帝国VS少女一人   作:にーむ

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禁忌

 

 始まりの合図は分からない。だが、全ては同時に起こった。

 

 八賢者の一人、《天望》のアラミアによって張られていたラスノートを守護する結界。それに魔術が当たり、弾ける。

 六ヶ所で激しい土煙が、閃光が巻き起こる。この世を終わりを思わせる爆音が高鳴り──、

 

 ──そしてそれに追従するように《白剣》は駆けた。

 

 それは単なる疾走であった。地面を踏み締め、押し出す。だがそれだけの行為が、彼女を『英雄』の領域へと容易く押し上げる。

 

 「ッ──!!」

 

 それをメルアが瞳で追う。いや、追えてなどいない。これはただ、『こうなるであろう』と予測する《魔術》による先読み。細い右手が突き出され──その先に《白剣》は現れる。

 

 それは思考の内であったのだろう。剣を構えた彼女は展開された六芒の障壁を見据え──、

 

 「っ──」

 

 ──一息。ただ振るった。

 

 そして衝突。弾けるのは爆音。莫大な暴風を撒き散らし、そして両者は拮抗──する筈もなく。

 

 一筋の土埃が大きく大地に刻まれる。弾き飛ばされたのは片方。ならば、それは明白であった。土煙が収まり露わになるその影は、ゆっくりと小さな少女を形作る。

 

 「──はぁっ……はぁっ、はぁっ……」

 

 やっと停止したそれは、やはりメルアであった。

 そして右手を付き、よろよろと彼女は起ち上がる。蒼い髪は既に見る影もなく茶色に色づいていた。

 

 なにより目を引くのは、泥色に汚された白色のローブ。代々受け継がれてきた《賢者》の正装であるそれ。泥を被ったその姿は、尊敬される賢者にあるまじき屈辱であるはずだ。

 

 「軽いな」

 

 それをしっかりと見据え、《白剣》は瞳を細める。濁りなど一欠片も存在しない金色に少女は映し出されていた。

 

 「……私の動きを貴様ら魔術師の常套手段で()()()ところまでは認めよう。先の《大杯》との戦闘で動きを見せた故、それも致し方ない。

 その『六芒』の魔術の強靱さも認めるのはやぶさかではない──だがやはり、」

 

 そして再度一息。一度瞳を閉じると、ゆっくりと剣をメルアに向ける。

 

 「──軽い。軽すぎる」

 

 まるで中身のつまっていない人形を相手にしているかのようだった。

 ただ一振り。されど一振り。それだけで《白剣》が違和感を感じ取るには十分過ぎた。

 

 「ふふ……なんの、こと?」

 

 微笑む。メルアは慣れていない笑みをその表情に形作る。足を動かす。右手を強く握る。

 そして、ぎこちないそれは《白剣》に見抜かれていた。

 

 「呼吸が荒すぎる。武術を囓っていないにしても体幹が崩れて過ぎている。だが肉体としては存在しているな。

 となると結論は一つだ……しかし、そこまで貴様らも外道に堕ちたか。投降した後、我等帝国の為にラスノートを存続させるのも考えの一つではあったのだが……これではそれすらも無しなりそうだな。さて、では問おう。と言っても、魂無き『肉』越しでは通じんかもしれんが」

 

 そして、《白剣》はゆっくりと口を開いた。

 

 

 「──フィード。貴様の『本体』はどこだ」

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