天羽響は奏者である 作:折り紙のユニコーン@UNICORNぬ
4話です。タイトルが考えつかない今日この頃。
足りない脳を絞っていきます。
この小説のロゴを作ってみました。
ちまちまやって気づけば合計12時間掛かってました。
ロゴにはジェネレーター使いました。周りのやつを自分で描いたんですが、燃え尽きました。やっぱ難しいです。
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お気に入り登録してくれた方、ありがとうございます。
アドバイスや誤字脱字など感想は歓迎してます。
「凄い騒ぎになってますねぇ……」
「勇者フィーバーだな」
教室にて、なにやら球子と杏が2人仲良く何かを見ていた
「何見てるんだ?」
少し気になって覗き込み、尋ねてみる
「新聞だよ、新聞!
机の上に置かれていたのはいくつかの新聞。しかしその全てに勇者についての記事が大きく掲載されていた
人類の希望と称された勇者達の初陣が勝利で終わったのだ。本当に希望なのかもしれないと世間も色づいているのだろう
俺は新聞を取っていない為に知らなかったが、そういえば今朝のテレビでも勇者について取り上げられていたことを思い出す
「新聞か……俺は取ってないんだよな。……あ、でもテレビでも勇者についての番組ばっかりだったな」
「そうそう。ほら、見ろよ。これなんか若葉のインタビューまで載ってるぞ。さすがリーダーだな!」
「からかうな。それも勇者の仕事のうちだ」
球子が新聞を持ち上げてインタビュー記事を若葉本人に見せる
対する若葉は振り返り、生真面目のお手本みたいな回答だ
すると若葉の視線がそのまま後ろへ。つまり友奈の席へと向く。そこにいつもの明るい友奈の姿は無く、空の席となっている
「友奈さんが心配ですか?」
いち早くひなたが声をかける。うーん。若葉の機微の察知についてはひなたを上回る人間はいないだろう。間違いない
「精霊を体に宿す『切り札』は身体への負担が大きいらしいからちょっと……な」
そう、前回の初陣で
精霊とは神樹様に蓄積された概念情報であるため、実質的に神の力を勇者の力の上から更に借りる状態となり、使用者へ負担が掛かるのだ
現在友奈は精霊の行使による後遺症が無いかの検査入院中なのだ
「ただの検査入院なんでしょう?
きっと大丈夫ですよ」
「……そうだな」
ひなたが安心させるようにそう言うと、若葉の表情も少しやわらぐ
そのタイミングで球子が教室にいないもう1人について尋ねた
「そういえば千景もいないけど。あいつも検査だっけ?」
「千景は特別休暇で高知の実家に帰ってるんだってさ」
この前千景から実家に帰省する旨を聞いていたので、球子の疑問には俺が答える
「そうなのか?」
「おう。この間言ってたからな。なんでも、母親の病気が悪化しちゃったんだと」
そう。千景の母親は病気を患っているらしいのだ
そして、その病名は……"天恐"
~~~~~~~
「……ただいま」
実家に帰ってきた千景は、寝たきりになった母にポツリと帰宅を知らせる
天空恐怖症候群――通称"天恐"
3年前のあの日以来、上空から襲来したバーテックスへの恐怖によって多くの人々が発症した精神の病
初期症状である空への恐怖心から、症状の進行に伴い徐々に日常生活が困難になり最後には記憶混濁や自我崩壊に至る
千景の母は、その病に冒されていた
「とうとうこんな段階まで悪化したのね」
自身が帰ってきても何の反応も示さない母を見て呟く
大分症状が進行しているようだ。母親の顔色は悪く、少し痩せてきている。食事すらマトモに採れていない証拠だ
そうして母親の様子を見ていると、隣の部屋のふすまが開き、父親が顔を見せた
「帰ってたのか、千景。久しぶりだな」
「……お父さんが一度戻ってこいって連絡してきたんでしょ」
「まあ、それはそうだが。母さんが専門の病院に移る前に……と思ってな」
「……何を今更」
目線をそっぽに向けて小さく吐き捨てる千景。そして、視線の先……先程父親が出てきた部屋にゴミが纏められたまま置きっぱなしになっていたり、インスタント食品が食べられたまま片付けられていない、言ってしまえば汚らしい様を見て顔を顰める
「……掃除くらいちゃんとして。臭いが酷いよ」
「あ、ああ
母さんの看病で忙しくてな。なかなか時間が作れないんだ」
目を逸らしながら返事をする父親を侮蔑の目で見ながら千景は心のなかで毒づいた
――何も変わってない
昔から家のことなんて何ひとつしようとせず、自分優先で責任感に欠けた父
そんな家庭を捨てて男と不倫し、"天恐"になってくるまで帰ってこなかった母
それでもずっと子供を押し付けあって離婚せず、
『あの親じゃ、ロクな大人にならないわよ』
周りの大人たちも
『あばずれー』『淫乱女』
学校の同級生たちも
誰からも疎まれ、蔑まれる存在
だから、私は周りから自分を切り離した
――何も感じない
やめて……
無価値な存在だから、傷つけられても仕方ないのだと
――何も、聞こえない
しずかにして……
自分に言い聞かせて
――何も、痛く ない
いたい……
――ナニ、も…
たすけてっ……
ぎりッ
無意識に、歯が鳴るほど強く食い縛っていた
千景はそのまま踵を返す
「どこへ行くんだ?」
「……ちょっと散歩に行くだけ」
父の声にぶっきらぼうに返して玄関へ向かう
――帰ってくるんじゃなかった。
はやく、はやく高嶋さんや天羽君に―――
ガラリと、玄関を開けると大勢の人が押し寄せていた
「おお、出てきたぞ」
「――え?………な……に?」
「ほんとに戻ってきてたんだ」
全て、見知った顔。この小さな村では、全員が顔見知り。掛けられた言葉も、全て覚えている。だが、今回の千景に掛けられる言葉はいつもとは違っていた
『キモいから息しないでくれる?』
「私たち友達だよね?恨んでないよね?」
――ああ
『お前に食わせるもんはねぇよ』
「食事する時はうちの店に寄ってくれよな」
――そうか
『薄気味悪い子ね』
「あなたはこの村の誇りよ」
――これは……
満たされていく。今まで全てを否定され蔑まれてきた千景の、認めてほしいという欲求が、願いが――歪な形で満たされる
正しく満たされたことの無い欲求は、明らかに手のひらを返したような言葉だとしても満たされ間違った方向へと捻れ曲がっていく
「皆さん。私は……価値のある存在ですか?」
「もちろんよ」
そしてそれは……脆く歪な、心の支えとなっていく
「だってあなたは、勇者だもの」
~~~~~~~
なんだか、故郷から戻ってきた千景の雰囲気が変わった
機嫌が良さそうというか、若干前向きになったというか…………ただ、なんか確固たる決意や信念を見つけたのではなく……こう、なんて言えば良いのだろうか?
まるで幼い子供が初めて誰かに褒められたことを、何度もそればかり頑張ってやるような、そんな感じがする
展開された樹海の中で、ふと俺はそんな事を思った
イチイバルのギアでいつものように援護メインの動きで行こうと千景の横で軽くストレッチする俺は、小さく首を傾げる
「実家から戻って早々、やる気十分だねっ」
そこへひょっこり出てきた友奈に、ギョッとしながら千景が病院について尋ねる。……あれ?友奈って検査とはいえ一応安静にしてなきゃいけない筈なんだけど……
「高嶋さん……病院は?」
「みんな戦ってるのに、お休みなんてできないよ!」
「抜け出したんだ……」
「友奈、お前病院の人に雷落とされても知らねぇぞ?」
「うっ、助けてくれたりは……」
「するわけねぇだろ。そうなったら大人しく絞られるこった」
くすりと千景が笑う。俺も友奈も話しながら千景がいつもより気負った様子が無いことに気付いた
既に戦場であるにも関わらず、ごく自然体で余分な力が抜けている。いいことだがいきなり変わりすぎてちょっと気になる
「お?今日は緊張してないね」
「なんか家でいい事でもあったのか?」
「ええ、ちょっと……ね」
そう笑う千景は、本当に嬉しそうだった
~~~~~~~
『ねえ……お母さん。私が勇者になって……お母さんは嬉しい?』
『……ええ。あなたを産んで良かった……愛してるわ』
ザシュッ!!
千景の鎌がバーテックスを一撃で切り裂き屠る
――勇者だからこそ私には価値がある
称賛され、愛される
もっと頑張れば、もっとみんなが好きになってくれる
遠くに見えるのは、1人敵軍へ突っ込んで殲滅していく若葉と、自身へ襲いかかるバーテックスを難なく返り討ちにしつつ他の勇者を援護し続ける響の姿
戦場において、やはりこの2人は突出した強力な戦力であるだろう。その2人…特に若葉に対抗心を燃やして鎌を振るう
そしてバーテックスを殲滅していく千景の前に現れたのは、まるで人の顔にも見える細長い進化体だ
口のような部分を開き、その中には充填されているエネルギーのようなものが見える
「……しまっ……!!」
口の中のエネルギーが一瞬光る
そして……
ヒュガガガガガガ!!
千景へ光の矢のようなモノが降り注いだ
――イヤだ……!無価値な自分には絶対に戻らない!!
顔を上げて進化体を睨みつける千景。その胸を矢が貫き、バランスを崩す
「「!!」」
それが見えた友奈と響はすぐさま千景の方へ向かう
「「千景(ぐんちゃん)!!」」
体が下へ落ちていくように見えたその体。しかし……
「えっ!?」
――そのためなら……
まず気付いたのは、少し遠くにいたため友奈より遅くその場に来た響だ
驚いた表情で千景が
――どんなことだってやってやる!!
「あれ!?分身!?忍者!?」
自身の横を見た友奈もびっくり。そこには7人に増えた千景の姿。当然ながら精霊だ。進化体に対し千景は精霊を使用した
白無垢を思わせる真っ白な装束を勇者服の上から纏い、7人も存在する千景
今の千景は切り札の力により、複数の場所に
故に、これは分身ではない。全てが本物の千景であり、1人減っても、2人減ってもその数は変わらない
「私を殺したければ……」
それが、今の千景が纏う精霊――
――七人御先
「7人同時に屠ってみなさい!!」
ズバッ!!
同時に振るわれる7本の鎌による斬撃。それは難なく進化体を切り裂き、撃滅せしめた
「私の武器に宿る霊力は、死者をも冒涜する呪われた神の刃――」
着地した千景が鎌を持つ手を横に伸ばして構える
「――大葉刈。死ぬには相応しい武器でしょう?」
そうして、侵攻してきたバーテックスは全て討ち倒され樹海化は解けていった
変身が解け、周りの風景も元に戻ったタイミングで友奈と響が千景の元に近づいてくる
「おーい、千景ー!」
「すごかったねぐんちゃん!!」
「カッコよかったぞ千景!」
「……ありがとう。でも、今回も乃木さんが半分以上倒してた。……もっと強くならなきゃ」
千景は若葉の方を少し見て、強く大葉刈の柄を握る
「じゃあ特訓だね!!」
千景の言葉に友奈が目を輝かせながら言い放った
「特……訓?」
「うん!そうすればきっとぐんちゃんももっと『スバーン!!』と鎌が振れるはず!!必殺技みたいに!!」
「そうだな。特訓すれば千景ももっと強くなるはずだ
今だって、千景の戦い方はどんどん上手くなってるしな!」
「そうだよ!早速これから……」
ピリリリリリ!
盛り上がる友奈と響だが、友奈の携帯が鳴る
そう、彼女は病院から抜け出してここに来ているのだ
「……はい。でもそれはっ……」
あせあせと言い訳をするも、やはり抜け出した事を怒られているらしく目に見えて元気が無くなる
「……戻ります
……抜け出したのバレちゃった」
Piっと電話を切った友奈は2人に振り向き、トホホ……といった感じで告げる
当然といえば当然なので、千景も響も苦笑いだ
駆け足で病院へ向い始めた友奈は、一度振り返り……
「検査が終わったら一緒に訓練しようね!」
「うん」
「あとね……さっきの戦い、私はぐんちゃんが一番活躍したと思う!!」
そう言った。千景の胸が温かいモノで満たされる
――私のこと、見てくれてたんだ……
「ありがとう……高嶋さん。私……頑張ってもっと強くなる」
――いつかきっと……
「よし、じゃあ戻ろうか。千景」
「そうだね。……ねぇ、天羽君……」
残された響と千景も戻る為に歩を進め始める
すると、歩きながら千景が響に声をかけた
「ん?どうした?」
「天羽君に、鎌の扱いを教えてもらいたいの」
「え、いいけど……なんで俺が鎌を使えるってわかったんだ?」
「以前、天羽君の朝練を見かけたことがあって……それで天羽君が鎌を使っているのが見えたから……」
「ああ、見られてたのか……」
「それに、前の訓練の時のアドバイスが分かりやすかったから……頼める?」
「おう、任せてくれ
千景はきっと、すぐに俺より上手く使えるようになると思うぞ」
「そうかな」
「そうだとも。友奈には負けるかもしれんが、俺だって千景のことはちゃんと見てるんだぞ?
訓練も頑張ってるし、筋もいい。ゲームで培った判断力もなかなかのものだ
それに……俺や友奈、若葉みたいに小さい頃から特訓してた訳じゃないのに、今ですら俺達とタメ張るくらい強いんだ。俺もうかついていては足元を掬われそうだ」
千景をべた褒めしていく響に千景は苦笑いをする。ただ、友奈と同じように温かいモノも感じていた
「天羽君も……ありがとう」
「なんか話してたら体動かしたくなってきた
千景もこれからどうだ?友奈と一緒のときほど楽しくは無いかもしれんが……」
「ううん、そんなことない。ほら、行きましょう」
ちょっと自信無さげに誘う響に、千景が微笑んで答える
「!……お、おう!特訓してうどん食ってレベルアップだな!」
千景の言葉に嬉しくなった響はテンションを上げて丸亀城内の訓練場へと向かうのだった
ぐんちゃんの口調難しいです。最後のほうとか、ちゃんとぐんちゃんになっているだろうか...?
ぐんちゃんは一定の好感度まで上げて心を開いてくれると口調が砕けるタイプだと思ってます。友奈とかそうなので。
現在のぐんちゃんの好感度順はこんなかんじ
友奈>=響>>>杏>=球子=ひなた>>>若葉
くらいのイメージです。
この先のぐんちゃんご乱心イベントは響君に阻止してもらって、ぐんちゃんには幸せになってもらいます。
これは書き始める前から決めてました。
それでは、またお会いしましょう。