S級ヒーロー 七曜のパチュリー   作:とんこつラーメン

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今回は半分オリジナル回。

もしかしたら、次回辺りからヒーロー協会絡みの話に突入するかも?








最強の秘密(予想)

 進化の家での騒動から数日が経過し、サイタマやパチュリー達の生活にも普段の日常が戻ってきた。

 

「ふわぁぁ…。おはよー…こあー…」

「おはようございます。パチュリー様。今日もいい天気ですよ」

 

 サイタマの部屋の隣にある研究室兼寝室に置いてあるベッドで目を覚ますパチュリー。

 因みに、こあは彼女と一緒に同じベッドで寝ている。

 こあの方は恥ずかしがっていたが、パチュリーは別にそんな事は気にしないので、結果としてごり押す形で今みたいになった。

 

「んん……今、何時?」

「七時半ぐらいですね」

「そう……」

 

 パチュリーは余り朝が強い方じゃない。

 どっちかというと夜型なのだが、一年ぐらい前からはサイタマに合わせた生活リズムを取るようになっている。

 本人も、このままではいけないとは思っているようだ。

 

「……お腹空いた」

「それじゃあ、朝ご飯にしましょうか。サイタマさんもご一緒に」

「ん……」

 

 瞼を擦りながらベッドから降りて、薄い紫色のパジャマを着た状態でサイタマの部屋に移動することに。

 

「サイタマさーん。おはようございまーす」

「おはよー…」

「おう! パチェにこあか! おはよう!」

 

 やって来た二人に挨拶をするサイタマは、なんでか急いでヒーロースーツに着替え中。

 彼にしては珍しく、今回は本気で焦っているようだ。

 

「どうしたのよ? あんたが朝から騒々しくするなんて珍しい。何かあったの?」

「ちょっとな! 今から少し出かけてくる!」

「え? 朝ご飯は……」

「今日はいい! 悪いな! んじゃ行ってくる!」

「「いってらっしゃーい…」」

 

 ただならぬ様子ではあったが、仮に何かあっても彼ならば大抵の事は絶対に大丈夫という確信があるので、そこまで気にしない事に。

 

「一体どうしちゃったんでしょうか?」

「さぁね……ん?」

 

 部屋に入りながら周囲を見渡すと、テレビがつけっぱなしになっていた。

 別にそれ自体はおかしい事じゃない。

 テレビを消し忘れたなんて、彼ならば普通にやりそうなことだ。

 問題なのは、その番組…ニュースの内容だった。

 

「これは…まさか?」

 

 その報道を見て、どうしてサイタマがあんなにも焦っていたのかが分かったパチュリー。

 直後、誰かがインターホンを押した。

 

「あれ? 誰か来ましたね」

「この時間帯にここに来るのなんて、多分ジェノス君ね。こあ、出てあげなさい」

「分かりました」

 

 パタパタと足音を立てながら玄関のドアを開けると、そこには予想通りにジェノスの姿があった。

 

「おはようございます先生…ん? こあ? どうしてお前が? 先生はどうした?」

「おはようございますジェノスさん。サイタマさんなら、ついさっきヒーロースーツを着て急いで出かけていきましたよ?」

「なんだと? まさか、また怪人が現れたのか?」

 

 市街地の方を見つめながら拳を握りしめて彼の後を追おうとすると、パチュリーから止められた。

 

「あいつなら大丈夫よ。だから、君が行く必要はないわ」

「パチュリーさん? 確かに、先生ほどの強さならば、どんな怪人がいても楽勝でしょうが…」

「違う違う。今回のは怪人絡みじゃないわ。あいつが急いでいたのは…これが原因よ」

「「これ?」」

 

 パチュリーが見ているテレビを指差し、二人はそれを見る為に部屋に入って来る。

 その報道を見た途端、二人もどうしてサイタマが急いで出かけたのかを理解した。

 

「これって……え?」

「そう言う事だったのか…」

「どうやら、『新都団』って名乗るニート至上主義を掲げるアホな集団が、どこからか盗んできたパワードスーツを着て都心で暴れているみたい。で、その構成員たちの特徴ってのが……」

「全員、禿げ頭……」

「そーゆーこと」

 

 蛇口を捻ってからコップに水を汲んでからグイッと一口しながら、ポツリと呟く。

 

「多分、あんな連中がいたんじゃ自分も連中の仲間と間違われる可能性があると思ったから、急いで退治しに行ったんだと思うわ」

「サイタマさんも災難ですね~…」

「全くね。でも、怪人じゃなければ今まで以上に楽勝でしょうし、全く問題は無いわよ。私達は、ここでのんびりとアイツの帰りを待ってましょ」

 

 コップをシンクに置いてからテーブルの傍に座り、スマホで今のニュースの詳細を確認し始めた。

 

「どうやら、主犯の奴はB級の賞金首みたいね。普通なら雑魚中の雑魚なんでしょうけど、それがパワードスーツを装備して粋がってるって感じかしら」

「こんな連中、サイタマ先生の手に掛かれば一瞬で片が付くでしょうね」

「私もそう思うわ。帰ってくるついでに、どこかで買い物とかしてくるかもね」

「それなら、砂糖が無くなりかけているから、頼んでおけば良かったですねー」

 

 なんだか主婦みたいな思考になりつつあるこあ。

 将来は良いお母さんになるかもしれない。

 

「そうだ。こうしてサイタマだけがいないってのも珍しいし、この機会に話してあげましょうか? 進化の家で私が言ってたこと」

「それは…サイタマ先生の強さの秘密…ですよね…?」

「そ。正確には『私の憶測』なんだけどね。それでも聞く?」

「はい! 是非お願いします!」

「うんうん。やる気のある子はお姉さん好きよ。けど、その前に…」

 

 パチュリーのお腹からキュ~という可愛らしい音が。

 気が付けば、もう起床してから30分近くが経過していた。

 

「まずは朝ご飯にしましょうか。お腹も空いたし」

「そうですね。ではパチュリーさま。今日はご飯とパン、どちらになさいますか?」

「パンでお願い。後は任せるわ」

「分かりました。では、オーソドックスに目玉焼きとかにしましょうか」

「こあ、俺も手伝おう。一緒にやれば、その分だけ時間を短縮できる」

「いいんですか? お願いします」

 

 ということで、ジェノスとこあの二人でキッチンに立ってから調理をすることに。

 お若い(?)二人が並んでいる姿を見て、パチェさんは思わず心の中でホンワカな気分になった。

 

(青春よね~…)

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 

「「「ごちそうさまでした」」」

 

 ジェノスとこあが共同制作した朝食を食べ終え、食後のお茶で一服。

 パチュリーは完全に蕩けきっていた。

 

「ジェノスさん、お料理が上手なんですね。驚きました」

「クセーノ博士の食事は主に俺が用意していたからな。最初は苦戦していたが、次第に出来るようになっていった」

「そうだったんですねー」

「こあだって非常に手馴れていたな。見事な手際だった」

「えへへ…私って、悪魔としては低級も低級なので、せめて他の部分で皆の役に立ちたいと思って、家事とかが出来るように頑張って練習したんです」

 

 傍から見ていると、くっつく寸前のカップルのよう。

 さっきからパチュリーお姉さんはニヤニヤが止まりません。

 

「食事も終わりましたので、お話して貰えますか?パチュリーさんの考える『サイタマ先生の秘密』を」

「いいわよ。ごく…ふぅ…」

 

 湯呑を両手で包み込みながらテーブルに置き、静かに息を吐いた。

 

「…サイタマがヒーローになりたいと思い始めたのは、今から三年ぐらい前。その頃のあいつは当然、今みたいな超絶的な力なんて持っておらず、どこにでもいる普通の人間だった」

「サイタマ先生にもそんな頃が…」

「当たり前じゃない。誰だって最初から強いわけじゃないわ。それはサイタマだって例外じゃなかったって事」

 

 ここでは語らないが、パチュリーにもそれは当て嵌まる。

 彼女に最初からあったのは、使い道の分からない膨大過ぎる魔力だけ。

 それを有効活用する為に、彼女は必死に勉強と訓練を重ねた。

 

「進化の家でも言ってたトレーニングを始めたのも、その頃だったわ。最初は何をやってんだと思ったけどね……」

 

 だが、そんな彼女も今では完全にサイタマに触発されている。

 魔法という分野において言えば、パチュリーもまた十分にサイタマ級の戦力となっているのだ。

 

「なんて、昔話をしていても仕方がないわね。私の悪い癖だわ」

「そんな事はありません。俺も、先生とパチュリーさんの馴れ初めの話には興味がありますから」

「馴れ初めって……」

 

 一緒に暮らしてはいるが、別にサイタマもパチュリーも、お互いを異性として認識した事は今までに一度だってない。

 二人はどこまで行っても『親友』であり『同居人』なのだ。

 

「昔の事を話していったらキリが無いから、結論だけを言うわね」

「はい。お願いします」

 

 残ったお茶を全部飲み干して、急須を傾けて茶を注ぎながら『ソレ』を言った。

 

「アイツが…サイタマが人知を超越した強さを身に着けた理由…それは恐らく…」

「「恐らく?」」

「…幾度となく『死線』を乗り越えてきてるから」

「死線を……」

「乗り越える…?」

 

 茶を注ぎ終えたパチュリーは、そっと口を付けて喉を潤す。

 思ったよりも抽象的な事を言われ、あの時とは別の意味で呆然となってしまった。

 

「さっきも言った通り、サイタマは最初から強かったわけじゃないし、怪人に立ち向かっていってたわけじゃない。最初は暴漢や通り魔、テロリストとかの人間の犯罪者相手に戦ってたの。それでも怪我をしてくることが多かったけど」

「妥当な所でしょうが…それで瀕死になって…?」

「ううん。あいつが本格的にヤバくなり始めたのは、ある程度、自分に対して自信をつけ始めた頃から。1年365日、常にあのトレーニングをし続けた事で最低限の体付きにはなってきたんでしょうね。サイタマは災害レベル『狼』ぐらいの怪人相手に戦いを挑むようになっていった」

「結果は…?」

「ズタボロになりながらも辛うじて勝利って感じ。怪人退治から帰ってくると、いつも全身に酷い怪我をしてたわ。そんな時は私も習得したての回復魔法で治してたけど」

「それもそれでまた凄いですね…」

 

 何気にパチュリーのエピソードも聞いてしまった。

 彼女もまた当時から想像すら出来ない程の努力をしてきたのかもしれない。

 

「…で、それで調子づいてしまったみたいでね。以降は怪人ばかりをターゲットにしてた。その度に大怪我をして、時には病院に入院する時だってあった。それでも、アイツはトレーニングを止めなかった」

 

 大怪我をしている時でも自分を鍛え続ける。

 言葉にすれば簡単だが、実際に出来るだろうか?

 大火傷をしても、骨折をしても、それを継続し続ける。

 幾ら回数が少ないとはいえ、常人には難しいだろう。

 

「入院と退院を繰り返していく内に、私はサイタマの身の変化に気が付いた。強くなってるのよ…明らかに。それまで苦戦を強いられていた災害レベル『狼』の怪人たちに全く苦戦しなくなり、『虎』の連中とも互角に渡り合えるぐらいになっていた。それでも怪我は多かったけどね。そんな日々が続いたある日…サイタマが瀕死の重傷を負った事があった」

「先生が瀕死の重傷…!」

「そう。私の魔法でも回復しきれず、病院に緊急搬送された。手術も行ったらしいわ」

「「………」」

「結果として一命は取り留めたけど、医者からは絶対安静を言い渡された。流石に入院中は怪人退治はしなかったけど、トレーニングだけはやってたみたい。ナースさんにすっごく怒られたってぼやいてたわ」

 

 そりゃそうだ。

 ジェノスとこあは全く同じことを心の中で呟いた。

 

「約一ヶ月ぐらい入院して、それから無事に退院を果たしてから、またサイタマはいつものように怪人退治に向かった。その時は心配だったから私も一緒にいたんだけど…アイツの全能力が爆発的に上がっていた。災害レベル『虎』なんて一発。下手をしたら『鬼』や『竜』相手でも楽勝なんじゃないかって思わせるほどに」

「で…では、それが先生の覚醒の切っ掛け…?」

「恐らくね。その頃からだったし、アイツの髪の毛が抜け始めたのって。本気で落ち込んでたけど。必死に育毛剤とかを頭に塗ったりしてね」

 

 因みに、まだサイタマは諦めていない。

 いつの日か必ず、髪が復活すると信じている。

 

「多分だけど、サイタマは怪人たちと戦って怪我を負っていく内に、人体の『リミッター』が外れてしまったんじゃないかと思うのよ」

「リミッター…ですか?」

「そう。ほら…聞いたことない? 人間は本来、その身に物凄い能力を秘めているけど、人体にリミッターを掛けて意図的に能力を発揮出来ないようにしているって言う学説」

「えぇ…俺もクセーノ博士から少しだけ聞いたことが。確か、人間が本来の能力を発揮しようとすると人体の方が耐えられない。だから『リミッター』を設けて身体を守っていると…」

「そうそれ。サイタマにはもうそれが存在していない。どんな攻撃を受けてもビクともしなくなったからこそ、どんな奴が相手でも一撃必殺の超絶的な攻撃力が出せるようになり、その対価として髪が全て抜け落ちた…ってのが私の考え。参考になったかしら?」

「はい。非常に為になりました。ありがとうございます」

 

 どんな攻撃もどんな現象も受け付けなくなり、だからこそ人間本来の…否、それを遥かに超越した能力を発揮しても自分の身体が傷付く心配が無くなった。

 まさに『リミッター』を完全に外したと言えるかもしれない。

 

「なんか無駄に話が長くなっちゃったわね。こあはちゃんとついて来てる?」

「え…えっと~…?」

「あー…無理して理解しようとしなくてもいいわよ。あなたにはそこまで関係は無い話だから」

 

 目を丸くして猫の口になっているこあを見て、流石に可哀想になったのか、話はここまでにする事に。

 

「一度、クセーノ博士にも今の話をしてみようと思います。博士の意見も聞いてみたいので」

「それが良いでしょうね。別の分野だからこそ見えるものもあるでしょうから」

 

 かなりの長話をしたせいか疲れたようで、パチュリーは何度も首を動かしつつ肩を掴んでいた。

 

「はぁ…本当に疲れた」

「お疲れ様でした。パチュリーさま」

「本当よ。もう過去の話とかはこりごりだわ。無駄に話が長くなってしまうから」

 

 すっかり温くなってしまったお茶を一気飲みし、ずっとつけっぱなしにしていたテレビに目を向ける。

 未だにさっきのニュースの続きをしているようで、リアルタイムで情報が流れていた。

 

「サイタマは、ちゃんと目的の連中と出会えたのかしらね…」

 

 窓の外から見える空を眺めながら、そっと呟いたパチュリーだった。

  

 

 

 




サイタマの強さの話はあくまで『想像』の話。

実際にそうなのかは分かりません。




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