廃墟に響く残響   作:ブルーな雛菊

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day0.5・事なかれの大衆心理

SEPTEMBER18 15:45 (day0

合衆国 コロラド州 ウィラメッテ メインストリート

 

 

通り過ぎる建物から響く、助けを求める館内放送。誰かが警鐘がわりに作動させたのか、火災報知器が火の手のない店舗から曇天に響いている。まるでゾンビのような異常者は徐々に数が増えており、その魔の手から逃げ延びようと歩道、車道、お構いなしに叫び声を上げながら逃げ回る人々。町を出ようとする者、強固な建物へ立て籠もろうとする者、様々な意思が絡みつきより一層道路の混沌を加速させていった。

 

「どこも・・・同じね。町全体が地獄になったみたい。これからどうする・・?」

 

町に設置された監視カメラの映像をPCで見ながら現状の感想をこぼす。車の外で行われてる命を懸けた徒競走、恐慌状態に陥った人々を横目に今後の行動を運転席に居るシエラへと問うエマ。安全とは言えないものの、ドア一枚隔てていることで何とか冷静さを失っていないようだった。

 

「せやな‥‥この町から脱出することが先決やな。」

 

人々を避けるようにハンドルを切りながら答えるシエラ。

学校で拝借した教員の車、ダッジ・チャレンジャー SRT392・・・有名なマッスルカ―、ヘルキャットの素体となった車だ。V8、6400cc。485hpを生み出すエンジンは0-100km/hまでをわずか4.4秒で到達する。

最も、この町の混雑した状況ではその性能を存分に発揮することは出来ずにいるが。

車は衝突した際に変形して衝撃を吸収し、乗員を守るように設計されているのが大半だ。人を撥ねればバンパーは外れ、フロントガラスは砕け散り、運が悪ければ冷却器を破壊しエンジン部分に突き刺さる。何人も跳ね飛ばしながら進めるようなタフネスさはこの車には持ち合わせていなかった。

 

うんざりしたように何度も人々を避けて、車へのダメージを減らすシエラ。

 

「貴方の家族は?」

 

自身の家族が持つ携帯のGPSが町から離れて行ってるのを確認しながら友人に問う。

 

「うちの家族は大丈夫や・・・この程度ではくたばりはしない。」

 

苦笑いと共に答える友人。

エマは現状を確認するためにも車内のオーディオを操作しラジオに設定するが、普段通りの天気予報、連続殺人犯の裁判の様子。今しがた車の外で行われている、この地獄めいた暴動の事を上げる局は存在してなかった。そのことがより一層不安を駆り立てる。

 

「妙やな・・・地方のラジオ局まで・・」

 

無音のラジオならまだよかった。この町のラジオ番組からは司会がいつもと同じようにゲストと談笑してる会話が聞こえてくる。この騒動に気づいていない?それはあり得ない。ではどうして・・?

 

お願い!車を止めて!!助けて!!

 

女性が車に並走しながら窓を叩く音で思考は中断された。

音と共に増えていく窓に付く赤い手形、息を切らしながら必死な表情で助けを求める女性と()()()()()()()()()

 

「ねぇ・・シエラ「ダメや!()()()()()地獄みたいな状況になってるか分からん。こんな時にリスクは犯せれん!」」

「・・・・分かった。」

 

女性の瞳に宿る絶望、恐怖、そして微かな希望を置き去りにして車は進む。

シエラの言うことは正論だった。空気感染や食物関連で人々がゾンビの様になっていってるのだったら自分達は手遅れ。しかし今も体に異常がないところを見ると原因はその他にある。例えば感染者との接触、体液を介しての感染。これでは本当にゾンビ映画のようだ。だが、可能性がある以上リスクを増やすわけにはいかない。

自身の身も危うい状況で他者に救いの手を差し伸べる事が出来るほどの力を持ち合わせていない事は理解はしている。()()()()()()()()()。まるでこの町の新しいルールとでもいうように逃げ惑う人々は他者を見捨てていった。

 

「止まって!!」

 

車内にエマの声が響く。

丁度、車が交差点に差し掛かろうとしていた時だった。停止したエマ達を乗せた車、追い越すSUVが一瞬にも関わらず、まるでスローモーションの様に鮮明にその姿が見えた。車体全体に激しい凹凸。フロントガラスは割れて、ボンネットからは冷却水が漏れて蒸発してるかの様に白煙が上がってる。シエラが丁寧に人を跳ねないようにハンドルを切らなければ自身達の車も同じようになっていただろう、そう思える光景だった。そして、もしもエマの制止を聞かずに交差点に侵入していたならば……

 

激しい衝突音。SUVが見覚えのある黄色の塗装をしてあるバスに側面から突っ込まれ横転した。鳴り響くクラクション、スクールバスの窓には血痕が付いており、中の運転手も無事ではないと用意に想像が出来た。

 

「何が正しいのか……もう分からない。」

 

まるで、自身達の行動の答え合わせ。何が正しいのかは蓋を開けてみないと分からないギャンブルの様なもの。今もなお鳴り響く警笛に引き寄せられるように周囲のゾンビはバスとSUVへと集まって行く。助ける?否。自身の車も取り囲まれて詰むのが目に見える。仮に救出したとしても数時間前にパニックに陥り同級生を殺しあった者達と行動を共にするのは抵抗があった。

 

「結局、選べる道は複数あっても全てが望んだ未来に繋がってるとは限らないものやな……」

 

一歩間違えれば自身が歩んだ道。感情も感傷も込められていない呟きは町の喧騒の中に消えていった。

 

 

day0 16:00

合衆国 コロラド州 ウィラメッテ 郊外

 

町から離れ、ゾンビや逃げ惑う人々は疎らになり徐々に静寂が訪れようとしていた。ラジオからは相変わらず同じ様な内容の普段通りのニュースが流れている。時折聞こえる爆発音。それが、先程の地獄が決して夢ではないと少女達に告げているようだった。

 

「おかしい……」

 

シエラの顔が爆発音が鳴る度に険しくなっていく。

隣の席で高速で叩かれるキーボードの音が車内に響く。

 

[いやー。この事件もようやく終わりをむかえますね…犠牲になった方々には追悼の意をささげます。]

 

[今回の一件はどのように捉えますか?]

 

[この犯行は非常に残忍で短絡的と言っても過言ではないでしょう・・・・]

 

今日、何度目になるか分からない司会とゲストのやり取り……町を抜ける際には外の状況が悪く、聞き入れる余裕は無かったが、思い返すとどうだろうか?一言一句間違わず同じコメントを言っていなかっただろうか?

 

再び響く爆発音。前方からは黒煙が上がってるように見えた。

 

「アカン………どうして……いくらなんでも早すぎる!」

「ちょっと!?シエラ?」

 

急ブレーキ。車の荷重が前方へ傾いた状態でハンドルを切り、即座にアクセルを踏む。有り余るトルクは後輪を空転させ、路面に4つの線と白煙を残す。

 

「この先に家族が居るの……」

「あんたも気付いてるんやろ…この先にはいけん。」

 

ノートPcのモニターに示される、30分前から移動しなくなったGPS。ラジオは切り取り、繰り返し流している様に感じる。電話回線はパンク状態。PCの電波も著しく悪い。まるで、何者かが外部への情報流出を阻止してるように。ここまでしておいて、町から脱出しようとする住民をそのまま素通りさせてくれるのか?その答えは前方の黒煙が物語っている。

 

「手遅れや………すまん…」

 

自身の目で確認したわけではないが、この先に待ち構えているものは想像がつく。展開の早さから先遣隊として航空勢力が投入されたのだろう。例えば攻撃ヘリ、アパッチロングボウ。例えば近接航空支援機、サンダーボルト2。例えば無人攻撃機、リーパー。どれも対地攻撃に特化した機体だ。車で逃げ切れるものではない。

 

「……いいえ……大丈夫。私こそ、ごめんなさい」

 

再びpcへ目を落とすエマ。

 

「まだ回線が生きてるうちに町の情報を外へ流す。」

「…わかった。うちらは救助が来るまで立て籠るとするか…ショッピングモールに行くで。」

 

 

日が傾き沈み始める。

辺りは次第に、闇へと変化を遂げていく。先程まで騒音を発していた町中も周囲の暗闇に同化するように、次第に静けさを取り戻しつつあるようだった。外部の2つの宛先に、惨劇のあった店舗の動画を転送し終えた時だった。完全に沈黙した回線。町中にも関わらず圏外を示すアンテナの表記を確認し、時間切れを悟った。

 

(やれることはした……後は、選んだ道が何処へ続くのか見届けるだけ。)

 

窓越しに見える燃える車。ゆらゆらと暗闇をてらす炎を眺めつつエマは静かに瞳を閉じる。

 

 

SEPTEMBER19 11:27 (day1

合衆国 コロラド州 ウィラメッテ 上空

 

朝方まで続いていた雨は上がり、空には青空が顔を出していた。

チャーターヘリから町へと続く景色を見下ろす。

 

(山、木、山、畑、家、畑…遠くには町へと続く道路…)

 

ここまでくると一々言葉にする必要性すら感じない。人が住んでるかも景色。特に撮影する必要すら感じないが、とりあえず撮っておくのが紳士(ジャーナリスト)の嗜みであろう。

 

「お客さん。取材だって言ってたな。」

 

高速で進むヘリ。開け放たれたドアからは強風が機内に入り込んでいる。そして大気を裂くローターとターボシャフトエンジンの奏でる騒音。本来なら聞き取ることも困難な会話はヘッドセットの力で容易に行える。

 

「ああ 何か起きているらしいって話なんでね。」

 

一眼レフを握りしめ、写真を撮りながらパイロットへと返答する男。

 

「あんなしけた町でねえ・・・テレビでは何も言ってなかったけど?」

「俺みたいなフリーランスにはフリーなりの情報網ってのがあるのさ」

 

自身の情報網とドヤ顔で返答しているが‥真っ赤な嘘である。昨日、奇妙なメールが届いた。送り主のアドレスが記載されていない、本来届くことのないメール。そのメールには、ウィラメッテとこの町の名前だけが記されていた。そして、添付された動画には、スーパーマーケットと思われる場所で次々と市民を虐殺する店員の姿。

知り合いでもない、普段利用している情報屋でもない。見るからに怪しいメールに自称:戦場ジャーナリスト、フランク・ウエストはこれ幸い!と飛びついたのである。

 

「見えたぜ」

全く開発のされていない山々を抜けて町並みが前方に姿を現す。パイロットが親切にもウィラメッテの紹介をしてくれているがフランクは別の物から目が離せなかった。郊外、町と山々を切り離すように流れる川。2つの境界線をつなげるように架けられた橋と、それをバリケードを設置して封鎖している兵士達。

 

APC(装甲兵員輸送車)と兵士8人・・・)

 

「なんだありゃ、軍隊か?」

「ああ、ヘリで来て正解だったな、この分だと道路は閉鎖されている。・・・封鎖が進む前に町の全景を取っておきたい。大通りに沿って飛んでくれ。」

 

進むヘリ。眼下には乗り捨てられた車たち。人気(ひとけ)はなく閑散とした道路が広がっている。

 

「何だこれは、暴動か?」

 

前方に見える景色を操縦士が先に見つけて様だ。

横転したSUVとスクールバス。SUVから這い出した男がバットで近寄る市民を殴りながらより高いところへ逃げるように、自身の横転した車によじ登ろうとしているところをカメラのレンズ越しにフランクは見た。1人の男に10人の集団が取り囲むようにゆっくりと接近している。力任せに振るわれるバットは市民の頭部に命中し、派手な血飛沫を上げる。倒れこむ市民、しかし再び立ち上がる。

 

バランスの悪い横転した車の上、血濡れたバットを持つ男は手を振り助けを求めてるようであった。

 

(今しがた凶器を使って殺人未遂を行った男が被害者に見えてくる。)

 

市民の伸ばした手が男の足首を掴み、路面へと引きずりおろした。その後の事は車の影で行われており確認できていないが想像は付く。スクールバスに張り付く20人くらいの暴徒?に向けて何の感傷もなく、淡々とシャッターをきった。

 

「あんた、これを取りに来たのか?」

「ああ」

 

ありのままを伝える、たった一枚の写真が多くの心を動かし何百人の命を救う。そう信じて来たからこそ今、彼はここに居る。()()()()()ここに居るのだ。

 

「いったい何が起こってるんだ」

「判らん、ただ・・・こいつはちょっと普通じゃないな。この先のショッピングモールのヘリポートに降ろしてくれ」

「冗談だろ!?イカレテルゼ」

 

前方に見える目的地。近づくにつれて徐々に鮮明になっていくモールの全景。まるでこの町の住人の7割が、モールを包囲しているようにも感じる地獄のような光景が目の前に広がっている・自身の持ち物を確認し着陸の準備に入るフランク。持ち込んだアタッシュケースには広角レンズ、望遠レンズなどの機材のほかに護身用にリボルバー(タウルスレイジングブル)が入っている。

 

「頼むから迎えを忘れないでくれよ!」

「生きてればな・・フレッド「フランクだ、フランク・ウエスト3日後に有名になる名前だ」」

 

帰りの便の約束をした間際だった。突如現れた軍のヘリ。民間ヘリの操縦士は軍のへりに追い回されながらも何とかフランクをモールに降り立てた。

 

 

SEPTEMBER19 12:00 (day1

合衆国 コロラド州 ウィラメッテ ショッピングモール

 

「よお、報道の人だな?」

「ああ。ところでここで何が起こっている?」

 

降り立ったフランクの背後に佇む男。情報を求めるフランク。

 

「ヘリで来たんだろう?どう見えた?」

「暴動にしては封鎖が厳重だ。情報統制も普通ではない。そして、暴動にしては静かすぎる。「まるで死人の群れみたいに?」」

 

思い返すと引っ掛かる事が多数ある。暴動にも関わらず、警棒、催涙ガス、ゴム弾で武装した治安部隊ではなく、小銃と手榴弾、装甲車まで配備した軍が町を封鎖していること。これだけの事をしているにも関わらず町の外には一部を除き一切情報が漏れていない事、不満や自身の理想を掲げる暴徒はこの町には存在せず、警官隊達と衝突した際の戦闘音も聞こえてこない。政治家がターゲットという事でもなく、市民同士が殺し合ってる。何より・・何故、市役所や警察署ではなく()()()()()()()()()を暴徒が包囲しているのか・・・

 

思えば目の前の男も奇妙に感じる。フランクが到着した際に、目の前をヘリが飛行したにも関わらず助けを求めたり取り乱したりはしていなかった・・モールに到着するまでに出会った()()()町の住人が()()()()助けを求めてたにも関わらずにだ。

 

 

「…そろそろ教えてくれないか?」

「自分の目で確かめるんだな。ここは地獄だ。」

 

これ以上情報は引き出せないと判断し、フランクは屋上をあとにする。

 

(どのみちすぐに分かる事だ。それに、戦場が地獄以外であった試しがない。)

 

 




~屋上にて~

男は声を殺して笑う
「自分の『カシャ!』目で確かめ『カシャ!カシャ!』るんだな『カシャ!』」

「20pp 20pp 20pp……』

「なぁ!あんた!?「やっぱり被写体が悪いのか……」おい!!!」

人がいたら取り敢えず撮ってみる……ジャーナリストの習性であった………


人物紹介、捕捉

SUVの男:ここでも登場。スーパーから脱出後、ゾンビ達を撥ね飛ばしながら最短ルートで郊外を目指すが、交差点で側面からバスに突っ込まれ横転、翌日まで気を失っていた。ヘリの音に目覚め助けを求めようと外に出るが補食される。

バスの乗員:学校の生徒と教員。襲撃のパニックで我先にと押し合い、文字通り屍を踏み越えて行った結果、たったバス一台に乗らないぐらいにしか生存者が生き残らなかった。(途中で追い付かれた、逃げた先に感染者に包囲されていたなど)地震の避難の時などリアルでも同じことが起こっているので皆さんもお気をつけて!

SRT392:ワイルドスピードでお馴染みのマッスルカー!デーモンやヘルキャットではないので筋肉成分は控え目、とはいっても十分化物スペック!作者が一度は乗ってみたい車!

アパッチロングボウ:シエラが予想した航空部隊。丸腰で出会いたくない兵器その1。30mm機関砲や対地ミサイル、ロケットなどとても充実。映画で対物ライフル使って落とす描写あったりしますがあれって本当?23mmが直撃しても数時間飛行可能とのことです。

サンダーボルト2:シエラの予想、その2。皆大好き空飛ぶ戦車。此方も対地攻撃特化。大好きな『ブーーーー』って音が届く前に相手は死ぬ!

リーパー:シエラの予想、その3。無人機は使い捨てるという印象が先行しがちだが、この機体は軍の要望を詰め込んでいった結果高コスト、ハイパフォーマンスの機体が完成してしまった。(使い捨てには高すぎるため目的の用途には不向き)航続距離や航続時間が群を抜いており、高高度偵察が出来る程レーダーやセンサーは高性能。ヘルファイヤーミサイルを搭載して上空を旋回する様は、まさに死神そのもの。シエラの判断は正しい!

エマの家族:連絡の取れない娘を心配しながら一足先に脱出しようとしていた。「親方!空から女の子(ミサイル)が!!」

フランク:エマのメールに釣られてきた戦闘カメラマン。原作の主人公。回復アイテムで噛みきられた肉体が回復するわけではないので持ち込んだリボルバーは調整ということで!(ぶっちゃけ銃は要らないかもしれないw)強い!とにかく強い!対ゾンビ用人型戦術決戦兵器の異名を発揮してくるのは後々!

屋上の男:質問を質問で返すのはやめよう!

ヘリの操縦士:名前は忘れた!軍のヘリ、3機を振り切るって凄くない!?この機体がカプコン製でないことを祈りましょう!

作者:書きたい話と繋ぎの話では凄く差が出てくるへっぽこ。「飛ばしたいけど重要なとこだし……でもゲームやってる人はフランクの所は知ってるから短縮するか!」
やっと1日目!次回から本作の主人公が登場します!


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