天羽響は奏者である 作:折り紙のユニコーン@UNICORNぬ
投稿が少し遅くなってしまいましたが、第8話です。
若葉の勇者達との触れ合い回です。なので今回も大半が三人称視点になり、さらに多分短いです。
お気に入り登録してくださった方、ありがとうございます。
アドバイスや誤字脱字など感想は歓迎してます。
「四国以外にも生存者の反応が……」
総攻撃が来るという神託がひなたから告げられた日の夜、若葉はひなたの部屋に訪れていた
そして神託の後に知らされた朗報を思い出し、若葉が呟く
「確定ではないので、大社も時期を見て調査をすると言っていました」
それを拾ったのは飲み物を淹れてきたひなただ。その言葉を聞いて若葉はさらに気合を入れる
「そうか。生き残っているかもしれない人々のためにも、四国を潰させるわけにはいかないな」
前向きな決意を固める若葉に微笑むひなた
以前の復讐しか目に入っていなかった若葉から変われたのは一目瞭然だ
「答えは見つかったみたいですね」
「うん。時間はかかったが、本当の意味で自分の弱さに気づくことができた。ひなたが私を信じ、見守ってくれたおかげだ」
「自慢の幼馴染みのためですから」
「ありがとう」
――もう1人で戦ったりしない。リーダーとして為すべきことを為そう。力を合わせて戦い抜くために
もう一度、勇者1人1人と――
ガサリと丸亀城周辺の地図が広げられる
現在若葉と杏は総攻撃に備えて作戦会議をしていた
「やっぱり問題は敵が分かれて攻撃を仕掛けてきた時ですね」
「確かに。前回のような戦力の分散は避けないとな」
「でも敵の方に数の利がある状況はどうしようもありませんから………響先輩のシンフォギアに広域殲滅ができる技があれば………ただ、あるか分からないモノにたよるのも……それに、あったとしてその次の動きは……うーん……」
――知識の多さや咄嗟の機転に関して勇者の中で彼女が1番だ。作戦の相談をしてよかった
作戦を詰めていく過程で、やはり杏は知識に長けていることを実感し、感心する
そしてふと、若葉は杏に向けて口を開く
「杏、ありがとう」
突然の感謝に杏が不思議そうに顔を上げる
「急にどうしたんですか?作戦会議ならいつでも……」
「いや……今のことだけじゃない。この前落ち込んでいた時声をかけてくれただろ?
あの時は信じていた正しさがわからなくなって……答えが見えなくて心細かったんだ
話しかけてくれて本当に嬉しかった」
「若葉さん……結構甘えん坊さんなんですね」
「……!!」
その時のことを思い出しながら話す若葉に、意外な一面を見た杏はクスリと笑う。恥ずかしさでボッと赤くなる若葉の顔
「ひなたさんが可愛がる理由が少しわかりました」
「……からかわないでくれ」
「そうだ。若葉さん中心に勇者がまとまるなら、今までと違った戦い方ができるかもしれません」
「それは……?」
「陣形です。戦記物では陣形を用いて勝利する展開も多いんです。最近ではスポーツの中でしか見なくなりましたが……」
若葉に思いついた案を説明していく杏
本を多く嗜む杏らしい発想。若葉も感心しながら聞いている
「本を持っていたはずなので探してきます。あと、ついでに響先輩の技の確認もしてきますね」
「よろしく頼む」
「また後ほど〜」
「ああ、頼りにしているぞ」
~~~~~~~
杏との作戦会議を終えた若葉は、球子と共に食事をしていた
「いっただきまーっす!!」
目を輝かせ、美味しそうな顔をしながらそれぞれ骨付き鳥に齧り付く
「「うまいっ!!」」
「やっぱり骨付き鳥は『ひな』に限るっ。『おや』よりも断然こっちだな」
球子の言葉を、ピクリと動いた若葉の耳が拾う
そして『おや』派の若葉の対抗心に火を点ける
「聞き捨てならないな」
そして『おや』派と『ひな』派の熱い戦いが幕を開けた
「歯ごたえと噛むほどににじみ出る味の深さ。骨付き鳥の本当のうまさは親鳥を使った『おや』にこそ宿っている!!」
「ふっくらした柔らかさに食べやすさ。勢いよくかぶりつける若鶏の『ひな』が1番だ!!」
互いの主張と視線がぶつかり合い、バチバチと火花が散る。が、この戦いを制したのは意外なところから挙げられた声だった
「めっ!」
ちょうど若葉と球子の間くらいから発せられる幼い声に、自然と2人の視線がその発生源へと向けられる
そこにいるのは、球子の腰くらいまでしかない幼い少女
「鳥さんはどっちもおいしいんだからケンカしちゃ、めっ!」
小さな子供に注意されてなんとなく恥ずかしくなる2人
「「……ごめんなさい」」
勇者も子供には勝てないのだ
バイバーイと手を振りながら親と帰っていく少女に手を振り返す若葉が口を開く
「あの子の言う通りだな。『ひな』も『おや』もいいところがそれぞれあって、どちらもうまい」
「そうそう。いろいろなタイプがあっていいんだっ」
「いろんなタイプ……か」
「この『ひな』をやる!!食べてみタマえ」
――球子の勢いのいい性格も
「ではこちらの『おや』もひとつ……」
『ひな』を差し出してきた球子に若葉も『おや』の皿を球子へ寄せる。交換した骨付き鳥に童子齧り付き……
――私の堅い性格も
「「うまいっ」」
――いいところはどちらにもある
~~~~~~~
ズン!!
巨大な脚が地面を揺らし、巨大なドラゴンが若葉と千景の前に現れた
「現れたな!!」
背負った大太刀の柄に手をかけ、武士のような装備の若葉がドラゴンを見据える
高ランクの装備を纏う千景はなんとも言えない表情で若葉を見る
「……いきなり部屋に来たから何事かと思えば、まさかゲームとは……」
現在2人がプレイしているのは、大人気狩りゲーだ
突然部屋にやってきた若葉が、これまた突然「狩りに行こう!!」とゲーム機を見せてきたのだ。これには千景も驚きを隠せなかった
流されるまま通信し、こうしてクエストに連れて来られたのである
「暇つぶしに始めたら思いの外面白くてはまってしまった。ずっと1人でプレイしていたんだが……」
ドッ!!
ドラゴンの突撃を躱し、迫るドラゴンに背を向けて走る
「だが1人ではどうしても奴が倒せなくてなっ」
「それで……私に協力要請をしたわけね」
「千景もこのゲームをやっているなら、一緒に協力すれば倒せるかと思ったんだ」
「……協力……本当に変わったのね……」
「え?何か言ったか?」
「……いいえ……なんでもない」
以前と違い、自然と協力という発想が出る若葉に確かな変化を感じる千景。誤魔化すように逃走を切り上げ、鎌に手をかけモンスターへと体を向ける
「見せつけてあげるわ。この私……『Cシャドウ』の力を!!」
CLEAR
「よしっ!!さすがだな、千景!!」
「当然よ」
若葉からの純粋な称賛に得意げな千景は、いつもより角の取れた表情で若葉へゲームセンスを評価する
「……私へのサポートに要所での的確な攻撃。あなたにはゲームの才能があるわ……」
「千景に褒められると素直に嬉しいな」
「だから……」
そこでドサリと若葉の前に置かれる袋
「これは?」
覗き込んでみると入っているのは沢山のゲームソフトだ
「厳選した初級者向けゲーム20本」
「なに!?」
「才能は伸ばさないと」
「そ、そうか……やってみるよ」
袋の中身に驚く若葉に、事も無げに告げる千景
この時若葉はゲームソフトに気を取られて気付いていなかったが、千景の表情はいつもとは違う柔らかいものであった
~~~~~~~
訓練場にて、響は座禅を組み精神統一を行っていた
傍には木刀が置いてあり、これから剣術の修練をしようとしていることが分かる。そこへ若葉がやって来た
「響、こんなところにいたのか」
「ん?若葉か。どうした、何か用か?」
若葉の呼びかけに目を開いた響は立ち上がり木刀を拾う
「いや、何かして欲しいことはないかと思ってな。邪魔してしまったか?」
「そんなことないぞ。というか、何かして欲しいことって……どうしたいきなり?」
「え、ああ……えっと……その、そうだ、今までの詫び……というか、恩返しだ!」
「……?まあ、何か手伝ってくれるんならむしろちょうど良かった。これから刀の鍛錬をしようと思ってたんだ」
さすがに唐突すぎて不思議そうな表情を浮かべる響に慌てて言い訳する若葉
わたわたする若葉に響はあまり追及せずに話を進める。木刀を肩に担ぐようにする響を見て若葉は思ったことを口に出した
「いつも思うが、響は多才だな。格闘、銃、鎌、刀。色々扱えるのは素直に凄いと思うぞ」
若葉が見たのはガングニールの格闘戦、イチイバルによる銃撃、千景と共に特訓していた鎌、そして今鍛錬を行おうとしている刀
どれも扱いが基礎から違う物。恐らくまだシンフォギアの種類があるだろうから、さらに別の武器も扱えると考えると本当に多才だと若葉は思う
それに対する響の反応は、若干困ったような顔だった
「うーん、別にどんな武器でも使える訳じゃないんだけどな。今使える全ての武器は努力の結果だし
ギアは全部で7つ。それぞれ武器や戦闘スタイルが違って、戦況の向き不向きがある
俺は武器の扱いにおいて特別な才は無かったからな。ひたすら努力して出来ることを増やすしかなかった」
――響も幼い頃から努力を積んでいたのか……
若葉は少し意外に思った。響は出会ったときから大抵の事は卒なくこなしている。それ故に要領がよく器用なものだと思い込んでいたが、それらは全て幼少からの努力の結果だったのだから
そして同時に、幼少から努力を積んでいるという部分に親近感を感じる。若葉自身、幼少からの努力によって現在の技の冴えがあるからだ
――響はどこか達観していて、誰かに弱さを見せることも無く私達を支えてくれるから、特別なように感じていたが……彼も私達と同じ、普通の人間なんだな
また1つ、響に対する誤解を解いた若葉は微笑む
「自分を卑下することはないぞ。その努力を怠らない姿勢は好感が持てる」
「そうか?それなら嬉しいが……まあ、今はその話は置いておこう」
「そうだな。で、何か私にして欲しいことはないか?」
「鍛錬に付き合ってくれ。打ち合う相手が欲しかったんだ」
「分かった。では少し待っていてくれ。準備してくる」
「おう。急がなくていいからな」
そうして着替えて来た若葉と響は向き合い、互いに木刀を構える
響は若葉の今までの剣捌きを思い出す。若葉の本領は居合いだ。しかしだからといってそれ以外は不得手という訳では無い
――居合いが専門とはいえ、若葉は通常の剣技も冴え渡っている。これは久し振りに……
響の瞳に刃のような鋭さが宿り、スイッチが切り替わる
「俺の中の跳ね馬が踊り昂ぶる――!では……行くぞ、若葉!」
「ああ、来い!」
それから暫く、訓練場には刀が打ち合う音が響いていた
~~~~~~~
友奈の病室の前で若葉は1人佇んでいた
高嶋友奈と書かれたプレートを見るその表情は暗く、入るのを躊躇っていることが容易に分かる
――私のせいで大怪我をした彼女に、どう話をすれば……いや、決めたはずだ。リーダーとして為すべきことはもう一度みんなと『向き合うこと』
しっかりと意思疎通を図り、考えや性格を知って十分に力を発揮できればきっと総攻撃もしのぎきれる
ネガティブな気持ちを追い出し、意を決して扉を開ける
「若葉ちゃん」
友奈は既に制服に着替え、ベッドから出て窓の外を眺めていた。若葉の入室に気付いて振り返る友奈の表情はいつも通り明るい
「もういいのか」
「うん。退院だって。なまってるから、戻ったら体を鍛え直さないと」
そういってシャドーボクシングをする友奈に苦笑いの若葉
「あまり無理はするなよ
……友奈。……何かして欲しいことはないか?」
「え?」
少し間を置いて友奈に尋ねる。不思議そうに首を傾げる友奈だが、響の経験からちゃんと言い訳も考えてきてあるのだ
「退院祝いとしてな、私にできることなら何でもいいぞ」
「う〜ん……それじゃあ……」
そうして友奈から提案された結果、できあがったのはニコニコしながら座る友奈と、微妙な表情で横になる若葉の図だった
しかも膝枕の体勢だ。そう、若葉がこうなっているということはつまり、友奈が若葉に提案したのは……
――なぜ耳かき……!!
「『若葉ちゃんは耳かきに弱い』ってひなちゃんから聞いたの」
おほほほほ…なんて笑うひなたの姿が目に浮かぶ
どうやら、若葉が来るより先に入れ知恵されていたらしい
――余計なことをっ!!
一瞬幼馴染みサマに怒りの念を送ったものの、しかし若葉は前向きに考えることにした
――でもこれも悪くないか。耳かきをきっかけに友奈と話題ができて、いろいろ話せるなら……
そうして挿し込まれる耳かき棒。その瞬間、若葉は驚愕することになる
――!!これは……!!
脳裏にぶわっと花畑のイメージが浮かぶほどに友奈の耳かきは上手かった
――ひなたと同等。いや……技術だけならこちらのほうが……!!
予想外の才能。元々ひなたによって耳かきが弱点となっている若葉には堪らないものだった
――気持ちよすぎて、何も考えられん……
恍惚とした表情になった若葉は、想定していたコミュニケーションを諦め大人しく堪能することにした
「……うまいな……友奈……」
「でしょ〜?」
そうして若葉は勇者達と交流していき、ついに神託に告げられていた日……総攻撃の日がやって来た
今回は正直繋ぎ回だったのと、若葉の交流メインだったことで短めな感じです。
次回はやっとバトルパートになります。
羽撃く翼、出陣です。
それでは、またお会いしましょう。