天羽響は奏者である 作:折り紙のユニコーン@UNICORNぬ
大変お待たせしました14話です。響君は今回ほとんど出ません。
ゆゆゆいにおいて大事な要素なので、銀ちゃんの生存に関するアンケートを開始。
イグナイトの有無(ゆゆゆい)についてのアンケートはお手数おかけしますが第12話以前の話から投票お願いします。
お気に入り登録してくれた方、ありがとうございます。
誤字脱字、アドバイスなど感想お待ちしております。
「杏、球子、調子はどうだ?」
「はい。体全体の痺れは取れてきたんですけど……まだ左腕が動かなくて……」
「タマなんて左腕以外の腕と脚が骨折だぞ!?寝てるときも起きてるときも腕と脚が宙ぶらりんで動けないから暇で暇で死にそうだ!」
「あはは……」
ぎゃーぎゃーと喚く球子に苦笑いの杏。若葉とひなたは今、2人のお見舞いに来ていた
あの戦いから1週間が経つ。杏はバーテックスの毒により全身が痺れ動くことすら難しかったのだが、現在は左腕以外が少しずつ動くようになってきた
一方の球子は両足と旋刃盤を持っていた右腕が骨折。勇者の力で回復は通常より早いものの未だに満足に動くことができない。喚けるくらいの元気はあるが
ちなみに友奈は酒呑童子を使ったので後遺症の検査と、使用の反動である腕の負傷の治療で別室に入院中である
「贅沢言わないのタマっち先輩。生きて帰ってこられただけでもマシなんだから……」
「そう……だな。響が助けに来なかったら、タマとあんずはどうなってたか……」
杏の言葉に皆が一瞬静かになり、球子も落ち着いた顔で思い返す。ギリギリのところで飛び込んできた響のお陰で2人は生きている
球子の旋刃盤はあの防御で罅割れ、現在は大社が修復できるか模索している途中だ
あのまま防ぎ続けていれば、いつか旋刃盤が破壊され動けない2人はもろともに死んでいただろう
「……そういえば、響先輩は大丈夫なんですか……?」
病室から動けない杏が響の様子を尋ねてくる。それに対する若葉とひなたの表情はあまり良くない
「響君ですが……峠は超えたものの、まだ油断できない状況です」
「今は集中治療室にいて、まだ目を覚ましていないそうだ。面会も謝絶されていてな……」
「そ、そうですか……」
あの日から、響は目を覚まさない。意識不明の重体で病院に運ばれ、死の淵を彷徨っていた響。幸いにも一命を取り留めたものの、予断を許さない状態にあり現在も
――こういうときこそ、響や友奈がいれば……場を和ませてくれるのだが……
「くそっ……タマが弱かったせいだ……杏にも響にも怪我させて……」
「ううん、そんなことないよタマっち先輩。タマっち先輩がいなかったら、私はもっと早くやられてた。タマっち先輩がいてくれたから頑張れたんだもん」
「あんず……」
球子が自分を責め、杏がそれを否定する。再び静かになる室内。若葉はムードメーカーである2人の存在の大きさを実感し、弱気な考えを振り払うように軽く頭を振る
――いや、弱気になるな。2人がいないからこそ、私が励ますんだ
「そうだぞ、球子。球子が守ってくれたから響が間に合ったんだ。お前は立派に杏を守った。そんな調子では、助けた響も困ってしまう」
「そ、そう……だな。……そうだよな!よし、タマはもう大丈夫だぞ!」
「響君の意識が戻ったら、みんなでお見舞いに行きましょう」
「そうですね。響先輩、目が覚めたらきっと退屈するでしょうから」
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「…………」
千景は1人、自室の布団に横たわっていた
――今回の敵……精霊の力でも、通用しなかった……
千景が思い返すのは、大型の進化体の姿。球子と杏が二人がかりの全力攻撃を物ともしないあのバーテックスは、まさに悪夢のような存在だ
それに連なってフラッシュバックするのは手も足も出ずギリギリまで追い詰められた球子と杏、そして血塗れになって倒れ伏す響の姿。虚ろな瞳、弱々しい呼吸と、むせ返る程の不快な鉄の臭い。自身の手の中で段々と冷たくなっていく体
「……っ!」
ギュッと強くベッドのシーツが握られ、歯が小さくカチカチと音をたてる。震える体を守るように丸くなり、表情が歪む
――あんなのが、また現れたら……私は――!!
「……嫌……死にたく……ない……!」
助かったとはいえ、親しい人が死の淵に瀕している光景は千景に"死"というものを意識させるには十分すぎた
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それからまたしばらくして、大社から勇者達へ新しく司令が下された。今回の任務は壁の外にいる敵の討伐
杏、球子、響は不参加となっている。杏は未だに左腕が動かず、球子はだいたい回復したものの武器が使用できない。響に至っては目を覚ましてすらいないからだ
そうして若葉、友奈、千景が向かったのは四国を覆う壁
「壁外の敵の討伐なんて珍しい任務だね」
「大社の方針が変わったのかもしれんな」
驚いたように言う友奈の反応も当然だ。今までの勇者の任務は壁内に侵入してきた敵の排除
壁外調査を除けば、進んで壁外の敵を排除することは無かった
「そういえば、体の方はどうだ?」
「退院してから結構経ってるし、問題ないよ」
若葉の気遣う言葉に明るく返す友奈
その後ろで千景は1人顔を伏せ、先日送られて来た大社からのメールを思い出す
前回の戦闘で軽度のPTSDを引き起こしている可能性があります。
確認のために担当医に連絡をとり、至急カウンセリングを受けてください。
「カウンセラーなんかに……何がわかるっていうの……」
――……怖い……
鎌を持つ腕が震える
――戦うのが……死ぬのが……怖い……
反対の腕で震えを抑え込む
――……でも……戦わない
そして、友奈がそれに気が付いた
「ぐんちゃん?」
振り向いて首を傾げる友奈に、思わずビクッと体が跳ねて咄嗟に鎌を持つ腕を背に回す
自身が怯えている様を、友奈には見せたくなかった
「なんでも……ないわ。壁の向こう側に……抜けるのよね」
それでも、友奈は千景の不安を……恐怖を見逃さなかった。顔はいつもより暗く伏せがちだったし、なにより胸の前で握られた左手が小さく震えていたから
そして友奈は、友達の不安をそのままにしておくような人間では無い
「そこに……敵が……――!」
誤魔化そうとする千景をギュッと抱き締める
「何があってもぐんちゃんのことは私が守る。もうこれ以上誰一人だって傷つけさせない
……だから、大丈夫だよ」
大好きな友奈の抱擁と、その温もりで少しだけ千景の表情が和らぐ。そして、小さく頷いた
「……うん」
しかし、この世界はそんな少しの癒やしを許してはくれない
『友奈、千景、来てくれ!!』
先に結界の外へ出ていった若葉の焦ったような声。壁の外で何かがあったのは間違いない
「敵を見つけたのかも!」
「でも、こちらからそれらしい姿は……」
急いで結界の外へ出た友奈と千景が見たものは……
「これは……!」
目の前に浮かぶ、大型進化体よりもずっと大きい、巨大な輪が特徴的な融合中の進化体
いまだ完成とは程遠いものの、その威圧と巨体は他の進化体とはレベルが違う
「こんな大きな敵、向こうからは見えなかったよ!?」
友奈が驚愕して若葉に告げる。壁の中から見えた壁外の景色はなんてことのない平和な風景だった。こんな巨大な敵がいるのなら、壁内からでも見えたはずだ
「結界の効果で隠されていたのだろう」
若葉も同じ考えだったから、推測はしてある。中の人間に恐怖を与えないためか、あるいは不利を隠しておきたいからか……どちらにせよ、外の本当の様子は結界によって隠されている
「また……隠すのね……」
勇者の戦闘不能に続いて、巨大な敵。自分達に不利な情報を隠す者達に千景が歯を食いしばる
「ああ、だが……」
「今は全力で敵を倒すのが……優先……」
「その通りだ」
それでも、今は目の前の敵に集中しなくてはいけない
若葉と千景がそれぞれ
「私も……!」
「友奈が切り札を使うのは危険だ」
「ここは私達に任せて」
ならば自分もと精霊を発動させようとする友奈だが、2人に制される。ただでさえ強力な精霊を使った病み上がりだ。連続行使はさせられない。そうして友奈を待機させ、2人は超大型へと向かっていく
「左側……」
「なら右で」
簡潔にどちらがどこを攻めるか決め、一気に攻撃を仕掛ける。片や7人による同時攻撃。片や星屑も足場にして加速した高速連撃
しかし、2人の連撃はことごとく外殻によって弾かれ、その体躯には傷一つついていない
――全然効いてない……!
戦慄する千景。驚愕で動きの止まった千景目掛けて超大型進化体が行動を起こす。グォンと千景の方へ体の向きを変え、正面に巨大な火の玉を形成した。それに友奈が気づく
「ぐんちゃん避けてっ!!!」
ギュオッ!!
咄嗟に自身の近くにいた七人御先の1人に自分を押させ、弾き飛ばされる形で火の玉を回避する
シュボ!!ズガガガガガガガガガガガ
咄嗟に避けた1人を除き、七人御先が一瞬で消滅した。なおも勢いを止めず、彼方へ飛んでいく火の玉
「七人御先が一度に6人までやられるなん――」
ドンッ!!!!
火の玉が着弾した。あまりの轟音と衝撃に千景はそこに目を向ける。その火の玉は恐ろしい程の火力で海の通り過ぎた部分の表面を蒸発させ、着弾したであろう本州の一部がごっそりと消えていた
「ほ、本州が……こんなの、どうやって戦えば……」
あまりの破壊力に戦意が喪失しかける千景。だがそこに、友奈の雄叫びが響いた
「うおおおおおおおっ――――!!」
千景が友奈の方を見ると、友奈が酒呑童子を顕現させていた
「おおおおおおおおおおおお――――!!」
回復したばかりの体での切り札の使用。しかも酒呑童子。友奈にかかる負担は想像もつかない
「う、ううああ……!!」
発動させるだけでも全身に苦痛が走るが、それでも友奈は精霊を解くことはしない
「高嶋さん、だめ!!無理よ!!」
「絶対に守る!!今は戦えない3人の分まで……!!私が!!!」
千景の静止も振り切って、友奈が超大型へ突撃していく。そして拳を振り絞り………
「勇者、パーーーン――」
ブシュッ……!
体が限界を迎えた
「がはっ……」
「高嶋さんっ!!!」
酒呑童子の強烈な負担に耐えきれず友奈の全身から血が吹き出る。精霊が消え、意識も失い海へ落ちていく友奈
今回の任務は、手も足も出ずに失敗を迎えてしまった
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――私達の討伐任務は失敗。海から救出した高嶋さんは再入院となった
千景は寮の部屋で、1人ネットを見ていた。カチリ、カチリとマウスをクリックする音と千景の声だけが部屋に響く
「私は………私は勇者……」
立て続けに心の拠り所となっていた2人が倒れ、不安定になった千景の心は顔も知らない誰かからの称賛を求めてしまった
「勇者だから……みんな私を認めてくれて……褒めてくれて……」
しかし現実はどうしてか、残酷なことばかりを突き付けてくる
「え……?」
255:名無し
新しいタイプの化け物が出てきて、まったく歯が立たずに勇者が倒れたんだって
256:名無し
戦闘不能になったのは土居球子と伊予島杏、天羽響
「何よ……これ……」
――守ってきたのに……
257:名無し
政府と大社は真実を隠蔽している!
258:名無し
勇者負けたってマジかよ役立たねえな
259:名無し
この前すごい竜巻あったじゃん。あれってその新しいタイプの化け物のせいだよ
「みんな……なんで……!?」
――命を危険に晒して戦ってきたのに……
260:名無し
俺達を守れてねえじゃん勇者
「……ふざけないでよ」
戦いへの恐怖も、痛みも知らない者達の心無い好き勝手な言葉に、千景は沸き上がる怒りでギリリと歯を食いしばった
いかがだったでしょうか、第14話。
ぐんちゃん曇っていく回でしたね。響君が倒れ、友奈ちゃんも戦闘不能になる中、心無いネットの言葉がぐんちゃんをさらに不安定にしていきます。
次回はそんなぐんちゃんを救えるように頑張ります。
今回はちょっとゆゆゆいの事について悩んでいて執筆が長引いてしまいました。今のところゆゆゆいのイグナイトモジュール登場については"欲しい"派の人が多いのでね。オリキャラの設定に四苦八苦してました。
一応活動報告とかに未完成でも載せてみますね。