かなり時間が空いてしまい申し訳ありません。
何とか第10話です。
順調にいけばあと3~4話で完結できるのではないかと。
※この作品はpixivとマルチ投稿しております。、
「え……?」
無音の爆弾が、炸裂した瞬間。
私の口から出てきたのはそんな間抜けなひと言であった。
爆弾の内容自体は当事者自身から聞いていて知っている訳だが、それでもこの流れで唐突に出てこられるとやはり驚いてしまう。
そのおかげでかんなたちに要らぬ疑念を抱かれずに済んだという点は良かったかもしれないが。
見れば、かんなも史織も等しくあっけにとられたような表情になっている。
一瞬の自失から一番早く立ち直ったのは意外なことに史織であった。
「こ、告白って……大路君が?」
「うん…………」
「たまこに?」
「うん」
「大路君……すごい…………!」
そこまで聞くと史織は掌で口元を抑え、感極まった様子で呟く。
まぁ、私ら4人の中で一番まっとうに女の子してるのは間違いなく史織だろう。
そう考えればこの史織の反応は至極まともなものと言えた。
「それで、大路君にその告白を無かったことにしてって言われたんだ」
「う、うん…………もち蔵、私のこと嫌いになっちゃったのかな」
「それはありませんね」
そう答えたのはかんな。
彼女も一瞬の自失から立ち直り、興味津々という態で話に加わってきている。
こういうところ、やはりかんなも年頃の女の子という事か。
「うん。大路君がたまこのこと嫌いになるなんてありえないよ」
「そ、そうかな……」
史織の言葉に、たまこが頷く。
どうやら大路の気持ちは周りの人間にはバレバレだったようだ。
……まぁ、知ってたけど。
「そう言われれば最近、大路君とたまちゃんの間の空気がアレしてアレな感じだった気がします」
これはかんなの言葉。
アレしてアレな感じって何だ。
……と言いつつニュアンスで何となく分かってしまうあたり、私も長いことかんなの友達やってるなぁ、と思う。
「大路君……自分が告白したことでたまこと気まずくなったのに堪えられなくなっちゃったのかな」
「あー確かに。大路君ちょっとヘタレっぽいですからね」
史織の言葉にかんなが頷く。
そのことに関する愚痴は嫌というほどに聞かされた。
主に大路自身に。
…………考えてみたら何で私がそんなことで愚痴られなきゃならんのだ。
考えるほどに腹が立ってくる。
「へ、ヘタレなんかじゃ……ない…………と思うんだけど……」
否定するたまこの言葉にも力がない。
幼馴染からもそんな扱いを受けてしまうあたり大路もち蔵という男の本質が垣間見える。
「とにかく……大路君はそう言ってるけど、やっぱり返事はした方がいいよ」
「そ、そうだよね…………」
妙な方向に向かいかけた話を史織が軌道修正する。
史織の言葉に、私の心の奥がちくり、と痛む。
それは私がたまこに言いたくても言ええなかった一言だからだ。
本当は分かっていた。
たまこがどういう言葉を求めているか。
体育館で最初に相談された時から。
「早く返事しなよ」
その一言が言えない理由。
それもまた、私自身薄々自覚していたわけで。
「……みどちゃん!」
「…………へ?」
思考の海に沈みかけた私を、かんなの声が呼び戻す。
慌てて意識を戻すと、不思議そうな表情でこちらを見つめているかんなとたまこ、史織の姿が目に入った。
「みどり、どうしたの?」
「さっきから呼んでるのに…………はっ!もしかして宇宙人に意識を」
「んなわけないでしょ」
相変わらずバカなことを言い出すかんなに一応ツッコミを入れる。
たまこはと見れば、史織に言われた言葉に感じるところがあったのか、黙って考え込んでいた。
「まだ返事が決まってないんだね?」
「…………」
史織の言葉に、たまこは沈黙で答える。
「すぐに返事を出す必要はないんだよ。大路君だってそう思ってるんじゃないかな。ただ…………告白されたこと、嫌じゃなかったんだよね?」
「うん」
即答かい。
まぁ躊躇うような質問じゃないだろうけど。
「だったら、そのことだけでも伝えた方がいいよ。大路君、多分たまこを困らせちゃったんだって思ってる」
「…………そうか」
「だから、告白されて嬉しかった、って……そのことだけでも伝えないと」
「うん」
史織の言葉に力を得たように、たまこが頷く。
何だか、史織のさっきからのアドバイスが一々的確すぎる気がする。
さすが私たちの中で一番の女子力の持ち主。
「そうですよたまちゃん!廊下の曲がり角でこう、斜め45度の角度でぶつかって『もち蔵!告白してくれてありがとう!いつか私のために家を建てて!!』って」
「どんな返事よ……」
「私が一番言われたい言葉です」
何だそりゃ。
…………結局のところ、かんなはかんなだった。
しかし、そのかんなの的外れな言葉にツッコミを入れることで、私も自然に会話に加わることができた。
狙ってやってるのか天然なのか判断が付きかねるけど。
「ま、まぁ曲がり角はともかく…………教室とかだと言いづらいだろうし、一人の時に話しかけるってのはいい案だと思うよ」
そう言う史織の言葉に従い、「大路君の告白お返事プロジェクト」(本当に言った)が開始されることになった。
…………のだが。
何故かその日、ことごとくたまこが大路に話かけようとする試みは邪魔されたのであった。
それこそ、何者かの意志が働いているかのごとく。
廊下の曲がり角で待っていれば、ちょうどたまこが飛び出したタイミングで大路が誰かに呼ばれて振り返る。
教室の入り口で待っていれば、ちょうど先生に荷物持ちを頼まれた大路が逆の出入り口から出て行ってしまう。
大路がトイレに入ったのを入り口で待ち構えようという案にはさすがに反対させてもらった。
男子トイレの前でそわそわしてうろついてる女子4人など不審者以外の何者でもない。
結局のところ、たまこが一人で決着をつける以外ないという至極まっとうな結論に落ち着くのに、ものすごい遠回りをしてしまっただけに終わったのである。
「なんだかいろいろあった一日だったね」
「…………うん」
その日の放課後。
私とたまこは並んで歩いていた。
「でも、言っちゃってよかったの?大路のこと」
「うん。かんなも史織も、多分普段と違う私に気付いてたと思うから。これ以上かんなたちに心配かけたくないって思って。みどりちゃんは驚いたと思うけど」
「……そうだね。驚いた」
そう言って私は沈黙する。
あの衝撃のカミングアウトの時、私の心に去来したのは驚きと、そして少しの寂しさ。
私とたまこ、そして大路。
この3人の関係は特別なものだと思ってた。
だからそのことを、たまこがかんなたちにあっさり打ち明けたことに対し少しの寂しさを覚えてしまった。
私がたまこのことを思うほどに、たまこは私のことを思ってくれてなかったんじゃないか。
そんなことまで考えてしまう自分が嫌だった。
「でもね私、みどりちゃんにね、一番に相談できてよかったって思ってる」
「え?」
たまこの言葉に、思わずたまこの顔を見直す。
あの時私は、ほとんどアドバイスらしいアドバイスもできなかったのに。
「私ともち蔵と、一番長く一緒にいてくれたのはみどりちゃんだから。みどりちゃんに話を聞いてもらえて、私少し余裕ができたと思う」
「…………そう」
「だから、ありがとうみどりちゃん。私、受け止められる気がする。バトンも…………もち蔵のことも」
そう言ってたまこはいつものようにふわりと笑う。
そうだ。
ここ数日色々なことがありすぎて頭から抜け落ちていたが、マーチングフェスティバルの本番が数日のうちにやってくるのだ。
そんな、たまこの笑顔を見せられた私にできるのは―――
「…………だね!」
いつもの口癖で、たまこの背中を押してあげることだけであった。
(…………ふう)
たまこたちと別れ、家路につきながら私は大きく息をつく。
あの時のたまこの表情を見て、もう彼女の中では結論が出たのだと悟った。
(私だけが……ぐるぐるしてる)
かつて私は、ずっとたまこの側に居て誰にもわかる好意を発していながら好きだとも何とも言わない大路のことを「たまこの周りをぐるぐるしてる」と言った。
そして現在、自分が言った言葉はそのまま自分に跳ね返ってきている。
大路にも、たまこにも隠していることが私にはあった。
もしかしたらたまこあたりにはばれているかもしれないが。
それでもずっと隠し続けている一つの言葉がある、
たまこは、私たち3人の関係が変わることを恐れず、大路の気持ちに真摯に向き合うことを選択した。
…………ならば今度は、私の番だ。
ポケットからスマートフォンを取り出し、電話帳から一つの名前を呼び出す。
そう言えば、こいつに私から電話を掛けたことってあんまりなかったな。
数回のコールの後、目的の人物は出た。
「はい、大路です」
「あ、私」
「どうした?急に」
電話の向こうで不思議そうな大路。
しかし、そんな奴には構わず私は心を落ち着かせるべく大きく息を吸うと一言、私がずっと心の奥に隠していた一言を告げた。
「私、あんたのことが好き」
たった、一言だけ。
それが私の隠していた言葉だった。
如何でしたでしょうか。
みどりがもち蔵に惚れてたというのは私の完全な妄想設定です。
さて、やっと後半に入り始めた感じでしょうか。
それでは。
次の話もできるだけ早く上げられるよう頑張ります。