次話投稿が遅くなってしまい申し訳ありません。
映画は一度見ただけで台詞など細かいところは覚えていません。
なので私の方で勝手に場面や台詞を捏造したりしてます。
そう言うのが気になる方はご注意を。
それでは。
pixivとマルチ投稿しております。
「大路」
「……と、常盤?」
次の日の朝。
私は朝早く起き、通学路にて大路を待ち伏せていた。
もちろん、昨日のあの謎電話の真意を尋ねるためである。
あのせいで私はあれからずっと電話が気になってしまい碌に眠れなかったのだから。
大路には、このもやもやに何とか落とし前をつけてもらわねばならない。
暫く待っていると、いつもの通り大路が通りかかった。
その姿を見かけるや一目散に近づいていく。
私の姿を認めた大路が一瞬逃げ出したそうな表情になるものの、逃がしはしない。
踵を返そうとする大路の腕をがっしりと掴む。
「ちょっと話があるんだけど」
「き、昨日はすまん!」
私が用件を言う前に大路はいきなり謝ってきた。
……しかし、私が欲しいのは事情の説明であって意味も分からぬ謝罪ではない。
私はさらに言葉を続けた。
「…………ちょっと来なさい」
「え?だ、だから昨日のことは……っておい!常盤?」
私はそのまま大路の手を引っ張って人目のないところへと連れて行く。
……道行く生徒たちが奇異なものを見るような目で道を開けていった。
しばらく歩いて人気のないところにたどり着くと、私は大路に向き直る。
「お、おい!常盤!何のつもり……」
「黙れ」
「はい」
一睨みで大路を黙らせる。
…………何だか手段が目的化しているというか、自分で自分の首を絞めているかも、などと言うことは考えないようにする。
「で、昨日の電話は何?」
前置きも何もかも取っ払ってズバリ核心をつく。
そうしなければ、余計なことを喋ってしまいそうだった。
私の言葉に、大路は覿面にうろたえはじめる。
「あ、あれはその、何でもない。わ、忘れてくれ」
…………忘れろだって?
馬鹿を言ってもらっては困る。
昨日のあの電話から今まで、私はずっともやもやした気持ちを抱え込み続けてきたのだ。
それをあっさり忘れられるぐらいならこんな強硬手段には出てない。
「それで納得しろって?」
「……できれば」
「できると思う?」
「…………」
大路が沈黙する。
その横顔に、私は内心ため息をついた。
どうやらこの質問は大路の触れられたくない一線に抵触してしまったようだ。
こうなった大路は梃子でも口を割らないだろう。
しかし、このままあっさり引き下がるのも癪である。
少し、カマをかけてみることにした。
「どうせたまこ絡みなんでしょ」
「……っ!」
…………おいおい。
少し分かりやす過ぎやしませんか大路君よ。
まぁ、しかし、理由もわかったしこのあたりで勘弁してやるとするか。
あまり苛めては可哀想だ。幼馴染の情け、という奴である。
……決して、私がこの先を聞きたくなかったわけではない。
決してだ。
「まぁいいわ。とりあえずは勘弁したげる」
「…………」
私の言葉に、露骨にほっとした態度を見せる大路。
そう言ったあたりがヘタレだなんだと呼ばれる原因なのだが。
「じゃ。私はたまこと待ち合わせだから」
「…………お、おい、常盤」
それだけ言うと、後ろから聞こえる大路の呼びかけは聞こえなかったふりをして、私は大路に背を向けて歩き出した。
「マーチングフェスティバルに出ましょう!」
かんながいきなりそんなことを言い出したのは部活の練習がひと段落した休憩の時であった。
相変わらずいきなり妙なことを言い出す子である。
そんな私たちの戸惑いをよそに、かんなはポケットから一つのチラシを取り出した。
そこには「うさぎ山マーチングフェスティバル」の文字と日時。
「3年生になって思ったのです。私たちには青春が足りない!」
ステージに上がって選挙演説のごとく大げさな身振りで話しはじめるかんな。
……いや、いきなり青春と言われましても。
「で、でもあんまり時間ないし……私たちも3年だし」
「たまちゃんはおもちを丸めるだけの青春でいいんですか?」
「え?」
「私たちは今、高校3年生なのですよ!おもちを丸めることはいつでもできますが!高校3年生の期間は今しかないんです!」
「そんなぁ……おもちを丸めるのだって難しいんだよ…………」
いつものような、噛み合ってるんだか噛み合ってないんだかわからないたまことかんなの会話。
そんな会話を聞くともなしに聞きながら、私はかんなの言った「青春」と言う言葉に少し心が動かされていた。
青春、か。
言葉にしてみると何とも恥ずかしい言葉だが、あと1年で高校生活が終わるという事実に直面させられると、ちょっと憧れのようなものも感じる。
地元に残る気満々のたまこ、かんなはともかく、史織はもしかしたら卒業とともに遠くの大学に行ってしまうかもしれない。
そうなってしまえば、皆とも今のように毎日会えるというわけじゃなくなるだろう。
…………大路とだって。
……まぁ、それはともかく。
高校卒業を前に、一つ大きなイベントを打ち上げるのもいいかもしれない。
かんなに乗せられているようで少し癪だが、部長は私だ。
「そうね……いいんじゃない?面白そう」
自然に、その言葉が私の口をついて出ていた。
「うん…………そうだね。みどりちゃんがそう言うなら、頑張ってみようかな」
「頑張ります!」
私の言葉に少しは驚くかと思ったが、私の言葉を聞いた部員たちの反応はおおむね好意的であった。
「決まりですね。実はもう申し込んであります」
そう言うとかんなはなぜかドヤ顔を私に向けてくる。
…………この策士め。
私が断るなんて欠片も思ってなかったな。
私はかんなに向けて苦笑を一つ返すと、立ち上がった。
「じゃ、マーチングフェスティバルに向けて、明日から朝練、頑張ろう!」
「「「「おー!」」」」
部員たちの声が、一つに重なった。
「……で、あるから、このフランス革命期における…………」
昼下がりの授業。
世界史の教師が発する言葉が魔力を持っているかのように、生徒たちを眠りへと誘う。
私の斜め後ろの席のたまこもご多分に漏れず、先ほどからずっと船を漕いでいた。
しかし問題は、その隣に座っている男である。
(めっちゃ見てる…………)
たまこの寝顔にちらちらと視線を送り続ける男。
彼女の隣の席に座るその男は、言わずと知れた大路だ。
今までたまこと同じクラスになれなかったその空白を取り戻すかのように、クラス替えからの1か月、大路は常にたまこのことを視線で追い続けていた。
…………まぁ、そんな大路のことをずっと見続けている私も選ぶところなしと言われれば反論できないところだが。
ふと、何かに気付いたかのように大路の視線が前方に向けられる。
(…………っ!)
危うく目が合いそうになり、慌てて前を向く。
……気づかれなかっただろうか。
体育で短距離走を走った後のように、心臓の鼓動が高まっている。
自分ではわからないが、おそらく顔も赤くなっているだろう。
「この当時開設されていた議会はいわゆる身分制議会で、平民・聖職者・貴族の……」
教師の話がまるで虫の羽音のように耳に入ってこない。
そんな私のもやもやをよそに、授業は続いていった。
そしてその日の掃除時間にも。
(やっぱり見てる……)
一向に真面目に掃除をせずふざけまわっている男子たち。
女子に注意させることで、コミュニケーションを取りたいのだろう。
……何というか、男ってやつはいつまでたっても子供だ。
そんな男子たちの中で、大路は一応箒をもって窓際に立っている。
しかし、機械的に手を動かすのみでその視線は私の隣で机を運んでいるたまこに注がれ続けていた。
当のたまこはと言えば、そんな視線を向けられていることなど気づきもせず、危なっかしい足取りで机を運んでいる。
「…………あ」
たまこが持ち前のドジっ娘属性を発揮し、足をもつれさせて転びかかった。
「おい!たまこっ!」
「たまこ?」
私と大路の行動は同時だった。
私がたまこの背中に手を差し入れ、そして大路がたまこの右手をつかむ。
そして、「事件」は起きた。
「…………」
「…………」
たまこを挟んで私と大路が至近距離で見つめ合うような体勢になってしまったのである。
目の前数センチに驚いたような大路の顔。
そしてその瞳に映る、やはり驚いた表情の私。
そのまま数秒が流れる。
「あ、あの~~みどりちゃん?もち蔵?」
遠慮がちなたまこの声が、私を現実に引き戻した。
「……っ!」
「みどりちゃん?」
「あ。おい、常盤っ!」
思わずたまこの背中から手を離してしまい、二人から飛び退る様に距離を取る。
……ちょっと大路が傷ついたような情けない表情をしているのが何だか笑えた。
とりあえずフォローのために大路に声をかける。
「あ、ごめん。別に大路に近づきたくないほど嫌いって訳じゃなくて」
「中途半端なフォローはやめてくれ…………」
大路がさらに情けない顔になった。
…………どうやら私の顔の赤さはごまかせたようだ。
「……まぁ普通に嫌いではあるけど」
「嫌いなのかよ!」
「冗談よ」
「あはは、みどりちゃんってば」
私の冗談にたまこも笑顔になる。
しかし、たまこはその笑顔のまま爆弾を投下していった。
「もち蔵!みどりちゃんがもち蔵のこと嫌いなんてある訳ないじゃない!」
「そ、そうか……」
「みどりちゃんも、そう言う冗談はあまり言っちゃだめだよ」
…………ちょっと待てたまこさんや。
いや、確かに別に大路の事、嫌いではないですけどね。
そんなに何の躊躇いもなく「ある訳ない」と断言されると、その。
案の定、私と大路の間に妙な空気が流れる。
そんな空気にたまこは当然のように気づくこともなく、言ってやった!とばかりにドヤ顔を浮かべている。
この時ばかりはたまこを本気で殴りたいと思った。
……まぁ、もちろんやらないけど。
そんな微妙な空気を打ち壊す声が、名も知らぬ女生徒からかけられたのは数秒後のことであった。
「常盤さんと大路君!北白川さんも!さぼってないでちゃんと掃除して」
その言葉に、私とたまこ、そして大路が弾かれたように立ち上がる。
ありがとう。
私は心の中で名も知らぬ女生徒に感謝の言葉を述べ、掃除へと取り掛かった。
いかがだったでしょうか。
かなり場面を捏造しまくっております。申し訳ない。
先月末から地元の市内の映画館でたまこラブストーリー上映開始だそうです。
これは見に行かねば。
それでは。