廃墟に響く残響   作:ブルーな雛菊

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とある城とよんでも遜色のない雄大な屋敷の一画で少女と夫人がお茶を交わしながら雑談をしていた。

「どんなことにも教訓はあります。問題は、貴女がそれを見つけられるかどうかなのです。」

夫人の言葉にうーん……と唸る少女。

「私の話から何か教訓を得られましたか?」
教訓好きな夫人は少女に問う。

「えーと……表面上の言葉に惑わさせず本質を見抜く事が重要……かな?」
自信無さげに返答する少女に満足そうに頷く夫人。

「同じ出来事、経験でも何を得られるかはその人次第です。人それぞれに答えがあり、その答えに間違いなんてものはありません。貴女は見て、聞いて、体験して答えにたどり着いた。それは貴重な財産です。ですので他者の悪意ある表面上の嘘、偽りに惑わされないように。」

「はい……もしかして、これも嘘偽りだったりします?」

少女の問いに夫人は答える

「始めにいったでしょう?これは単なる物語だから信じちゃいけないって……例えそれが真実でもね。」

満面の笑みを浮かべながら



day1 とりあえずハワイで親父に習ったと言えばなんとかなる!

「神は人々に必ず一つは恩恵を授ける。それに気付き磨き上げる事で誰しもが芸術家(一流)になれるんだ。」

「自身の武器(特技)を見つけろ。そして、磨け!」

 

 

 

 

難民キャンプというにもお粗末で、たった今組み立てましたと言わんばかりの簡易テントの本部。土と砂の国。

戦争とは、戦いが終わればすぐに平和な生活が訪れるわけではない。

破壊され機能していない町のインフラ(ライフライン)の確保、復旧。無法地帯となったこの地で治安維持を行い住民の安全を確保する。

破壊するのは一瞬だが再建するのは莫大な時間が必要となる。それら(復旧作業)を仕切るのもSHDエージェントに必要なスキルなのだと言える。

自国ではないが度重なる紛争で疲弊したこの国は、エージェントにとっては訓練に適した地といえるのだろう。

 

「食料を配布します。順番に並ばれてください。」

国際ボランティア学生協会という建前(隠れ蓑)で復旧作業を行うメンバーを横目に、土嚢に腰を掛けて足をブラブラと暇そうに遊ばせるエコー。

 

(自身の武器(特技)を見つけろ。そして、磨け!・・・・ね。)

 

住民に食料を配るケベック。負傷者の救護を行うリマ。住民に指示を飛ばしているチャーリー。そして、暇を持て余してる私。

 

(その言葉を言われた後に一人だけ待機を言い渡せれると・・・・ね?)

 

思わずため息が漏れる。

出来る事なら安全な場所で惰眠を貪りたいし、命を削り合う戦闘なんてしたくもない。

しかし、自分だけ待機を命じられると復旧作業では『戦力外』と言い渡されているようで何とも言えない気分になっている。

 

 

まるで甘いお菓子に群がる蟻のように食料配布所へと続く長蛇の列。

誰もが自身の為に食料を奪い合う風景。当たり前となった日常の景色を他人事のようにぼんやりと眺める。

 

(与える者が居れば奪う者もいる。)

 

エコーの瞳にバックを持った男の姿が写った。

鞄の持ち手の張り具合から重量物が入っている事が伺える。

 

(施す者・・・そして、それを良しとしない者も。)

 

長蛇の列を無視し、配給所に向かう男を追うようにエコーは重い腰を上げる。

 

 

ふと、エコーの脳裏にチャーリーの言葉が思い浮かんだ。

 

(特技を見つけろ・・・ね・・・。)

 

きっとこれがチャーリーが私に待機を命じた理由。

私の特技・・・・

 

(私の思い描いたものとは全然違うのですけどね・・・)

自嘲の笑みが零れた。

 

 

SEPTEMBER19 20:40(day1

守衛室

 

 

「おい・・・・アンタ。」

(・・・・?)

 

 

声を掛けられたにも関わらず相手から返答はない。

見回すと、モール内への唯一の出入り口となった大きな空調ダクトの前に椅子を設け、瞑想しているかのように瞳を閉じている老いた警備員。ブラットは合流したジェシーという名の女性のエージェントと共にPCのモニターを眺めている様だ。

室内には忙しく『カタカタ』とPCのキーを叩く音。そして、心配げに此方の様子を伺うフランクの姿が目に入った。

 

「私ですか?」

「ああ・・大丈夫か?鏡を見た後から心ここに在らずって雰囲気だったが。」

 

「ええ・・・少し昔の事を思い出していただけです。問題はないです。」

生ける屍。暴走する市民。状況は特殊だが、エコーにとってはこれまで体験してきた戦場、悲劇たちと比べると然して(さして)思いに残る出来事ではないと言い切れる自信があった。

 

(私は大丈夫・・・・寧ろ、心配なのは・・・)

フランクに近寄り、その瞳をのぞき込んだ。

「寧ろ、貴方の方が大丈夫?」

 

フランクの方が身長が高い為、見上げる形となる。

エコーからは威圧感などは感じない。

見つめ合う2人。

しかし、先に目をそらしたのはフランクの方だった。

 

【挿絵表示】

 

 

(いくら戦場を見て来たとはいえ、目の前で助けようと手を差し伸べた者が()()()()()なんて体験したことはないでしょうし・・・)

知識として知っていると、実際に体験したでは重みが異なる。例え平然を装っていても、ふとした瞬間に最悪な記憶が蘇り、生き残った者を長く苦しめる。

 

「大丈夫だ・・・・「忘れろ、仕方がないとは言わない。それはあなた自身が折り合いをつけなければならないモノですから・・・」

「・・・・・・・」

「ただ、貴方がしよう(助けよう)としたことは間違ってはいない。誇りなさい。それが彼女に対するせめてもの手向けよ。」

「君は強いんだな・・・」

 

フランクの言葉を流し、タイプ音のが鳴りやんでいるジェシーへと目を向けた。

 

 

「状況は?」

「駄目ね、一般帯域は規制中。本部への直通回線も通じないわ。博士は?」

 

「抜け目のないジジイだ、応援を要請してから来いとさ。つまり、博士の保護どころか自分たちの安全すらあやしいワケか・・・。」

 

軍による情報遮断。ネット回線は切断され、電話で使用する中継基地も押さえられている状況。現在、使用できるのは本機同士で直接やり取りの出来る短距離無線程度なのだが…

(暗号化されていない一般通信など・・・当然傍受されているでしょうし。私達のやり取りを遮断しないのは内部の情報を知るためかしら?)

 

モール内の無線を傍受する事で生存者が何人いるのか、負傷者は、武装は、感染者の変化やテロリストの状況など様々な情報を入手していることだろう。

(その為に、敢えて使える帯域を残し泳がせている・・・・そうとしか考えれない。)

 

情報は時として命よりも重い。

仮にも軍事大国と言われている合衆国だ。その程度の事など平然とやってのけるだろう。

だからこそ・・・

 

「これだけの事態なんだ。当局のボンクラだって何か手は打つさ。」

と、口にしたブラットが事態を楽観視してる様にしか見えなかった。

 

「・・・・ヘリが来るぜ。3日後の正午、俺を迎えにね。」

「アテにできるのか?「勿論、俺はそれに乗って帰るつもりだ。」」

 

「・・・・いいだろう。必要経費は撃ちが持つ、博士を乗せてもらえるな?」

「ああ、ちゃんと話を聞かせてくれるならな。」

 

腐ってもジャーナリスト、ブレないフランク。普段なら適当にあしらうブラットだが今回の提示は魅力的過ぎた。

 

「後でゆっくり話してやる。だがその前に、先にかたづける仕事がある。少なくても3日間、ここで待つ必要がある。水、食料、・・・・毛布もいるな。博士を連れてくるのは明日の朝だ。引き続きモニターを頼む。」

 

退出するブラットを追うフランク

 

「貴方は何所に行くの?」

スクープ(生存者)を探しに行くのさ。」

 

勿論、ヘリを当てにしているフランクも・・・

(軍は甘くはない。私達は泳がされているだけに過ぎない。)

状況から察するに、無事にこの町を出れる可能性は限りなく低い。

 

(食料を取りに行ったブラット。生存者を探しに行ったフランク。ならば、私の役割は・・・)

 

再びモールへと戻る為に出口(空調ダクト)に足を掛ける。

 

 

 

 

 

掌に伝わる金属のひんやりとした感触。大きなダクトだが人が通るには狭く、小柄な体躯でも前屈みならざるおえない。反響する音。息の詰まりそうな圧迫感。長く感じる唯一の出入り口。

 

「こんな状況でなければこんな場所ごめんだわ。」

 

感染した者の知能は低く、ダクトを伝って安全地帯に侵入される心配は無いとみていい。しかし、物資の運搬や生存者のエスコートで何回もここを行き来することになると思うと気が滅入るというのが本音だ。

 

開け放たれた点検口の隙間から差し込む月明り。ダクトの終着地点。差し出された手を取り外の世界へ。

 

「わざわざ待ってくれたのですか・・・ブラットさん?」

「ああ、君に聞いておきたいことがあってね。」

 

月明りのテラス屋上。落下防止のフェンスの先。眼下には外灯の並ぶ巨大な駐車場。薄明りの中で蠢く何かがこれまでの惨劇が夢でないと告げているようだった。

「時間は有限です。どうせ目的地は一緒なのでしょう?移動しながら話しましょうか?」

「それで構わない。」

 

屋上からモール内、バックヤードの倉庫へとつながるエレベーターへのボタンを押しながら応答する。

「単刀直入に聞こう。君は何者なんだ?」

「見ての通り。女子中学生です?」

 

エレベーターの到着音。

開くドアと共に溢れ出る感染者。不意を突かれた至近距離での遭遇戦、反応が遅れるブラットとは対照的にまるで弾けるように迅速に行動を開始するエコー。

銃口を感染者の鼻先に向けて鋭い打突、そして密着した状態で引き金を引く。エレベーターの白い壁に赤い華を咲かせる。一人目の犠牲者が倒れこむよりも早くナイフをシース()から抜き放つ。次々と伸ばされる手の筋肉を片っ端から切断。心臓に刃を突き立て、背後の感染者の頭を肩越しにノールックで射抜く。先に脱落した感染者の死体に躓き転倒する者の頸椎を金属で補強された金属ブーツで踏み砕く。

 

「ええ、ただの一般市民です。」

「ただの一般市民は瞬時に6人を射殺しない!」

 

流石に無理があります?ペイントされたエレベーターの中の惨状を見ながら苦笑が零れる。

 

「ほら、これだけ密集してれば適当に撃てば当たりません?」

「そもそも!その銃は何所で手に入れた?合衆国では未成年へ銃を販売するのは禁止されているはずだ!」

 

確かに銃器国家とはいえども未成年への販売は禁止されている。州によって制度は異なるが免許保有者のみに販売、銃器1つ1つを登録、バックグラウンドを調査し反政府組織とつながっていないか等、犯罪に使用されない又は使用された銃器が特定出来るように法整備がなされている。それを当てはめるのなら当然のように銃を携帯しているエコーは不自然という事になる。

 

「アウトブレイクの起きてる状況でそれ言います?」

緊急時の自衛の為といえばそれまでなのだが、その理由では引き下がらないぞという意思がブラットの目からひしひしと伝わってくる。

(納得のいく答えを用意しろとね・・・他のメンバーならスマートに解決できるのでしょうけどね・・)

少なくてもエコーよりも社交性のあるメンバーの顔が脳裏をよぎる。

 

「これは私の物ではなくてパパの物です!緊急事態なので拝借してきたのです!」

「では、何故撃ち方を知っている?随分手慣れた感じだったが?」

「未成年の所持は認められていませんし使用も然り。ただ、保護者同伴やインストラクターと一緒なら問題はないでしょ?ハワイで親父に習ったのさ。」

 

「M2重機関銃の撃ち方もか?」

「・・・・・ハワイで親父に習ったのさ。」

 

ムスっとした表情のブラット。寡黙なイメージだったが案外表情は饒舌なのねと思ってるうちに自然と口角が上がってたようだ。

更に不機嫌なオーラを放つブラットを無視して先へと進む。

 

(残り11発・・・)

明日、博士を迎えに行くにしても安全を確保するために武器が必要になる。フランク達みたいに身近な物を武器に出来るのなら話は別なのだが・・・

少なくても私には銃器、弾薬が無いとこの先、生き残るのは難しい。そして、モール内に逃げ延びた他の生存者も同じ結論に行きつくだろうことも。

消費される物資、弾薬。確保するなら今しかないない。

 

 

 

 

SEPTEMBER19 21:50(day1

ノースプラザ N127 Huntin' Shark前

 

オープンしたばかりのショッピングモール。

テナント募集の空きスペースや改装中の店舗が多く立ち並ぶノースプラザ。その影響か、他の区画と大きく異なり通路にも作業用の足場や工具、木材等が多く放棄されたままだ。

本来ならば安全上の理由で乱雑に置かれたそれらは咎められるべきの物だ。だが、今回の状況においてはそれらを活用することができる。

 

「奴らには足場へと昇る知能はない。有難く使わせてもらうぞ。」

先に3m近く高さのある足場によじ登ったブラットが身を乗り出してエコーを引き上げる。

 

「目的地までどのくらいだ?」

「N127ですよね・・・先の通路を右に曲がって突き当りですね。もうすぐです。」

 

目的地はN125 Huntin' Shark 

MAPで店舗名と位置を確認しただけなので実際にどんな店舗かは分からない。

 

「銃器店だと思います?」

「・・・でなければハンティングシャークなんて大層な名前は付けないだろう。」

 

それもそうねと返すエコー。先に店舗の扉を開け、侵入するブラットを追い店内に足を踏み入れる。

カウンターには散弾銃を構える店主と思わしき男。そして、何やら店主と揉めている一般市民の姿が合った。

 

「先客?」

「そのようだ・・・」

 

ゾンビの徘徊するこの状況。

優先順位の高い物は水、食糧、安全な場所。そして脅威を排除するために必要な()()

生き残った生存者が武器を求めて銃器店に来るのは当然だと思える。

 

「ゾンビと闘うには銃が必要なんだ!」

生存者の訴えへの返答は銃声だった。天井に向け放たれた銃弾。内装を破壊しパラパラと残骸が降り注ぐ。

 

「来るな!ゾンビなんかよりも生きてる人間の方が信用ならんのだ!」

「話し合おう!」

 

店主は此方に散弾銃を向けたまま。居合わせた男性の説得に応じようとしない。

 

「タイミングの悪い所に居合わせたようですね……戻りましょうか、ブラッドさん?」

「おい!?銃は……?」

 

制止を無視して一人店内から出るエコー。いまだに硬直状態の店主と男性の顔を見渡す…

目の前には銃と弾薬、言い争っている2人の男性、店の外には大量のゾンビ。そして、正体をあかさないが見た目だけなら中学生くらいの少女。

少女を一人、ゾンビを群れの中へ向かうのを見届けるのか?

目の前の(武器)と良心を天秤にかけ……やがて諦めた様にブラッドはエコーを追って外へ出る。

 

「何故?」

勝手に去ったことを咎めるブラッド。気持ちは分かる。

 

「ブラッドさん……貴方にとって()()()()()()とはどの様な人々をさします?」

 

「軍服を着、銃で武装した人を一般市民とは呼べない。では、私服を着た人々は無力な市民と言えるのでしょうか?」

 

「例えば火炎瓶を持った市民を射殺したとして、報道陣は()()()()()()()()()()()と報じるでしょうか?」

 

銃を持った戦闘員だけが敵勢力とは限らない。

投石でも人を殺す事は可能だ。そして、部隊の所在地等の情報を敵勢力にリークされたら壊滅的な打撃を受けることになる。

何処までが敵で、何処までが無視しても問題ない存在なのか、近年になり識別が困難になりつつある。ならば先ほどの店主は?

 

「今回の店主はどう見えました?彼の立場からは、私達の方がアウトブレイクに託つけて商品を強奪しようとしている暴徒と見えたのではないでしょうか?」

 

「緊急事態ならば何をしても赦される訳ではない。それに彼はまだ()()を越えていない守るべき市民なんですよ?あの場に残って一体何をしようとしてたのですか?」

 

振り返る少女。

その顔には何の感情も込められていない。

ただ、その瞳だけは淡々とブラッドが()()()()()()()()()()()()()()()()どの様な手段をとっていたのか……それを咎めている様に感じた。

 

「厳しい闘いになるぞ?」

非協力的な市民、消費されていく弾薬、調達の目処はない。

 

プロ(エージェント)なのでしょう?ブラッドさん……最善を尽くしましょう……」

 

再び前を向き歩きだす二人。

 

(状況は悪化する一方。だけど、まだ()()ではない……。だから……今はプロらしく立ち振舞いましょう……()()…………ね。)

 

 

 

 

 

 




ブラッド……(名前ブラットだっけ?)エコーの事をめっちゃ怪しんでる!他国、又は反政府組織により特殊訓練を受けた少年兵と予想

エコー……正体隠すのが面倒に思えてきてる。ぶっちゃけ正体を明かすしても良いけどチグハグな設定でブラット達をおちょくるのが楽しく思ってる。

店主……市民「銃をよこせ!金は払わん!」 店主「だが、断る!」

銃器店の市民…一人置き去りに。その後お察し。


というわけで!ほのぼのストーリー、準備回!サイコパス戦はもう少し先の予定かな……フランクさん視点とかやりながら進めていきます!(エコー強くしすぎてゾンビが空気になりつつあるw)

前作のですが誤字報告ありがとうございます。自分では中々気づきにくい……今作も多分…一杯あるんだろうな……( ;´・ω・`)
チラシの裏から通常投稿に移動……好みにささる人居ればいいな~
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