In My Home 作:雪須
次の日の夕方、影森一家は車で出かけた。行先はアニマシティのほとり。
影森家からはかなりの距離があったため、途中仮眠も含めて到着はさらに次の日の未明となった。
着いた場所は、本道から離れた高台にある広場のようなところであった。
そこからはアニマシティの目印となる市庁舎、そしてメディセンが、未明にもかかわらず多くの窓明かりを纏って聳えて立っているのが見える。
「お父さん、お母さん、遠くまでありがとう。ここからは私一人で行くね」
まだ薄明の中、みちるはここまで運んでくれた両親に感謝の意を示した。
「こんな時間にこんなところでなくても......ほかに場所はなかったのかい?」
「さっき分岐してきた道路がアニマシティに続いていくんだけど、途中過激派とかいて乗用車は襲われることがあって危険なんだ。だからこの時間とこの場所にしたの。あとお父さんとお母さんだけに見てもらいたいこともあったから......」
みちるのこの言葉に父と母は何のことだろうと顔を見合わせた。
みちるは上着と靴を脱ぎ、ノースリーブのシャツとショートパンツ姿になった。
「えーっと黙ってましたが、実は私」
そういうと、両手を一杯伸ばしてバレリーナのような体勢になる。
そして獣化を始めた。
ただ家のときと違い、両腕には羽根のようなものがたくさんさわさわと勢いよく生え始めている。
「じゃーん、とべちゃうんです」
両手は鳥類の翼と全く同じ構成となっていた。よく見ると足も鳥類のそれに変化し、鱗状の外皮と鋭い爪をもつ前趾と後趾の構成に変わっている。
「ねぇみてみて、もう私って妖怪そのものでしょ?」
尾羽が生えた腰を回して前、後を見せて問いかける。
「私、父さん母さんの望んでた育ち方できなくなってごめんなさい。こんな育ち方しちゃったけどいいかな?」
みちるは作ったようなうすい笑みを浮かべて聞いた。
何かを恐れていることを隠すように。
そんなみちるに母は静かに近づき、そして......
抱きしめた。
「なんで謝るの?前にも言ったでしょ、獣人になっても、妖怪になっても、あなたは私たちの娘ですよ」
「う、うぇ、ありがとう」
うすい作り笑いから、目から涙をあふれさせつつ満面の笑みに変わる。
「なんで今になってそれを言ったんだい?」父は聞いた。
「だってこれやって嫌われたら、もう父さん母さんと一緒に楽しく過ごすことできなくなるかもって思ったから。一緒に過ごしてからにしようと思ったの......」
色々と変身できることは他人に見せないようにって言われてるけど、自分の今を知ってもらいたくって、も付け加えた。
「うふふそうなの、でどうだった?」
「私が間違ってた。ごめんなさい」
「そのごめんなさいは受け取るわ」
うん、とみちるはうなずいた。
涙をふいたところで、ふと隣の丘の上の駐車場に3人、人影があることに気づいた。
一人はこちらに手を振っている。なずなだ。
なずなの父母もこちらに気づき、遠目ながら会釈した。
「じゃあ私これで行くね」
「あ、これ持っていきなさい。冷凍してたのがだいぶ溶けちゃったけど」
「わぁお母さんのお弁当!ありがとう。空長く飛んだあとはめっちゃお腹すくんだ」
母に弁当を前側にしょっているリュックサックへ詰めてもらい、靴をリュック側面に縛り付けてもらう。
「両手がこんなだから、ありがとう。じゃあお母さんお父さんこれで行くね」
「うん、行ってらっしゃい」「行ってきなさい」
「じゃ次の時まで。もし何かあったらスマホでよろしく」
「はいはい」「うむ」
「では行ってきます。えいっ」
力強く羽ばたき、5mほど垂直上昇。
水平移動に移って両親の真上で一回りしたのち、アニマシティの方に飛んでいく。
途中からなずなと合流した。
「おはよう、なずな」
「みちる、おはよう」
「結局、私たち変身できる能力も両親に見せちゃったね」
「市長さんも言ってたけど、私たちの変身のことが知られたら突然両親と会えなくなることもありうるって。だから今の自分たちがどんななのか、それが会えなくなる理由だから、知っておいてもらいたい。そうみちるとも話したよね、おととい」
「うん、でも今日が最後なんて考えたくもない。そうならないように頑張っていかなきゃ。ね、なずな」
「そうだね。市長さんの原因調査にも協力していかないと。じゃあとりあえずアニマシティへ帰ろ」
「うん」
朝日を浴びて二人はさらに強く大きく羽ばたいた。
シティでの生活に対する決意を新たにして。