S級ヒーロー 七曜のパチュリー   作:とんこつラーメン

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ようやく、ヒーロー協会が絡み始めます。

ある意味で、ここからが本番ですよね。








最近のヒーロー事情

「「「音速のソニック?」」」

 

 夕方になり、サイタマは意気消沈した様子で帰ってきた。

 彼のそんな姿を見せられて、当然のようにジェノスとこあは心配をしたが、パチュリーは『いつものことだ』と割り切って深く追求しなかった。

 そんな時、今の名前が飛び出したのだ。

 

「一体誰ですか? その『頭痛が痛い』的な名前の人物は? パチュリーさんは何か御存じですか?」

「ぜーんぜん。こあは聞いたことある?」

「私もありませんねぇ~…。サイタマさん、それってどんな人だったんですか?」

「なんつーか…無駄にすばしっこくて、忍者みたいな奴だった」

「「「忍者?」」」

「そ。どうやら、俺よりも先にスキンヘッドの連中を倒してたらしくて、その後に案の定って言うか、俺をそいつらと勘違いして襲い掛かってきたんだ」

「結果は?」

「一発ぶん殴って終わらせようとしたら、間違って金的をしちまった」

「「うわぁ…」」

 

 サイタマの攻撃力で金的。

 別の意味で大丈夫なのかと心配してしまう。

 

「その後、勝手にライバル宣言をしてどこかに行っちまった」

「普通に意味不明な奴ね…」

「お困りでしたら、俺の方で消しておきましょうか?」

「いやいい。つーか、お前もお前で中々に物騒な奴だな…」

 

 サイボーグであるジェノスにそれは今更である。

 

「というか、帰ってきてからずっと元気が無いけど…本当にどうしたのよ? 何かあった?」

「パチェ…俺は今、物凄く重大な問題に気が付いてショックを受けている…」

「重要な問題…ですか?」

「先生ほどのお人が抱えている重大な問題とは一体何なのですか? よかったら教えてください。何か力になれるかもしれません」

「あぁ……」

 

 テーブルの上に肘を突き、大きく息を吐き出しながら静かに呟いた。

 

「……知名度が低い…というか、全く無い…」

「「「え?」」」

 

 強敵の出現でもなく、行きつけのスーパーが潰れたとかでもなく、まさかの知名度。

 これは流石のパチュリーも予想出来なかったのか、思わず呆然となってしまった。

 

「パチェも知っての通り…俺が趣味でヒーロー活動をし始めてから、もう三年にもなる…。今までずっと、凶悪テロリストだの悪の軍団だの怪人だの地底怪人だのと退治してきた…。他のヒーローたちが俺と同じような活躍をしている場面なんて一度たりとも目撃したことが無い。流石に誰もが俺の事を知って…とか贅沢は言わないが、それでも多少なりとも噂とかになってたりしても不思議じゃないだろ? 隠れファンぐらいはいてもいいだろ? つーか、未だにこんな人気のないゴーストタウンに細々と住んでること自体がおかしいだろっ!?」

「いや…ここに暮らしてるのは、単純にアパートの家賃を滞納し続けた結果でしょうよ…」

 

 ここに来る前からサイタマと一緒にいただけあって、ゴーストタウンに移り住むまでの経緯も全て知っている。

 敢えてここでは話はしないが。

 

「昼間さ…さっき話した忍者野郎になんて言われたと思う?」

「なんて言われたんですか?」

「『お前なんて知らん』…だってさ」

「でしょうね…」

 

 趣味でやっている以上、知名度などは二の次だった筈だが、真っ向から言われたことで流石に何か思う所があったようだ。

 

「町の人達も俺の事を完全にテロリストの一味と勘違いしてやがった。前に凶悪怪人が出現した時に倒したのは俺とパチェだって事を全く覚えてすらいなかった…」

 

 その日の気分次第ではあるが、実はパチュリーも密かにサイタマのヒーロー活動を手伝ったりすることがある。

 実際には、新しく習得した魔法の実験台替わりなのだが。

 

「そういえば、さっき見たニュースでも、例の人達を撃退したのはサイタマさんでも、ソニックって人でもなく、『無免ライダー』って人のお蔭だって報道してましたね」

「だろっ!? 絶対におかしいだろッ!?」

「ま…まさか…『趣味でヒーロー』とは……先生っ!」

「ん? どした?」

「もしかして、『ヒーロー名簿』に登録してなかったんですかッ!?」

「「「ヒーロー名簿?」」」

 

 全く聞いたことのない単語に、ジェノス以外の全員が小首を傾げた。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 『ヒーロー名簿』

 全国に存在する『ヒーロー協会』の施設にて『体力テスト』や『正義感テスト』などを受け、ある一定の水準を超えれば正式にヒーローを名乗る事が許可され『ヒーロー名簿』に登録される。

 そうして登録された者はプロヒーロー(職業ヒーロー)として協会に募金として寄付された金銭が支給される事になっている。

 『ヒーロー名簿』に登録する際には『実力ランキング』や『人気ランキング』などにも同時に登録され、世間は常にそれらのヒーローたちの話題で盛り上がっている。

 中にはファンクラブを持っているヒーローたちも少なからず存在している。

 

 (注意!)

 世間一般で呼称されている『ヒーロー』とは名簿に登録されたプロヒーローの事を指しており、どれだけ個人で活動をしていても『自称ヒーロー』では『妄言を吐く変態』ぐらいにしか認識されず、基本的に人々から白い目で見られることが多い。

 

 

 

 民名書房刊【プロヒーローになる為の基礎知識】より抜粋。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「…らしいですよ?」

「なんだよ…民名書房刊って…」

「それは気にしたら負けよ」

 

 ノートパソコンにて、こあがヒーロー名簿の事を検索して音読してサイタマに聞かせた。

 因みに、こあにパソコンの使い方を教えたのはパチュリーである。

 あっという間に覚えてみせて、割と素で驚いてしまった。

 

「つーか……全く知らなかった……」

 

 サイタマ。本気の本気で落ち込みまくる。

 これは普通にショックだったらしい。

 

「プロヒーロー制度が誕生したのは、今から三年ぐらい前になります」

「三年前って…俺がヒーローを目指し始めた頃か…」

「はい。世界的大富豪アゴーニの孫が『とある怪人』に襲われた時、通りがかりの男性に体を張って助けて貰った事があったらしく、その事を孫から聞いた時にこの制度の事を考え付いたらしく、私財の大半を投げ打ってヒーロー協会を設立することにしたとか…」

「それも初めて聞いた……パチェは知ってたか?」

「全く。私はサイタマと違ってヒーロー願望とか無かったし。興味も無いしね」

「だよな……」

 

 ある意味、パチュリーはサイタマ以上に他の事に関して無関心である。

 彼女の目的はあくまで『魔法の研究』であり、それ以外の事には余り目を向けようとしない。

 

「そういや、ジェノスは登録ってしてるのか?」

「いえ。俺は別にいいです。パチュリーさんと同じように興味がありませんから」

「ふーん……」

 

 ここでサイタマが顎に手を当てて何かを考える。

 パチュリーは知っている。

 彼がこんな風に熟考する時は、大半が碌な事じゃないと。

 

「なら、登録しようぜ! もし俺と一緒に登録してくれたら、その時は正式に弟子にしてやるから!」

「分かりました! 喜んで行きましょう!」

 

 何とも眩しい笑顔でジェノスが二つ返事。

 サイタマは絶対に適当に言っている。

 

「ついでだし、パチェとこあも一緒に登録しようぜ!」

「はぁ? さっきも言ったでしょ? 私はヒーローになんて興味は無いのよ」

「わ…私なんかにヒーローが務まるんでしょうか…? そもそも受かるかどうかすらも…」

 

 パチュリーはやる気なしで、こあは自信が無い様子。

 ここで彼女達を誘えなければサイタマはガッカリするに違いない。

 ならば…ということでここはジェノスが未来の師の為に一肌脱ぐことに。

 

「パチュリーさん。実は、お耳に入れておきたい事が…」

「なに? 幾らジェノス君の言葉でも、そう簡単に考えを変える気は……」

「プロヒーロー…中でもトップクラスのヒーローともなると、個人所有の施設などが与えられることがあるようです」

「個人の施設? 例えば?」

「個人所有の研究室など」

「……え?」

「更には、ヒーロー協会が保管している数多くの資料も特別に閲覧が可能になるかと。それらは世間一般には決して出回らないような物ばかり。パチュリーさんの魔法研究に必ず役立つと思います」

 

 瞬間、パチュリーの頭は物凄い勢いで回転し始める。

 

(それってアレよね? いつでも好きな時に好きな研究を静かな空間で出来て、しかも好きなだけ貴重な資料が見放題になるって事? もしかしたら、私がまだ知らない古文書とか古代文明の資料とかもあるかもだし…ヒーローになるのは本当に面倒くさいけど、それは適当な時に適当な怪人でもブッ倒しておけば良いわけだし…表で堂々と怪人相手に魔法の実験を行えるって事でもあるわよね? 多少のリスクには目を瞑ったとしても、得る物は非常に大きい…)

 

 ブツブツと小声で呟きながらメリットとデメリットの計算をする。

 この間、僅か五秒。

 

「し…仕方がないわねー。そこまで言うんなら、いっちょ受けてやろうじゃないのよ。そのヒーロー試験って奴を」

「おぉ!」

「パチュリーさんなら絶対に楽勝でしょう!」

「ふふん。当たり前じゃない。体力試験ってのがちょっと不安だけど、いざとなったら魔法でどうにかすればいいわけだしね」

「そうですね。所属しているヒーロー達の中には超能力者もいると聞きます。故に、身体能力ばかりが注目される事は無いでしょう」

 

 パチュリー。完全に乗せられる。

 

「こあ、あなたも受けてみなさい」

「私もですか? 大丈夫かな…」

「なんとかなるわよ、きっと。少なくとも、そこらの人間よりは身体能力はあるんでしょう?」

「まぁ…一応。悪魔ですから…」

「それに、私が前に初歩的な魔法を教えてあげたでしょ? それらを駆使すれば、試験ぐらいは簡単に受かるでしょ」

「パ…パチュリーさまがそう仰るなら…頑張ってみます」

「よろしい」

 

 これで全員が試験を受けることになった。

 約二名は口車に乗せられているが。

 

「そうと決まれば、まずは必要な物を買いに行かなくちゃいけないわね」

「必要な物? なんだそれ?」

「ジャージよ。体力テストがあるって事は、運動しやすい格好になった方がいいでしょ? でも、私もこあもソレ系の服って全く持ってないから新しく買わないと…」

「そういやそうだったな。今から行くのか?」

「それが良いでしょうね。善は急げって言うし。後からだと面倒くさくなって、結局行かなくなりそうだし」

「俺が行ってきましょうか?」

「別にいいわよ、ジェノス君。それに、こーゆーのは着る人間が直接行ってからサイズを測ったりしないとだし」

 

 よっこいしょっと立ち上がってから、こあと一緒に玄関まで向かってから靴を履く。

 彼女が自らの意志で外出をするのは割と珍しい。

 スーパーの特売日がある日か、もしくは本を買いに行く時ぐらいだ。

 

「では、俺はパチュリーさん達が買い物に行っている間にネットで全員分の応募をしておきます」

「え? ネットで応募できるの?」

「方法自体は色々あるみたいです。ハガキで応募したり、協会に直接電話をして応募したり、それらが面倒な人はネットで応募する感じですね」

「まるでバイトの面接に行くみたいなノリなのね…」

 

 なんか急に気が抜けた。

 本当に試験自体は楽勝なのかもしれない。

 

「ヒーロー試験っていつ開催されるんですか?」

「試験自体は割と定期的に行われているらしく、俺達が応募する試験は…今から一週間後になるな」

「思ったよりも時間があるんですね。明日とかって言われたらどうしようかと思いましたよ…」

「確かに、いきなり明日とかと言われたら緊張するかもしれないが、一週間後ならば心の準備も出来るだろう」

「そうですね。念の為にお勉強とかもしておいた方がいいのかな…」

 

 試験を受けると決めはしたが、それでもまだ不安は拭えない様子のこあ。

 それも、ジェノスと話したことで幾らかは緩和されたようだが。

 

(青春だな~…)

(青春よね~…)

 

 似た者同士の二人、似たような感想を抱く。

 やっぱり、この二人は気が合うようだ。

 

「んじゃ、ぱぱっと魔法で一っ飛びして行ってくるわ。応募のほうはお願いね」

「了解しました」

「いってら~」

「行ってきます」

 

 こうして、四人全員でヒーロー認定試験を受けることになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回は原作でサイタマがめっちゃ張り切った試験のお話です。

喘息気味のパチュリーはどう切り抜けるのか?




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