天羽響は奏者である 作:折り紙のユニコーン@UNICORNぬ
10話です。遠征回ですね。これが終われば2巻も終了。いよいよ3巻で響君の存在意義を果たしに行きます。
すなわち全員生存!目指せハッピーエンド!
そして、お気に入りが100件を超えました!9話を投稿したらグッと増えた感じがします。やっぱ皆戦闘シーン好きなんですね。嬉しい限りですね!これからも頑張ります!成せば大抵何とかなる!!
口調修正しました。ギア纏ってるのに変えてませんでしたね。申し訳無いです。
アドバイス しろいのさん
ありがとうございます!助かります!
お気に入り登録してくれた方、ありがとうございます。
誤字脱字、アドバイスなど感想お待ちしております。
えー、現在俺達は――
「テントよし!!」
球子の手によって組み立てられた少し大きめのテント
「水源よし!!」
さらさらと流れる清流。すぐ近くには川もある
「薪になる枝よし!!」
集められた乾いた木の枝
「皆よく聞けっ」
変身した状態の勇者達と巫女服のひなた
「今晩はここをキャンプ地とするっ!!」
――壁の外にいる
「あ〜、美味しかった。外で食べるうどんは格別だね」
「……うん……」
設営が終わって変身を解いた俺達は球子が慣れた様子で起こした火を使い、うどんを茹でて夕食を済ませる
椅子代わりの丸太に座って友奈や千景達が満足げな表情をしている中で、俺はお腹をさすりながら軽くため息をつく
携帯できる食料は限りがあるから俺も今日はおかわり我慢だ
「ま、俺としては物足りないけど……沢山は持ってこれないしな」
「確かに、響には少し物足りないだろうな」
「この遠征が終わればまたお腹いっぱい食べられますから……」
「分かってる分かってる。今回は大切な目的があるから、バッチリ頑張るよ」
苦笑いの若葉とひなたの言葉に、同じく苦笑いで返す
流石に少しの間お腹いっぱい食べられないだけでポテンシャルが落ちるほど軟な鍛錬はしていない
「いやー、それにしてもタマ大活躍だな!!」
球子が自画自賛しているが、実際テントの組み立てから何からアウトドアの作業に関して球子に並ぶ者はいないだろう。このキャンプセットも全て球子が設置していた
「テントを張ったり、焚き火を起こしたり、さすがアウトドア好き」
「HAHAHA。もっと褒めタマえ」
友奈に褒められる球子は段々アメリカンな笑いになっていく。
そしてそれをじーっと見ていた杏がポソっと一言
「…………タマっち先輩が本当に先輩に見える……」
「ンフッ!」
ああ、杏の言葉で思わず吹き出してしまった。杏と俺の反応に球子の頬が引きつる。まず隣にいた杏の頭……こめかみのあたりを拳で挟み、ぐりぐりとお仕置きを始める
「あ~ん~ず~?」
「いたたたたたた!」
「痛そう」
ぐりぐりが執行されて「あああああぁ」と呻いている杏を見て小並感のある感想が口から溢れると、球子の視線がぐりんとこちらに向く。やっべ
「響ぃ!お前もだー!!」
「ぬあー!」
俺も球子から近いところに座っていたので俺もお仕置きが執行されそうだ。立ってる球子と座っている俺では球子の方が圧倒的有利
躱すことも叶わず俺にもぐりぐりが放たれたぁあいたたたた!
「仲がよろしいことで」
「そ、そうなのか?」
あらあらと笑みを浮かべるひなたのリアクションに若葉は苦笑いだ
そんなことより助けてほしいんですけど!?
結局球子の気が済むまでぐりぐりは続いた
「それにしても良かったですね。キャンプ場の倉庫にテントが残っていて」
「そうだな。屋根の下でしっかり休めるのはありがたい。調査遠征で四国を離れている今は特に……な」
そう。先程も言ったが俺達は現在四国の外にいる
細かく言えば現在地は兵庫県にある六甲山だ
大社は先日の大侵攻後の隙を利用して俺達勇者に懸案だった四国外の地域の調査を指示した
ルートとしては四国から瀬戸大橋を渡って一路北へ
道すがら各地で生存者や水質・地質の調査をしながら敵襲を想定し徒歩で北の大地を目指すという強行軍
天羽々斬ならバイクを武装して単身突っ込めるが安全性と確実性の観点から却下。大人しく調査を行うことになった。これでも生粋の研究者であるばあちゃんの血を継いでいるので調査はお手の物だ
あ、そうそう。もう分かってるだろうがひなたも通信用員として同行することになった
そうして俺達は生存者への期待を胸に出発したのだが――
~~~~~~~
「倉敷の景観が見る影も……」
「行こう。次の街にはきっと生存者がいるさ」
――まあ、現実はそう甘くなかった。橋を渡った先には無惨に破壊された街の跡。探しても人がいる気配はしない
生存者がいる可能性が低い……というより、ほぼほぼ皆無であることを痛感させられる
「
それでも希望は捨てきれない。少しでも可能性があるのならと俺達は生存者を探していく
イチイバルを纏った俺は千景と若葉、ひなたと一緒に街を歩いた
高いビルも、かつては賑わっていたであろう店も。人の影は無く、破壊されていたり朽ちたりしている
「ここも……全滅ね」
「こうも荒れてると、人がいる気がしねぇな」
「まだ決まったわけじゃないさ」
「……気休めを」
ん、千景はやっぱり若葉に対して棘がある。何でかは分からないけど……この間は仲良くなったと思ったんだけどなぁ……
からり
「あ?今なにか……」
小さな音。多分コンクリートの欠片のような小さくて硬いものが転がった音。すぐそこの曲がり角からだ
同じく音に気づいたらしい千景がダッと駆け出して音の出どころへ
「千景!?どうした!?なにか見つけ……」
突然駆け出した千景に追従する俺達。若葉が千景に問い掛けながら俺達も曲がり角を曲がると……
ザクザクザク!
「お前……っ!!たちがぁ……っ!!」
とてつもない形相で動かないバーテックスを斬り刻む千景の姿
気にしてない様子でも、やっぱり心に負担が掛かっているのだろう。俺でも見たことも無いほどの憤怒の感情。……ともかく止めないと。こんなことしても何の意味も無い
「おい千景、ストップだ。そんなことをしても何もならねぇぞ……!」
振り上げられた鎌を持つ手を後ろからそっと握って制止する
右手は握ったまま左肩にもう片方の手を置き、ゆっくり言葉をかける
「落ち着け……この惨状を見て気が立つのは分かるけどよ、今は堪えろ……」
「……ふー………行きましょう
……生きている人を探すんでしょう…?」
どうにか落ち着いてくれたのか、一つ息を大きく吐いて踵を返し元の道に戻っていく千景。だがその表情は依然暗いまま。俺も千景の後ろについて行く
冷たい態度から誤解されがちだが千景はかなり繊細な子だ。今回の遠征は大きなストレスになってしまうかもしれない
「千景……」
若葉も心配そうな表情で千景を見つめている
その後の探索では結局、生存者が見つかることは無かった
~~~~~~~
おや、若葉が暗い顔して俯いている。今日のことでも思い出してたのだろうか
今日の探索は何の成果も無かったからな。落ち込むのも仕方無いといえば仕方無いか。千景も随分落ち込んじゃってたし
「若葉ちゃん。しんみりしすぎですよ」
「まだ一日目だっ!!無事な地域だってきっとあるさっ!!」
「そうだな」
ひなたと球子の言葉で若葉の顔に多少の明るさが戻った。そしてそこに友奈が元気よく手を上げる
「はいはーい!暗い気分は水浴びで流そう!!」
「え!?ちょっと寒くないですか?」
「賛成!!廃墟の調査で体が埃っぽいし!!」
どうやら友奈は近くの川で水浴びをしたいらしい。まだ肌寒いこの時期に冷たい川に入る事に心配する杏と元気よく賛成する球子
まあ体を清潔にするのは悪いことではないが……
「それにキャンプ感が強まるしな!!」
楽しげにそんな事を言う球子に、真顔になった杏がじーっと視線を送る
「もしかして野営にここを推したのはタマっちがキャンプしたかっただけ……?」
「そ、そんなことないぞ!?」
おお、球子への呼び方から先輩が消えた。珍しい
あと球子。お前その反応は自白してるようなもんだから
「ここなら水もあるし!!たき火の木枝もあるし!!」
「はいはい、水浴びに行くんでしょタマっち?」
「先輩をつけろー!!」
見苦しく言い訳を続ける球子と呆れたような目を向けながら球子の背中を押していく杏に思わず苦笑いだ
「そんじゃ、ゆっくり楽しんできな」
「え!?響君水浴びしないの!?」
焚き火に枝を放り入れながら皆を送る。友奈が何か言ってるが、行けるわけ無いだろ普通に考えて
中学にもなって男女が一緒に水浴びは普通に有り得ん
「あのな友奈。皆が水浴びしてるところに行けるわけ無いだろ。俺は男だぞ?」
「響君なら問題無さそうだけど……」
「バーカ。問題大アリだ」
しっしっと友奈を川へ向かわせて焚き火と向き合う。さて、待ってる間暇だし……お湯でも沸かして、ココア作っとこうかな。川から上がったら多分冷えてるだろうし
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「さすがに冷たいね」
「夏だったらもっと楽しいのにな。こうやって……水のかけ合いとかしてさ!!」
「きゃっ!冷たっ!やったなぁ~!」
服を脱ぎ川へ入っていく勇者達
球子が水をかけてきたのを皮切りに友奈と球子がバシャバシャと水をかけ合って元気に遊び始める
「2人とも元気だな」
そしてそんな2人を見ながらゆっくり座る若葉、ひなた、杏の3人。男子である響を近くで見張りさせるわけにもいかないので千景が現在の見張りだ
「冷たい水に浸かるときは動かずにいるべきだ」
「体温を奪われますからね」
元気に動き回る球子達を見て杏は苦笑いしながら若葉と話している
「あんなに動き回るなんて銃撃戦のなかに飛び込んでいくようなもの――「うりゃああっ!!」」
ザバッ!!……バシャアア!!
「ひゃあああ!!」
そこへ襲いかかる大量の水しぶき。当然、球子達のしわざだ
「どうせ動いててもジッとしてても冷たいんだ」
「みんなも一緒に楽しもうよ」
「ほう……」
球子と友奈の言葉に若葉の口が三日月のように裂け、3人がザバッと立ち上がる
ムッとした顔の杏、不敵に笑みを浮かべる若葉、微笑みの怖いひなた
「ならば私達も容赦はしないぞ」
そうして、元気に水をかけ合ったりしながら束の間の休息を楽しむ勇者達
そんな中、ふと若葉の目に千景の姿が見える
岩に寄り掛かって空を見上げる千景。その表情は暗く沈んでいる
――千景……昼間も様子がおかしかったが……
「ぐんちゃん。そろそろ見張り交代するね」
ざばりと友奈が川から上がり、千景に声をかける
「ええ……そうね」
「みんなと水かけ遊び楽しいよっ!!」
「遠慮……するわ」
相手が友奈にも関わらず、千景の反応はまだ良くならない。浅瀬で体育座りのようにして動かない千景を見ながら若葉は心配げな表情を浮かべた
――友奈相手にもそっけない態度……か。心身共に過酷な遠征になりそうだ
「お、皆戻ってきたな」
全員揃って川から戻ってくると、響が湯を全員分のコップに注いでいるところだった
「川が冷たいだろうと思ってな。ココア作ってたんだ
ほら、あったかいものどうぞ」
「うわーい!あったかいものどうもー!ありがとう響君!!」
真っ先に友奈がコップを受け取り、一口飲んでまったりした表情を浮かべる
「おいしー!温まるよー!」
「すまないな響」
「全然構わないよ。待ってる間は暇だったしな。はい」
「ありがとう」
「ひなた、杏、球子……んで、千景も」
全員にココアを配り、髪が乾くまで焚き火で暖をとらせる。響は千景の様子に気づいているようだが何を言わずに千景の隣に座るだけだった
「皆随分楽しそうだったな?ここまで声が聞こえてたぞ」
「そうそう!水かけ遊び楽しかったんだよ!!」
「響が女だったら一緒に遊べたんだけどなー」
「ま、生まれ持った性別はどうしようもないさ。俺は男でも全然楽しいからいいんだけど」
友奈や球子と楽しげに話す響に若葉が呼びかける。女子組が戻ってきたので次は響の番だからだ
「話していないで、響も早く水浴びをしてくるといい。見張りは……まあ、私でいいか」
「えっ、若葉も来るのか?」
「む?当然だろう。水浴び中は無防備だ。誰か一人すぐに変身できる者が側にいないと危険だろう」
「マジか……いや、まあいいや……」
若葉の言葉にちらりとひなたを見やる。特に何も無さそうなので、仕方ないかと納得することにした
そうして響と若葉は川へと移動し、響は服を脱いでいく
「!?」
――し、しまった!失念していた。戦いばかりで今まではあまり気にしていなかったが響は異性だ!
若葉は突然脱いだ響から勢い良く顔を逸らし…そしてそこで、響が若干渋っていた理由に気づく
そう、今の状況は普通に気不味いのだ
男女2人だけ、しかも片方は水浴びの為に裸になるのだ。恋仲でも無いのだからそりゃ気不味いだろう。それに気づいて若葉の顔が赤く染まる。意識してしまえばしまうほど、何だか響の脱衣の音が鮮明に聞こえてくる気もしてくる
「あー、冷て。こっち向いて大丈夫だぞ」
チャプンと響が川に浸かる。そしてやっと若葉も響の方を向く。向いて、響の背中が目に入る
響は小学生の頃からずっとシンフォギアの為の鍛錬を続けており、その身体は鍛え上げられている。服を脱いだ今、改めて見てみるとガッシリとした男らしい体格に太すぎずしなやかな筋肉が纏われていることがよく分かる
思わず感嘆しそうになって、普通にセクハラだなと思い留まる。若葉はとにかく他の事を考えることで気を紛らわせることにした
「そういえば……千景のことだが……」
そうしてふと思い浮かんだのは今日の千景の様子だった。仲間の異変だ。思考は落ち着き、真剣な表情になる
「響も気付いているだろうが、今日の千景は様子がおかしい」
「そうだな。千景はああ見えて結構繊細な子だ。この惨状だとストレスも溜まるだろうな」
「どうすればいい?」
響は少し考える。放って置くつもりはないが、これからも望み薄な探索が続く以上遠征中のケアは気休めにしかならないだろう
「……少なくとも今はどうにもできないと思う。ここから先でも同じような惨状が続くだろうから、四国に戻ったらちゃんとケアしないとな
まあ、今日も少しケアはするつもりだ。効果は気休め程度だろうけど」
あまり時間も経たずに響が立ち上がり、腰にタオルを巻く。そして川から上がってくる
響の身体を目の当たりにして頬を赤くし視線を泳がせる若葉にため息をつきながらパパッと着替え、皆のもとに戻っていった
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「よいしょっと」
追加で持ってきた枝を置いて丸太に腰を下ろす
今は就寝時間で皆は寝ている。俺は見張り番だ――
「………」
――千景と一緒に。隣に座る千景は元気が無く、ぼうっと焚き火を見つめている
「なあ、千景」
「……どうしたの?天羽k――えっ?」
千景の頭を手で優しく動かして膝へと誘導する。つまりは膝枕だ。千景は驚いて一瞬思考が停止し、少しして再起動する
「……いきなり何……?」
「千景が元気無かったからさ」
「……別に、大丈夫だから……」
「大丈夫じゃないだろ?千景のことはずっと見てきたから分かる。無理はしないでくれ」
ゆっくり頭を撫でながら言葉をかける。起き上がろうとしてないから、何だかんだやっぱり辛いんだろう
「千景ってこういうの抱え込みそうだからさ。今日ずっと心配だったんだ」
「………」
「大丈夫……なんて言えないけど……今だけは、俺に寄り掛かって休んでくれ」
「ありがとう……天羽君」
「~♪~♪」
千景の表情が少し楽そうになったのを確認して、小さく鼻歌を歌う。優しく、穏やかに。少しでも千景の気が楽になるように
「響君、ぐんちゃん、交代の時間だ……よ……?……あー……邪魔しちゃった?」
「!?た、高嶋さん……」
「おっと、もう時間か。じゃあ俺達も寝ようか」
「う、うん……」
「大丈夫大丈夫。またやってあげるから」
交代の時間になったようで、友奈がテントから出てくる
それに気付いて千景がバッと起き上がり、少し残念そうな顔を浮かべる。思わずくすりと笑い、一つ約束をする
頬を少し染めながらこくりと頷く千景にまた一つくすりと笑う
その後若葉達と交代し、「響君なら問題になるようなことはしないでしょう」という我らが巫女の言葉によって俺もテントの中で寝られるので、皆と同じテントに入って寝袋にくるまり屋根の下で休むのだった
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「みんな見張りを交代した途端にぐっすりだ」
「今日は疲れただろうからな」
響達と交代した若葉と友奈は軽く会話しながら暇をつぶす
「今日は神戸で明日は大阪かぁ」
「その後は東京、諏訪、そしてもっと北……」
「まだまだ先は遠いね。明日はもっと頑張ろうっ!!」
フンスと気合を入れる友奈を見て若葉はふと気になった
――友奈は強い。戦いの中でも明るく迷いがなくて、その『強さ』に私やみんなはいつも救われてきた
響は誰かの笑顔の為に……なら、友奈はいったいどんな思いで……
「友奈は……どうして勇者として戦うんだ?」
友奈の戦う理由。いつも明るい友奈は勇者達の中でも強い。実力面でも、精神面でも。だから気になった
どうして友奈は勇者として戦うのか。どんな思いで戦っているのか
「理由?うーん……あんまり考えたことなかったけど……」
少し悩む素振りを見せてから、友奈は話し始める
「頑張って敵と戦ったら、人を助けることができるよね」
「ああ」
「だからもっと頑張って、人をたくさん助け続けてたら……少しづつ元の世界を取り戻していけるって思うから、かな」
――そうか。友奈は信じているんだ。人の力を。未来の希望を
「確かにその通りだ」
「あっ、でもやっぱり1番の理由は『勇者ってなんだかカッコいいから』ってだけかも
だからこれからも生きてる人を頑張って探そうよ。『勇者』らしく」
そう言ってにぱっと笑う友奈に、若葉もその拳を握り気合を入れて答える
「もちろんだ。きっと明日は生存者が見つかるさ」
~~~~~~~
翌日、俺達は大阪の探索に乗り出していた
まあ昨日で分かってはいたが、建物の損傷が酷い。とくに人の多かったであろう場所はぐちゃぐちゃだ
「ここも……ひどいですね」
「みんな諦めるのは早い。手分けして調べよう」
ひなたの落ち込むような声に若葉が励ましの言葉と指示を出す。ひなたは荷物番をするので二人一組、千景&友奈、杏&球子、俺&若葉で探索を開始する
勇者達は街を隈なく探す。ビルの上から、ボロボロになった店を、荒れた道の上を
俺も天羽々斬のボードを使って若葉と共に飛び回りながら探してみる
……ただやはり、生存者の気配は無い。1度のひなたの元へ戻ることにした
「どうでしたか?」
「いや、見つからなかった」
ひなたからの問いかけに若葉は首を横に振って答える
「若葉ちゃん、響君」
他のメンバーも粗方探して戻ってきたようだ。友奈から声をかけられ、そちらに視線を向ける
「そっちはどうだった?」
「誰も見つからなかったよ」
結果を聞いてみると、やはり収穫なし
「こっちもだ」
友奈達とは反対側に着地してきた球子の結果も同じ
「……そうか。ここにも生存者はいない……か」
「みなさーん」
落ち込む若葉だが、そこへ杏の声が聞こえてくる
「こっちへ来てください」
杏の方へ行ってみると、そこには下へ向かう階段。つまり地下への入口があった
「階段……地下鉄道か?」
「いえ、大阪の駅周辺には広い地下街があるそうです。もしかしたらまだ中に人が……」
俺の疑問に答えてくれる杏。なるほど、地下か……いや、でもなあ……この階段も大分ボロボロだし、バリケードらしき板も崩れ去っているのが見える
あまり望みは無いような気がするが……
「地下か」
「……でも……この様子じゃ……」
「……いや……降りてみよう。」
千景も微妙な反応を示すが、若葉は少し考えて進んでみることを選んだ
「確かめてみないと何も分からない」
カツンカツンと、暗く静かな地下に俺達の足音が響く
「誰かいないかー!!」
若葉の声に対する反応は無い。周囲からはなんの音も聞こえない。ただ、そこらに転がっている食品のゴミや恐らく寝床にしていたであろう布などが、ここに人がいたことを示している
「人がいた痕跡はありますね」
「……もっと奥まで探してみよう」
ひなたの言葉に若葉はライトを先に向けることで答える
そうして俺達はさらに奥へ奥へと地下街を進んでいく
瓦礫が崩れて通れない場所や、やはり荒れ果てた店、開けられた缶詰など、いろいろ見ながら人を探し続ける
しかし、破られたシャッターを超えた所で、俺達は
「行き止まりか。……ん、これは……日記?」
「若葉、どうかしたか?」
「いや、足元に日記が落ちていたんだ」
若葉が何か拾った様子だったので、手元を覗いてみる
薄汚れたノートに書かれているのは、掠れたり汚れで見えにくくなっているが確かに日記のような内容だ
ライトで照らして読んでみようとしたところで、球子の声が聞こえてきた
「なんだよこれ!!」
「どうした!!何か見つけ……」
ノートを閉じてすぐに皆のもとへ向かうと、若葉の言葉と動きがピタリと止まる
「……こ、これは――!」
「……ひどい………地上はボロボロで、地下も……こんな……」
俺の口から溢れるのは己の目を疑うような言葉。それに続く千景の言葉が嫌に響き渡る。それもそうだ。誰も、この光景を見て言葉が出なくなったのだから
「なんだ……これは……」
――…一体……何があったって言うんだ……!!
絞り出したような若葉の声。無理もない。普通こんな光景は有り得ないからな。かくいう俺も結構驚いてる
「どうしてなかなか、笑えないモノを突き付けてくれる……!」
地下街の奥、その広い空間に…乱雑に、そこかしこに転がっているのは白骨化した人間の遺体
何十もあるだろうその大量の人骨は、ここでただならぬ何かがあったことを如実に示していた
はい、いかがだったでしょうか第10話。漫画2巻も終わりです。今話は文章量が思ったより長くなりました。
今回は響君と若葉、千景の絡みが主でした。他のキャラとも好感度が上がるようなイベントやらせないと…
ユニコーンはイチャイチャさせるのは好きだけどイチャイチャシーンを書くのは苦手です。なるべく頑張りますけど。
それでは皆さん、またお会いしましょう。