天羽響は奏者である 作:折り紙のユニコーン@UNICORNぬ
えー、お待たせしました。17話です。タイトル通りほのぼの回ですね。
棗ちゃんと雪花ちゃんのアンケートは救出が大多数ですね。次あたりで救出作戦することにします。
お気に入り件数が150を超えていました。驚いたのと同時にとても嬉しいです!初投稿の処女作であるにも関わらず、考えていたより多くの人に読んで貰えていることに感激です!
皆さんが1人でも読み続けてくださる限り、ユニコーンも頑張って投稿しますので、これからもよろしくお願いします!
お気に入り登録してくれた方、ありがとうございます。
誤字脱字、アドバイスなど感想お待ちしております。
「くぁ……っふぅー……」
「天羽君があくびなんて珍しいわね。どうしたの?」
「ああ、昨日は資料の解析とシンフォギアのメンテでつい徹夜しててさ。他のメンバーの適性調査の機材の調整もあったし……」
前回の戦いから数日、教室の席に着いた俺はあくびをしながら背を反らす。隣の千景に話しかけられたので、顔をそちらに向けて訳を話す
複数人が同時に起動したことによって異常が発生していないか、勇者型ギアに変化したことでいつもと変わった部分はないかを中心に調べてみたが特に異常は無し
この調子なら勇者全員で使っても問題ないだろう
適性調査に関しては、準備だけ進めておいて友奈が戻ってきたら纏めて全員やることにした
「なあなあ響!そのシンフォギアの適性?ってやつがあれば、タマもたま……じゃなくて、また戦えるんだよな!」
俺の言葉が聞こえたらしい球子がこちらに来て俺の机に身を乗り出す
「そうだな。球子に適性があったら、シュルシャガナを渡そうと思う」
「えっ!?」
「ということは、タマっち先輩が先日の響先輩と同じ変身バンクをするんですか!?」
うわビックリした。なんか杏が食い付いてきたぞ……
でも、そうだなぁ……見た感じ千景は
「あー……多少違いはあるだろうが、多分そのはず。千景の変身は俺の変身とほぼ同じ動きだったし……」
「絶対かわいい……見なきゃ……」
「杏も一緒に変身するだろうから、見る暇無いぞ」
「そ、そんなあ……」
杏ってこんなキャラだったか……?いや、まあいいけど。心に余裕が出来てきただけかもしれないし
「あ、あの……天羽君?」
「ん?」
「土井さんにシュルシャガナを渡してしまうの……?」
すると今度は千景が、なにやら寂しそうに聞いてくる。ふむ?よく分からないけど、球子に合いそうなのがシュルシャガナだけなので仕方ない。他のメンバーの分も考えると、俺はアガートラームか
「ああ。球子の武器は旋刃盤だろ?シュルシャガナの丸鋸が一番形が近いからな。俺は他のを使うよ」
「……そう……残念だわ……」
「……?」
「おっはよー!!」
ガラリと扉が開き、友奈が入ってきた。ニコニコしながらくるりと一回転して敬礼のポーズをとる
「高嶋友奈、ただいま戻りました!!」
「高嶋さん!」
「よう、友奈。元気そうでよかった」
「ぐんちゃん!響君!おはよー!私はもうすっかり元気だよ!」
素早く友奈の元へ向う千景に追従して俺もそっちへ向かう。若葉達も友奈の元へやって来た
「友奈、退院したのか」
「うん!入院してて鈍っちゃったから、皆後で訓練に付き合って!」
「ああ、構わないぞ」
「皆さん、友奈さんの回復記念に1枚撮りませんか?」
「もちろん!」
「よーし!じゃあ全員で並ぼう!タマはあんずの隣!」
「もう、タマっち先輩ったら……友奈さんの回復記念だから、友奈さんが真ん中のほうがいいですよね。」
「では前列は3人、後列は4人だな。私とひなたも後ろに回ろう」
「はい、若葉ちゃん」
「じゃあぐんちゃんと響君が私の隣だね!」
「う、うん……」
「りょーかい」
「えーっと、ではタイマーを設定して……はい、では皆さん行きますよ」
ひなたが携帯を机の上に立てかけ、タイマーを設定してこちらに戻って若葉の横に陣取った
よーし、ピースでもして待ってるか
シン……
「……あれ?」
「撮られないな……」
「あら?おかしいですね……」
少し待っても何もないことに首を傾げる面々。ひなたが手にとって確認すると、すぐに原因は分かった
「あ、すみません。メモリがいっぱいみたいです」
まあ、ひなたはめちゃくちゃ沢山若葉の写真撮ってるからな。そうしてひなたは手持ちのメモリカードを取り出して……
「空いてるカードは……」
――!?
いや、多っ!?多くないか!?……多分、全員が驚いた。ひなたがザラリと広げたのは何十枚もあるメモリカードだ。……もしかして、コレ全部若葉の写真か…?
「すごい量!!」
「コレ、もしかして全部若葉の写真なのか……?」
「ええ、まあ全てではありませんが……大体が若葉ちゃんの写真ですよ。赤ん坊の頃の若葉ちゃんのもありますからね!」
「え!?」
友奈と俺の言葉にツヤツヤした笑顔で答えるひなた。顔を赤くして驚く若葉……って、撮られてる本人も知らなかったのか
「そんなものどうやって……」
「もちろん若葉ちゃんの家のアルバムをすべてデータ化して……」
「いつの間に!?」
「昔から若葉さんに関わることになると
「こりゃタマげたぞ……」
目を輝かせ、だらしなく笑いながら若葉のアルバムを漁るひなたの姿が想像される。杏と球子も苦笑いだ
「……あら?この色の違うカードは何かしら?」
「ああ、それは最近のものですね」
「最近?」
「はい」
千景が見つけたカードを受け取り、携帯に挿し込んで画像を開いて全員が覗き込む
「あ、これ……
最初に映ったのはまだ小学生だった7人で集まって撮った写真だった
「まだみんな小学生だったんだよね」
「3年前か……懐かしいな。」
「タマ、響の変な自己紹介はハッキリ覚えてるぞ!」
「変って……失礼だな球子。アレは俺の仲良くなるための第一歩だ」
「ああ……あの個人情報を垂れ流す自己紹介か……私もアレには驚いたな」
「アレは個性的な自己紹介でしたね……」
「……ええ、印象深い自己紹介だったわ……」
「皆まで!?」
「物語の主人公みたいに非日常的な自己紹介で私は好きですよ?」
「私も、ステキな自己紹介だと思うよ!」
「俺の味方は2人だけだな……」
若葉の言うとおり懐かしいな。ここに転校してきた時に立花響流自己紹介をしたのはいい思い出だ。なんか皆は変な挨拶だと思ってたらしいけど
しかし、俺も3年で随分背が伸びたなぁ……最初は友奈と同じくらいの身長だったのに、今じゃ俺のほうが19cmも大きい。成長期ってやつだな
画面がスライドされて次に映されたのは若葉とひなたが、目を輝かせながらうどんを食べる俺達を眺めている写真だ
「これはおすすめの手打ちうどん屋に行った時だな」
「さすが本場。衝撃の美味しさだったよー」
「四国外出身の俺達も、今じゃ立派なうどん党だしなぁ……」
初めて本場のうどんを食べた時の衝撃は凄かった。今まで食べたどのうどんよりも美味かったからなぁ……やっぱ本場ってのは格が違ったな
次に進む画面。眠たげな目をした杏が球子に背負われている写真だな。これはたしか……
「あ、これあんず行方不明事件の時のやつだよな!」
「……ああ、伊予島さんがいつまで経っても戻って来ないって大騒ぎしたあの事件ね……」
「みんなで必死に探し回りましたね」
「外で本を読んでいるうちに寝てしまうとは、杏らしいな」
「うぅ……その節はご迷惑をおかけしました……」
そうそう、これは杏が出掛けたっきり戻ってこなくて全員で探し回ったんだった。結局今若葉が言っていた通りのオチだったんだよな。皆で思い出して笑っていると杏は頬を染めて縮まってしまった
「あ……」
「……どうしたの高嶋さん?……これは……」
ヒョイと画面をスライドさせた友奈の漏らした声に、千景も画面を覗く。その写真は千景と友奈がクリスマスツリーの飾り付けをしている場面だった
「これ……」
「まだ千景が1人でゲームばかりしていた頃だな」
「多分、初めてクリスマスパーティーをした時だよな」
「うん。この時のことがきっかけで、私とぐんちゃんは仲良くなれたんだ」
【3年前】
「クリスマス……?」
「そう!!みんなでパーティーするの」
首を傾げる郡に高嶋がニコニコしながら腕を広げて話しかける
「クリスマス……とか、よく分からない。家では……そういうのやったことないから……」
対する郡の表情は暗く、目を伏せている。……なんか、闇が深そうな雰囲気だな
「んー……クリスマスっていうのは……おっきな木を飾り付けて、ケーキと鳥を食べて、帽子をかぶってパーンって鳴らすの!!」
郡の言葉に高嶋が少し考えて説明する……って、分かりにくいな説明。もしかして説明が下手なのか高嶋は
「帽子に鳥に……パーン…?何それ怖い……」
ああ、絶対理解してないよコレ。なんかちょっと怯えてるぞ
「高嶋、説明が下手だぞ」
「うっ……と、とにかくやってみようよ。ね?ね?」
俺の言葉に胸を押さえる友奈。しかしめげずに郡にズイと迫る
「……う、うん……」
結局、郡は押し切られてしまうのだった
そして、全員でパーティーの準備が開始された。皆は飾り付けていき、俺と上里で料理をする。乃木が1人で黙々と黒板に字を書いていたり、料理を見て涎を垂らす土井を伊予島が諌めたり、ツリーのてっぺんの星飾りを高嶋に渡された郡が取り付けたりと、順調に準備は進んでいく
料理を運ぶときにちらりと郡を見てみると、柔らかい笑顔を浮かべていた。ちゃんと楽しんでるようで良かった
準備が終わり、パーティーが始まって皆が料理を食べている中、高嶋が郡に話しかける。一応、俺はそれなりに地獄耳だから話の内容も聞こえてくる
「ぐんちゃん。私、ゲーム買うから今度一緒に遊んでくれる?」
「……協力プレーができるソフト……あげるわ」
「いいの!?」
明るく話しかける高嶋に、郡が少し頬を染めながら応じる
「……クリスマスプレゼント」
「じゃあ私もぐんちゃんになにかあげるね」
「うん…ありがとう。あと……私の名前、
「んふっ…!」
……よかった、笑っちゃったけど聞こえてなさそう。郡の言葉に、笑顔で話をしていた高嶋の表情がピシリと固まった。冷や汗をかいているのも見える
まあ、間違えた名前で呼び続けてたんだし、そうもなるか
「そうだったの!?ゴメン!!」
「ううん……いいの。高嶋さんだけは……そう呼んでいいよ」
慌てた様子の高嶋に、郡は微笑むのだった
「あれからもう3年も経つのね……懐かしいわ」
「結局その後もずっと、ぐんちゃんって呼び続けてるなぁ……」
「私はもうその呼び方に慣れてしまったから、それ以外の呼び方で高嶋さんに呼ばれたら……ちょっとむず痒いわ」
「えへへ、私もぐんちゃんはぐんちゃんで慣れちゃった」
友奈と千景が顔を見合わせて微笑む。そして、ひなたが画面をスライドして――
「ん、これは俺が千景と仲良くなったときの……」
――びしょびしょに濡れて子猫を抱えた俺と苦笑いの千景の写真が映っていた
【2年前】
「あ……雨だ……」
俺は服を買うため外出をしていた。適当にパーカーやTシャツを選んで買えたのはいいが運の悪いことに店を出ると雨が降っていた
「天気予報は晴れだったのになぁ……まあ、予報は予報か。いやー、持ってて良かったー」
仕方がないと気を取り直し、カバンから折りたたみ傘を取り出す。自分が折りたたみ傘は常備していないと何となく不安になるタイプだったことに感謝しつつ、傘を広げて帰路に着いた
「〜♪〜♪」
歩いているとゲーム販売店があって、その入り口に見知った顔を見かけた
「あれ?郡だ」
長い黒髪に、見慣れた制服。郡だ。状況を見る限りゲームを買いに来たが雨が降り出して途方に暮れているってとこだろう
「おーい、郡ー!」
「……!……天羽……君……」
名前を呼びながら近寄ると、少しビクッとしてこちらに気がついた
郡は愛想が無く冷たく見えるが、悪い子ではない。人付き合いが苦手なだけで根は優しいことはすぐに分かった
ただ……俺を見る目にちょっと怯えたような色が混じっているあたり、もしかしたら………まあ、下手に詮索することでもないし、ゆっくりでも仲良くなっていこうと思う
「郡も買い物か?」
「……う、うん……その……新しいゲームが……入荷してないかと思って……」
「いいの見つかった?」
「……ううん……新しいゲーム、入荷してなくて……」
「そっか。……傘、持ってる?」
「……持ってない……」
「まあ、そうだよな。じゃないとここで待ってる理由が無いし。……よかったら、俺の傘に入ってくか?」
「……いいの?」
「おう。1人で帰るより、2人で帰ったほうが楽しいしな」
少し話して、郡を傘の内側に入れることにした。2人で並んで歩く。傘を郡の方に寄せているので俺の肩は少し濡れるが、郡が濡れるよりいいから気にしない
「郡はさ、どんなゲームが好きなの?」
「……え……?」
「えっ?だっていつもゲームしてるじゃん。俺もゲームしてるからさ、郡のやってるゲームやってみたいなーって」
「……えっと……いろいろなジャンルのゲームをやってるから……どれが好きっていうわけじゃないんだけど……おすすめは……このモンスターを狩るゲームかな……前、新作が出たの……」
「へー、新作出てたんだ。買ってみようかな。……っと!」
ゲーム関連の話で郡と盛り上がっていると、車が水溜りに入って飛沫があがった。咄嗟に郡を庇うように体が動く
バシャッ!!
「うわぁ……ツイてねぇな……」
「……だ、大丈夫……?」
「おう、大丈夫大丈夫。このくらい平気、へっちゃらだ」
背中に盛大に水がかかり、生地がくっついてちょっと気持ち悪い。ただ、郡は濡れてないようで良かった
「……あの……その……ありがとう……」
「ん?……ああ!気にすんなよ」
郡からのお礼を受け取って、気を取り直して歩き始める。雨は依然として振り続け、弱くなる素振りは見せない
「……あ、猫……」
「え?あ、本当だ。降りれなくなったのか?」
ふと、郡が木の上に子猫がいるのを見つけた。雨で冷えているのか小さく震えているが、降りてくる様子は無い
恐らく登ったまま降りられなくなったのだろう
「よーし……郡、これ持っててくれ」
「……え?う、うん……どうするの…?」
「俺が登って助ける」
「……濡れちゃうよ……?」
「いやー、もう濡れてるから変わらないさ」
郡に服の入った袋を渡し、袖を捲ってひょいひょいと木を登る。じいちゃんの修行で木登りもしたことあるからな。このくらいお茶の子さいさいだ
「よーし、もう大丈夫だぞー………ヴワー!……おわー!?」
子猫の元に辿り着き、抱き上げると顔面を引っ掛かれ、運の悪いことに足を滑らせた
「……あ、天羽君……!」
「ぅおー……痛たた……ひえー、冷たい……今日の俺呪われてるかも……」
木から転落し、なんとちょうど木の下にできていた大きめの水溜りに落ちた。もともと濡れていたがさらに濡れ、なんなら泥まで付いた
急に降り出した雨といい、飛沫やらなにやら、今日の俺は運が悪いな……
「……怪我……してない……?」
「ちょっと擦りむいただけかな」
不幸中の幸いか、大した怪我はしていないので子猫を抱えたまま立ち上がる。元気アピールでふんすと胸を張ると、郡はくすりと笑ってくれた
「ふふっ……頭に葉っぱが付いてる……」
「えっ、マジ?」
「……うん……取ってあげるから、じっとしてて……」
「お、おう……」
「……よし……」
「サンキューな、郡」
「……気にしないで……あと、名前でいい……」
「!そ、そうか。よし、じゃあ行こう千景」
「……うん」
「響君がびしょ濡れの泥だらけだったからビックリしたなぁ……」
「そうだな。結局次の日は風邪を引いてしまっていたしな」
「あれから千景とよく話すようになって、友奈とももっと仲良くなったんだよな」
「そうね……あの日は、天羽君が本当に……周りとは違う変わった人だって分かった日だった」
「な、なんか言い方が気になるけど……他の人とは違う頼れる男だって思ったから仲良くなってくれたんだよね!?」
他にも写真を見ながらワイワイ盛り上がっていると、ふと若葉がポツリと呟いた
「今、こうして全員が揃っているのが私は嬉しい」
「ええ、そうですね若葉ちゃん……危険なお役目の中でも、誰一人欠けることなくいられるのは……とても喜ばしいことです」
「これからの戦いも、全員なら生き残れますよ……きっと」
「そうだな、あんず!タマだってもっとがんばるぞ!」
全員が顔を見合わせ、明るく笑う。皆がいれば怖いものは無い。この先の戦いだって、きっと乗り越えられる
この日は結局、皆で思い出話に花を咲かせて一日が過ぎていった
「ん……んん……」
その日の夜、俺は夢を見た
白と水色の衣装を纏った長身の勇者と、黒い勇者の槍を持った勇者を
『……響……今日はいい魚が採れたんだ……食べるか?』
『ちょいちょいビッキー、買い物手伝ってくれない?』
出会ったことのない筈の2人。でも、どこか懐かしいような不思議な気持ちを抱く
君達は誰なんだ?俺は、君達を
でも多分、この夢には意味があるんだろう。きっとこれは神託だ。この2人は……生きている
いかがだったでしょうか、第17話。
ぐんちゃんを救った事で、痕跡を探すイベントは無くなりました。代わりに思い出話回にしたのですが、やっぱりオリジナル展開は難しいですね。
何となく息抜きで書いたもう一つの小説が伸びて戦々恐々としてました。よければ見てみて下さい。
それでは皆さん、またお会いしましょう。