天羽響は奏者である 作:折り紙のユニコーン@UNICORNぬ
9話です。勇者達の足並みが揃う総攻撃。響君もちゃんと足並み揃えさせて活躍させていきたいです。
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誤字脱字、アドバイスなど感想お待ちしております。
「敵の数はそれこそ『無数』」
結界の外から襲い来るバーテックスの数はもはや数えられる規模ではなく、空を覆い尽くさんという勢いだ。スマホのマップも端から赤く染まっていく
「だが四国以外にも人類が生きている可能性がある
その希望の為にも私達は負けられない」
だが、勇者達に臆した様子は見られない
落ち着いて若葉の言葉を聞いている
「必ず四国を守り抜くぞ!!ファイト!!」
「「「「「「オーーッ!!」」」」」」
円陣を組んだ俺達は声を上げて心を合わせる
各自、杏の指示を聞いて散開。迫りくるバーテックスを待ち受ける。俺も変身済みで準備万端だ
「さて……若葉のヤツは大丈夫か?」
ちらりと若葉の方を見やる
その表情はまだ少し険しい。答えを見つけても、そう簡単に変えられるものではないだろう
……まあ、軽く解してやろう
――苦痛、怒り、憎悪
どうせ若葉のことだ。何か小難しいこと考えているんだろう。ここは1つ声を掛けてやるべきだな
「「若葉(ちゃーん)!!」」
「落ち着いていこぉぉぉぉおっ!!」
「前を向けぇぇぇぇえ!!」
「「頑張れよ(って)リーダァーッ!!」」
俺と友奈の声が重なる。お、友奈も気に掛けてたみたいだな。俺達の声が届いたのか、若葉の表情から険しさが抜ける
「友奈……響……」
――そうだ……私はリーダーとして、ここに住む人々を守ると決めたんだ
「任せておけ。みんな、作戦開始だ!!」
若葉の号令で全員が動き出す
今回の為に杏が考えた作戦は、役割を分担した陣形の使用だ。丸亀城を基点に正面・東西に一人ずつ勇者が立ち、杏と俺と残り1名が後方で待機
前方の3人……最初は友奈、球子、若葉が襲撃してくる敵を倒し、杏とイチイバルの俺で後方から援護する
「響先輩、準備お願いします!」
「ああ!お前ら、その間は任せたからな!」
「はい!」
「「「任せて(ろ)(タマえ)!!」」」
隣の杏から指示が出される。俺の役割は援護ともう2つ
1つは戦いの序盤に大規模殲滅攻撃でできるだけ多く敵を蹴散らし、皆の負担を減らすこと
大きく息を吸って歌を歌う
この大規模殲滅攻撃はギアの出力を上げつつ放出を抑え、行き場のなくなったエネルギーを臨界まで溜め込んで一気に解き放つモノ
つまりはチャージが必要となる。そしてチャージ中は身動きが取れない。だが……
「はぁッ!!」
「勇者パンチ!!」
「てやぁっ!」
『タマっち先輩!!下方から迫る一群がいます!!』
「わかった!」
『友奈さん、少し下がってください!』
「りょーかいっ!」
皆がいる。皆で団結していれば、1人では出来ないことも出来る!
拳銃がいつものガトリングへ変形。腰の浮遊パーツからは大量の小型クラスターミサイルが顔を覗かせる
そしてそれだけに留まらず、腰のリボン型アーマーが変形、巨大化。体を支えるストッパーが展開され、肩に固定具が着けられ左右に4基ずつ計8つの巨大ミサイルが現れる
ギアのリビルドがXV状態まで行ってるからな。この技の威力も増し増しだ
「……MAP兵器……というわけね」
「チャージ、完了!!纏めて吹き飛ばしてやるッ!」
「皆さん!響先輩の準備が完了しました!1度下がってください!」
巻き込まれないよう3人も1度戻ってくる
「うわ!凄い事になってるぞ!?」
全員が戻ったのを確認して……
「喰らいやがれッ!!」
《MEGA DETH QUARTET》
溜め込んだエネルギーを全て解放する
一斉に放たれるミサイル達は迫るバーテックス達へと襲いかかる。ガトリングもその威力を増して星屑を打ち砕いていく
ドンッ
ドンッ
放たれた小型ミサイルからさらに複数のミサイルが発射され、まるで花火のようにそこかしこで爆発が起きて大量のバーテックスが殲滅されていく
勇者達も驚きで目を丸くしているな。イチイバルの本領発揮ってところだ
「凄まじいな……」
「すごいすごい!!響君すごいよ!!」
「ふぅっ……人間サマ舐めんなってんだ」
「大分減りましたね。……ですが、まだ敵は数多くいます。このまま作戦通り進めましょう。皆さん、元の位置へ」
杏の指示で再び皆が配置に付く
後方からの正確な援護と先の手を見据えた指示。杏は本当に頼もしくなった
あまり消耗もしてないし、俺もどんどん撃って撃って撃ちまくる!
杏は近接のみで不利な友奈を重点的に援護し、俺は他の2人を援護しつつ遠くからのバーテックスを撃つ形だ
『若葉さん、交代してください』
そして今回は長期戦に備えて疲れが見えた者は待機している者と交代することになっている
まずは若葉が交代らしい。まあ他のメンバーより撃破数も多いしな
「まだ――」
お?若葉のヤツ……力づくで戻す必要あるか……?
「――いや……わかった」
おお、大丈夫だった。ちゃんと成長してる
若葉がこちらに戻ろうと振り向いた所で千景が到着
「渋るようだったら……叩いてでも交代させるところだったわ……」
「出る時は出る。下がる時は下がる。ゲームの協力プレーと同じだろう?」
互いに軽口を交わしてフッと笑う。おお、なんか前よりも仲良くなってる?
「後は頼んだ」
「……鏖殺してあげるわ……」
ハイタッチして若葉が戻ってくる。前より仲良くなってるな……よかった。若葉も、そして千景も。確実に全員の足並みが揃って来ている
「よぉーし、ちゃんと戻って来たな若葉。まだ行けるなんて言ったら後ろから頭撃ち抜いてやろうかと思ってたぜ」
「千景にも似たような事を言われたが……そんなに心配しなくても……」
「まあ、心配されるようなことしてたからな。この前までの自分を恨むこった。ちゃんと成長したのは分かったが、今回は大人しく受け入れな」
「うっ……そ、そうだな」
なんだか心外だと言う若葉にちょっと意地悪して言ってみると、結構いい反応。若葉は結構いじりがいあるかも。やりすぎたらひなたに怒られそうだけど
「響先輩。友奈さんと交代、できますか?」
「任せな」
俺のもう1つの役割は交代の為の待機その2だ。待機中は体を休めつつできるだけ援護をし、交代の必要があるなら前に出る
「それじゃあ、やるか」
当然ギアは変える。前線なら近接の方がやりやすい
このギアは今回が初めてのお披露目だな
「Imyuteus amenohabakiri tron」
聞いたことの無い聖詠に若葉の視線がこちらに向く
ふふーん。この前若葉に刀の鍛錬を手伝ってもらったのはこれを使うからだったのだ
展開されるエネルギーフィールド
手元に現れた小刀を片膝を付いて地面に突き刺すとそこから火柱が立ち昇り、立ち上がった俺の足元から青い五線譜の輪が上ってくる
それと同時にイチイバルの時のジャケットが消え、インナーの色が赤から青へと変化していき、ズボンも着物のような長ズボンに変わり手に刀が現れる
その刀を手に持つと周囲に複数の火柱が燃え上がり、青い炎の鳥が飛来する
炎の鳥が腹部から体へ入っていくと、インナーに付いている青いクリスタルが炎の尾を引き飛んでいく
クリスタルはまず脚部へ。ズボンの上から脚を覆い、1度ブレードの束になりそれが合体して太腿までを覆う装甲と踝のあたりに装着されているブレード型脚部ユニットに
そして脚部ユニットから覗くディスプレイに映る文字は『SG-r01 Amenohabakiri』
未だ周囲に浮いているクリスタルの1つを一刀両断
それと同時に風が吹き荒れ、大量のクリスタルからエネルギーの刃が出現
俺も刀を持つ手を掲げて、月をバックに1度ポーズ
そのクリスタルも鋭い刃へと変わり、そこから更に腕部の装甲と肩の装甲に変形
上半身には花魁のような両肩が見えるように着崩された青い着物が装着されて腕の装甲が隠れる
耳の部分にも大量の刃が現れて楕円形のパーツにブーレドの付いたユニットに
全体的に体にフィットする薄くしなやかな装甲は、そのシャープさと刺々しさによって刀のような印象を受ける
「ふっ、はぁっ!てやぁっ!」
脚のブレードや刀を振るい、最後に構えて変身完了だ
「それは……」
「このギアは
「これが以前言っていた、剣を使うシンフォギア……」
「ああ。機動力と手数に優れる、前線向きのギアだな」
そのまま友奈の方へ移動。天羽々斬はギアの中で最も機動力が高いから移動も速くていい
「セイヤッ!!」
ザンッ!
友奈の横から迫るバーテックスを斬り、着地する
「響君、ありがと!」
「構わない。それより……友奈、交代だ」
「分かった。気を付けてね!」
「ああ。心配するな」
杏の元へ下がっていく友奈を軽く見送ってバーテックス達に向き直る
「我が防人の剣……見るがいい!!」
球子、千景、響の戦う姿を見ながら若葉は仲間の頼もしさを感じていた
――仲間と共に戦うとは、こんなにも心強いものだったんだな
旋刃盤を飛ばし敵を近づかせない球子。鎌を体の一部のように振るって敵を殲滅する千景。素早く淀みない動きで敵を斬り裂く響。戦場全体を見て的確に援護する杏
「若葉ちゃん、なんだか嬉しそうだね」
友奈が横から話しかけてくる。若葉はそれに対して笑みを浮かべる
「そうだな。こうして周りが見えるようになって、改めて仲間の心強さというものを実感している」
「そうだね。私も、若葉ちゃん達が仲間ですっごーく頼もしい!」
「ありがとう、友奈」
「若葉さん、タマっち先輩と交代してください」
「心得た!!」
「気をつけてねー!」
杏の指示で出撃していく
「球子!!交代だ。友奈の援護に杏を集中させて1人でここを守り切るとはな」
「友奈は近接主体で不利だからな。当然だ
ま、響と交代してからはそーいうの気にしなくていいから楽だったけどな」
「そうだな。では、後は任せて休んでいろ」
「そうする……さすがにちょっと疲れた」
踵を返して下がろうとする球子の足がふと止まり、若葉に話しかける
「若葉」
呼ばれた若葉は少し振り返る
「若葉が後ろで待機してた時、すごく心強かった
仲間がいるから安心して休憩できるし、倒れても大丈夫ってな」
「私も同じだ」
斬る。斬る。斬る。迫るバーテックスを次々と斬り捨てていく若葉は、今までに感じたことのない力が湧いてくるのを感じていた
――仲間と共に戦ってわかった。強さとは戦う力だけでは無い。仲間に安心感を与える存在……それもまた強さだ
「だが球子、ひとつ間違いだ」
その力を、人は信頼と呼ぶ
「お前が倒れることなど絶対にない。私が、そんなことはさせないからな!!」
ズバッ!!
そう宣言して刀を振るう若葉の目に、以前のような危うさは微塵も存在しなかった
『なんだ?敵が引いていく――?』
「いや……やっと本気を出す気になったようだ」
端末から聞こえてくる響の訝しむような声に、目の前で融合しているバーテックスを見て若葉が呟く
『若葉さん!!注意してください、進化体です!!』
若葉の眼前に浮かぶのは、独楽に似たパーツが幾つも合わさったような、蛇のように長い進化体
だが、今更進化体に焦るような若葉ではない
ズオォオッ!
「問題無い」
突進してくる進化体を見据え、鞘に収めた刀の柄に手を添える
一瞬目を閉じ、集中。脚に力を込めて踏み込み……
ヒュッ……ズバッ!!
跳躍、居合一閃。若葉の真髄、居合斬り。進化体の胴体を容易く斬り裂いたその刃は一瞬の交差の後、既に鞘へと戻っている
ぼこ……ぼこ……
だが、進化体はまだ動きを止めていなかった
切断面に新たに星屑が融合し、再生させていく
『若葉さん!!まだです!!』
杏の声に反応して振り向く若葉の目に写ったのは分裂して2匹になった進化体
――増えた……だと!?
ブオッ!
突進を間一髪で避け、若葉は苦い顔をする
――一気に全身を損壊させないとだめか……!
『タマに任せタマえ!!』
ゴウッ!!
そこに聞こえる球子の声。直後、若葉に突進を避けられた進化体目掛けて炎を纏った巨大な旋刃盤が飛ばされた
その回転に巻き込まれ、全身に火がついた進化体はそのまま再生することができず燃え尽きた
球子の放った旋刃盤はその勢いを緩めず2匹目の進化体へと突撃。1匹目と同じように消し炭にしていく
『見たか!!輪入道の力!!』
若葉の後方、丸亀城の石垣の上でこちらにサムズアップをしている球子の服装が変化している
勇者服の上から袖の膨らんだ白い羽織が追加され、首を中心に大きな輪が現れているそれは、精霊を使用したことに他ならない
「あそこから飛ばしたのか」
苦笑いでサムズアップを返した若葉は輪入道の力を纏いいまだに星屑を蹴散らす旋刃盤を見やる
「それにしても、流石の威力だな」
巨大な旋刃盤が星屑を弾き飛ばしていく光景は圧巻の一言だ
「切り札を使ったが身体への負担は大丈夫か?」
『こんなのへっちゃらだ。それより前を見ろ。このまま敵を焼き尽くす……ってわけにはいかなそうだぞ』
大丈夫だと言う球子だが、やはり精霊の負担は大きいのか息を切らして少し苦しげだ
しかし多少の無茶を通さなければいけない障害が勇者達の前に現れようとしていた
残っている星屑達が一箇所に集まり、その形を形成していく
ドーナツのように穴の空いた円形の胴体部分に逆S字型の下腹部分がついており、さらに未だ形成中の頭部パーツ
「ああ、間違いない。今までで最大だ」
千景や響の所からも見えるほどの巨体。恐らく数十メートルはあるであろうその進化体は、今までのものとは比べ物にならない程の威圧感を醸し出していた
『若葉ちゃん、あんな大きいのどうにもできないよ!!』
『狼狽えるなッ!あれだけの巨体を短時間で形成したのだ、バーテックスとて完成させきる事は不可能な筈!つまり――』
「どこかに綻びがある、という事だな…!」
友奈や響の言葉を聞きつつ弱点を見極める
――響の言うとおり、あれだけ急ごしらえならどこかに綻びがあるはずだ。どこかに……
「っ!見つけた!」
胴部分に二箇所、下腹部分に一箇所、頭部パーツに一箇所。綻びのある部分を見つけ出した
「響の言う通り、こいつの身体にはまだ脆い部分があった!そいつを叩けば倒せるかもしれない!!」
『でも……どうやってあそこまで……敵がいっぱいだよ?』
『1人2人ならともかく、全員となると俺では運ぶことができないぞ』
『みんな大丈夫だっ。タマに……いい手がある』
〜〜〜〜〜〜〜
ドォウッ!!
球子からの提案で俺達は球子の操る旋刃盤の上に乗って移動していた
「確かにこれなら近づけるね」
「だろ?」
輪入道の力によって巨大化した旋刃盤での移動。これならば星屑を蹴散らしながら安全に近づける。ただ、先程から精霊を使用しっぱなしの球子には相当な負担が掛かっているはずだ
先程から体力の消耗が激しいような素振りが見える。本人としては隠しているつもりなのだろうが……
「だが球子、あまり無理はするな。長時間の精霊の使用が体にどんな影響を与えるのか、詳しく判明していないからな」
「大丈夫だよ。響は心配性だな」
「近づけても……まだ問題はある」
そう言って千景が見据える先には大型進化体までに存在する大量の星屑達
「どうやって……敵を排除して弱点に辿り着くか……」
「心配ない」
千景の言葉に返すのは若葉だ。力強い表情で振り返り言葉を放つ
「みんなは私が守る!!」
「俺も行こう。皆を守ると誓った身……若葉だけに行かせるわけにもいかないだろう」
当然俺も行く。仲間の道を切り拓くのなら、この剣の絶好の見せ場だろう
若葉の横に並びたち、アームドギアの2本目を取り出し2本の刀の柄どうしを連結させると刃が変形し双刃刀のようなブレードへと変化する
それを投げるように前方へと放るとボードのような形に変形し滞空する
同時に若葉もぐっと膝を曲げて溜め、勢いよく空中へと躍り出る
――この地の人々のため、仲間達のため。求める力は『速さ』。空を飛ぶかのごとく……
若葉の体が光を帯びる。星屑を足場のようにして跳ねながら斬り落とす
トンッ
トンッ
ドンッ
――敵から敵へ。速く。もっと速く!八艘飛びと呼ばれた彼の跳躍のように
ドンッ
ドンッ!
何匹も撃ち落とす若葉の姿は変わっていた。袖口の広い白い羽織に青いマフラーのような装飾
それは精霊。天駆ける武人――
――源義経
ブアァッ!!
一陣の風のように、戦場を飛び回り星屑を撃墜する大立ち回り。流石若葉だ
「若葉も張り切っているな。俺も負けてはいられない!」
ボードに飛び乗った俺は若葉が作った道をさらに広げにかかる。刀をさらに取り出し、天に向ける
「
《天ノ落涙》
ズドドドドドッ!!
雨のように降り注ぐ青いエネルギーで構成された刃
それは星屑を貫き撃ち落とす
だが、まだまだ終わりじゃないぞ!
刀を思い切り体を捻りながら構える
変形していくアームドギア。それの刀身は巨大になっていき、身の丈ほどに
「ハァァァァアアアッ!!」
《蒼ノ一閃》
ズアァアッ!!
固定していた体を開放し、全力で振り抜く一閃
その蒼い斬撃は飛翔し前方の星屑を薙ぎ払う
「「今だ!!」」
俺達の声で勇者達が攻撃を開始する
球子の旋刃盤がその火力を上げ、杏のクロスボウが正確無比な矢を放ち、友奈が拳を振り抜いて砕き、千景の鎌が振るわれ斬り刻む
ドバンッ!!
脆い部分に一斉攻撃を受け、バラバラになって崩れ落ちる大型進化体。よし、倒せた!
だがそのタイミングで若葉の体勢がぐらりと崩れ、フッと精霊が解除されて落下していく……落下!?あいつ意識失ってるぞ!
「若葉ッ!!」
急げ急げ!ボードを一度戻し、自由落下と脚部ユニットからのブースターで若葉に追いつく
無事抱き止められたらブースターを吹かして体勢を立て直し、ボードを再展開して落下を免れる。若葉を横抱きに抱え直しながら軽く様態を診ていく。呼吸は正常、外傷も無し。恐らく切り札による疲労と極限までの集中、緊張から開放されたことが原因だろう
ある程度確認したところで視界を光が包み込んでいく。樹海化の解除だ。あのデカブツで終わりだったらしい
安堵のため息を吐きながら、俺はゆっくりと地面へと降りていった
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気が付けば若葉は1人、真っ白な空間に立っていた
「若葉ちゃん」
聞こえた懐かしい声に後ろを振り向けば、あの日失ってしまった友達の姿
「みんな……」
若葉は思わず俯いてしまう。当然といえば当然だ。あの日、若葉は彼女達を守ることができなかった
「三年前のあの日、私はお前たちを守れず自分だけ生き残ってしまった
だから本当なら
「もう受けてるよ」
ネガティブな若葉の言葉を遮るようにかけられる優しげな声
「だって若葉ちゃんが戦ってくれてるお陰で、私達の家族はここで生きてる」
その言葉に思わず顔を上げる。彼女達の顔は、笑顔だった。守れなかった過去は、守ることのできた今を喜んでくれている
――命を賭してこの地を、人々を守り続ける。それが私の受けるべき報い………ならば
「誓おう」
若葉の決意は、今一度固まった。折れることが無い程強く。そして答えを、思いを口にする
「私はずっと……ずっとこの地に生きる人々を守り続ける。何事にも報いを……それが乃木の生き様だから」
視界が光で溢れる。頬を優しい風が撫でる
そして、目が覚めた
そこには心配そうに覗き込む
体を起こそうとして、誰かに膝枕をされていたことに気付く。ギョッとしながら後ろを向けば、苦笑いの響
そういえば意識を失う寸前に、こちらに向かってくる響の姿を見たなと思い至り、それからずっとこの状態だったのだと悟る
「す、すまない響!」
「いや、いいよ。気にしないで」
「大丈夫ですか?若葉ちゃん」
体を起こして響に謝る。そしてひなたの若葉を案じる言葉に答える
「ああ……少し……夢を見ていた。優しくて厳しい……そんな夢だった」
懐かしむような、慈しむような若葉の顔に、ひなたの表情も柔らかくなる
「……そうですか」
「敵は?」
「敵はきちんと討伐できたよ」
若葉の問いには響が答えた。立ち上がり、ニッと笑う響に目立った外傷は無く、ピンピンしていることが分かる
若葉もパパッと制服を叩いて草を落としながら立ち上がった
「若葉ちゃんとみんなのお陰で人々は守られました
「おぉーいっ!!」
続くひなたの言葉を遮るように、球子の元気な声が聞こえてきた。そちらを向けば駆け寄ってくる他の面々
誰も怪我は無く、全員が無事だとひと目で分かる
「そうか……勝ったんだな。私達は」
1度の挫折を経て、皆と心を繋ぎ直して臨んだこの戦いは完勝と言っていい戦果を上げたのだった
はい、いかがだったでしょうか第9話。今回は少し長めになりました。その分書くのも大変でした。
それにしてもバーテックスの姿ってどう形容したらいいのか分かりませんよね。あの奇っ怪な姿かたちはなかなか言い表せません。
あと精霊使用時の服装も難しいです。この2つのせいでけっこう時間がかかります。
そしてついにのわゆも折り返し地点って感じですね。
のわゆ編が終わったらゆゆゆいも書こうと思ってます。
やっぱ他の時代の勇者達とも絡ませたいですからね。
まあ、のわゆもまだあと半分は残ってるんですけどね。
それでは皆さん、またお会いしましょう。