天羽響は奏者である 作:折り紙のユニコーン@UNICORNぬ
ゆゆゆいに関するアンケートは、イグナイトはオリキャラ有りでいいから実装。銀ちゃんは生存で決まりそうですね。もう少し待ちますけど。
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「では体に異常を感じたら、すぐに連絡してください」
「……はい」
「どうだった?」
パタリとドアを閉じ、浮かない顔をしながら千景が診察室から出てきた
そこに若葉から言葉が投げられる
今日は千景と若葉の精霊使用後の検査があったのだ。若葉の方が先に終わり、千景を待っていたらしい
「切り札を使うのは控えろだって」
「千景も同じか……」
千景からの返事を聞いて表情を暗くする若葉。現状は、決して良いとは言えない状況にあった
「行き詰まっているな……大社が情報の隠蔽は無理だと判断して、重傷の勇者が出たということ、最近の災害や事故が
迅速に敵を倒したいところなんだが……」
「あいつらは分かってないのよ……!!」
若葉の言葉に、怒気を滲ませて千景が吐き捨てるように言う
「だったら切り札を使わないでやる……!!それでどれだけ犠牲が出るか、身を持って知ればいいのよ……!!」
「千景、もう言うな」
「いいえ」
静止しようとする若葉とは対照的にひなたは立ち上がり、励ますように千景の手を取る
「少しでも気持ちが楽になるなら、私に聞かせてください」
ただ、そんなひなたの気遣いも今の千景の荒んだ心には届かない。握られた手を少し見つめて、振り払う
「……放っておいて………安全な場所にいる巫女には……関係ないことだわ……」
冷たい突き放す言葉。追い詰められた状況のせいか、それとも別の要因か。放たれた鋭い言葉の棘はひなたの心に傷をつける
それを見た若葉も立ち上がり、千景の肩を掴む
「おい!!苛立つからといって、人を傷付けていいわけではないぞ!!
苦しい状況だからこそ、私達は結束して――」
「また正論!?
言葉を荒らげ、言い争う2人。互いに抑制は効かず、相手の言葉を受け入れられない。そうなれば当然……
「こんな時に弱音を吐くな!!」
「――っ!!」
どちらかが限界を迎える
「うるさい!!」
ガシャン!
「あ……」
頭に血がのぼった千景が若葉を突き飛ばし、植木鉢を巻き込んで若葉がしりもちをつく
「つ……っ!!」
割れた植木鉢の破片で手の甲を切った若葉
やり場のない怒りと、それによってさせるつもりの無かった怪我を負わせてしまったことによる罪悪感。色々な感情がごちゃまぜになって、千景はそこから逃げ出した
「待て!!千景!!」
――悪くない……!
無我夢中で走り、寮へと戻る
――私は悪くない!!
自室に入り、重い足取りでベッドへと近づいていく
自分は悪くないと自分に言い聞かせながら
――さっきだってわざとじゃない。乃木さんがあんな言い方するからつい……
ベッドの前でへたり込み、ベッドに額を乗せる
「怪我をしたのも不幸な偶然よ……!!」
――そう……あなたのせいじゃない
突然、千景しかいないはずの空間でダレカが言葉を放つ。驚いた千景が顔を上げると、ベッドによつん這いになるようにして千景を覗き込んでいる人影
――!?
そして、それは千景の姿をしていた
――でも……あの怪我、不自然ではなかったかしら?
「え……?」
千景の姿をしたソレは静かに、ゆっくりと話しかける
――強いはずの乃木さんが簡単に倒れて、しかも謀ったように植木鉢があって
「何が……言いたいの……?」
ソレは囁く。立て続けに起こる辛い出来事で弱った心につけ込んで
――きっとわざとよ。わざと倒れて怪我をして……あなたを悪者に仕立てようとしたの
「なんの……ために……?」
ソレは嗤う。己の言う言葉が、まるで真実であるかのように
――正義の名のもとに、あなたを攻撃するため。彼女は昔あなたを傷つけていた連中と同じ
そうであると思い込ませる。千景の心を侵食していく
そして千景の耳元に口を近づけて
――乃木さんは、あなたの敵よ
そう、告げた
小鳥の鳴き声でパチリと目が覚める。気づけば朝だ
あたりを見回しても千景の姿をしたナニカはいない
「夢……?」
ベッドから顔を起こした千景がポツリと呟く。そして、携帯の着信を知らせるランプが点滅しているのを見つけた
「大社からメール……?」
~~~~~~~
千景が、己の姿をしたナニカと対面していたのと同時刻。病室で眠る響は、夢のようなものを見た
ゆらり、ゆらりと体が揺れるような感覚に包まれて響は目を開ける。まるで深い海に沈んでいるような感覚。光は届かずただ暗闇を漂っている
ぼうっ……と目を開けたまま漂うだけの響は、ふと視線をとある方向へと向けた
――誰かが、苦しんでる……?
どうしてそう感じたのかは分からないが、何故だかそんな気がした
――助けを、求めてる
――助けて……
誰かの声を聞いたような気がした。意識がはっきりしてくる
――寂しい……苦しい……
――ああ、この子は……
体に力を込める。
――いやだ。また愛されなくなるなんて、いやだ
――動け……目を覚ませ……
手を伸ばす。小さく漏れた一筋の光に向かって
――助けてよ……高嶋さん……天羽君……!
――助けを、呼んでいる……!!
「っ……!!……はぁっ、はぁっ……!」
目が覚めた。日差しの差し込む病室。誰かが御守り代わりに持たせてくれたのか、手にはギアが握られている
体を起こせば小さく痛みが走るが、今の響には関係が無かった。点滴やバイタルを観測する機器を外して地面に脚をつけ、立ち上がる
「うわっ……!」
だが、しばらく寝たきりだった体は言うことを聞かず倒れ込む
「痛え………はぁ……また鍛え直しだ……」
壁に手をつき立ち上がる
「とにかく……行かないと……」
窓を開け、苦労しながら縁に脚をかける。行くべき場所は、何でか分かっている。体は上手く動いてくれないが、ギアを使えば身体能力向上で何とかなる
一度深呼吸してから息を吸い、久しぶりの歌を歌った
「
「よっ………いってぇ…!くそっ、着地はイチイバルよりガングニールの方がいいな……
……さぁて、お急ぎ便だ。カッ飛んで行くぞ…!」
イチイバルへと変身する響。着地に失敗しながらも病室から抜け出し、技を発動する
腰のアーマーが変形していき、肩に固定具が付けられ巨大ミサイルが両肩に1つずつ展開された
《MEGA DETH FUGA》
狙った方向へ発射されるミサイル。それに飛び乗り、響は移動を開始した
~~~~~~~
若葉は包帯の巻かれた右手の甲を見つめて考え込む
――あの時私は千景の言動に対して、明らかに冷静さを欠いていた。感情の自制が効かなくなっている気がする
「若葉ちゃん」
そこへひなたが声を掛けてきた。その表情を見るに、あまりいい事では無さそうだと分かる
「今朝大社から連絡があって……切り札の影響について、検査結果と杏さんのレポートによって新事実が分かったそうです」
そうして告げられたのは、精霊の使用によるデメリット
「精霊を宿すと肉体だけでなく、精神的にもダメージを受けるそうです。その結果攻撃性の増加や自制心の低下などが起こり、最終的には言動にも大きな影響がでる……と」
「……では……千景や私は……」
思い当たる節があるどころか、昨日まさにその状態だったわけだ。知らずしらずの内に、精神に異常をきたしていた事実に少なくないショックを受ける若葉
「レポートといい、使わないように言っていたことといい、杏はそのことに薄々気づいていたんだろうな」
そう若葉が言ったタイミングで、携帯が鳴った
『ぐんちゃんそこにいる!?』
「友奈!?」
掛けてきたのは友奈。病院の電話コーナーから掛けている友奈の声は焦っており、まくし立てるように言葉を放つ
『精霊のこと聞いて、若葉ちゃんとぐんちゃんが心配で、でも抜け出せないから!それでぐんちゃんが電話に出なくて!!』
「落ち着け、友奈!!
精霊のことはこっちも聞いた。私は大丈夫だ。友奈こそ大丈夫なのか?」
『う、うん。体はもうほとんど治ってるよ。面会謝絶が長引いてるのは精神面の問題みたいだから』
――いつも前向きな友奈でさえそれほどの影響を受けるのか……
『お願い、もし何かあったら……ぐんちゃんを助けて』
「任せろ。移動先も大社から聞いてわかってる」
『え?ホント!?』
「ああ、すぐ向かう。千景は今、高知の実家に帰ってるんだ」
「……若葉ちゃん」
「どうした、ひなた」
「たった今、大社から連絡が………響君が、いなくなりました」
「なにっ…!?」
友奈を落ち着かせ、千景のもとへ向かおうとしたのと同時に、ひなたがスマホの画面を若葉に見せる。表示されているのはメールの画面。そしてそこに書かれていたのは、響が病室からいなくなったという旨だった
~~~~~~~
千景は現在、実家の前に立っていた
――『健全な心身育成のために両親を丸亀市に移住させ、一緒にくらしてはどうか。』
大社からのその提案はつまり……
「私に拠り所を与えるため……か」
――大社は
千景の姿をしたソレが千景の耳元でそう囁く
「……るさい……」
千景は頭を抱き、首を振って必死に否定する
「うるさい、うるさい、うるさい――!!村の人たちも両親も言ってくれた……!!」
家に入り、母の寝る部屋へと向う
「勇者である私が誇らしいって!!価値を認めて、愛してくれるって……!!」
襖を開けると、明かりもついていない暗い部屋で父親が項垂れていた
「なあ……千景……今さら家族3人で暮らす?……冗談だろう?」
「……でもそれは……大社が決めたことで……」
千景が来たことで顔を上げた父親は、以前より窶れていた。そして、千景の言葉に突然ヒステリックに叫びだす
「ああ、大社から聞いたよ!!でも母さんは入院させとくのが一番だろ!!確かに引っ越すのは大賛成さ!!すぐにでもこんな村離れたい!!今すぐ出ていってやる!!」
「一体どうしたのよ……」
驚くほどの剣幕でまくし立てる父親。千景が尋ねると自分の後ろに置いてあった紙の束をグシャリと掴んで千景に投げつける
「これだよ!!」
投げられた紙の束は撒き散らされ、書かれている内容もはっきりと見えるようになる
クズの娘はクズ
勇者は役立たず
村の恥さらし
この役立たず!!
死ね
とっとと倒せよ早く
「何……これ……?」
千景の顔から血の気が引いていく。書かれていたのは酷い内容だった。その全てが勇者を、ひいては千景を蔑み、罵倒する言葉
「毎日毎日家に投げ込まれていくんだ!全部お前のせいだぞ!!役立たずのクズめ!!」
挙句の果て、父親までもが罵倒を投げる
――勇者が苦戦するようになったらこの様よ
土居と伊予島と天羽は無能勇者!!
――命を削るように戦って……挙句の果てには命を落とす寸前までいって――
「その報いが……これ……?」
千景の中の、仄暗い感情が鎌首をもたげる。命を賭けた見返りが、この心無い言葉だというのか?
――ふざけてる
――そうだ、ふざけてる
――勇者の犠牲の上に暮らしているくせに
――その通りだ
――……許せない
暗い感情が膨らんで、耐えきれずに千景はそこから逃げ出した
――なぜ褒めてくれないの
――許せない
――なぜ讃えてくれないの
――許せない
――なぜ愛してくれないの
「きゃっ」
勢いよく玄関から外に出て、誰かがそれに驚いてしりもちをついた
――今までさんざん頼っておいて……
自身を虐めていた女子が、驚いたようにこちらを見ている。その手には、罵倒の書かれた紙切れが一枚
――状況が悪くなったら手のひらを返す
それを見て、千景の暗い感情が臨界点を超えた。明確に芽生える、人間への殺意
――私の価値を認めてくれないなら……私を愛してくれないなら……
――そんな奴ら、いっそのこと――
背負った鎌に手を掛けようとして……
「
歌が、響いた
「っ!」
反射的に歌の聞こえた空を見上げる千景。一瞬キラリと光が瞬き、そして何かが降ってきた
砂埃と大きな音を上げ、千景と女子の間に落ちた影。
女子はそれに驚いて逃げていく。ハッとしてそれを追おうとした千景の腕を、砂埃の中から伸びた腕が捕まえた
「駄目だよ、千景」
暫く聞いていなかった、懐かしさすら感じる優しい声
白と黄色を基調とした服に光沢のあるアーマー
「天羽……君……」
天羽響が、そこにいた
「ごめんね、遅くなって。寝坊しちゃってたみたい」
「天羽君、止めないで……!命を賭けたあなた達も……あいつらは侮辱したのよっ……!!」
響に制止されてなお、千景はその怒りを収められない。響は少し困ったように笑って、ぐいっと千景の腕を引っ張った
「っ……!!」
「でも、やっぱり駄目だよ。千景に誰かを傷付けて欲しくない」
響にふわりと抱き締められる。自分よりもずっと大きな体に包まれるように。少しだけ、千景の体から力が抜ける
「あ、天羽君……?」
「それに……千景が怒ったのって、きっとそれだけが理由じゃないでしょ?」
「………」
「どんなことでも千景を嫌いになったりしないよ。だから、教えて欲しいな。千景のこと。辛かったこと、悲しかったことも全部」
ゆっくり、優しく問いかける響に、千景もポツリポツリと話し始める。小さい頃から虐めを受けていたこと、勇者になったら皆が褒めてくれたこと、だから勇者の価値を示さなければならなかったこと、苦戦し始めた途端手のひらを返されたこと
その全てを、響は静かに聞いていた
「だから、私はあいつらが許せない」
「そっか……でもさ、千景がそんなことのために罪を犯す必要は無いよ。千景のことが好きな人は、もう沢山いるんだから」
「え……?」
「俺にとって千景は、すっごく大事で、大好きな人なんだ」
「……っ!!」
「友奈だっておんなじだと思うよ。杏、球子、ひなたも千景のことを好きなんだ。それに……千景は嫌いかもしれないけど、若葉だって千景のことをちゃんと仲間だと思ってる」
「乃木さんも……?」
「そうだよ。思い出してみて。前、千景が言ってたじゃん。若葉とゲームを協力プレイしたんだって。その時の千景、すごく楽しそうだった
丸亀城の戦いの時だって、模擬戦の時だって……皆、ちゃんと千景のことを想ってる」
千景は思わず言葉を失った。そういえば、そうだ。心が暗く沈んでいく中で忘れてしまっていた。皆ちゃんと千景のことを見て、普通の友達として、仲間として接してくれた。
そして何より、友奈と響から幸せを沢山貰っていた
「例え勇者じゃなくたって、千景は俺達の大事な仲間だ。誰になんと言われようと、それだけは絶対に変わらない……!
これじゃ、足りないかな?千景は、俺達よりも知らない人たちの言葉のほうが好きなの?」
「そんなことない!……私は……私は……!!」
涙が溢れる。ちゃんと、貰っていた。もう既に、満たされる場所を見つけていた
「皆と過ごす時間が、一番好きだった……っ!!
うっ……うぅ……うぁぁぁあ……!」
涙を流す千景の頭を撫でながら、響は優しく笑った
「千景!って、響!?どういう状況なんだ……?
というか、どうしてここに……!病院が大騒ぎしてたんだぞ!」
「ごめんね、若葉。なんか、行かなくちゃいけない気がして……」
暫く涙を流したところで、変身した若葉がやって来た
響を見て驚く若葉。当然だろう。昨日まで意識の無かった人間が突然いなくなったと思ったら、急いで駆けつけた仲間のところにいたのだから
「乃木さん……」
名残惜しげに響から離れながら、目を擦って若葉と向き合う千景
「千景……昨日は、すまなかった」
「いいわ……私も言い過ぎた……ごめんなさい」
「2人が仲直りできて良かった。……あと、若葉はそれを言うためだけに来たわけじゃないでしょ?」
「ああ……千景、何か問題とかは、無かったか?」
「ええ、天羽君のおかけでね」
「よかった……精霊のデメリットを聞いて心配してたんだ。友奈にも託されたしな」
「そう、高嶋さんにも心配をかけてしまったのね
……乃木さん、まずは精霊のデメリットについて聞かせてくれる?」
「ああ、どうやら精霊を使うと肉体だけでなく精神的なダメージも追うらしくてな。そのせいで攻撃的になってしまったりするそうだ」
「なるほど……なら、私達が昨日のようにカッとなってしまったのも……」
「精霊の影響だろうな」
「上里さんにも、酷いことを言ってしまったわね……後でちゃんと謝らないと……」
「……ところで……」
「何?」
「さっきまで響と抱き合っていたのは、どういう状況だったんだ……?」
「えっ!?えっと、それは……その……」
精霊のデメリットを聞いていた時の真剣な表情から一転、若葉も疑問に焦りと照れが混ざった反応をする千景。ここは助け舟を出そうと響が苦笑いで答える
「千景が元気なかったから励ましてたんだ」
「そ、そう!そうなのよ」
「そうか」
響の説明に首を縦に振る千景。若葉も普通に納得してくれた
「はぁ〜……っ……」
「あ、天羽君!」
ふと、ぐらりと響の体が揺れ、ギアが消える。そのまま膝から崩れ落ち、気付いた千景に支えられる
「おい響!大丈夫か!?」
「はは……悪い。目が覚めてから気合でここまで来たから……安心したら力が抜けてな……」
「…まったく、無茶をして……」
同じく若葉も膝をついて響の体を支える。響は苦笑いで誤りながらぐでっと2人に体を預けた
いかがだったでしょうか。第15話。ぐんちゃんご乱心をインターセプトで救済です。これで勝ったも同然ですね。3人を救済したので次回から大分オリジナル路線になってくると思います。
うまく書けるか心配ですけど、頑張ります。
それでは皆さん、またお会いしましょう。