天羽響は奏者である   作:折り紙のユニコーン@UNICORNぬ

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どうも皆さん、こんにちは。或いはこんばんわ。折り紙のユニコーンです。
最近になってMrs.GREEN APPLEにハマって曲聞きながら書いてます。ゆゆゆい時空でサママフェスティバルとか響君に歌わせたら楽しそう……


13話です。タイトルの通り、ついに使います。
勇者を守り、全員揃って明日を迎える為に。


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すいません、特殊タグがうまく付けられてないところがありましたね。修正しました。


13話 戦士絶唱、feroce

 

「電気消すね」

 

 

「いいぞー」

 

 

 カチリと照明が消え、カーテンの隙間から溢れる柔らかな月明かりだけが2人を薄く照らしている

 杏と球子は今日も2人一緒にベッドへ潜り込んだ

 

 

「こうしてると、ホントに姉妹みたいだな」

 

 

「その時はもちろんタマがお姉さんだ」

 

 

「えー?私のほうが背が高いよ?」

 

 

「タマのほうが先輩だろ!!あんずは妹っ」

 

 

 くすりと杏から笑みが溢れる

 

 

「そうだね。きっと私が妹で、タマっち先輩がお姉さん」

 

 

「だろっ。世界一の仲良し姉妹だ」

 

 

 ゴロリと杏の方に体を向けて球子が抱きつく。いつも通りの元気な笑顔。温かな体

 でも、ふと不安が過りきゅっとその袖を握る

 

 

「タマっち先輩。次の敵の襲来……あんまり無理しないでね」

 

 

 そう言って球子へ顔を向ける杏の表情は不安気で、球子のことを心配していた

 

 

「新たにあった、『今までにない事態が起こる』っていう神託か……」

 

 

「うん、それに……タマっち先輩、切り札使ってから調子よくないでしょ」

 

 

 杏の言葉に球子の表情が強張った。皆に心配をかけまいと隠していた不調。よりにもよって杏にバレていた

 

 

「切り札は人の身に人外(精霊)の存在を宿す力

 どんな悪い影響が出るかまだ解明されていない。だから……」

 

 

 どんどん表情が暗くなる杏の顔に、球子がそっと手を当てる

 

 

「わかったから、そんな顔するな。みんなで力を合わせればきっと何とかなるさ」

 

 

「……うん」

 

 

 コツンと額と額をくっつけて、そのまま2人は眠りに落ちていった

 

 

 

 

~~~~~~~

 

 

 

 

 展開された樹海の中で、若葉が今回の方針を発表する

 

 

「今回は杏の提案通り、できる限り切り札の使用は控えようと思う」

 

 

「……状況次第では使わざるを得ない場合も……あるわ……」

 

 

 その方針に、杏を見ながら千景が指摘する。いや、まあそうなんだけどさ……

 

 

「でも大社からもそう言われてましたし……」

 

 

「アンちゃんに賛成っ。使わないに越したことはないよ。……ね?」

 

 

 杏がおどおど説得しようとしていると、友奈が千景の両手を握りながら体を寄せて説得に参加する

 俺も後ろから千景の肩にポンと手を乗せて説得だ

 

 

「そうだぞ千景。デメリットがあるんだから積極的に使う理由も無ぇ。それに、全員でなら使わずに済むかもしれねぇしよ」

 

 

「……2人がそう言うなら……」

 

 

 よし、納得してくれたな

 

 

「よーし!みんなで勝ってお祝いにお花見だ!!」

 

 

「楽しそうっ。亀山公園の桜キレイだもんね」

 

 

「へえ、じゃあ俺が料理用意してやるよ。腕振るってやるから楽しみにしておけよな」

 

 

「私も料理の用意を手伝います」

 

 

 球子がテンションを上げて、祝勝会のお花見を提案する。楽しそうだから俺も大賛成。こう見えて料理ができるので料理の用意は俺がやろう

 杏も手伝う流れになったところで、何故か球子が反応し……

 

 

「じゃあタマは魚釣ってきて焼く!!」

 

 

 ずいと杏に詰め寄って張り合ってきた。ええ……?

 

 

「なぜ張り合うの……?……というか、もうそれはお花見じゃない……」

 

 

パン

 

 

「そこまで」

 

 

 おっと、若葉が脱線し始めた話を戻したな。手を叩いて注目を集めた若葉は口を開く

 

 

「作戦方針も決まったところで、みんなそろそろ気合を入れよう

 ――敵が来たぞ」

 

 

 若葉が視線を向けた先にはバーテックスの姿が見え始めていた。よし、やるか

 

 

 今回は付かず離れず、ペアを作り互いをカバーできるように行動する。俺は若葉と

 

 

「フッ!」

 

 

ザンッ!

 

 

「ちょせぇ!!」

 

 

ババババンッ!

 

 

「……よし、今回はそれなりに余裕あるな!」

 

 

「そうだな。だが、あまり油断するなよ」

 

 

 友奈は千景と

 

 

「てやぁっ!!」

 

 

ドゴッ!!

 

 

「はあっ!」

 

 

ズバッ!

 

 

「……高嶋さんには、指一本触れさせない……!」

 

 

「ありがとうぐんちゃん!」

 

 

 球子は杏と

 

 

「数は前より少ないくらいだな」

 

 

「うん、これならみんな大丈夫」

 

 

ドドドドドッ!

 

 

――あとは……

 

 

 俺と杏の遠距離武器持ちは、一箇所に集まろうとしているバーテックスを最優先で撃ち落とすことになっている

 

 

「させねぇよッ!」

 

 

《MEGA DEATH PARTY》

 

 

――融合進化体を阻止すれば!!

 

 

 多数のバーテックスが集まりそうになれば確実に落とす。融合進化体を発生させないためだ

 進化体が出てくると精霊を使わざるを得ないのなら、進化体が出てくる前に潰せばいい

 

 

「あんず、あっちだ!!」

 

 

 ちっ、数が増えてきたな。杏の方に多数のバーテックスが合体しようと集まっているのが見える

 けど、こっちもこっちで集まり始めてるから援護が難しい……!

 

 

「数が……多い……!!」

 

 

「仕方ない、切り札を使うぞ!」

 

 

「待って!!タマっち先輩は手を出さないで」

――願うは殲滅

 

 

 杏が冷気に包まれる。白の息吹が渦巻いていく

 

 

――あらゆるものを凍らせる、雪と冷気の具現にして死の象徴――

 

 

 冷気の渦が消えた時、杏は白無垢のような追加装束を身に纏っていた。杏のやつ精霊を使っちまったみたいだな

 

 

――雪女郎ゆきじょろう

 

 

ゴバッ!!

 

 

 放たれたソレはもはや矢ではなくブリザードだ。こちらにまで強力な冷気が届き、バーテックスを巻き込んでいく

 

 

ビュオオオオオッ!!

 

 

さ、寒い~

 

 

何も見えないわね……

 

 

 ぶるりと体を震わせる友奈と、冷静に周りを見回す千景の声が聞こえてくる

 確かに俺達の周りにも冷気が迸り、視界を遮っている

 他のメンバーが見えないくらいに凄まじい吹雪だ

 

 

皆さん危険ですから動かないでください

 

 

「よかったのか!?切り札を危険視していたのはお前だろう?」

 

 

……今まで一度も使ってなかったからみんなよりは安全………だと思う

 

 

まったく無茶するなぁ……

 

 

 この冷気によってバーテックス達も凍りつき、ついには砕けて落ちていく。冷気が収まる頃にはかなりの数のバーテックスが倒されていた

 

 

ふぅ……

 

 

やったなあんず、ほとんど片付いたぞ。あとは残りの奴らを――

 

 

 かなり数を減らして一安心……そんなとき、残留した冷気の奥から"ソレ"が現れた

 

 こちらに来る前に融合していたのか、完全な形で現れた進化体。大きさは以前の大型進化体と同じ数十メートル級

 サソリのような針の付いた尾が特徴的なバーテックスが星屑を大量に引き連れてやって来た

 

 

前の奴と同じくらいでかい……やばいぞ……あいつ

 

 

この数はまずいよ

 

 

「迷っている場合では無さそうだな」

 

 

使うわ……切り札……

 

 

みんな待って……!!

 

 

 杏の静止も虚しく全員が切り札を発動する。使ってしまったのなら仕方がない。俺達に出来ることは、なるべく負荷が少なくなるように短期決戦に持ち込むことだけだ

 

 

「ちぃっ……使っちまった以上、なるべく速く倒し切るしかねぇ。気合い入れるぞッ!!」

 

 

 

 

~~~~~~~

 

 

 

 

――結局みんな力を使ってしまった……

 

 

「危ないっ!!」

 

 

ドッ!!

 

 

 全員が精霊を使ってしまったことに唇を噛む杏。その瞬間、球子の声と軽い衝撃。杏は球子の輪入道を使った旋刃盤に乗せられていた

 その後に先程まで杏がいた場所に進化体の尾が突き刺さる

 

 

「ぎりぎりだったな」

 

 

「タマっち先輩……」

 

 

 しかし……

 

 

「……っ!!その腕――!!」

 

 

 直撃こそ免れたものの、杏の左腕には勇者装束すら切り裂かれて傷がついていた

 傷の痛みだけではないズキズキとした腕の熱に、杏が敵の特性を把握する

 

 

「……あの針、毒があるみたい」

 

 

「あいつ……!!」

 

 

 見た目の通り、あの進化体の針には毒がある。勇者であって尚、掠っただけの左腕が動かなくなるほどの

 

 

「大丈夫。右腕だけでも戦える」

 

 

「……わかった。なら、同時に行くぞ!!」

 

 

「うん!!」

 

 

 それでも杏は弱音を吐かない。2人でならきっと大丈夫だと信じているから

 2体の精霊による同時攻撃。炎と吹雪を纏う旋刃盤が進化体の体へと全力で衝突する

 

 

「最大火力だ!!!」

 

 

 

 

 炎と吹雪が止まり、衝突により発生した白煙の中から現れるのは少し煤がついた程度の進化体

 

 

「そんなっ!!効いてない!?」

 

 

「くそっ!!一旦距離をとってもう一度――」

 

 

 精霊2体がかりの攻撃ですら通らなかった衝撃に、2人は気付かなかった。頭上から振り下ろされる尾に

 

 

ゴッ!!

 

 

 振り下ろされる尾に直撃し、旋刃盤もろとも地面へ叩きつけられる2人

 

 

「球子!!杏!!」

 

 

 若葉が振り返り、2人の名前を叫ぶ。しかし、今向かうことはできない。こちらにも進化体が襲来しているからだ。球根のようにも見えるモノが3つくっついたようなその進化体は、千景と友奈が相手取っているものの押しきれていない

 

 

「く…!!」

 

 

「若葉ッ!俺が向こうに行く!ここは任せるぞ!」

 

 

「分かった!2人を頼む!!」

 

 

「ああ!!

 

Imyuteus amenohabakiri tron羽撃きは鋭く、風切る如く

 

 

 響は2人の元へ走りながらギアを変更する。より速く2人の元へ行くため、最も機動力の高いギア……天羽々斬に

 

 聖詠を口ずさむと響はエネルギーフィールドに包まれる

 イチイバルのギアが体から離れて1度クリスタルに戻り、赤から青へ色を変える。同時にインナーの色も染まっていき、ズボンと上着も変化する

 そしてクリスタルがブレードに変形し体の各所へと束ねられアーマーに

 

 装着を完了した響はアームドギアを2本取り出し、強く踏み込んで飛び上がった

 

 

「頼む、間に合ってくれッ!!」

 

 

《炎鳥極翔斬》

 

 

 刀から吹き出す炎。それをブースターとして飛翔を開始した

 

 

 

 

~~~~~~~

 

 

 

ガンッ!

 

 

「う……」

 

 

 地面に叩きつけられ、気を失っていた杏が目を覚ます。ゆっくり右腕だけで体を起こすと追加装束が無くなっていた

 

 

ガンッ!!

 

 

「強化が解除されてる……」

 

 

「気が……ついたか」

 

 

 苦しげな球子の声。ハッとして顔を上げると球子が進化体の針を旋刃盤で防御していた

 

 

「タマっち先輩!?」

 

 

ガキンッ!!

 

 

「早く逃げろ……!!」

 

 

「何言ってるの!逃げるなら一緒に……!!」

 

 

 杏の言葉に困ったように苦笑いする球子。しかし動くことはない

 

 

「はぁっ……はぁっ……!無理だ……足がもう動かない……だから……」

 

 

「できるわけないよ!!」

 

 

 自分を置いて行くように言う球子に、杏はすぐに拒否する

 

 

「でもこのままだと2人とも死ぬぞ!!」

 

 

 今まで聞いたことの無いほどに語気を強めた球子。分かっている。このままでは2人揃って死んでしまうことくらいは。それでも、杏には球子を置いていくことなどできないのだ

 

 

「嫌!!絶対嫌!!」

 

 

「このわからず屋め……」

 

 

 こうなった杏は梃子でも動かないと分かっている球子は、改めて進化体を見据える

 

 

――逃げないなら……守るしか無いじゃないか!!

 

 

ガキンッ!!

 

 

 再び尾が突き出される。衝突する針と旋刃盤。ビリビリと衝撃が全身に伝う

 

 

ピシッ……

 

 

「タマっち先輩っ」

――私も一緒に戦うんだ!!一撃一撃は効かなくても、攻撃を続けていれば――!!

 

 

 球子の旋刃盤から嫌な音が鳴り出す。杏も諦めずに撃ち続けているが、せいぜい表面を薄く削るくらいで動きを止めることはできない

 

 

ガンッ!!

ピシッ……

 

 

――タマは盾!!あんずの盾だ!!傷つけさせない!!

 

 

ギィンッ!!

ピシピシッ……!

 

 

 一撃を受けるごとに旋刃盤にヒビが入っていく。球子の旋刃盤は、()()()()()使()()()というだけで盾では無い。盾程の耐久力は無い

 刻々と命のタイムリミットは近づいている

 

 

――なんとしても倒すんだ!!タマっち先輩が守ってくれるなら、私が倒す!!

 

 

――タマが!!

 

 

――私が!!

 

 

――絶対に――!!

 

 

 一際強く、針が放たれる

 

 

オオォォォォォォォオッ!!

 

 

 同時に、横から青い炎の鳥が衝突した

 

 

ドウッ!!

 

 

 炎の鳥が翼を羽撃かせ、尾にぶつける。ギャリギャリと音を立て、翼が尾を両断した

 

 

「あれは…!!」

 

 

「遅くなってすまない……!2人とも、よく頑張ってくれた……!!」

 

 

 2人の前に着地した炎の鳥が霧散し、天羽々斬を纏った響が到着した

 

 

「2人とも、ここから逃げられそうか……?」

 

 

「私は大丈夫ですけど、タマっち先輩が……!」

 

 

「タマはいい!あんずだけでも……!!」

 

 

「……いや、分かった。2人はここから動くな。杏、まだ撃てるか?」

 

 

「はい!」

 

 

「ならば、こちらに向かってくる星屑だけを撃て」

 

 

「分かりました!……っ、響先輩後ろ!!」

 

 

 2人に指示を出す響。そんな中、杏の声によって後ろから迫っていた針に気付いた

 

 

「ッ!!」

 

 

キィンッ!!

 

 

 己が弾いた尾を睨み、表情を固くする響。普通であれば防御と同時に斬れた筈だが、弾かれた。当然進化体に傷は付いていない

 

 

「再生が速い……!もう切り落とした尾を復元したのか……!」

 

 

「アイツ、凄く硬いぞ……!タマとあんずの合体攻撃でも効かなかった……!!」

 

 

「なるほど……ッ!くっ……!攻撃のスピードもッ!上がっているな……!!」

 

 

キィンッ!!キィンッ!!

 

 

「てやぁぁッ!!」

 

 

《蒼ノ一閃》

 

 

 針を弾きながらアームドギアを巨大化させ放たれる斬撃。それは進化体の胴体に突き刺さりその巨体を揺らすが、撃破には至らない

 

 

「確かに硬いな……!これでも倒れないか……!」

 

 

「でも傷は付きました……!連続して放てれば……!」

 

 

「いや、それは難しい……くッ!邪魔だっ!」

 

 

 2発目を放とうとすると進化体の針攻撃と星屑の妨害が入る。針を捌き、迫る星屑を撃破したときには再生が終わっている

 

 

「そして、このままではアームドギアが保たない……!」

 

 

 何より厄介なのは相手の大きさだ。攻撃の効きにくさは勿論、その質量から繰り出される攻撃は例え掠っただけでも衝撃が大きい

 今はなんとか受け流せているが、正面から受け止めれば当然アームドギアは砕かれ、時間が経ってもアームドギアは限界を迎えるだろう

 アームドギアが砕ければ、その隙はそのまま命の危機に直結する

 星屑の攻撃も捌かなかればならない以上消耗はさらに大きくなる。つまり、このままだといずれどこかでこの拮抗は破綻する

 

 

「そんな……どうすればいいんだよ……!」

 

 

「響先輩の蒼ノ一閃よりも高火力な攻撃があれば……」

 

 

「そ、そうだな!なあ響、なんか無いのかよ……!?」

 

 

キィンッ!!

 

 

 響は針を弾きながら思考を巡らせる

 

 

――蒼ノ一閃以上の火力を出すには、もう天ノ逆鱗くらいしか無い。しかしこの巨体ではそれでも足りるかどうか……

 ギアを変えるか……?コイツを倒せる攻撃を単体で放てるのはイチイバルくらいか……だがイチイバルではコイツの針を防げない!!

くそッ……!こんな時に決戦仕様かエクスドライブが使えれば――!!

 

 

「………いや、ある……あるじゃないか……」

 

 

キィンッ!!…ピシッ…

 

 

「っ!あるのか!?」

 

 

――なんで忘れてたんだ…………いや、きっと怖くて無意識のうちに選択から除外していたんだろう

 でも、今この2人の命が……この手から零れ落ちるくらいなら……ッ!!

 

 

「例え命を危機に晒すとしても、惜しむものか――!!」

 

 

キィンッ!!……ピシッ!

 

 

「えっ……?……響先輩、今なんて……」

 

 

 そろそろアームドギアの耐久力も限界を迎える。幾度となく大質量と打ち合った刃には無数の罅が入っているのがはっきりと分かる

 

 

「征けッ!」

 

 

《天ノ落涙》

 

 

 進化体が針を引き絞る隙に無数のエネルギーの刃を進化体の頭上から落とす。進化体に当たっても浅く刺さるだけだが、響の狙いは傷を与えることではない

 

 

「ぐぅっ!」

 

 

バキンッ!!

 

 

 同時に、進化体の針がついにアームドギアを砕き響の胸へと迫る

 

 

「「響(先輩)っ!!」」

 

 

 しかし……

 

 

「う、動きが……止まった……?」

 

 

 その針が響に刺さることはない。寸のところで停止する進化体の動き

 その原因は、先程放った天ノ落涙。進化体の体に刺さっているものではなく、その周囲(進化体の影)に落ちた刃だ

 

 

《乱れ影縫い》

 

 

「2人とも、なるべく姿勢を低くしておけ。少し手荒になる」

 

 

 跳躍をして進化体を登りながら響は大きく息を吸った

 決して大きな声量ではないはずのその歌は、離れた場所で戦っている若葉達にも聞こえるほどこの戦場に響き渡る。まるで、今この場に存在する音がこの歌以外消えてしまったのかと錯覚するほどに

 

 

Gatrandis babel ziggurat edenal

Emustolronzen fine el baral zizzl

 

 

 今まで一度も聞いたことのない歌。それなのに何故か、勇者達に嫌な予感が走る

 響の持つ折れた刀に集まる異常なほどのエネルギー。それに反応してバーテックス達が響の方へ集まり始めた

 

 

Gatrandis babel ziggurat edenal

Emustolronzen fine el zizzl

 

 

 進化体の真ん中ほどにまで登った響が、歌を歌いきる。同時にぴたりと世界から音が消えた。訪れる刹那の静寂

 そして一瞬だけ杏と球子の方を向いて、ニッと笑った口の端からゴポリと血が流れた

 

 

ゴウッ!!

 

 

 瞬間、響を中心として溢れ出る光と衝撃。凄まじいエネルギーの解放によって樹海は光に包まれた

 

 

 

 

~~~~~~~

 

 

 

 

「何だ、今の光は……!?」

 

 

 突然響達の方から発生した光が収まり、若葉は驚愕することになる。光の中心地…つまり響の向かった2人がいる方面にいたバーテックス達が軒並み消滅している

 巨大な進化体も、その取り巻きの星屑も

 さらにこちらのバーテックスの数も相当減っている

 

 

「響がやったのか……?」

 

 

 直前まで歌が聞こえていたため、恐らくシンフォギアの技の1つだと予想を付ける。だが、驚くべきはその威力。大量のバーテックスを一度に殲滅せしめる程の大技

 

 

――だが、これが響の技だとして、なぜ今までこの技を使わなかった……?それに、あの嫌な予感は一体……

 

 

 ふと浮かぶ疑問。しかし、次の瞬間にその疑問は晴らされることになる

 

 

「響っ!!しっかりしろ!!おい!!」

 

 

「響先輩っ!!響先輩っ!!」

 

 

 焦燥した2人の、必死に響を呼ぶ声。友奈と千景と共に急いで3人の元へ向う。そして、若葉達が見たのは……

 

 

「っ!!これは……!」

 

 

 シンフォギアのアーマーが罅割れ、全身から血を流して倒れ伏す響の姿だった

 球子と杏の2人も怪我や毒で動けず、広がる血溜まりを見るしかない状態だ

 

 

「天羽君……!!」

 

 

 千景が駆け寄り、血に塗れるのも厭わずに抱き起こして胸に耳を当てるとドクンドクンと心臓の鼓動が聞こえる

 

 

「まだ生きてる……!はやく病院に連れて行かないと――!!」

 

 

 かろうじて息をしていることに安堵したのも束の間、このままでは失血死してしまう。しかし、あの光に巻き込まれなかった星屑達や若葉達が相手にしていた進化体が集まって勇者達の前に立ち塞がった

 

 

「くそっ……はやく響を病院へ連れて行かなければならないのに……!!」

 

 

「うおおぉぉぉぉぉぉお――!!」

 

 

 顔を顰める若葉の背後から、友奈の声が響く

 一目連では足りない。もっと強く、もっと速く。奴らを打ち砕ける力

 大社から使用を禁じられていた強力な精霊を呼び起こす

 

 それは鬼。古来より怪力の持ち主として記録されてきた怪異。赤にも似た薄紅色の光を纏い、友奈の姿が変わっていく

 

 

「来いッ!!――酒呑童子しゅてんどうじッ!!」

 

 

 握り拳が顔程にもなる巨大な赤いガントレット。腕を包む同色の装甲。胸と胴にも軽い鎧が纏われる

 そして何より目立つのが、鬼の象徴ともいえる2本の角。桜マークの刻まれた赤いソレは友奈が鬼を降ろしたなによりの証拠

 

 

「退けえええぇぇえっ――――!!!」

 

 

ドゴォッ!!

 

 

 拳の一撃。たったそれだけで進化体を打ち砕いた。おそらく大型の進化体にすら通じるであろう超怪力

 しかし、その力には大きな代償が存在する

 

 

ブシュッ……!

 

 

「ぐっ……!!」

 

 

 殴りつけた友奈の右腕から、血が吹き出る

 己の肉体を顧みず、ただ力のみを求めて宿し得た鬼の力

 しかしそれは強力であるがゆえに、己をも破壊する

 

 

「破壊力が桁違いだ……」

――これが大社に禁じられていた、切り札中の切り札……

 

 

――速くしないと、響君が死んじゃう……!!タマちゃんもアンちゃんも危ない……!!

「うああああああああっ――――!!!」

 

 

 残る星屑達へと跳躍する友奈。自身が傷つくことを厭わない攻撃に、若葉が焦りを見せる

 

 

「もうやめろ!!残りは私達が……」

 

 

 そう言いかけて、自身の足元まで樹海の侵食が進んでいることに気付く

 

 

――樹海の侵食がここまで……!!

 

 

 戦闘が長引けば長引くほど、樹海の侵食が進み現実世界に影響が出てしまう

 

 

「くっ……仕方ない。力を合わせて敵を速やかに排除しよう。このままだと樹海化が解けたあと、四国に悪影響が出て響達の治療どころでは無くなってしまう」

 

 

「……わかってるわ」

 

 

 その後、友奈の圧倒的な力もあり勇者達は勝利を収めた

 死者こそ出なかったものの、3人が重傷。特に響は生死の境を彷徨うほどの重体

 決して軽くはない被害を出して、今回の戦いは幕を閉じた

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか第13話。あんタマ生存&初絶唱でございます。
今回響君には破損したアームドギアで絶唱を使ってもらったので重傷を負いました。
展開的に響君には眠ってて貰わないと難しいので。

次回は響君不在です。獅子座の顔見せでもあります。

それでは皆さん、またお会いしましょう。
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