みどりラブストーリー   作:坂本圭助

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こんにちは。
前回からまた間が空いてしまい申し訳ありません。

それでは。
第7話です。


7 常盤みどりは思い出す

「えいっ」

 

そんな間の抜けた気合とともに、かんながブルーシートを広げる。

私たちは今、いつものメンバーで中庭にお弁当を食べに来ていた。

たまこが大路の告白を受けてより数日。

事態は、少なくとも表面上はいつもの通りの平穏を保っていた。

たまこは、大路をあからさまに避けることは無くなっている。

ただしまだ二人の間に会話らしい会話は無い。

他のクラスメイトはともかく、かんなや史織に気づかれるのも時間の問題であろう。

 

「あれ?たまちゃんのお弁当……何か違和感が…………」

 

そういいながらかんながたまこの弁当を覗き込んでいた。

釣られるように私もたまこのお弁当を覗き込む。

ぱっと見る限り、おかしなところはないように思える…………ん?

 

「あ…………」

 

どうやら違和感の招待に気づいたのはかんなと同時だったようだ。

思わず顔を見合わせる。

 

「みどちゃんも気づきましたか……」

「ま、まぁね」

 

かんなの言葉に曖昧に返答する。

 

「そう!変態もち娘たまちゃんのお弁当なのに…………お餅がない!」

「あ…………」

 

かんなの言葉に、史織も気づいたように表情を変えた。

 

「確かに……たまこ、磯辺巻きとかきなこ餅とか、いつもお餅が入ってたよね」

「あ、うん、そうだったかな…………」

「そうですよ!たまちゃんといえばお餅!いえむしろお餅こそがたまちゃん!そんなたまちゃんのお弁当にがお餅が入っていないなんて……はっきりいって異常事態!」

「いや、そこまでじゃないと思うけど」

 

とりあえず突っ込みを入れておく。

…………しかし、たまこが餅を、ねぇ。

やっぱり大路の名前を想像させてしまうからだろうか。

あの子のことだから、会話の中の「お餅」が全部「もち蔵」になってたりして。

……さすがにそれはないか。

ない…………よな?

 

「……ちょっとね、お餅が苦手になっちゃって」

「えっ!」

 

ここで一番驚いたのは史織であった。

たまこを何だと思ってるんだか。

 

「なんと……変態もち娘のたまちゃんがお餅を苦手に…………」

 

わざとらしく驚いて見せるかんなだが、見た目ほど衝撃を受けていないのはわかる。

彼女も彼女なりに、ここ数日のたまこの態度に何か感じるものがあったのか。

 

「でも、たまこって昔はお餅嫌いだったもんね」

「ええっ?」

「初耳です」

 

ここでも最初に驚きの声をあげたのは史織だった。

隣にいるかんなも驚いている。

そりゃ、たまことは幼馴染をやってる期間が違う。

たまこが昔眼鏡をかけてたころからの付き合いなのだから。

詳しく聞きたそうな二人の表情に、私はたまこへと視線を向ける。

たまこは少し躊躇った後、小さく頷いて見せた。

それを確認した私はゆっくりと口を開いた。

 

「まぁ、一言で言うなら――――」

「「言うなら?」」

「大路のせい、ってことになるのかな」

 

 

 

「「えっ!?」」

 

私の言葉に、二人は驚いたように顔を見合わせる。

 

「大路君、ですか」

「うん。小学校のころだったかな……大路の奴、たまこのこと見かけるたびにいつも『餅屋の白玉、北白川たまこ~』ってからかってたの」

「あー……情景がありありと目に浮かぶようですね」

「二人とも可愛い…………」

 

……どうやら史織の感性は独特なようだ。

私は言葉を続ける。

 

「でも、そんな風にからかう癖に、小学校の登下校の時はいつもたまこのおさげ掴んで一緒に行き帰りしてた」

「あのおさげですか」

「そう。あのお下げ」

 

思わず3人でたまこの方に視線を向けてしまう。

いきなり3対の視線に見つめられたたまこは、居心地悪そうにお下げをいじっていた。

私の後をついでたまこが話し出す。

 

「うん……いつももち蔵に白玉白玉言われるのが嫌で、おじいちゃんに『どうしてうちはお餅屋さんなの?』なんて泣きついて……そんなこともあってお餅が苦手だったの」

「はーなるほど」

 

そういって頷くかんなだが、すぐに一つの疑問に行き当たる。

 

「でも、そんなたまちゃんがどうして今の変態もち娘に成長したのか……気になりますね」

 

かんなの疑問はもっともだ。

この辺りのことは私もはっきり聞いてはいない。

思わずたまこへと視線を移す。

少しの沈黙の後、たまこは話し出した。

 

 

 

「お母さんがいなくなって……私がずっと泣いてばかりいた時にね…………」

 

たまこが小学5年生のとき、ひなこさんは病気で亡くなった。

ひなこさんのお葬式で喪服代わりの制服を着てじっと下を向いていたたまこの姿は、今も脳裏に焼きついている。

あの時、確か大路は何をしていたんだっけか…………

 

「その時にね、お餅が…………しゃべったんだ。『たまこ、元気出せ』って」

「はい?」

 

思わず聞き返す。

かんなと史織も程度こそ違え「ついに脳内にまでお餅が…………」とでも言いたげな表情になっている。

そんな私たちの雰囲気に気づいたたまこがあわてて否定するように言葉を続ける。

 

「あ、も、もちろんそんなことある訳ないって分かってるよ!たぶんお父さんの仕業なんだと思う」

「あ、そういうことですか」

「びっくりした…………」

 

要するにたまこのお父さん……豆大さんがお餅を使って落ち込むたまこを励ましたってことか。

確かにそれは豆大さんらしい……のかな?

いや、むしろどっちかといえば…………

 

「みどりちゃん?」

「……ん?どうした?」

「いや、何でもない」

 

…………まさか、ね。

あのヘタレに落ち込んでる女の子を励ますような器用な真似ができる訳ない。

私は小さく頭を振り、頭に浮かんだ埒もない連想を振り払った。

 

 

「なるほど。それで、今回の餅スランプの原因には何か心当たりが?」

「そ、それは…………」

 

餅スランプて。

かんなの言葉に、たまこは俯いて言葉を切る。

それを口に出すのは、今のたまこには躊躇われるのだろう。

しかし、たまこが何かを答える前にかんなが話し出した。

 

「ちなみに私は釘スランプになったことがあります」

「釘スランプ?」

 

また聞きなれない言葉を。

 

「はい。小学生のとき、学校から帰った後父の仕事場で道具をいじって遊んでばかりいたら、釘の匂いを嗅ぐだけで吐き気がするように…………」

「何やってんのよあんたは……」

 

小学生のころからそうだったのか。

筋金入りというか、なんと言うか。

 

「かんなはどうやって釘スランプを克服したの?」

 

たまこがかんなに問いかける。

 

「逆療法です。その日から常に釘を持ち歩いて匂いを嗅ぐようにしたら、いつのまにか治りました」

「…………何だかお弁当から釘の匂いがしてきた」

 

そういって史織が口元を押さえて顔をしかめる。

……確かに、そういわれると口の中にかすかに鉄の味がしてきたような気がする。

恐るべきは思い込みの力、というべきか。

 

「そっか、逆療法…………」

 

そういってたまこは何か考え込むように空へと視線を向ける。

おいおいおい、大路は釘とは違うんだぜたまこさんよ。

 

「……っ!」

 

私と同じ連想にたどり着いたようで、顔を赤くして首を振る。

…………何やってんだか。

 

「まぁとにかく、餅スランプも一時的なものだと思うので、そんなに深刻にならないほうがいいですよ」

「…………うん、ありがと。かんな」

「部長として当然のことです」

「あんたいつ部長になったのよ」

「……ばれましたか。みどちゃん、ここいらで私に部長職を譲る気には」

「ならないわよ」

 

相変わらずの私たち4人。

でも、変わるべき時はすぐそこに来ている。

そんな確信めいた予感が、私の中で着実に育ちつつあった。

 

 

 




お待たせした上に今回も短くて申し訳ありません。
たまこラブストーリーBDが予約開始しましたね。
私はもちろんすぐ予約しました。

それでは。また。
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