みどりラブストーリー   作:坂本圭助

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こんにちは。

第3話目、投稿です。

細かいセリフ等を確認するために同じ映画を3度も見てしまいましたw
やっぱトイレの前でのもち蔵とみどりのテンポのいい会話が好きです。


pixivとマルチ投稿しております。


3 常盤みどりは戸惑う

「常盤さん」

 

ある日の放課後。

私は一人の女生徒に声をかけられた。

 

「えっと……沢木口さん、だっけ?」

 

振り返った先に立っていたのは、ニコニコと人懐っこそうな笑顔を向けてくる女の子。

3つのお団子がくっついた珍しい髪型をした彼女は、、3年生になって初めて同じクラスになった子だったはずだ。

外見通り、物おじしない性格のようで男女問わずいつも誰かと楽しそうに話している彼女の姿をよく見かける。

 

「うん。出席番号13番沢木口美崎。……って知ってるよね」

「まぁ」

 

ほとんど初対面であるはずの私にも、まるで昔なじみのように親しげに話しかけてくる彼女。

正直私は、そんな彼女が少し苦手だ。

そんな私の内心に気付いているのかいないのか、彼女はそんな態度を崩さずに話を続けてくる。

 

「あのさ、常盤さんって大路君と仲いいよね」

「え……?お、大路?」

 

彼女の口から出てきた意外と言えば意外すぎるその名前に、思わずどもってしまう。

大路もまた、彼女と同じクラスになったことはないはずだ。

そんな大路の名前を彼女が知っている、という事は…………もしかして。

 

「じつはさー、私大路君の事ちょっといいなって思ってたんだよ。2年の頃から」

「はぁ」

 

やっぱりか。

予想通りの展開に私は内心でため息をつく。

 

……さて、ここで大路もち蔵と言う男への一般的な評価、という奴について軽くおさらいしておこう。

 

大路と言う男、器用貧乏と言う言葉の生き標本のような男なのである。何をやらせてもそれなりにこなすが、決して一流にはなれず二流どまり。テストの順位も毎回上位2割くらいには

入るがそれ以上には行けない。スポーツ大会などでもそれなりに活躍はするが決して人の目を驚かすような活躍は出来ない。

映像研究会、と言う一見マニアックな部活に所属してはいるがああいう部活に所属している人間にありがちな陰にこもった雰囲気もない。

冗談にも反応してくるし、真面目になれば何をやらせてもそつなくこなす。

顔は…………まぁ、人の好みがあるので私が論評することは差し控えよう。

ネックとなるのはもち蔵と言う珍奇にもほどがある名前であるが、まぁこれも一部の女子には可愛く映るらしい。

 

まぁ、これらのことを総合すると。

 

大路もち蔵に対する女子の評価は悪くない。いやむしろ「良い」の部類にはいるだろう。

だから。

このように私を通じて大路と友好関係を結ぼうとする女子の相手をすることもまた、たまにある話なのだ。

…………よりによってあんなヘタレを、と思わなくもないのだが。

とか考えていたら、どうやら口に出ていたようだ。沢木口さんが驚いたような表情になる。

 

「ヘタレ?大路君が?…………常盤さん、それは違うなぁ」

 

ちっちっち、と指を左右に振ってみせる沢木口さん。

…………あ、何か今すごくイラッとした。

 

「ありゃいざと言うときにはすごく頼りになるタイプだよ。口だけ偉そうでいざと言う時にヘタレる奴とは逆の。常盤さんなら気づいてると思ったんだけど」

「ふーん」

 

頼りになるタイプ、ね。

…………そう来たか。

 

「だからさ、3年になって同じクラスになれてラッキーって思って速攻話しかけに行ったんだけどさ」

「…………」

「なーんか、壁を感じるっていうの?私としてはもう少し仲良くなりたいんだけどさぁ、うーん……ある一線からは踏み込ませてくれないっていうか…………あたし頭悪いからうまく説明できないけど」

 

…………ほー。

私は沢木口さんの言葉に内心感心していた。

見た目から軽い印象を受けるが、先ほどの「頼りになる」発言と言い、見かけどおりの子ではないようだ。

 

「そうだね……」

「みどりちゃんもそう思う?」

 

いつの間にか呼び名が「常盤さん」から「みどりちゃん」に変わっている。

もう、一々突っ込むのも面倒くさいので放置しよう。

 

「まぁ……」

 

曖昧に答える。

何だか彼女のいうことをすんなり受け入れるのは躊躇われた。

 

「だからさ、みどりちゃんの方から私の事、セールスしといてくんないかな?」

「セ、セールス?」

 

また胡散臭い単語が出てきたものだ。

しかし沢木口さんは存外真剣なようで、話を続けてくる。

 

「そうそう。仲いいみどりちゃんから言われたなら、大路君ももうちょっとは私のこと気にしてくれるかなって」

「それは…………」

 

私は躊躇う。

大路が女の子に対して一線を引いてしまうのは、別に女の子が苦手とかそういう訳じゃない。

あいつの頭の中には常に一人の女の子しかいないからだ。

 

「難しいと思うよ。大路が女の子に一線引くのって……」

「北白川さんでしょ」

「分かる?」

「分からいでか。授業中も掃除中も、ずっと北白川さんのこと見てるんだもん。多分気づいてないの、当の彼女だけだよ」

 

そう言って小さく笑う。

それにしても……あの馬鹿め。

3年になって初めて同じクラスになった沢木口さんにも気づかれてるぞ。

この分では気づいている人間は他にもいるとみていいだろう。

今まで同じクラスになっていなかったから、と言うのもあるのだろうがあれほどまでにあからさまに視線を送っていては気づかないほうがどうかしているというものだ。

一歩間違えばストーカーの所業だ。

 

「…………あの馬鹿」

「いいじゃん。ああいう一途さも女の子の心をつかむ一因だよ」

「あはは」

 

一途、ねぇ。

もはや笑うしかない。

大路、言いたい放題言われてるぞ。

 

「まぁ、そんなわけで考えといてね。それじゃよろしくっ」

「あ…………」

 

言いたいことだけを言うと、沢木口さんは風のような速さで去って行った。

…………それにしても。

沢木口さんの言った一言が、私の中でリフレインする。

いざと言うときにはすごく頼りになるタイプ、か。

 

 

「…………んなこと、何年も前から分かってるっての」

 

 

私のつぶやきは、誰の耳にも入ることなく消えていった。

 

 

 

 

「じゃ、ちょっと行ってくるね」

 

そう言ったたまこがトイレの中へと姿を消すのを確認し、私は壁に寄りかかって座り込んだ。

バトンのことで行き詰っているわけではない。

むしろそちらの方は順調すぎるほどに順調だ。

かんなの思い付きから始まったマーチングフェスティバル挑戦だが、いざやり始めてみると皆で一つの目標に向かって努力していくというのは中々にして楽しいものであった。

部長である私が振付や曲を考えることになったが、その苦労すら今の私にはやる気のもとと言えた。

ならば何故、今私がややテンション低目なのか。

 

(沢木口さん…………)

 

先日大路との渡りをつけるべく私に声をかけてきた彼女。

一応曲がりなりにも引き受けてしまった義理と言うものがある。

私は次の日大路にこういう女の子があんたと友達になりたがってる、と伝えた。

ちょっと困ったような表情で「そ、そうか」と答える大路。

この反応もまた、いつもの通りであった。

 

(本当にたまこ以外の女は眼中ないんだなこの野郎)

 

そう考えるとこう、胸のあたりがむかむかとしてくる。

何で私がこんな気分になんなきゃいけないんだ。

今度大路にあったら一言文句を言ってやらねば――――

 

「と、常盤」

「……大路」

 

隣の男子用トイレから出てきた大路と鉢合わせたのは、まさにそんなことを考えていた時であった。

私の姿を見かけた大路は、あからさまに怯えたような表情で後ずさりを始める。

そういう態度が、私のイライラに火を注ぐという事が分かっているのだろうかこの唐変木は。

そのまま数秒間の沈黙に耐えきれなくなったように、大路は私に背を向けようとする。

そんな大路の背中に向けて、私は声をかけた。

 

「……大路ってさ」

「な、何だ?」

「分かりやすいよね」

「え?」

「…………そう言うの、たまこは困ると思う」

「だから何なんだよ」

 

今時珍しい、天然記念物のごとき純粋無垢少女、それがたまこ。

おそらく大路の事も「仲良しの幼馴染」以上には思っていないだろう。

惚れた腫れただのと言う感情から、たまこはおそらく最も遠いところにいる。

大路の気持ちは、それをすべてぶち壊すことにもなりかねないのだ。

それを分かっているんだろうか?

私は言葉を続ける。

 

「大路ってさ、今までたまこと同じクラスになったことないんだよね」

「…………ああ」

 

いきなり話題が変わり、戸惑った表情の大路。

どこか不貞腐れたような雰囲気があるのは……まぁ、奴にとってはいい思い出ではないのだから当然だろう。

しかしそんなことで引いてやるほど今の私は優しくない。

 

「それで、初めて同じクラスになれて嬉しいのは分かる。でも、これほどとは思わなかった」

「……はぁ?」

 

なおも分かっていないような様子。

…………ああそうかい。

だったらはっきり言ってやる。

もうどうなっても知らん。

 

「めっ…………」

 

ここで私はしゃがみこみ、大きく溜めを作る。

そして、私はついに決定的なひと言を口にした。

 

「ちゃ見てるよね。たまこの事」

 

大路を睨みつけながら言う。

この言葉がもたらした効果は絶大であった。

 

「は……はああああああっ!?」

 

わたわたと慌てながら大声を上げる大路。

心外だ、と言わんばかりの態度だが、赤く染まったその顔が全てを物語っていた。

 

「べ、べべべべ別にみ、み、見てねーし!た、たまたま視界に入ってきただけだし!」

 

……あれをたまたまと申すか。

お前の視界はどんだけ広いんだ。お前はあれか。司馬懿か何かか。

 

「…………でも」

「ん?」

「見てるだけだよね」

「……え?」

 

急に口調を変えた私の言葉に、大路が再び戸惑ったような表情になる。

大路はいつもたまこのことを見てる。

でも、見てるだけだ。

たまこと目があって、たまこが手を振りかえしたりすると大路は決まって慌てたように目をそらす。

…………私が大路に視線を向けてるのと、同じように。

 

「大路はさ、そうやってずっとたまこの周りをぐるぐるしてる」

「そんなこと……」

「そんなことある」

 

思い切り挑発的に大路を睨みつけ、私は断言する。

…………全く、どの口が言うのか。

そう思いながらも言葉は止まらない。

 

「そう言うのってさ、おかしいよ」

「……常盤は関係ないだろ」

「関係なくない。たまこは私の親友だから」

「だからなんだよ」

「たまこを困らせるようなこと、私が許さない」

 

たまこの周りをぐるぐるしながら、ただじっと、たまこに視線を送り続ける。

それ以上踏み込もうとせずに。

自分に送られる、もう一つの視線には気づきもせずに。

 

「べ、別にそう言う意味で……」

「じゃあどういう意味よ」

「と、常盤には関係ないことだろ」

 

大路が視線をそらす。

…………また「関係ないこと」か。

そう言われる私の気持ちなんて、考えたことないんだろう。

しかし、次の瞬間大路が発した言葉に、私は天地がひっくり返るほどの衝撃を受けることになる。

 

「俺……卒業したら、東京の大学行く」

「…………え?」

 

それはあまりにも突然で。

そして私たちを取り巻く心地よい毎日の終わりの始まりを告げる言葉であった。

 




如何でしょうか。

「もち蔵のことを好きな、みどり以外の女の子」ってのが必要だったので同じ京アニ作品「氷菓」から沢木口先輩にゲスト出演願いました(笑)

「けいおん!」の澪とどっちにしようか迷ったのですが、私は「けいおん!」を一度しか見てないのでキャラがあいまいだったので「氷菓」を選びました。

それでは。
また一週間後ぐらいに投下できればいいかな、と思います。
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