天羽響は奏者である   作:折り紙のユニコーン@UNICORNぬ

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どうも皆さん、こんにちは。或いはこんばんわ。折り紙のユニコーンです。
11話です。遠征後編ですね。残酷な壁の外の世界で、諏訪からのバトンを受け取ります。


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11話 伝わる心、calmato

「若葉……その日記に何か書いてないか?」

 

 

 大量の人の死体という凄惨な光景を見て呆気に取られる俺達。だが、いつまでも呆けているわけにはいかない。とにかく何か分からないかと若葉の拾った日記について聞いてみる

 

 

「そ、そうだな。見てみよう」

 

 

「日記……?ああ、若葉の持ってるそれか。いつの間に見つけたんだ?」

 

 

「さっき拾ったんだ。恐らく、ここにいた人の物だと思うが……」

 

 

 そうして若葉が日記を照らしながら読んでいく

 そこに記されていたのは、まさしくこの惨状が起こった経緯だった

 

 

 

 


 

 

 2015年 某日

 地下に潜んでから何日経っただろうか。もう日付もわからない。だから時間の感覚を失わないために日記をつけることにした

 7月末に突如現れた化け物から逃げて私達は地下街に逃げ込んだ

 みんなで出入り口にバリケードを作ったが私達も外にでられない。地上は今どうなっているのだろう

 お父さんもお母さんももういない……家族は妹だけ

 妹はまだ小学生だ。高校生の私がしっかりしないと

 

 

 2015年 某日

 今日起こった喧嘩で人が死んでしまった

 食料の奪い合い、意見の対立、弱い者いじめ

 化け物から逃げるために閉じこもっているのに、人間同士で争うなんてバカみたい……!!

 死体は決められた場所に集められている。放置しておくと衛生上の問題もあるし、精神的にもよくないからだ

 ……私、遺体をモノみたいに書いちゃってるな……

 

 

 2015年 某日

 妹が家に帰りたいとわんわん泣く。普段はワガママも言わない大人しい子なのに……

 妹の泣き声に苛立った大人が、外に放り出すか殺すかしろと言った

 そんなことはさせない。妹は私が守るんだ

 

 

 2015年 某日

 今日のご飯は栄養補助食品2個とスナック菓子半袋

 食糧問題で大人たちが話し合っている。弱い者を殺して食糧を節約するべきだと言う人。バリケードを解いて外に出るべきだと言う人

 今日も結論は出なかった

 外にまだ化け物はいるのだろうか。誰にもわからない

 

 

 2015年 某日

 妹に元気がない。呼びかけると返事をするけどぼんやりしている

 何かの病気かもしれない

 

 

 2015年 某日

 今日も妹は元気がない。でもどうすることもできない

 

 

 2015年 某日

 病院に連れて行かないと……

 

 

 2015年 某日

 妹が返事をしない。どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう

 

 

 2015年 某日

 ひどい争いが起こった。一部の人達が勝手に『食糧節約のため』と老人と病人を殺し、その人達も別の人達にすぐ殺された

 もう訳がわからない

 妹も殺されてしまった……私ももう死んでもいいかもしれない

 

 

 2015年 某日

 地上へ出ようと訴えていた人がバリケードを壊してしまった。化け物が次々と入り込んでる

 防火シャッターも簡単に壊された

 きっとあいつらは私達が自滅するのをわかってて放置してたんだ

 

 私は今、死体置き場にいる

 最期は……妹と一緒に迎えようと思う

 

 


 

 

 

 ――絶句。皆言葉が出てこない様子だ

 バーテックスによる死傷ではなく、生き残った人たちが極限まで追い詰められたことによる殺し合い

 それによってこの惨状が生まれたのだというだから

 ……俺個人としては、驚きはしたが予想しなかった話ではない

 精神的にも物資的にも余裕のない状況なのだから、むしろ必ずあると考えてはいた。考えてはいたが……実際に目の当たりにすると辛いものがある

 ただ、起こってしまったことはもうどうにもできない。今俺達にできることはひたすら生き残りを探すことだけだ

 

 

「これが……その結末か。ここに勇者が……私がいれば……」

 

 

「……若葉、そのもしもは考えるだけ無駄だ。今はとにかく、生きている人間を探すのが最優先だろう」

 

 

「響……ああ、そうだな…………っ!!」

 

 

 少し諭せば若葉は落ち着きを取り戻してくれた

 ……ずいぶん精神的に成長したなとつくづく思う。以前の若葉ならば頭に血が登っていた筈だ

 するとバッと若葉が後ろを警戒する。俺達も後ろを見ると暗がりから出てくるバーテックスの姿があった

 

 

「ここに生き残りはいない!!脱出して次の街に向かうぞ!!」

 

 

 若葉の号令で一斉に出口へと向かっていく。先頭は若葉。殿は俺だ………が、千景が動いてない?

 

 

「千景、どうした?はやく行くぞ」

 

 

「……何でもない……今行く」

 

 

 声をかければ普通に撤退してくれた。どうしたのだろうか………ここの人達の結末に、やはり何か思うところがあったのか?

 

 

 ――強大な敵に立ち向かえず……人間同士で争い奪い合った、無力で醜い……弱い人達

 危機が迫って追い詰められれば、四国の人たちもきっと同じような結末を……

私は……そうはならない。勇者の力が私にはある

 あんな惨めな死に方なんて、絶対に嫌……!!

 最後まで勇者として敬われて……生きていくんだ……!!

 

 

「たあぁーっ!!」

 

 

「セヤァッ!」

 

 

 千景と共に、後方から迫るバーテックスを斬り伏せ、地上へ上がっていく

 ただ、その千景の表情にはどこか危ういモノがあったような気がした

 

 

 

 

~~~~~~~

 

 

 

 

 あれからも遠征を続けた俺達は、ついに長野にまで到達した。遠目からでも見える巨大な諏訪湖は、若葉と通信をしていたという勇者…白鳥歌野さんのいた諏訪まであと少しであることを示している

 

 

「見えてきたね」

 

 

「諏訪まであとひと息って感じだな」

 

 

 高速道路の案内標識が掛けられている足場へと着地する。やっぱこういう移動は天羽々斬かガングニールが楽だな。イチイバルだとちょっと疲れると初日で学んだ

 

 続けて着地した球子が膝に手を付き、深く息を吐く。その顔には濃い疲労の色が見えるが……大丈夫だろうか?

 球子の隣に着地した杏も心配げだ

 

 

「タマっち先輩大丈夫?」

 

 

「……ちょっと疲れただけだ」

 

 

「名古屋で無茶して切り札使うから……」

 

 

 杏の言うとおり、球子は名古屋にて1度切り札を発動している。まあ気持ちは分からんでもない。あれはかなり悍ましい光景だったからな

 思い返すのは名古屋のビルに沢山くっついていた白く半透明な卵状の物体。中には星屑が透けて見える、まさに奴らの卵と言える気色の悪いモノだった

 それを見た球子は、珍しく叫び声を上げながら激昂して精霊を使用。卵を焼き尽くした訳だが……

 

 

「奴らの卵を見たら、ついカッとなってな………後悔はしてないけど」

 

 

「……どんな影響があるかまだ不明なんだよ。あまり軽々しく使わないで」

 

 

「わかった」

 

 

「まあ、気持ちは分かるけど……それにしても、球子があんなに怒るなんて珍しいね

 俺は初めて見たかも」

 

 

「確かに……言われてみればそうですね。あんなに怒ったタマっち先輩、私も初めて見た……か……も……?」

 

 

 杏に咎められる球子。一応少しフォローして話題を変えてみる

 ……ん?なんか杏が急に黙り込んでしまった。どうしたんだろうか?なんか不味い話題だったか?

 

 

「杏……?」

 

 

「は、はい」

 

 

「どうしたの?」

 

 

「あ……い、いえ、なんでもないです」

 

 

 誤魔化されてしまった。……んー、まあ、杏は抱え込むような子では無いから本当に大した事ではない……のか?

 なんかちょっと気になるけど詮索は止めておく。杏なら助けが必要な時は言ってくれるだろう

 

 ……そういえば若葉は大丈夫だろうか。友人の死地だから当然思うことはあるだろう

 

 

――今までの街と同じなら諏訪も……

「……白鳥さん……」

 

 

「行きましょう。彼女も知って欲しいはずです

 友達だった若葉ちゃんに、諏訪の結末を」

 

 

「ああ……そうだな」

 

 

 今も白鳥さんの事を思い出していたのか、少し暗い表情だったが…ひなたが背中を押してくれてるな。流石幼馴染みって感じだ。互いに分かり合って信頼しきってる

 

 それから少し移動して辿り着いたのは諏訪大社だ

 ……だが、おそらく立派だったのだろう神社は見るも無惨に破壊されていた

 球子、杏、友奈、千景は神社の周りへ。俺達3人は境内とかの探索となった

 

 

ここ(諏訪大社)が結界の要だったからでしょうか……」

 

 

「執拗に破壊されているな」

 

 

 若葉とひなたの2人が本宮近くを見ているのを尻目に俺は周囲の瓦礫をひっくり返したりして何か残っていないか探してみる

 

 

「何か残されたものとか……無いかな?」

 

 

 白鳥さんの拠点らしいし、なんかあったり……

 

 

「うーん……無いなぁ……」

 

 

若葉ー!!響ー!!ちょっと来てくれ。大社の外だ

 

 

 ん、球子からの通信だ。何か見つけたんだろうか?

 ここは何も無かったし、俺もすぐに行こう

 

 

「球子!!何か見つけたのか?」

 

 

「ああ、これだ」

 

 

 若葉達と共に皆の元に到着すると、そこに広がっていたのは……

 

 

「畑……か?」

 

 

「そうみたいだね。随分荒れてるから()畑って感じだけど」

 

 

 若葉の言葉をちょっと訂正する。そこは少し荒れているが、確かに耕されている土。恐らく少し前まで畑だったであろう場所だった

 

 

「確かに最近まで人の手が入っていた感じだな。他に手がかりのようなものは……」

 

 

「ん?何か埋まってる」

 

 

 若葉が辺りをキョロキョロしだしたところで、畑に入った友奈が何かを見つけたらしい

 皆でそこに行って埋まっている箱のようなものを掘り返し、開けてみる

 

 

(くわ)と……手紙だね。……はい、若葉。」

 

 

「あ、ああ。」

 

 

 箱の中にあった紙を拾ってみると、文字が書いてあり手紙であることがわかる。汚れているがまだ読めるな。

ただ……多分これ白鳥さんからの手紙だと思う。俺ではなく若葉が読むべきだろう。渡して読んでもらう

 

 

 

 


 

 

 もしこれを見つけたのが乃木さんでなければ、どうかこれを四国の勇者である彼女に渡していただければと思います

 

 奴ら(バーテックス)が現れた日から既に3年程となります。諏訪の結界も縮小し、切迫した状況になってきました。ここはもう長く保たないでしょう

 けれど、まだ乃木さんたちの四国は残っています。人間はこれまでどんな困難に見舞われても再興してきました。諦めなければきっと大丈夫

 

 乃木若葉さん。まだ会ったことのない大切な友達

 あなたに出会えたことを嬉しく思います

 あなたが戦いの中でも無事であるよう、世界があなたのもとで守られていくよう願っています

 

 人類を守り続けるのがたとえ私ではなかったとしても、乃木さんのような勇者が守り続けてくれるのであればいい

 私は、そこに繋げる役目を果たします

 

 


 

 

 

「……っ」

 

 

 若葉の顔が歪み、くしゃりと手紙を握る手に力が入る

 とても立派な人だったんだな……白鳥さんって。自分は無事でいられないだろうと分かっている筈なのに……それでも弱さを見せることなく、希望を託す為に戦い続けた紛れもない勇者

 

 

「ここも……同じ……全部壊されて……!!」

 

 

「ううん、全部じゃない」

 

 

 千景の言葉に友奈が否定を入れる

 

 

「これが残ってる。白鳥さんから受け取ったバトン」

 

 

 そうして友奈が手に取ったのは同じ箱に入っていた鍬。それを丁寧に持ち上げて若葉へと差し出す

 

 

「白鳥さんからの……」

 

 

 それを受け取った若葉は目を細め、ポツリと呟いた

 

 

「やっと……会えたな。お前の意志、確かに引き継いだ」

 

 

 白鳥さんから若葉へ、勇気のバトンは渡された

 彼女の覚悟と希望に、俺達もこれまで以上に頑張ろうと思える

 

 

「そういえば、先ほど境内でこんなものを見つけました」

 

 

「ソバの種……?」

 

 

 ひなたがそう言って裾から取り出したのは作物の種が入った小袋だ

 

 

「確か蕎麦は長野の名産品の一つだったね」

 

 

「他の作物の種も、いろいろありますね」

 

 

 名産品であるソバの種を始め、様々な種類の作物の種がある。するとふと若葉が畑へと視線を向けた

 

 

「……みんな」

 

 

 こちらに視線を戻して呼びかける若葉。みんな分かってる。当然断る人なんていないとも

 

 

「それじゃあ、まずは雑草を抜くところからだね」

 

 

「よーし、やるぞー!!」

 

 

「がんばろー!!」

 

 

 そして始まる、勇者達による畑の整備。日が傾いてくる中、全員で草むしり。まあ、変身した状態だからそんなに疲れないけど

 そして鍬で耕す

 

 

「む……なかなか難しいな……」

 

 

「まあ、俺達農業したことないからね」

 

 

「若葉ちゃん、次私やってみたい!」

 

 

 俺達は農業なんてやったことが無いので、使い慣れない鍬で苦労しながら土を耕す

 そして杏の知識に頼ったりしながら畝を作り、種を丁寧に蒔いていく

 

 

「これで完成かな」

 

 

「野菜が育つといいね!」

 

 

「そうだな」

 

 

 日が登る頃にはすっかり綺麗になった畑の姿。いやー、慣れないことしたから疲れたなぁ

 俺達は面倒を見ることができないが……友奈の言うとおり、植えた種が芽吹いてくれると嬉しいな

 

 

「この鍬と残った種は四国に持ち帰……」

 

 

 振り返った若葉の言葉が途中で途切れる。それもそのはず、ひなたがふらりと倒れかけたのだ。若葉が支えて倒れることは無かったが……

 

 

「大丈夫か?次の街へ移動する前に少し休もう」

 

 

「……いえ……違います。……違うんです」

 

 

 顔を上げたひなたの顔色は良くない

 

 

「神託がありました。四国が再び、危機に晒されます」

 

 

 全員に、緊張が走った

 

 

 

 

~~~~~~~

 

 

 

 

 俺達は今回の神託を受け、すぐに四国へ帰還することになった

 神託によって襲撃があることは判明しているが、いつ襲撃してくるかは分からない。よって丸亀城で待機し、次の攻撃に備えよとの大社からの指示だ

 

 各々が休息を挟んだ後に鍛錬や作戦立案を行ったりしている中、俺は自室に籠もっていた

 

 

「……ふぅ、行きでコレを回収しておいて良かった。帰りじゃ寄り道する暇無かったしな」

 

 

 俺の手に握られているのはラミネート加工されてバインダーに挟まれた紙の束。3年前のあの日までずっと肌身離さず持っていた、ばあちゃんの遺した()()()()()()()()()()()()()()

 3日目に奈良を探索した際若葉に一言掛けて単独行動をさせてもらい、修学旅行で泊まっていた旅館から回収したものだ

 

 実はあの日、暇な時間に読もうと思って持ってきていたんだ。もし鎌倉に置いてきていたらもう手元に戻って来なかった可能性が高い

 

 

「思わぬファインプレーだったワケだ」

 

 

 ちなみに大社に提出するつもりはない。こういう権力の集中した組織に資料を渡すのは少し抵抗がある

 こういう組織は遅かれ早かれ腐敗していくと相場が決まっているのだ

 情報漏洩やらなんやらで誰かに悪用されるなんてことがあったら目も当てられない

 ……まあ、この時代の人間がコレを読み解けるとは思えないけど……。俺だって全然読み進められてないし

 

 

「はあ……ばあちゃん……もうちょっと分かりやすく書いてくれよ……」

 

 

 小学生の時代をかけて読み解けたのはシンフォギアの仕組みのほんの基本位だ

 でも、これを読み進めて行けばバーテックスに対する戦力の強化も出来るはずだ

 皆の安全の為にも、少しずつでも読み解いていかないと

 

 

「とにかく頑張ろう……」

 

 

 この地道な努力が、勇者の皆の……ひいては俺達の後に続く後進達の支えになれるといいが……

 

 

 

 

 

 花は散りゆくのか咲き続けられるのか……運命の別れ道は、もうすぐそこまで来ている

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか、第11話。
文字数はいつもと変わらないのに、なんだか凄く短くなってしまいましたね。
日記や手紙のせいですかね?光景の描写や主人公達の心情を挟めないので、文字数はともかく行数は少なくなってしまいました。

そして、もうすぐです。もうすぐでユニコーンが作りたかった結末に辿り着けます。
拙い作品ですが、どうぞ最後までお付き合いください。


それでは皆さん、またお会いしましょう。
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