「ミカヅキです!宜しくお願いしますね!」
「ミカヅキか...。ありがとう。もしかしたら担当になるかも知れん。その時はよろしく。それじゃあ俺はこれで。」
「ありがとうございました!!」
お礼だけして橋川さんとはここで別れ、私は入学式の受付へと向かった。
しかし中央のトレセンだけあって面積が広い。私は特段、方向音痴という訳ではないのだが、それでも迷子になってしまうんじゃないかって心配になってしまうほどだった。
それでも、新入生案内用の看板に従って進んだら何とか受付に着くことができた。
ほっと一息入れて、早速受付を済ませる。
「入学おめでとうございます。名前を教えて下さい。」
「ありがとうございます。ミカヅキです。」
「ミカヅキさんですね....えぇっと。こちらです。そのままお進みください。」
「ありがとうございました!」
一言だけお礼を言い、受付の方に渡された座席表に従ってそのまま体育館に入る。
ここで、これで私もトレセン学園の生徒になるんだという自覚が湧き、期待と不安と緊張が同時にやってきた。
鼓動も激しくなり、手に汗を握らざるを得なかった。
少しだけぎこちない動きになりながらも自分の席に座る。
腕時計で時間を確認してみると、8時50分。もうそろそろで入学式が始まる。
そう考えると、先ほどの感情がどんどん高まってくる。
ー お..落ち着け...大丈夫だ。
そう自分に言い聞かせ、深呼吸するが、それで簡単に落ち着けるほど人生上手くできちゃいない。
結局心臓バックバクのまま、入学式が始まってしまった。
『それでは、第■■■回、日本ウマ娘トレーニングセンター学園 入学式を挙行致します。』
『入学許可宣言』
すると、理事長らしき人物がステージに上がった。
女性の方で、髪は栗毛のロングヘア。お世辞にも身長は高いとは言えず、何処かロリっぽさを感じる。
帽子をかぶっていてその上には、猫...? しかも生きてる....。
そのためか、会場が少しだけざわつき始めた。
すると、どこからともかく扇子らしきものを取り出して、
「許可ッ!入学許可候補生の入学を認めるッ!!」
今度は会場が雑音一つすらしなくなった。新入生のみんなが、理事長らしき人物に圧倒されていた。
勿論、私も例外ではない。
『理事長、式辞。』
数秒経って、司会の方がプログラムを次に進めた。やはり、あの方が理事長らしい。
「祝福ッ!!新入生の諸君!!入学おめでとう!! 私はこのトレセン学園の理事長、秋川やよいだ!! 諸君らは厳しい入学試験や審査に見事合格し、入学した!!入学に至るまでの努力を称えるとともに、入学を歓迎しよう!!」
最初こそは独特かつ豪快なこの話し方に圧倒されていたが、私はそれにだんだんと引き込まれていった。
夢や希望に満ち溢れ、理想論を語っているようにも見えるがしっかりと現実も見ている。
小学校の頃は校長の話なんて、ただ長くてめんどくさい、それにうわべだけのものだったが、この理事長はそうではなかった。
「期待ッ!!新入生諸君!!今後とも我がトレセン学園で能力を大いに発揮してくれたまえ!!」
そう感じたのは私だけではないらしく、式辞が終わると大きな拍手が体育館全体に広がった。
その様子を見て理事長は誇らしげに、ステージを降りて行った。
『生徒会長 歓迎の言葉』
今度はその言葉に、またも会場がざわつき始めた。
最初は、ただの生徒会長の挨拶になぜみんながざわつき始めたのか解せなかった。
しかし、その理由は直ぐに分かった。私も、本人を生で見たのは今日がが初めてだ。
その堂々たる立ち振る舞いに私を含めた新入生全員が魅了された。
「Eclipse first, the rest nowhere. 皆さんはこの言葉を知っていますか。イギリスの古いことわざで意味は"唯一抜きん出て並ぶ者なし"。この学校のスクールモットーでもあります。皆さんにはこの学校で―」
理事長の言葉同様に、やはり入学式だけあって歓迎の言葉も長い、しかしそれ以上に引き込まれるものがある。
不思議とすらすら頭の中に入ってきた。
これがカリスマというものだろうか。
「―と、長々と堅苦しく話しましたが"僕"の言いたい事はたった1つ。」
ここで生徒会長の声のトーンが高くなる。
皆驚いたのか、体育館が静まり返り、雑音すらしなくなった。
「入学おめでとう。僕たちは心より歓迎します! 生徒会長 トウカイテイオー。」
ここで、この日一番の拍手が体育館を支配した。
それを見た理事長もまた誇らしげに拍手している。
ー すごいなぁ...トウカイテイオーさん..
私も思わず感心し、自然と拍手が大きくなる。
緊張はもうどこかへ行ってしまったが、期待と希望でさっきよりも鼓動が大きくなってしまった。
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入学式も終わり、それぞれの教室に案内された。
私は1年3組の教室。席は窓際の後ろ側。結構いいポジションだ。
昔は、クラスは能力別にABC~で分かれていたが今は廃止され、1~5組に変更されたらしい。
教室を見渡せば、もう馴染んで話している子もいれば、まだ一人の子もいる。
私は勿論まだ一人だ。私の通っていた小学校からここに来たのは私一人なのだから。
ー これから友達とかできたらいいなぁ、
そう心の中で思った次の瞬間だった。
「ねぇ、」
「ひゃっ!?」
隣の席の子に話しかけられた。こんな早い段階で話しかけられるなんて思ってもいなかったため、思わずびっくりしてしまう。
青鹿毛の流星のある髪で、右耳に鎖のような耳飾りが付いている。藍色の瞳をした綺麗な子だ。
「ごめん、びっくりさせちゃったね。」
「すいません...考え事しちゃってて...」
「敬語じゃなくていいよ!私、ウィンターカラー。ウィンタって呼んで。あなたは?」
「ミカヅキです!これからよろしく!」
「こちらこそよろしくね!ミカヅキちゃん!」
そう言って彼女と握手を交わす。
出だしは好調。これなら充実した学園生活を送る事が出来るかもしれない。
私の心は期待でいっぱいになった。
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入学式もホームルームも終わると、今度は寮に案内された。
寮は栗東寮と美浦寮の2つがあり、私は栗東寮。
寮に入るとまずは、寮長の挨拶から始まった。
「私が寮長のフジキセキだよ。まぁ、寮長と言ってももう私は現役から引退してるんだけどね。これからよろしく、ポニーちゃんたち。」
まぁまず見た目も立ち振る舞いもカッコいい。
イケメン寮長の登場にまたもみんながざわつき始めた。
「それじゃあ、これから寮を案内するからついてきてね。」
そう言ってフジキセキさんに連れられて私たちは大浴場・リビング・2人部屋などを案内された。
トレセン学園もそうだったが寮も広い。これは覚えるまで時間がかかりそうだ。
そのほかにも寮のルールや注意事項を説明された。
意外にもルールはそこまで厳しくはない。
「説明は以上だよ、ほかにも聞きたいことがあったら遠慮なく私に聞いてね。最後に部屋割りを発表する。発表された子から解散していいよ。今日は疲れただろうし、ゆっくりと体を休めるといい」
トレセン学園の寮は原則2人部屋だ。ペアが誰になるのかはこの瞬間までわからない。
正直、すごく緊張する。鼓動が激しくなるのは今日はもう何回目だろうか。
次々と周りの子が発表されていくなか、私はドキドキしながら自分の番を待った。
「次、327号室。ウィンターカラー。ミカヅキ。」
驚いた。なんと、ウィンタちゃんと一緒の部屋だった。
お互い、もう友人と言えるほど仲良くなっていたため、正直嬉しかった。
早速、2人でその部屋に向かう。
「一緒の部屋だったね。ウィンタちゃん。」
「すっごい偶然。でもミカヅキちゃんが相手でよかったな~。初めてだと、ちょっと気まずいじゃん。」
「確かに。私もウィンタちゃんでよかった。」
「じゃあ改めて宜しくね!ミカヅキちゃん!」
「こちらこそよろしく!ウィンタちゃん!」
そうやって二人で仲良く話しながら、部屋の中に入る。
「「わぁ....」」
さっきも紹介されたが、いざ自分の部屋に入ると、その部屋の綺麗さに驚いてしまう。
ここでこれから生活すると考えると、ワクワクして仕方がなかった。
そう考えた次の瞬間。彼女がそのまま左のベットに飛び込んだ。
ボフン!
「すっごい!ふかふかだよ!」
「もうはしゃぎすぎだよ~。」
「ミカヅキちゃんも来なよ!」
そう彼女に言われ、一瞬迷ったものの私もベットにダイブした。
ボフン!
「きゃっ!」
「ほんとだ、すっごいふかふか...!」
「でしょ!、そうだ!今日一緒のベッドで寝ない?」
「ウィンタちゃん...良いの? 私、結構寝相悪いよ?」
「全然大丈夫だよ!それに、私、恥ずかしいけど、新しい環境で1人で寝れるか心配なんだ。だからお願い!」
「ウィンタちゃんがいいなら!」
「やった!ありがとう!ミカヅキちゃん!」
「それじゃあ、もう風呂入っちゃおうか!一緒に入る?」
「入る入る!」
この日は荷物の整理を最低限だけにして、彼女と一緒のベットで寝転がりながら、いろんなことを話し合った。
家族の事、これからの目標、出たいレース、恋バナなど。
ついつい盛り上がって、時間を忘れて話し合った。
しかし、やはり初日だけあって疲労からか消灯時間が来る前に彼女が先に寝落ちしてしまった。
「私も、そろそろ寝ますか..。」
部屋の電気を消し、布団を彼女と自分にかける。
「むにゃ....んん....」
「おやすみ、ウィンタちゃん。」
それにしても、入学式初日からいい友人ができた。それにこれから楽しい学園生活を送れそうだ。
そんなこんなで入学式初日は問題ないどころか最高の一日になった。
ー この学園に入れてくれてありがとう、頑張るからね、母さん。
そう心の中で呟きながら、私はゆっくりと瞼を閉じた。
.......
....
..
.
「んんっ...」
どこか身体に違和感を感じ、夜中に目が覚めてしまった。
ー 体が重いし、動きにくい....金縛りかな...?
そう思い、自分の身体に視線を向ける。
その違和感の正体は直ぐに分かった。
「っ...!?」
隣で寝ているウィンタちゃんが、私に抱き着いているではないか。
「すぅ....すぅ.....」
顔があと数センチの所にまで近づいてきている。
私の心臓が、聞こえるんじゃないかってぐらい激しく鼓動してしまう。
ー 落ち着け....大丈夫だ....
そう自分に言い聞きかせ、起こさないように気を付けながら腕をどかそうとする。
幸いにも力強く抱きしめているわけではなかったため、腕は直ぐに離れた。
と思った次の瞬間だった。
「んん....むにゃ......」
「!?!?」
離れかけてた腕を私の方に戻し、今度は足まで私の上に乗っかってきた。
私は別に女性が好きという訳ではないのだが、それでもやはりドキドキぐらいしてしまう。今日で一番鼓動が激しくなる瞬間だった。
頑張って元に戻そうとしても、今度はなかなか離れようとはしない。
しかも、これ以上やったら起こしてしまう可能性もある。
ー 今日は寝れそうにないなぁ.....
そう思いながら私は元に戻すのを断念。一息だけついて、その瞼を再びゆっくりと閉じた。