天羽響は奏者である   作:折り紙のユニコーン@UNICORNぬ

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勢いで続いた2話目です。
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拙く、更新も不定期となりますが、最後まで書けるように頑張ります。

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2話 戦いの予兆、crescendo

「ん……もう朝か……」

 

 

 朝日が上り、少し明るくなった頃に目を覚ます

 寝ぼけ眼を擦りながら洗面所へ向かい、顔を洗って口をゆすぐ

 朝食を食べて制服に着替えれば準備は完了だ。ベッド横に置いておいた鞄を掴み取って外へ出る

 

 

「今日も快晴っと。いってきまーす」

 

 

 あの日(怪物の襲来)から3年経った

 『バーテックス』と名付けられた化け物達は世界中に出現し、人類を襲った

 既存の兵器が通用しない奴らに人類は為す術もなく蹂躙され、俺達の日常は奪われた

 その蹂躙から逃れられたのはここ四国や長野の一部など限られた地域だけらしい

 

 この限られた地域が無事なのは、なんと神様が結界を張ったからなのだという

 土着神の集合体である神樹がこの四国を守り、生活を助けているのだとか

 

 

 そんな中、ごく少数の少女達が特殊な力を発揮した

 ここ四国にも5人存在する、神の力を使いバーテックスを倒すことのできる『勇者』

 そして、神の声を聞くことのできる『巫女』

 

 彼女達勇者は唯一バーテックスを倒すことのできる希望

 神から力を借り受け、生き残った人類を守護する守護者だ

 政府も勇者達を支援する方針に舵を取ることとした

 神樹を信仰し、勇者を支援する組織『大社』が設立され、バーテックス対策の全権限が委任されたのもその一環だ

 そして勇者を集め、さあ戦いに備えさせよう……というところで神託が下った

 

 男でありながら神の声を聞く『巫女』の素質を備え、あろうことか神の力を借りずにバーテックスを倒す想定外が登場したのだ

 それがとびきりのイレギュラーである『シンフォギア装者』―――つまり俺だ

 

 まあ、だからといって何か特別なことがあったと言う訳ではないが

 神樹からの神託により、俺も勇者の枠に当てられ協力することとなった

 

 

 真面目なリーダー気質の中学2年生、勇者 乃木若葉(のぎ わかば)

 若葉を支えるおっとりとした同じく2年生、巫女 上里(うえさと)ひなた

 小さくても元気で活発な2年生、勇者 土居球子(どい たまこ)

 大人しく弱気だが物知りな1年生、勇者 伊予島杏(いよじま あんず)

 明るくポジティブなコミュ強の2年生、勇者 高嶋友奈(たかしま ゆうな)

 一見冷たいようだが実は繊細な3年生、勇者 郡千景(こおり ちかげ)

 好きなものは歌とご飯の黒一点な3年生、装者 天羽響(あもう ひびき)

 

 俺を含めたこの7人が世界の命運を握っているメンバーだ

 

 

 さて、情報整理はこんな物でいいだろう

 俺が今向かっているのは丸亀城。大社が勇者の為に改造し、学校として使っている場所だ

 

 

「最初は城を学校にするとかマジか。とか思ったけど、3年も通えば慣れるもんだな」

 

 

 城内の廊下を歩く。外観は立派な城なのに、内装はちゃんとした学校になっているのだから驚きだ

 この時間だともう全員揃っているだろうか

 

 

「今日も勉強が終わったら千景とゲームしよっと」

 

 

 俺だって真っ当な男子なのだからゲームくらいプレイする。そして、ゲーム好きで話が合ったのが千景だ

 実は千景は相当な腕前のゲーマーなのだ。千景が1人でゲームしているのはちょくちょく見かけていたが、仲良くなって一緒にプレイするとその圧倒的なプレイスキルに戦慄したものだ

 最近は友奈も交えて3人で狩りゲーをやったりしている

 

「こ―な――のブツ、今すぐ――だぁっ!」

 

「――……!タマっち―ん!?――ないでくだ―い!」

 

「むしろもぐ!」

 

 

 なんか騒がしいな。教室の扉が見えたところで中からワイワイと声が聞こえてくる

 

 

「皆、朝から元気だな。おはよ……う……?」

 

 

「ひゃぁぁぁあ!」

 

 

「えぇ……?」

 

 

 ガラリと扉を開けて、挨拶をしようとして固まる

 扉を開けた俺の目に飛び込んできたのは、ひなたの胸を凄い形相で揉みしだく球子の姿だった

 下世話な話になってしまうが、ひなたのスタイルは中学生とは思えないほど抜群だ

 数秒たっぷり思考停止した後、微妙な表情で顔が固定される。こっちまでちょっと恥ずかしいし、なんか気まずいタイミングで来てしまった

 

 

「お前ら、そういう事は家でやれよ……!」

 

 

「家ならいいんですか……?」

 

 

「落ち着け土居!」

 

 

 ツッコミを入れる杏と、球子を抑えにかかる若葉を尻目に教室の後ろに逃走

 ちなみにひなたに襲い掛かっていた球子は小学生と間違えられる程のぺったんボディである。悲しいな

 

 

「おはよう、天羽君」

 

 

 椅子に座り、荷物を机の横にかけた所で挨拶された

 ガタリと隣の席に座ってこちらに声をかけるのは千景だ

 

 

「おはよう、千景」

 

 

 俺も千景の方を向いて挨拶を返す。ちょっと微笑んだ千景は俺と反対の隣の席を見て、その席の主がいないことに少し寂しそうな顔を浮かべる

 

 

「おはよーごさいまーす!」

 

 

 そして教室に響く元気な挨拶

 千景が表情を明るくしてパッと振り返る。……分かりやすいなー、千景

 

 

「よかった!遅刻じゃない!」

 

 

 息を切らしながら教室に駆け込んできたのは友奈だ

 千景がここまで分かりやすく喜ぶのはゲームの事か友奈の事くらいなのだ

 

 

「おっはよー!ぐんちゃん!響くん!」

 

 

「おはよう、友奈」

 

 

「おはよう……高嶋さん。遅かったね」

 

 

「格闘技のテレビ見て練習してたら夜ふかししちゃって……」

 

 

 てへっ、と笑いながら昨日のことを話す友奈

 友奈は格闘技を習っており、勇者の中でもトップクラスの戦闘力を誇る

 俺も友奈とならいい勝負になるから模擬戦ではよく対戦している

 

 

「体を動かすのはいいけど夜ふかしはあんまりよくないぞ。今日はちゃんと寝ること」

 

 

「はーい!でもでも、凄かったんだよ!私興奮しちゃった!ほら、縦拳!回し蹴り!」

 

 

 俺の言葉に元気に返す友奈だが、昨日のテレビを思い出して技を繰り出し始める

 拳を振り回してるくらいまでならよかったが、脚を上げて蹴りまでし始めたのでびっくり

 ひらりと揺れるスカートの裾に目が行きそうになって……

 

 

「バッ……カ!お前ホント馬鹿!」

 

 

「高嶋さん……天羽君もいるのだし……あんまり足を上げすぎるとパンツが……」

 

 

 咄嗟に後ろを向く。千景も少し顔を赤らめて注意する

 友奈もハッなって顔を赤くしながらスカートの裾を抑えた

 

 

「ごめんごめん。えへへー」

 

 

 友奈と千景が笑いあってるのを尻目に溜め息を吐き、伸びをする

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

「授業が始まるぞ。みんな、席に着こう」

 

 

 予鈴と共に若葉から呼び掛けが飛ぶ。……いつも思うが、若葉って学級委員長みたいだな

 

 

「了解!リーダー!」

 

 

「"暫定"だがな」

 

 

 この教室のメンバーは7人だけ

神の力を使う『勇者』が5人

神の声を聞く『巫女』が1人

そして、神によって生まれた『装者』が1人

 勇者達の集められた特別学校なのだ

 

 

 俺達は、神樹による神の結界(根の壁)に守られた箱庭の安寧の中で、戦いに備えた特訓の日々を過ごしている

 いつか、バーテックス達を倒して俺達の世界を取り戻すために

 

 

 

~~~~~~~

 

 

 

「はぁー……やっと飯だー……!」

 

 

「あはは。響くん、授業の途中でお腹鳴ってたもんね!」

 

 

「かなり大きい音だったわ。教室中に響いていたんじゃないの?」

 

 

「バッチリ私のところまで聞こえてましたよ。響君のお腹の音」

 

 

「まるで虎の唸り声のようだったな」

 

 

「ちゃんと朝飯は食べてきたんだけどな」

 

 

「うとうとしてたら響のお腹の音で起こされてタマげたんだからな!」

 

 

「それはタマっち先輩が悪いんじゃ……」

 

 

 時間は過ぎて昼時

 俺達は丸亀城の傍の食堂へ赴いていた。当然昼食の為だ

 若葉の提案で全員で昼食をとる決まりになっているので纏まって移動する

 道中俺の腹の音を話題に盛り上がってしまった

 確かに4時間目の途中で空腹を訴えていたが、まさか教室全体に響き渡っていたとは思わなかった

 ここまで話題にされるとなんか恥ずかしいぞ

 

 

 食堂に到着したので注文を頼み、順に出来上がったものを受け取っていく

 ちなみに俺はいつも最初に頼み最後に受け取っている。なんせ量が量だからな

 

 

「おばちゃん、釜揚げうどん大盛りで2つ。あと天ぷら盛り合わせとハマチのお刺身!」

 

 

 3年も四国で過ごしていたからか、今では俺もうどん派になってしまった。他の麺類も当然好きだが、うどんの魅力が凄まじく離れられなくなるのだ

 

 

「いつも待たせてゴメン」

 

 

「いや、構わない。全員揃って食べると言ったのは私だしな」

 

 

「皆で食べたほうが美味しいもんね!」

 

 

「それにしても相変わらずタマげた量だな……」

 

 

「ここからおかわりもするんですよね……見てるだけでお腹いっぱいになりそうです……」

 

 

 料理を受け取って席へ行くと皆が待っている状態なのが申し訳ない。若葉や友奈が気にしないように言ってくれるのはありがたい

 小説を読みながら食べようとする杏から小説を取り上げた球子が俺のご飯の量を見て微妙な顔をし、杏も苦笑いで同意する

 他の皆も苦笑いだ

 

 

「では全員揃いましたし、食べましょうか」

 

 

「そうだな。あまり話していると冷めてしまう」

 

 

「「「「「「「いただきます!」」」」」」」

 

 

 ひなたの言葉で若葉が場を仕切り全員揃って食べ始める

 ……うむ。いつ食べてもうどんがうまい

 

 

「にしてもさー。毎日毎日訓練訓練

 なんでタマたちがこんなことしないといけないんだろーな」

 

 

 ご飯を食べている最中に突然球子がそんなことを言い出した

 

 

「敵に対抗できるのが勇者だけだから……」

 

 

 苦笑いの杏が答えるが、なんだか球子の表情は優れない

 ふーむ……以前まで戦いなんて縁の無い普通の学生だったんだ。やっぱり皆には不安があるんだろう

 

 

「でも普通中学生って言ったら友達と遊びに行ったり、恋……とかしちゃったりさ。……そういう生活をしてるじゃん」

 

 

 確かにそうだ。特別な力があるからと集められ、普通とは縁遠い日常をすごしているのは俺達たった7人だけなのだ

 俺達だけが戦いへの不安と重圧を受けている

 それに球子は杏と仲が良く、彼女の心配もしている。まるで妹のように大事に思っているんだ、危険なお役目で彼女が傷つくことを恐れているんだろう

 

 

「今は有事だ」

 

 

 そんな球子に対し若葉が言葉を並べる

 ……なんか、真面目な若葉の言葉だと気休めにすらならない気がする

 

 

「だからこそ神樹様を奉っている対バーテックス機関の『大社』が台頭し、戦う私達の為に丸亀城を改築して傍に寮や食堂まで提供してくれている

 授業で何度も聞いているだろう。我々が努力しなければ、人類は(バーテックス)に滅ぼされてしまう」

 

 

 やっぱり。違うぞ若葉そうじゃない

 今球子に掛けるべき言葉は、真面目な戦わなければいけない理由ではないと思うぞ

 球子だって戦わなければならないのは分かっているはずだ。分かっていても、不安だから納得できてない

 

 

「私達が人類の矛となって――「わかってるよっ!!」」

 

 

わかってるけd――もがっ!?もぐもぐ」

 

 

 インターセプトだ。球子が開いた口に天ぷらを2つ突っ込んで止める

 気まずい雰囲気だった皆も呆然としているが、今は関係無い。シリアスな雰囲気とか御免被るぞ俺は

 

 

「そんなに心配すること無いぞ」

 

 

 天ぷらを食べながらの俺の言葉に皆の視線が集まる

 さて……ここは1つ、元気づけてやるとしよう

 

 

「確かに、戦いになれば仲間が傷つくかもしれない

 戦場はいつだって何が起こるか分からないからな。命を落とすことだってざらにあるだろう。球子の不安も分かる」

 

 

「んぐっ。じゃあ、なんでそんなこと言えるんだよ……」

 

 

俺がいるから

 

 

「は?」

 

 

「え?今の聞こえなかった?俺が、いるからだって

 

 

「いや、そうじゃなくてだな!」

 

 

「俺が皆を守るよ。俺がいる限り絶対に誰も死なせないし、悲しませない。俺の歌はその為の歌だからね」

 

 

 自信たっぷりにニッと笑ってみせる

 根拠が無くたって自信満々で言ってやれば、何とかなりそうな気がしてくるものだ

 事実として、俺は皆を守るつもりだ。この世界に生まれた命として、勇者の一員として。そして、友達として

 バットエンドは嫌いだしね

 

 

「響……いいや!タマだって守られてばっかりなつもりは無いぞ!」

 

 

「そうだぞ天羽。私だって敵と戦う。そして世界を取り戻して見せる!」

 

 

 よしよし、いい感じ。良かった。俺、あんまり慰めるのとか得意じゃないから変な事言ってなかったか心配だっけど、だいぶ空気が前向きになってきたぞ

 重かった雰囲気が段々収まってくると、そこに畳み掛けるかのように援護が入ってきた

 

 

「ぷはーっ!ごちそうさま!今日も美味しかったー!」

 

 

 友奈だ。天然なのか見計らっていたのか。いつものお気楽オーラで重い雰囲気をぶち壊しにきた

 他の皆は微妙な表情だけど、俺的には助かる

 

 

「あれ、みんなどうしたの?」

 

 

 友奈も皆の微妙な雰囲気を感じたのか首を傾げる

 

 

「「「「はぁ……」」」」

 

 

「なんで溜め息!?」

 

 

「なあ、友奈」

 

 

「なになに?響くん」

 

 

 皆から溜め息をつかれて驚く友奈に声をかける

 笑顔でこちらを向く友奈に、1つ質問を投げた

 

 

「友奈はこれから起きるかもしれない戦いについて、どう思う?」

 

 

「え?うーん……大丈夫だと思うよ!」

 

 

「その心は?」

 

 

「みんなで頑張ればなんとかなる!!……ね?」

 

 

「だな!友奈、満点をあげよう!」

 

 

「よく分からないけど満点だ!やったー!」

 

 

 少し悩んだ友奈は、すぐに笑顔で答えてくれた

 ……うん、やっぱり友奈は雰囲気を明るくしてくれる

 俺と友奈の掛け合いで周りの雰囲気もすっかり明るくなって楽しい食事に戻っていく

 

 

「おかわり!いやー、いつも美味いな!」

 

 

「「「「「もう食べ終わってる!?」」」」」

 

 

 重い話の最中でも、それはそれとして食べる手は止めないのです

 

 

 

 

~~~~~~~

 

 

 

 

 そして、その日の放課後

 ――ついに俺達の戦いが始まった

 それは突然の事だった。大社から支給されたスマホが異常事態を知らせるアラートを鳴らしている

 そこに表示されているのは樹海化警報の文字

 直後に世界が光に包まれる。それが収まると視界に映るのは一面の木の根だ

 これが樹海化。バーテックスが攻めてきた際に神樹が展開する結界だ

 

 

「って、のんきにしてる場合じゃ無いな!皆と合流しないと!」

 

 

 スマホを見ればマップに皆の場所が表示されている

 すぐ近くに皆いるようだ。全力で走って合流する

 

 

「いた!ふぅ、合流できたー」

 

 

「天羽も来たか」

 

 

「一応チームだしね。ちゃんと合流しますとも」

 

 

「響君も合流できてよかった!私達も今来たところなんだ!」

 

 

「そうなんだ。じゃあ丁度いいタイミングだったかな?」

 

 

 どうやら若葉と他の4人が合流した直後だったようだ

 するとペタペタ木の根を触っていた球子が感心したように言う

 

 

「これが樹海化か……この結界で四国は守られてるんだよな」

 

 

「忘れないでほしい。その防御は絶対じゃない」

 

 

 若葉から樹海化についての補足が入る

 ……というか、今気付いたけど若葉だけもう変身してるな

 

 

「樹海が過度の損傷を受けると現実世界において災害や事故の形でフィードバックされてしまうし、長時間の樹海化で神樹様の霊力が枯渇すると霊力による恵みで自給自足している四国の人々が生活できなくなる

 みんなで協力して迅速に敵を打ち倒す必要があるんだ」

 

 

 詳しいな、若葉。きっとちゃんと勇者アプリの説明を読み込んだんだろう

 俺は読んでなかった。だってマップ以外使わないしな

 

 

「みんなって……戦えない人もいるんじゃないの?」

 

 

 千景が杏の方をチラリと見ると、杏はビクリと肩を跳ねさせて恐縮してしまう

 

 

「そんな体たらくで戦闘なんて――「郡さん、言い過ぎです」」

 

 

 必要以上につつく千景に若葉から注意が飛ぶ

 そして若葉の視線が杏へ向く

 

 

「伊予島も……怖いのはわかるがもうちょっと……」

 

 

「ごめんなさい……」

 

 

「もういいだろ。無理強いするなよ」

 

 

「すまない……」

 

 

 落ち込む杏を見て球子からインターセプトが入る

 若葉もあまり責めたつもりでは無かったようで、球子の言葉に落ち込んでしまった

 

 

「兵の士気高揚も指揮官の努め。リーダーの資質が足りてないのではないかしら?」

 

 

 続く千景からの言葉に若葉が更に落ち込んでしまう

 うーん、なんでこんなにギスギスするの?気まずいとかいうレベルじゃないぞ

 入り込むタイミングを見失ってしまった

 

 

「みんなっ」

 

 

 そこに割って入る明るい声。友奈!マジ救世主では?

 

 

「仲良しなのはいいけど、話し合いは後にしようよっ」

 

 

「「「「はぁ?仲良し?」」」」

 

 

 想像の斜め上の言葉に思わず3人と台詞が被る

 え、今の全然仲良くなかったと思うんだけど

 

 

「え……ケンカするほど仲がいいって……」

 

 

「「「違う!!」」」

 

 

「ええ!?」

 

 

「なんつーポジティブ思考……」

 

 

 それ、本当に天然でやってるのか?だとしたら凄まじい天然力だぞ

 

 

「で、でもさ。ケンカの原因(バーテックス)がそこまで来てる。ケンカするなら相手はあいつらだよ」

 

 

「確かに」

 

 

「言う通り……ね」

 

 

「……うん」

 

 

 凄いな友奈。すっかり喧嘩を丸めてしまった

 でも依然として杏の顔色はよろしくない

 

 

「じゃあみんな準備はいい?」

 

 

 ニッと笑った友奈がスマホを構える

 彼女達勇者はスマホにある勇者アプリを起動し、中央に表示される花のマークのアイコンをタップして変身するのだ

 

 

「みんなで仲良く、勇者になーる!」

 

 

 友奈の掛け声で若葉以外の4人がアイコンをタップし、変身する。だが変身できたのは3人だけだった

 杏のスマホは反応せず、杏は制服のままだ

 

 

「ご、ごめんなさい」

 

 

 瞳に涙を浮かべる杏が申し訳無さそうに謝る

 勇者システムは戦う覚悟が無いと起動ができない。……杏はまだ戦いへの恐怖が拭いきれていないんだ

 

 

「気にすんな。タマたちだけで十分だ」

 

 

「うん……」

 

 

 球子がすぐにフォローに入る。俺もちゃんと励まそう

 実際のところ、戦うのが怖いのは当たり前のことだし

 杏の近くに行って両肩に手を置き、安心させるように笑顔で話しかける

 

 

「ひ、響先輩……?」

 

 

「大丈夫。怖いのは当たり前だよ。みんな怖いって思ってるさ。俺だってちょっと怖いし」

 

 

「でも、それでもみんな変身して戦いに行くのに……」

 

 

「いいんだよ。俺はダメな時は逃げてもいいと思う」

 

 

「え……?」

 

 

「安心して。杏が挫けた今日は、俺達が守るから

 じゃ、俺も行ってくる」

 

 

 ポンポンと軽く肩を叩き、若葉達の元へ向かう

 

 

「天羽も早く変身したほうがいい」

 

 

「了解っと。それじゃ、シンフォギア初お披露目だ」

 

 

 胸元のペンダントを持ち、息を吸う

 杏が戦えない以上、遠距離攻撃のサポートは必要になるだろう

 ならば、使うギアは自ずと決まってくる

 

 

Killter Ichaival tron(銃爪にかけた指で夢をなぞる)

 

 

 聖詠に驚いた皆がこちらを見る中、フィールドエネルギーが展開された

 空中で落ちていくように赤い五線譜の輪を潜っていき、赤と白、そして黒のインナーを全身に纏う

 

 

「ハァッ!」

 

 

 体を丸めた状態から大の字に広げてインナーに付いている赤いクリスタルを弾き飛ばす

 それはビットのようなものに変形し、足元にレーザーを放っていく

 さながらレーザー式セキュリティのようになったそこに降りていくと、脚に触れたレーザーがまるでリボンのように絡み付き白のミリタリーズボンと踵にリボン型の装飾が付いたメカニカルな靴が装着され、太腿の辺りに半円状の浮遊パーツが現れる

 

 そのままリボンは腰から上にも流れ、赤い半袖のミリタリージャケットに変化

 腕にはクリスタルが飛来してガングニールのものよりも平たく角張ったアームガードとなる

 一瞬だけ見える内部のディスプレイに映る文字は『SG-r02 Ichaival』

 

 次いで腰の蝶々結びのような、小さい菱形と大きく細長い菱形のユニットが装着

 

 着地と同時にガングニールとは違う、ゴツゴツとした印象を受ける大きめのヘッドパーツが装着される

そしてアームガードが分離、変形し、ギアの主武装(アームドギア)である中折れ式の回転式拳銃へと姿を変える

 左手の指に挟むようにして持っている6発の弾丸を放り投げ、銃の回転式弾倉に込める

 

 

 銃を何度もスピンさせ、高く投げてキャッチ

 銃口を正面に向けて撃ち抜くポーズ

 

 

「バァーン!」

 

 

 そうして変身が完了した俺を見て、球子が思わずといった感じで口を開く

 

 

「話は聞いてたけど、ホントにタマ達の勇者とは違うんだな。突然歌い出すし」

 

 

「歌に関しては慣れてくれ。シンフォギアは歌わないと使えないんだ」

 

 

「響君の歌声とっても綺麗だね!」

 

 

「そ、そうか?まあ、ありがとな」

 

 

「なんだよ響。照れてんのか?」

 

 

「照れてねーよ!ほら、もう集中しろ!敵が来てんだぞ!」

 

 

「へいへい。よーっし、杏の分までタマが倒してやるからな!」

 

 

 ストレートな友奈の褒め言葉にちょっと戸惑った(断じて照れてない)が、球子のからからいをいなして敵の方を向かせる

 これが俺達の初陣となる。ちょっと締まらないが、あの日以来3年ぶりとなる戦いが幕を開けた

 

 




なんと2話目が投稿できたことに自分の事ながら驚いています。
そして、次回はイチイバルのギアの活躍予定です。
変身シーンにおいては、XVのイチイバルの変身シーンの醍醐味とも言えるおっぱいリロードをカット。だってウチの響君は男ですし。
「バーン!」の方は折角なのでやってもらいました。これは男でも似合うだろうと思ったので。

それと、あんまり目立たない決め事ですが響君は各ギアを使う際、本来の奏者の性格にちょっと寄ります。
これはギアを使い分ける上で、戦闘スタイルを切り替えるための暗示。スイッチのようなものです。
使用する人間によって形状が変わるはずのギアがXVの形状なのは、本人のギアに対するイメージと上の暗示が理由です。

拙いですが、これからも完結に向かって書き続けたいと思うので、どうぞお付き合いいただけると幸いです。
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