分達も時折、似たような雰囲気を醸し出している事を全く知らない。

 

(場合によっては、新しいパーツの性能テストも出来るかもな…)

 

 そう思いつつ玄関を出て、下への階段の方を向きながら睨みを利かせた。

 

「…出てこい。そこにいるのは分かっている」

 

 念の為に警告をすると、上から黒装束を着た一人の青年が降りてきた。

 まぁ…誰なのかはお察しなのだが。

 

(怪人…じゃないな。かといってヒーローと言う感じでもない。だが、一般人にしては身のこなしが普通じゃない…何者だ…?)

 

 ジェノスからしたら正体不明の相手なので、警戒しながら両足を少し広げ、いつでも飛びかかれるように構えた。

 

「…人間か」

「サイタマを出せ。もしくはパチュリーでも構わん。ここに住んでいると言う情報は掴んでいるんでな…誤魔化しは利かんぞ」

「サイタマ先生やパチュリーさんの知り合いか…?」

 

 こんな人物とも知り合いだったとは驚きだが、お世辞にも友好的には見えない。

 自分一人で来て正解だったと思うジェノスだった。

 

「お前は…前にどこかで会ったな。まぁいい…そこをどけ。邪魔だ」

「『どけ』と言われて素直に退くと思うのか?」

「思わん。だが、そんなのは俺には関係ない」

 

 御尤も。

 だからこそジェノスは絶対に引くわけにはいかない。

 

「俺は『音速のソニック』。サイタマのライバルであり、同時にパチュリーとも色々と因縁がある」

「なんだと…?」

「今日は主にサイタマと決着をつけに来た。だから早くどけ。邪魔だ」

 

 ソニック。

 その名前を聞き、ようやくジェノスは思い出した。

 以前、サイタマを付け狙っていると言う謎の忍者。

 そして、サイタマに返り討ちに遭い、パチュリーからは同情までされたと言う男。

 

「そうか…貴様がそうだったのか。音速のソニック(笑)。この変質者め」

「俺は別に変質者じゃない。あと、その(笑)はなんだ。取れ」

「断る。そもそも、貴様のような奴がサイタマ先生のライバルを語ったりすること自体が烏滸がましい。ましてやパチュリーさんに近づこうとするなど10年早い。恥知らずめ。とっとと消えろ。そこから一歩でも踏み込んだら、即座に全力で排除する」

「排除されるのは貴様の方だ。サイボーグ野郎が」

 

 睨み合う両者。

 完全に戦う空気になりつつある状況の中、サイタマとパチュリーはと言うと…。

 

「あ…やべ。間違えてキングのセーブデータに上書きしちまった…。勝手にアイツの部屋から持ってきた上にセーブデータまで消しちったよ…どーしよ。やっぱ拙いよなぁ…」

「彼のことだから、素直に謝れば許してくれるんじゃない? 今度遊びに来た時にでもちゃんと謝りなさいな」

「そ…そうだな。そうするか…」

 

 凄く規模の小さいことで危機になっていた。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 ジェノスがソニックと相対してから約20分後。

 またもや誰かが部屋の前までやって来ていた。

 

「B級7位ヒーローのサイタマ! この部屋に住んでいるのは分かっている! 素直に出てきなさい!! B級1位ヒーローである『地獄のフブキ』様から貴様に話がある!!」

 

 かなり大きな声で叫んでいるのか、余裕で部屋の中まで聞こえてきていた。

 他に住んでいるのは隣にいるボロスだけで、その彼も今はバイトに出かけているから不在。

 近所迷惑にならない事だけが唯一の救いだった。

 

「なんだよいきなり。どーするパチェ?」

「またぞろ面倒くさそうね…。こあ、取り敢えず出てみなさい。もし不審者だった場合、魔法を使っても良いから追い返して」

「分かりましたー」

 

 タオルで手を拭いてから玄関まで行きドアを開ける。

 すると、そこには黒いスーツを着た男が立っていた。

 

「えっとー…どなたですか? サイタマさんのお知り合いの方ですか?」

「いっ!? き…君は…A級20位のこあちゃんっ!?」

「え? 私の事もご存じなんですか?」

 

 こあの顔を見た途端、黒スーツの男が一気に狼狽える。

 小首を傾げながら疑問に感じていると、黒スーツの後ろから同じように黒いスーツを着た大柄な男と、黒いドレスを着た黒髪の美女がやって来た。

 

「こあ…そう…アナタがそうなのね」

「ふぇ?」

「嘗てはB級だったにも拘らず、この私に挨拶もせずに、いつの間にか私の事を追い越してA級に昇格した新進気鋭の新人ヒーローの一人…」

「あのー…?」

 

 いきなり、こあの事を語りだした謎の美女。

 こあからしたら普通に不気味だった。

 

「私の名は『地獄のフブキ』。B級1位のヒーローよ。貴女の事はまぁ…もう過ぎた事だから大目に見るとして…」

 

 ギロリと鋭い目つきでこあの事を睨み付ける。

 だが、もうこの程度の事ではこあは微塵もビビらない。

 数多くの凶悪怪人や、S級ヒーロー達との出会いが彼女の心を強く成長させた。

 

「ここにB級7位のサイタマがいる筈よ? もし中にいるのなら呼んでくれるかしら?」

「はぁ…分かりました。ちょっと待っててください」

 

 一度玄関を締めてからサイタマを呼びに行くこあ。

 それを見ながら、フブキの両脇を固める二人は少し嬉しそうにしていた。

 

「まさか、ここにあのこあちゃんが住んでるとはな…知らなかった」

「俺もだ。生で見たこあちゃん…可愛かったなぁ…」

「ん? マツゲ…山猿。二人とも、あの子の事を知ってるの?」

「勿論です! A級からS級に昇格した魔法少女『パチュリー』の弟子にして、B級の頃から凄い人気だった女の子です!」

「確か、A級に昇格してから即座にファンクラブが出来て、会員数も既に500人を超えたって噂だよな」

 

 凄く嬉しそうにこあの事を語るマツゲと山猿。

 もしかしてと思い、念の為に尋ねてみる事に。

 

「まさかとは思うけど…二人もファンクラブに入ってるんじゃないでしょうね?」

「「…入ってます」」

 

 申し訳なさそうにしながら、二人はこあファンクラブの会員証を見せてきた。

 因みに、マツゲは会員番号214番で、山猿は235番だ。

 

「はぁ…全くもう…」

 

 趣味嗜好は個人の勝手だから文句は言わないが、よりにもよってB級からA級に昇格した少女のファンクラブに入るとは。

 

「…もういいわ。それよりも今はサイタマの事が先決よ」

「「はい!」」

 

 大ファンであるこあに出会えてテンションが上がった二人。

 逆にフブキの方が疲れていた。

 

 そうして話していたら、唐突に玄関扉が再び開いた。

 

「俺に用事があるからってこあから呼ばれて来たんだけどー…アンタら誰?」

「「「…………」」」

 

 扉から顔だけ出したサイタマは、開口一番から特大の爆弾を放り投げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




フブキ登場。

ここから超能力姉妹と交流していく…かも。


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